第513話「真相は……?」(通算第729回目)

放映日:1982/7/2

 

 

ストーリー

西條と竹本は七曲署に出勤する時、西山署長(平田昭彦さん)が乗用車に乗って出発するのとすれ違った。

午前9時30分、西山は本庁に呼び出され、警視(早川保さん)から、一昨日の午前0時頃に城南署管内の駐車場で発生した傷害致死事件についての説明を受けた。

事件の被害者は学生の田島英男(22歳)(小松明義さん)で、城南町2丁目3番、城南スカイハイツ603号室に住んでおり、車止めに後頭部を打撲したことによる脳内出血で死亡していた。

城南署は既に、現場付近で不審な人影を見たという複数の目撃者を探し当て、その証言によりモンタージュ写真を作成していた。

モンタージュ写真の男は、本庁捜査一課の高松吾郎警部(山内明さん)に酷似していた。

高松はこれまで多数の難事件を解決し、マスコミにも知られている警視庁の花形スターだった。

警視は高松に殺人の嫌疑がかけられたことにより、日本全警察機構の面目が丸潰れであることを懸念していたが、法の番人であるという立場から有耶無耶にすることが断じてできないという理由で、明日の午前9時30分まで、高松の身柄を七曲署に預け、取り調べをさせることを決定した。

警視は極秘事項であることを強調し、全てを藤堂に一任することを決定していた。

藤堂は署長室で西山からモンタージュ写真を見せられ、事件を単独で捜査するように命令された。

本庁は藤堂が高松と、かつて息の合ったコンビネーションを組んでいたことを重視して藤堂を選抜しており、藤堂であれば高松も全面的に自白すると見込んでいた。

藤堂は西山に、捜査を引き受ける条件として、自分の部下に、事件を独自で捜査させる権限を与えることを申請し、限られた時間内に真相を究明するためには、自分の分身である部下の助けが絶対に必要であると説得した。

西山は藤堂の申請を承認しつつも、万一に秘密が漏洩した場合には、全て藤堂の責任であると忠告した。

高松は藤堂にとって、尊敬する先輩で、刑事になりたての頃の藤堂に捜査の基本を教えていた。

山村は捜査員に、23時間以内に事件を解決しなければならないことを告げた。

午前10時20分、藤堂が高松の取り調べを開始した。

高松は藤堂と10年ぶりに再会していた。

藤堂は高松に容疑者のモンタージュ写真を見せ、犯人であるかを尋ねた。

高松は犯人であることを否定し、アリバイを聞くように求めた。

高松は事件当日、午後7時過ぎに退庁し、その後の行動が不明だったが、翌日には定時に出勤していた。

西條は高松宅の最寄り駅にて、派出所の警察官から、高松が事件当日に終電車から降りたのを目撃したという証言を入手した。

現場の城南町の駅から、高松宅の最寄り駅の距離は1時間で、終電車の時刻だった。

午前11時32分、山村は西條に、どこから電車に乗ったかを徹底的に調査するように指示した。

高松は藤堂の姿を見て、藤堂が初めて自分の部下になった時のことを思い出していた。

高松は過去の数々の凶悪事件を経験し、お互いに何度も命を落としかけたことで、何のために刑事をしているのかと思うことがあったことを告白した。

高松は藤堂が考えない振りをして、相手の真意を探っているのではないかということを見抜いていたが、藤堂から探られて困ることがあるのかと指摘されると、誤魔化した。

山村は藤堂と高松の取り調べを見て、高松が心象的には犯人かどうかが不明だが、高松が何かを隠しているのではないかと確信していた。

事件当日、犯行時間前後に高松が現場付近にいたことが断定された。

田島は金持ちの道楽息子で、地方から上京して高級マンションに住み、大学に行くよりも遊び回っているほうが多かった。

午前11時35分、竹本は大学のキャンパスで、ここ1週間、高松が田島のオレンジ色の外車を捜索していた形跡があることを聞き込み、山村に報告した。

高松は大学内で学生に、オレンジ色の外車に乗っていた学生を知らないかと聞いて回っていた。

藤堂は山村から事件の調査報告を受け、状況が高松に不利であることを伝え、自分に食事を奢らせるように頼んだ。

藤堂は笊蕎麦を2枚注文した。

高松は笊蕎麦に手を付けず、お互いに取り調べをしているのが時間の無駄ではないかと述べ、自分が容疑者であることを強調し、藤堂に刑事であれば刑事らしくちゃんと取り調べをするように責め立てた。

藤堂は高松が取調室に入った瞬間から、自分の聞きたいことを絶対に話さないと決め込んでいるのではないかと指摘した。

高松は藤堂が茶を淹れようとした時、窓から、外で婦警が談話しているのを見ていた。

午後0時15分、山村は石塚と竹本に、田島の調査を命令した。

城南町の駅は盛り場が近いことから、終電車の時刻になると乗客が増加するため、高松が城南町の駅で電車を降りたことが確認できなかった。

西條は城南署に在籍している自分の同期の警察官から、田島が財布を所持していなかったことを聞き出していた。

田島は殺害される前、バーで豪遊しているのをホステスに目撃されていた。

田島は海外旅行の時に購入した、金の大きな腕時計をホステスに自慢していたが、その腕時計も田島の遺体から発見されていなかった。

西條は高松が強盗をするはずがないと推察し、高松が犯人ではないと信じていた。

山村は高松が強盗の仕業に偽装したのではないかということと、高松が田島を殴り殺した後、通り掛かった人物が財布と時計を強奪したのではないかということの2つを推理していた。

岩城と原は逃走するチンピラ(吉中六さん)を追跡し、逮捕した。

チンピラは田島の所持品と思われる、金の高級の腕時計を所持していた。

チンピラは石塚と岩城に取り調べられ、高級腕時計について追及され、街で不審な男から腕時計を買わないかと声を掛けられ、胡散臭いとは思ったが、値段が手頃だったことを理由に購入したことを自供した。

チンピラは身長167,8cmの、黒髪と白髪が混じった髪の男から時計を購入したことを答えた。

藤堂は高松が現在、直接担当している事件がないことを知り、高松に独自で調査していることがあるのかということを尋ねた。

高松は無精者であるからと答えた。

チンピラが時計を購入した男と、高松の身長と髪の色が一致していた。

チンピラは高松のことを何も知らないはずだった。

西條は偶然の一致であると思っていた。

チンピラは事件当日、仲間と伊豆に泊まり掛けで遊びに行っていた。

午後2時10分、藤堂は山村に、チンピラの釈放と、直子に新しい茶葉を持って行くように頼むことを命じた。

石塚はチンピラの腕時計を証拠品として押収した後、チンピラを釈放した。

岩城はチンピラを尾行した。

直子は取調室に入室し、茶葉を取り替えて立ち去った。

藤堂は高松が直子をいい娘と評価した後、高松の娘の高松知子が元気であるかを質問した。

高松は藤堂が子供を欲しいと言い出すと、子供を持ったら余計な苦労を背負い込むという理由で反対し、知子がいい性格であると評した。

警視が七曲署を訪れ、西山に、本庁が高松を引き取り、捜査一課長が直々に高松を取り調べることが決定されたことを告げた。

田島の外車の車内から、数種類の毛髪が発見され、その中に白髪が1本混入しており、分析の結果、高松の血液型と一致していた。

本庁は高松の白髪を、高松の容疑を裏付ける決定的な証拠と認定し、七曲署の捜査を打ち切ろうとしていた。

藤堂は警視の、高松の引き渡しの命令に抗議し、翌日の午前9時30分まで、自分の責任で捜査を続行することを願い出た。

藤堂は高松が事件当日に田島と接触したことを認めつつも、1本の毛髪では殺人の証拠にならないことを訴えた。

警視は毛髪以外の状況証拠も、高松の容疑を裏付けるものばかりであることを話した。

藤堂は警視に、高松の身柄を24時間預けると言い出したのが本庁であることを理由に、捜査を続行すると宣言した。

警視は翌日の午前9時30分まで、高松の取り調べを待つことにして、七曲署を後にした。

午後3時45分、藤堂は山村に、田島の外車から数種類の毛髪が発見されたことを打ち明け、その中に女性の毛髪が混入していなかったかの調査を要請した。

山村は警視庁城南署を訪れていた。

午後4時10分、石塚と竹本は、藤堂が高松を犯人と思っていないことぐらい、高松にも分かっているのではないかということを疑問に思っていた。

原は高松が、かつての部下で最も信頼している藤堂にでさえ、絶対に知られたくない秘密を握っているのではないかと意見した。

西條の調査で、知子が事件当日から1週間、会社を休んでいることが判明していた。

山村は知子(香野麻里さん)に接触した。

知子は山村の警察手帳を見て、城南署の刑事と誤認し、山村から田島の写真を見せられると、憎悪の表情を見せ、知らない人と激昂した。

知子は会社を休む前日、結婚する友人の送別会で帰宅が遅くなっていた。

山村は高松がマスコミの目を避けるため、七曲署で取り調べを受けていることを話した。

知子は高松の無実を信じていた。

山村は高松に、殺人の容疑をかけられていること、捜査の辛さと苦しさを知り尽くしている高松が疑惑を晴らすための材料を七曲署捜査員に何も与えてくれないことを告げた。

山村は、刑事の高松が刑事であることに目をつぶってまで守ろうとするものが知子であると断定し、知子が突然に会社を休んだ理由と、送別会の夜に何が起こったかを話すように懇願した。

本来、山村は高松の秘密を、藤堂と自分の2人だけの秘密にするものと思っていた。

藤堂は捜査員を信じて何も隠したくないという理由で、山村に、捜査員には高松の秘密を打ち明けるように頼んでいた。

高松は夫人と早くに死別し、男手一つで知子を大事に育ててきた。

知子は事件当日の前日の夜、田島が運転する外車に轢かれ、軽度の脳震盪を起こした。

田島は外車に知子を引きずり込み、乱暴していた。

高松は帰宅が遅くなった知子の異常に気付き、口を閉ざす知子を詰問し、何が起こったかを知った。

知子は外車の色がオレンジ色だったこと、田島が落とした学生証の大学の校章を記憶していた。

高松は学生証とオレンジ色の外車を手掛かりに、遂に田島を突き止め、事件当夜に駐車場で田島を待ち受けた。

田島はその時、刑事ではなく一人の父親として田島と接していた。

山村は高松に、田島に対する殺意があったのかもしれないと推察しつつも、多くの殺人事件の捜査を経験し、殺人の辛さと悲しさを知り尽くしている高松が、どんなに憎い相手であろうと自分の手で殺人をすることができないと信じていた。

藤堂が一係室に入り、高松の無実を証明する手段として、真犯人の検挙を挙げた。

高松は仮に事件の真相を突き付けられても、認めないと考えられた。

捜査員に残された道は、限られた時間の中で田島殺害の真犯人を検挙することだった。

藤堂は高松が必死に隠す秘密を守りたかった。

午前6時30分、時間制限があと3時間に迫っていた。

藤堂はチンピラを再度、捜査することにした。

午前7時15分、石塚と岩城は、自宅アパートの2号室で就寝中のチンピラを強引に叩き起こし、高級腕時計を売った相手が誰なのかを詰問した。

チンピラは時計を購入した相手が、和田猛(兼松隆さん)というボクサー崩れの男であることを自白した。

西條と原と竹本は格闘で和田を叩きのめし、逮捕した。

和田は山村に取り調べられ、田島の殺害を自供した。

事件当日、田島は駐車場で高松に外車から引きずり下ろされ、高松に謝罪し、慰謝料を払うことを条件に警察に引き渡さないように懇願した。

高松は田島を人間の屑、叩きのめすほどの価値もないと吐き捨て、駐車場を立ち去った。

和田は陰から田島の謝罪を見ており、田島の前に現れ、慰謝料払うような大金があるならば、自分の賭博の借金を払うように脅した。

田島はイカサマ博打で負けた金であることを理由に支払いを拒否したため、和田に殴り倒され、車止めに後頭部を強打して死亡した。

和田は田島の死に驚愕し、財布と腕時計を強奪したが、腕時計については質入れで証拠になることを恐れ、チンピラに安価で販売し、白髪混じりの中年男性から買ったと言うように指示していた。

藤堂は西山に報告を済ませた後、高松に田島殺害の真犯人を城南署に移送したこと、真犯人の和田が高松の知らない男だったを報告した。

藤堂は高松を知子と再会させた。

藤堂は捜査員に感謝した。

 

 

メモ

*復帰後の数少ないボス主演作。ボスの高松の取り調べと、チームの団結力による捜査が非常に印象的な1作。

*高松宅の最寄り駅は「小田急」の看板が見えたが、何駅かは分からず。

*高松との取り調べの時のボスは、石原氏の素が出ているように見えて感慨深い。

*ボスは結婚しなくても子供が欲しいと思うことがあり、結婚相手もいないため、子供をもらい、未婚の父親になりたいとも思っているという。

*素直に高松によって警察に逮捕されていれば死なずに済んだのに、違法な博打の借金のために死亡した田島。

*ラスト、24時間ぶっ続けで捜査したのに、ボスから、未解決の事件の捜査をするように命令され、愚痴るドックとラガー。そして隠れてあくびをするボス。

*今回は「婚約者の死」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

西山署長:平田昭彦、松原直子:友直子

高松吾郎:山内明

本庁警視:早川保、高松知子:香野麻里

和田猛:兼松隆、チンピラ:吉中六、田島英男:小松明義

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:長野洋

監督:竹林進