第533話「後輩」(通算第448回目)

放映日:1982/11/26

 

 

ストーリー

春日部と竹本はバッティングセンターにいたが、殺人事件の連絡を受け、現場の矢追町2丁目の平山不動産に急行した。

被害者は平山不動産社長の平山光博で、死亡推定時刻は1時間前の午後9時前後であり、後頭部を鈍器で殴られたのが致命傷だった。

金庫の中には約500万円の現金が入っており、現金が無くなっていたが、小切手類には手を付けられていなかった。

春日部は竹本と共同で現場の聞き込みをしていた際、「珈琲館 かんてら」のマッチを発見した。

「かんてら」は春日部の後輩の谷口昭夫が経営している店で、広島県中区井崎町2-4 広島中央病院の隣にあった。

春日部は東京に「かんてら」のマッチがあることを不審に思い、「かんてら」に電話したが、電話に出なかった。

春日部は谷口が妹と一緒に、「かんてら」の屋根裏に住んでいると見込んでいた。

春日部は正子(有吉ひとみさん)に電話し、「かんてら」がここ数日間、閉店していることを聞いた。

目撃者は発見されず、指紋も不動産会社のものが検出されず、全員のアリバイが明確だった。

平山不動産は雑居ビルの中にあるため、出入りの業者や客が多数いた。

藤堂は捜査員に、流しの線も含めての捜査を指示した。

春日部は藤堂に、現場付近で拾った「かんてら」のマッチのことを報告し、藤堂から捜査の許可を受けた。

春日部は谷口が上京しているのではないかと推測していた。

春日部と竹本は、広島県人会が経営しているホテル「安芸会館」を訪れた。

春日部はかつて、東京の高校と親善試合をした際、「安芸会館」に宿泊した経験があり、広島県民なら安く宿泊することが可能だった。

谷口は「安芸会館」3209号室に宿泊していた。

春日部は3年ぶりに谷口(加納竜さん)と再会し、竹本を紹介した。

春日部は谷口が「かんてら」を開店した際、色々と手伝っていた。

谷口は春日部から矢追町に行ったかどうかを質問され、午後9時に行ったと正直に答えた。

春日部は現場に谷口を連れて行き、事件のことを告げ、マッチ箱を手渡した。

谷口は昨夜に喫煙した際、マッチ箱を捨てていた。

谷口は久々の東京なので、ぶらぶら歩いていたこと、自分と追い越しざまに若い男がぶつかったことを答えた。

谷口は用事を理由に春日部と竹本から離れようとしたが、春日部に依頼され、協力した。

谷口の証言のもと、犯人のモンタージュが完成した。

春日部は西條と竹本に、谷口のことを話した。

谷口は中学校時代、停学処分を受けたことがあり、春日部と同じく、怒ると見境のつかなくなる性格だった。

春日部は谷口の性格から、野球部に勧誘しており、それから谷口の性格が変わり、野球が谷口を救ったと思っていた。

谷口は春日部に用事のことを打ち明けず、上京の理由が遊びだったと弁解した。

春日部は谷口に捜査協力を要請した。

原は、パチンコ屋の店員の池沢忠(27歳)(栗田八郎さん)を疑っていた。

池沢は1年前(1981年頃)まで平山不動産に勤務していたが、セールスの際に客と対立し、暴力を振って免職となっていた。

池沢は暴行と傷害の前科2犯だった。

原と竹本は池沢にあたった。

池沢は平山に対し、気に入らないと思っていた。

池沢は犯行時刻にアパートにいたと述べたが、一人暮らしなので証人が不在であり、原と竹本に対し、前科者を疑うことしかできないのかと中傷した。

原と春日部は谷口に、バーにて酒を飲んでいる池沢を面通しさせた。

春日部は谷口に、モンタージュの顔と池沢の顔が違いすぎることを責め立て、明朝の午後9時に送迎に行くので、モンタージュ作成に協力するように促した。

しかし、谷口は翌朝、もう一晩宿泊する予定を切り上げてチェックアウトしており、書置きも残していなかった。

春日部は正子から電話で、「かんてら」の真相を告げられた。

谷口は悪質なサラリーマン金融から借金し、妹も雲隠れしている様子だった。

「かんてら」は再度、不渡り手形を出したら倒産が免れない状態となっており、金額が数百万円となっていた。

谷口の上京の目的は、不渡り手形を出し、差し迫った状態での金策だった。

春日部は谷口が嘘を吐いた理由を理解できず、犯人が谷口ではないかと推理した。

春日部の推理は、谷口が何かのきっかけで平山と知り合い、金庫内に現金があるのを見たのではないかというものだった。

春日部は谷口の捜索に出動した。

竹本は谷口が終始、冷静だったために信じられなかったが、谷口が鞄を慌ててテーブルの陰に隠したことを思い出した。

春日部は谷口がスターホテル東京に宿泊していることを突き止めた。

春日部は谷口らしき男がタクシーに乗るのを発見し、激走して追跡したが、その男は谷口ではなかった。

竹本は池沢を張り込む原と合流した。

谷口は広島にも帰っておらず、友達のアパートにいる妹にも2日間連絡を入れていなかった。

竹本は春日部より先に谷口を探し当てようとしていたが、西條と原が春日部と谷口の先輩後輩で引っかかっていることが気になっていた。

広島県警からの連絡で、谷口の同級生の島野勇夫が東京に住んでいることが判明した。

春日部は島野(大木隆介さん)のアパートに急行し、島野から話を聞いた。

谷口は島野に電話をかけ、島野宅に泊まったが、約1時間前に退出していた。

島野は谷口の行き先を知らず、谷口が自宅に戻らないと思っていた。

谷口は何者かと電話し、鞄を持って飛び出していた。

午前11時45分頃、春日部は島野宅の机の上の週刊読売の裏に、「12時、新宿中央公園前、パークサイド」というメモが書かれているのを発見した。

春日部は覆面車で急行した際、西條とすれ違った。

春日部は午後11時55分、新宿中央公園に急行する途中、谷口を発見した。

谷口は春日部に声をかけられ、オートバイを倒して逃走した。

春日部は歩道橋で谷口を見失い、藤堂に谷口の手配を依頼した。

藤堂は谷口に、深夜レストラン「パークサイド」の客を調査し、谷口と待ち合わせた者を突き止めるように命令した。

西條は島野が「パークサイド」のことを思い出すのに10分かかり、午前0時20分に到着したが、谷口と待ち合わせた人物は不在だった。

「パークサイド」の女店員は井川と竹本に、午後0時に紳士風の客が1人入り、10分で帰ったこと、その後に若い男から「沢村をお願いします」という電話が入ったことを証言した。

今日、池沢は早番で、あと20分で勤務が終わることとなっていた。

原は池沢が勤務終了時刻になってもパチンコ屋から出ないことを不審に思い、店内に入った。

池沢に広島訛りの若い男から、電話が入っていた。

パチンコ屋は従業員通用口の他に、化粧室の横から出ることが可能だった。

西條と竹本は藤堂から、電話の男が谷口である可能性が高いという連絡を受け、原と合流した。

谷口は池沢に、犯行を目撃したことを告げたが、左腕をナイフで刺された。

池沢は谷口を殺害しようとしたが、通行人に顔を目撃されてしまった。

目撃者は山村と井川と春日部に、谷口と池沢を目撃したことを証言した。

春日部は谷口と池沢が共犯で、仲間割れを起こしたのではないかと確信した。

西條は春日部に、谷口と池沢が強盗殺人の共犯であるという証拠が皆無であることを言い聞かせた。

山村は春日部に、七曲署が谷口に池沢を面通しさせたことを助言した。

谷口は池沢が平山不動産から強奪した500万円を所持していることを知り、脅し取ろうと思って池沢に会っていた。

春日部は谷口が自分に嘘を吐いて逃走したのはその前であるため、殺人でもしない限り、そんなことは考えられないと述べた。

池沢は何事もなかったような表情で、アパートに戻っていた。

春日部は池沢を引っ張って自白させることを提案したが、山村に制止され、島野から谷口について聞き出すことにした。

七曲署捜査一係は一係室に島野を呼び出した。

島野は谷口が池沢について捜査一係に教えられるまで、会ったこともなかったこと、池沢に会うまでは何も後ろ暗いことがなかったことを自白した。

谷口が春日部から逃走した理由は、春日部を煙たく思っていたからだった。

谷口は春日部を心から尊敬していたからこそ、春日部の前では無条件に服従してしまう自分を嫌がっていた。

春日部はもう野球部の頃とは違い、頭ごなしに叱っていないと主張したが、谷口は野球部の頃の絶対的権威だった春日部への恐怖が、社会人になった現在でもついてしまっていた。

西條は最初に谷口を見たとき、そのように感じており、春日部に早く注意するべきだったことを謝罪した。

谷口はただ金策に走り回っており、「パークサイド」に来たのも、ただ金策のためだった。

谷口はやっと金を貸してくれそうな人物を探し出したと喜んで飛び出したが、約束の時間に間に合わなかった。

谷口は島野に、池沢から金を脅し取ることを提案したという電話を入れていた。

谷口にも、島野が犯人である確証はなかった。

谷口は傷を治療し、金を貸す人物を探し回っていた。

春日部は自分のミスであると痛感し、もしも追跡していなかったら「パークサイド」で金を借りられ、池沢から金を脅し取ろうと考えなかったと思い込んだ。

原も谷口の様子が気になり、かなり無理をしていると感じていた。

原は谷口の不渡り手形の期限が午後3時であるため、自暴自棄にならなければいいと懸念した。

谷口は街を彷徨い歩き、只管大金を求めていた。

谷口が取引しようとしていた沢村は美術商で、広島に行ったときの「かんてら」の客だった。

沢村は谷口に懇願され、仙台に出掛ける前の数時間を谷口のために割いていた。

沢村は約束の時間を10分過ぎても谷口が現れなかったため、帰ってしまっており、谷口に融資する気は無かった。

谷口は都内全署に手配されていたが、病院に現れた形跡もなかった。

春日部は谷口を捜索するため、昼に装備課に手帳と拳銃と手錠を返還し、単独で出動していた。

藤堂と山村は春日部が刑事を辞めるかもしれないことを懸念した。

午後2時、谷口は富士見町にて、巡回中の警察官(小寺大介さん)とすれ違い、顔を目撃されてしまった。

谷口はレストラン「WHO」に逃げ込み、ナイフを強奪し、店員を人質に取って籠城した。

谷口は警察官の警告を無視し、警察に、午後3時までに、東都銀行広島支店の「かんてら」という口座に300万円を振り込むように脅迫した。

谷口は何としても妹に店を残すため、凶行に走ってしまった。

藤堂は「WHO」に捜査員を急行させた。

春日部の行方は不明だったが、井川は春日部の居場所に心当たりがあった。

春日部は少年野球の試合を眺めていたが、井川に発見され、谷口の凶行を告げられた。

井川は春日部を連れ、「WHO」に到着した。

春日部は山村に、谷口の説得役を志願し、許可を貰った。

春日部は自分が丸腰であることを強調し、土下座して、谷口の苦しさが分からなかったこと、悩みを聞いてやれなかったことを謝罪した。

春日部は人間としても先輩としても刑事としても失格であると思っており、谷口を説得した。

谷口は人質を解放して春日部の前に現れ、凶行に及んだこと、春日部に打ち明けなかったことを謝罪し、突然いなくなったために疑われるのは当然であると語った。

谷口は池沢に刺されたことを自白した。

井川と原はパチンコ屋の裏口に池沢を連れ出し、強盗殺人並びに殺人未遂容疑で池沢を逮捕した。

西條は谷口の取調べを済ませ、藤堂に調書を提出した。

谷口は実刑こそ免れないが、短い刑期で済むと予測された。

 

 

メモ

*ボギーの体育会系的性格が裏目に出てしまった回。

*バッティングセンターにて、ラガーのバットの振りぶりを指導するボギー。

*実際には、加納氏は世良氏と同学年。

*高校を卒業しても、やはり体育会系の接し方が抜けなかったボギー。

*全体的に懐かしの選曲。ボギーが谷口を追跡するシーンで「ゴリさんのテーマ」が流れた。

*今回を見ると、適切な人間関係とは何だろうかと深く考えさせられる…

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

春日部一:世良公則

竹本淳二:渡辺徹

原昌之:三田村邦彦

 

 

春日部正子:有吉ひとみ

谷口昭夫:加納竜

池沢忠:栗田八郎、島野勇夫:大木隆介

佐藤知多子、須藤正裕、山田敬子

諸岡青二、柏木康男、立風遊、町田幸夫、警察官:小寺大介

 

 

西條昭:神田正輝

井川利三:地井武男

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、古内一成

監督:竹林進