29話 公園の宝探しと、残された謎 -
(宝探し…?なんか面白そうなことが始まるんじゃないだろうな…?)タカシはイベントのチラシを見て内心でワクワクしていた。公園では、宝探しイベントの準備が進められていた。公園の管理組合主催らしい。賞品は高級あんころ餅セットだとか。ヨシダさんが目の色を変えそうだ。
ハナちゃんは、目をキラキラさせてヨシダさんに話しかけた。「ねえ、ヨシダさん!公園で宝探しイベントがあるんだって!宝物、見つけようね!あんころ餅!」
「へえー、宝探しだって?面白そうだねえ。」ヨシダさんは、目を細めて言った。やはりあんころ餅に反応したか。「僕が若い頃は、世界中の宝物を探しに冒険したこともあったんだよ。ピラミッドの奥深くとか、海底神殿とかね。地図とコンパスだけ持って、未知のジャングルを進んだり…」
「ええー!ヨシダさん、冒険家だったの!?すごい!」ハナちゃんは、目を丸くして驚いた。さすがヨシダさんだ!話が壮大すぎる。
「まあ、ほとんどは想像の中の話だったんだけどね。頭の中での冒険さ。ベンチに座って考えただけ。」ヨシダさんは、照れ笑いを浮かべた。
「なーんだ、うそぴーんか!想像だけかよ!」ハナちゃんは、残念そうに言った。あんころ餅への期待が萎んだらしい。いつものヨシダさんの昔話は壮大だけど、だいたいオチがこれだ。
「お兄ちゃん!うち、霊感で宝物を見つけて、みんなをびっくりさせてやるんや!宝物の霊気、捉えたる!」チヨは、意気込んで俺に話しかけてきた。霊体のくせに、宝探しのイベントに張り切ってる。霊体にも宝探しって概念があるのか。
「霊感で宝探しねぇ…チヨの霊感は、湿気に弱くて、物忘れ霊の頭の中みたいにモヤモヤしてるんだったよな?」俺はチヨに突っ込みを入れる。「宝物の霊気とか、あるのかよ。霊感で分かったら、賞品のあんころ餅、チヨが全部食べるつもりだろ?」
「なんやて!霊感、馬鹿にすんなや!今回は気合入ってるんやから!湿気対策も万全や!」チヨは怒って俺に詰め寄る。「賞品のあんころ餅は霊体やから食べられへんけど、霊力チャージになるんや!」
「霊力チャージ…あんころ餅で?」俺は理解に苦しむ。「まあ、期待はせずに見守らせてもらうよ。霊感で道に迷わないことを祈る。」
宝探しイベントが始まり、公園はたくさんの人で賑わった。子供から大人まで、地図と謎解き用紙を手に、楽しそうに公園の中を歩き回っている。ハナちゃんとヨシダさんも、地図を片手に公園の中を歩き回った。ハナちゃんは元気いっぱいに駆け回り、ヨシダさんはあんころ餅目指してのんびりペースだ。
「ヨシダさん、次の謎は…『昔の石碑に書かれた言葉、それは本当の扉を開く鍵になる』…だって!」ハナちゃんは、地図を読み上げた。公園の片隅にある古びた石碑の場所が示されている。井戸の近くにある石碑かな?
「昔の石碑…?そんなもの、この公園にあったかなあ…?見たことないぞ。」ヨシダさんは、首を傾げた。公園の管理人さんでも知らないような石碑なのか?それともヨシダさんが忘れてるだけか?
その時、石碑に到着したハナちゃんは、石碑に書かれた文字が誰かに書き換えられていることに気が付いた。上から別の文字が雑に書き足されている。「石碑、汚されてる!」
「ヨシダさん!大変!石碑の文字が変わってる!誰かがイタズラしたんだ!」ハナちゃんは、叫んだ。
「なんですって!?一体誰がこんなことを…。」ヨシダさんは、目を細めて石碑を見つめた。落書きのセンスが前回の犯人に似てるな…まさか?あの管理人さんか?
タカシは、自販機の高性能センサーとカメラ機能をフル活用し、公園の監視カメラ映像を分析し始めた。石碑の周りの映像を巻き戻す。誰かが石碑に近づいて文字を書き換えている姿が映っていた。帽子を目深にかぶっていて顔はよく見えないが…体格はあの管理人さんに似ているような?(まさか、宝探しイベントに紛れて、何か企んでる奴がいるのか…?妨害犯か!しかも前回の犯人と同じ人物か?)これは事件の予感だ!データ解析、開始!
俺は、書き換えられた文字をスキャンし、元の文章を復元しようとした。同時に、チヨは霊感を使って、書き換えを行った人物の痕跡を探した。「犯人の霊気、必ず捉えたる!」
「お兄ちゃん、なんか、この辺り、モヤモヤする感じがするんやけど…前回の落書き犯と似てるモヤモヤや…」チヨは、公園の一角を指さした。落書き犯のモヤモヤを覚えてるのか。霊感、少しは役に立つのか?
俺は、チヨが指さした場所の監視カメラ映像を確認したが、怪しい人物は映っていなかった。霊感で場所を特定できるなら、座標をデータでくれよチヨ。「やっぱり、お前の霊感はアテにならないんだな…。霊感のモヤモヤはカメラには映らないんだよ…データにならない。」
「なんやて!うちの霊感、馬鹿にすんなや!モヤモヤを感じたんや!兄さんに見えへんだけや!」チヨが抗議する。霊体だから見えないって言っても通用しないらしい。
「モヤモヤはデータにならないから困るんだよ!座標をデータでくれ!」俺は冷静に応じる。「話にならないな。」
ハナちゃんとヨシダさんは、公園の中を走り回り、他の参加者たちに異変を知らせた。「みんな!地図や謎解きには、罠が仕掛けられてるよ!誰かが文字を書き換えてる!他の石碑も確認した方がいいかも!」ハナちゃんは、大声で叫んだ。他の参加者たちも驚いて、自分の地図を確認したり、石碑を見に行ったりする。イベントは大混乱だ。
「罠…?一体、誰が何の目的で…?」参加者たちは、不安そうな顔で呟いた。イベントの雰囲気が一変する。楽しい宝探しが、一気に不穏な空気に。
俺は、書き換えられた文字、妨害犯の行動パターン、そして公園の歴史に関するデータを総合的に分析する。犯人の目的は、宝探しの参加者を混乱させ、自分だけが宝にたどり着くことか…そして、犯人が探しているのは、イベントの宝ではなく、「伝説の宝」と呼ばれるものだと突き止めた。公園の古い記述に、伝説の宝に関する記述が見つかったのだ。前回の落書き犯と同一人物だと考えると、彼が探しているのはこの伝説の宝か。
「伝説の宝…?そんなものが、この公園にあるのかなあ…?」ヨシダさんは、顎に手を当てて考え込んだ。あんころ餅セットよりも、伝説の宝に興味が移ったらしい。
「ヨシダさん、伝説の宝って、一体何なの?知ってるの?」ハナちゃんは、ヨシダさんに尋ねた。
「伝説によると、この公園には、昔この場所を治めていた偉い人が隠した、不思議な力を持つ宝物が眠っているらしいんだ。争いを止める力とか、人を笑顔にする力とか、平和をもたらす力とか、色々言われているねえ。」ヨシダさんは、遠い目をして言った。伝説の詳細まで知ってるのか、ヨシダさん。やっぱり元冒険家なのか?情報が具体的になってきたぞ。
「ええー!ヨシダさん、詳しいんだね!そのお宝、どんな形をしてるんですか?キラキラしてるんですか?地図はあるの?」ハナちゃんは、目を輝かせ、ヨシダさんに質問攻めにした。ハナちゃんの宝物に対するイメージはキラキラしているらしい。
「うーん、伝説だからねえ。どんな形かはわからないけど、きっとすごいお宝なんだろうねえ。」ヨシダさんは、曖昧に答えた。「地図はねえ…想像の中にはあるかもしれないな。頭の中の地図だよ。」
「なーんだ、うそぴーんか!想像だけかよ!」ハナちゃんは、さらに残念そうに言った。期待させて、またオチがこれか。
俺は、伝説の宝についてさらに深く調べようとしたが、古い記述は断片的で、情報はほとんど残っていなかった。伝説の宝…一体、何が目的なんだ、妨害犯は。そして、伝説は本当なのか…?もしかして、宝そのものがこの公園の謎と関係しているのか?あの石碑と…公園の奥にある古い井戸も…?
宝探しイベントは、異変の影響で中断された。参加者たちは残念そうに帰っていく。犯人の正体も、伝説の宝も見つからなかった。謎だけが残った。あんころ餅セットもなくなったらしい。
「結局、何もわからなかったね…。」ハナちゃんは、肩を落とした。「宝物、見たかったな…あんころ餅も…」
「まあ、伝説の宝なんて、ただの噂だったのかもしれないね。」ヨシダさんは、とぼけた顔で言った。完全に諦めている。あんころ餅がなくなったから、興味を失ったのかもしれない。
「本当にそうかな…?俺はそうは思わないんだ。」俺は応じる。「何か、まだ隠されているような気がするんだが…データがそう囁いている。この公園のデータは、まだ完全に解明されていない。特に…あの井戸と石碑の関連性…」俺は公園の奥にある古い井戸と、そのそばの石碑に視線を向ける。井戸からは、何やら微かに霊的な波動を感じるような…錯覚か?
「なんですってー!兄さんのデータが!?」チヨは驚く。「うちの霊感も、なんかモヤモヤしてるけど、それが何なのか分からへんねん!兄さんのデータと一致するんか?!」
「お前の霊感はアテにならないんだよ!モヤモヤばっかり!」俺は思わずツッコミを入れる。「データと霊感は別物だ!でも…俺もそう思う。この公園には、まだ何か隠された秘密がある。あの井戸と石碑…何か繋がりがあるのかもしれない。」俺の言葉に、チヨが井戸の方をジッと見つめる。チヨの霊感が、井戸に反応しているらしい。
「なんですってー!」チヨは、怒って俺に詰め寄った。「うちの霊感、馬鹿にすんなや!たまには当たるんやから!漫才もたまにはウケるやろ!」
ハナちゃんとヨシダさんは、そんなタカシとチヨの様子を見て、苦笑いを浮かべた。いつもの二人の掛け合いだ。始まったな、とでも思っているだろう。謎が残って、少し不安だけど、タカシとチヨがいれば、なんだか大丈夫な気もする。
こうして、宝探しイベントは多くの謎を残したまま幕を閉じた。謎の妨害犯、そして伝説の宝…特に、公園の古い井戸と石碑に残された謎が、俺とチヨの心を捉えていた。データ収集は終わらない。そして、チヨとの漫才もな。
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