円の売り越し枚数が過去最高を更新!
外国為替市場で「円キャリートレード(円借り取引)」のポジションがさらに積み上がっているようです。
IMM通貨先物取引・円先物取引の投機筋(ヘッジファンドやCTAなど)のポジション動向をみると、6月26日時点では、188,077枚の円売り越しとなり、1983年の取引開始以来の過去最高値を更新しました(前週に比べて売り越し枚数は26,716枚増加)。金額に換算すれば2兆3,509億円に相当します。
これだけの円売りポジションが積み上がると、その反動も大きくなります。何らかのきっかけで、外国為替相場が逆方向に振れると、ポジション整理の円買いが殺到し、ストップオーダーを巻き込んで、予想外の円高に振れる可能性が高まります。
市場関係者は日銀による利上げは当面ないとみているようです。その結果、他国との金利格差が維持されるとみて、円売りに安心感が広まっているようです。
しかし、たとえば、日本・米国間での実質金利格差をみると、このところ金利格差は急速に縮小しています。
世界的にインフレ圧力が高まっており、主要先進国を中心に金融引き締めスタンスが継続しています。そうした中で、日銀も金利を正常化したいと考えても不思議ではありません。事の善し悪しはともかく、秋にかけて、日本も利上げの可能性がある(高まる)ことに注意する必要があります。
ちなみに、下記はドル円相場と日本銀行が算出する円の実質実効為替相場をプロットしたチャートです(月次、Y軸の上方向は円高、Y軸の下方向は円安を示す)。円の実力は1985年水準まで下落しています。
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*当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。配信する内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものでもありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利は筆者に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
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- 小澤政太郎
- 為替サヤ取り入門
6月26日時点のCME日経平均先物ポジション動向
6月29日(金)東部時間午後3時30分(日本時間では、6月30日の早朝)に、6月26日時点でのCOTレポートが発表されました。
CMEに上場されている日経平均先物取引ついて、コマーシャルズ(実需筋)やノン・コマーシャルズ(CTAやヘッジファンドなどの投機筋)のポジション状況をみてみましょう。
コマーシャルズについては、6月26日時点では4,080枚の買い越しとなりました。前週に比べて買い越し枚数は1,347枚減少しています(4週間連続で減少)。コマーシャルズによる買い越しは減少基調が続いています。
ノン・コマーシャルズについては6月26日時点では2,230枚の売り越しとなりました。前週に比べて売り越し枚数は2,606枚減少しています(売り越し枚数は3週間振りに減少)。
ヘッジファンドやCTAなどの投機筋は、日本株に対して弱気スタンスを継続していますが、買いポジションが増えており、スタンスに変化がみられます。
次に、COTレポートのデータを使って、ラリー・ウィリアムズが考案したCOTインデックスと、それを応用して筆者が考案したNCOTインデックスをみてみましょう。
6月26日時点での日経平均先物取引のCOTインデックスのチャートは下記の通りです。
COTインデックスは66.36%となりました(4週間連続で低下)。低下基調が続いています。
一方で、下記はNCOTインデックス(ノン・コマーシャルズ指数)のチャートです。これは、ノン・コマーシャルズの行動をみるためにCOTインデックスと同様の計算式で、筆者が計算したものです。
6月26日時点のNCOTインデックスは37.88%で、上昇しました。
下記は、財務省が発表している対外及び対内証券売買契約等の状況(週次・指定報告機関ベース)のうち、非居住者による株式の取得・処分をまとめたチャートです。
直近のデータは6月22日に終わる週まで発表されています。外国人による株式取得は4,404億円の売り越しとなっています。8週間振りの売り越しで、外国人投資家のスタンスに変わった可能性があります。
ただし、6月22日に終わる週の数値に関しては、東京証券取引所が発表している三市場の投資部門別売買状況のデータと大きな差異が出ています。三市場の投資部門別売買金額をみると、6月22日は2,372億円の買い越しとなっています。
これをどう解釈するか難しいところですが、とりあえず次回の数値で確認したいところです。
下記は、寄り付きの外資系証券の売買状況です。6月28日まで6営業日連続で売り越しでしたが、29日は買い越しに変わっています。
下記は日経平均の週ベースと日ベースの一目均衡表です。中期での上昇トレンドが続いています。
2月26日につけたザラバ高値(18,300.39円)を上回るかどうかが今週の注目点です。
なお、6月29日のシカゴ日経平均先物の終値は、18,180円と大証の終値(18,160円)より20円高くなっています。
今回は、MSCI(モルガンスタンレー・キャピタルインターナショナル社)が算出した米ドル建ての米国株と日本株のチャートを掲載しましょう。
ドル高円安基調が続いているため、米ドル経ての日本株指数をみると、日経平均やTOPIXと比べて上昇していないことがわかります。
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- ラリー ウィリアムズ, Larry Williams, 清水 昭男, 長尾 慎太郎, 柳谷 雅之
- ラリー・ウィリアムズの短期売買法―投資で生き残るための普遍の真理
円キャリートレードが積み上がる!
外国為替市場で「円キャリートレード(円借り取引)」のポジションが積み上がっているようです。
IMM通貨先物取引・円先物取引の投機筋(ヘッジファンドやCTAなど)のポジション動向をみてみましょう。
6月19日時点では、161,361枚の円売り越しとなっています。前週に比べて売り越し枚数は33,799枚増加し、今年1月30日に記録した過去最高値(173,005枚)に迫っています。金額に換算すれば2兆170億円に相当します。
金利の低い円資金を借りて、米ドルなど他の高金利通貨に替えて、その国の資産に投資する「円キャリー取引(円借り取引)」が増えていることを示しています。
先週の一連の経済指標の発表により、7月の日銀利上げ説が後退し、円キャリートレードに安心感が出たためと思われます。
ちなみにスイスフラン売りポジションも増加しています。スイスの政策金利は2.50%まで上昇してきましたが、依然として英国やEU諸国と比べて低金利である事実には代わりがなく、スイスフランで資金を借りて、他の高金利通貨で運用する取引が積み上がっているようです。
スイスフラン先物取引の投機筋のポジション動向をみると、6月19日時点で79,331枚のスイスフラン売り越しとなり、売り越し枚数は2週間連続で過去最高値を更新しています。
6月24日にBIS(国際決済銀行)の2006-2007年度の年次報告が発表されました。
その中で、「円キャリートレード」についての言及がありました。日本経済の成長が続いており、また日本からの資金流出が継続していることは、日銀が利上げを続ける根拠になるとの見解を明らかにしています。さらに、最近の円安は異常だとし、「円キャリートレード」の自制を促しています。
詳細は、英文ですが、下記をご覧ください。
http://www.bis.org/publ/arpdf/ar2007e.htm
筆者は、日本と他の先進諸国との金利格差継続から、まだ円安進行が続くとみています。しかし、「円キャリートレード」の解消による急激な円高進行の可能性は常に想定しておくべきだと思っています。
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