円キャリートレードが積み上がる! | COTレポートの読み方

円キャリートレードが積み上がる!

 外国為替市場で「円キャリートレード(円借り取引)」のポジションが積み上がっているようです。
 
 IMM通貨先物取引・円先物取引の投機筋(ヘッジファンドやCTAなど)のポジション動向をみてみましょう。


 6月19日時点では、161,361枚の円売り越しとなっています。前週に比べて売り越し枚数は33,799枚増加し、今年1月30日に記録した過去最高値(173,005枚)に迫っています。金額に換算すれば2兆170億円に相当します。

  金利の低い円資金を借りて、米ドルなど他の高金利通貨に替えて、その国の資産に投資する「円キャリー取引(円借り取引)」が増えていることを示しています。

 先週の一連の経済指標の発表により、7月の日銀利上げ説が後退し、円キャリートレードに安心感が出たためと思われます。

0625シカゴ通貨先物(円)


 ちなみにスイスフラン売りポジションも増加しています。スイスの政策金利は2.50%まで上昇してきましたが、依然として英国やEU諸国と比べて低金利である事実には代わりがなく、スイスフランで資金を借りて、他の高金利通貨で運用する取引が積み上がっているようです。 

 スイスフラン先物取引の投機筋のポジション動向をみると、6月19日時点で79,331枚のスイスフラン売り越しとなり、売り越し枚数は2週間連続で過去最高値を更新しています。

0625シカゴ通貨先物(スイスフラン)


 6月24日にBIS(国際決済銀行)の2006-2007年度の年次報告が発表されました。

 その中で、「円キャリートレード」についての言及がありました。日本経済の成長が続いており、また日本からの資金流出が継続していることは、日銀が利上げを続ける根拠になるとの見解を明らかにしています。さらに、最近の円安は異常だとし、「円キャリートレード」の自制を促しています。


 詳細は、英文ですが、下記をご覧ください。

http://www.bis.org/publ/arpdf/ar2007e.htm


 筆者は、日本と他の先進諸国との金利格差継続から、まだ円安進行が続くとみています。しかし、「円キャリートレード」の解消による急激な円高進行の可能性は常に想定しておくべきだと思っています。


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松尾 健治
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