第520話「野崎刑事 カナダにて最後の激走」(通算第728回目)
放映日:1982/8/27
ストーリー
野崎はカナダの警察に、岩城の風葬の許可を申請した。
野崎はバンフのスプリングスホテルにて待機していた時、原から、岩城の遺体の風葬の許可が下り、明日の朝にヘリコプターが飛ぶことを告げられた。
原は岩城が撮影したフィルムを現像し、野崎に写真を提出した。
岩城が撮影した写真に写っていた人物のうち、ポール川瀬(鈴木弘道さん)だけは素性が不明だった。
北澤光子(髙瀬春奈さん)は西條と竹本に、川瀬について詰問され、店の客だが、偶然にスタンレーパークで会話しただけで、名前を知らないと答えた。
西條は北澤が川瀬と密会した後に逃走したことから、川瀬が北澤と杜丘忠彦(小野進也さん)の連絡係を務めていたのではないかと追及した。
北澤は杜丘の隠し場所についても知らないと述べた。
バージル刑事(キム・バスさん)は北澤に英語で何かを伝え、メモを手渡したが、野崎と原に何を伝えたかを教えようとしなかった。
北澤は何も話そうとしなかった。
西條はヘリコプターに搭乗し、岩城に別れの言葉を残しながら、岩城の遺灰をロッキー山脈に捲いた。
西條はヘリコプターで現地を視察中、ウッドレイクでカナダ人の夫婦が助けを求めているのを目撃し、原に無線連絡した。
カナダ人の夫婦の妻は原に、杜丘に襲撃され、乗用車を強奪されたことを証言した。
原と竹本は野崎から、スリーバレーのゴーストタウンで杜丘らしい日本人が目撃されたという無線連絡を受けて急行し、西條と合流し、ゴーストタウンを捜索した。
西條と竹本はゴーストタウンの小屋の屋内に、杜丘が潜伏していた痕跡を発見した。
竹本は探索中、杜丘に小屋の2階から拳銃で狙撃されそうになったが、西條の一声で回避することに成功した。
杜丘はロープを使って小屋の2階から下り、馬に乗って逃走した。
西條と竹本は覆面車で杜丘を追跡しようとしたが、杜丘が砂丘に逃げ込んだため、追跡を断念した。
石塚がバンクーバー空港に到着し、バンクーバー市警から藤堂に電話で連絡した。
野崎は杜丘がカムループスに逃走したため、カムループスのホテルで様子を見ることを決めていた。
石塚もカムループスに合流することにした。
山村の捜査で、立川義男という男が捜査線上に浮かんだ。
立川は杜丘の貿易商時代の仲間で、以前にカナダに居住していたことがあったが、山村が会った翌日から消息を絶っていた。
藤堂は山村に、立川を調査するように命じた。
西條と原と竹本はカムループスのホテルにて、北澤に、黙秘していれば犠牲者が増えると厳しく追及した。
竹本は、北澤を連れて行こうとするバージルを引き留めた。
西條はバージルに、自分達が北澤を逮捕したと反抗したが、野崎に、FBIにも北澤を取り調べる権利があると諭された。
バージルはFBIにも北澤から情報を聞き出す権利があるとバンクーバー市警に主張し、許可を得ていた。
立川の愛人(高瀬佳子さん)は山村に、立川の行方を知らず、立川の連絡もないことを話した。
立川の愛人は山村に、寝室のベッドに、袋に入った服が置かれていることについて、旅行かと指摘され、クリーニングに出すものと誤魔化した。
石塚はホテルに赴き、野崎と合流した。
杜丘が逃走した地点からジャスパ、バンフ、プリンストン、ケロウナ、バンクーバーと、どこにでも逃走が可能だった。
石塚はまずジャスパに北上した杜丘が、カムループスに戻ってきた理由を疑問に思っていた。
北澤は現在、FBIに取り調べられている状態だった。
野崎は杜丘の逮捕に執念を燃やしており、バージルの尋問で北澤が杜丘の居場所を自白したら、喜んでFBIに頭を下げることを決意していた。
西條と原と竹本はホテルを訪れ、バージルが消息を絶っていたことから、バージルを捜索した。
バージルは北澤を連れて裏口から脱走し、乗用車で逃走していた。
立川の愛人は、駐車場に停まっていた乗用車の中に潜伏していた立川(簗正昭さん)に着替えとトランクを手渡し、立川と一緒に逃走しようとしたが、山村に阻止された。
立川は山村に取り調べられ、杜丘が殺人犯だったことを知らずに、杜丘から、誰かを紹介したら現金100万円を手渡すと約束され、カナダでの逃亡先を教えたことを自供した。
立川は新聞で杜丘の事件を知り、しばらく潜伏しようとしていた。
立川は現金欲しさに、ケロウナに住む日系3世のガイドの川瀬を紹介したことを自白した。
杜丘は最初からケロウナに行くつもりであり、ジャスパに北上したのは警察の捜査を攪乱させるためだった。
川瀬は手にいつも金属製のブレスレットを付けていた。
石塚と原は、藤堂からの連絡を受け、岩城が密かに撮影した写真の中に、川瀬が写り込んでいることに気付き、藤堂に川瀬がケロウナにいると報告した。
川瀬は野崎と石塚に取り押さえられて詰問され、杜丘の居場所がロッジであることを自供した。
北澤はバージルが運転する乗用車でロッジに行き、杜丘と再会した。
北澤はFBIと、カルガリーのホテルからアメリカに行くことを約束していた。
バージルは杜丘がFBIにとってどうしても必要な証人であるため、ずっと杜丘と北澤を警護することを約束していた。
杜丘は北澤を信じようとしたが、北澤と一緒にバージルの乗用車に乗ろうとしたところで、野崎と石塚のパトロールカーを発見し、北澤が裏切ったと勘違いした。
杜丘はバージルを殴り倒した後、北澤の足を銃撃し、北澤を見捨ててバージルの乗用車を強奪し、逃走した。
杜丘は湖の付近で乗用車を乗り捨て、モーターボートを操縦して逃走した。
石塚はモーターボートを狙撃しようとしたが、遠距離だったために失敗した。
西條と竹本はビンセント病院の外にて、バージルに対し、杜丘をアメリカに逃亡させるためにわざと逃がしたのではないかと厳しく追及した。
石塚は西條と竹本とバージルに対し、警察官同士が対立している場合ではないと一喝した。
石塚はバージルが自分の捜査しか考えなかったように、自分達も杜丘を殺人犯として逮捕することしか考えていなかったことを、バージルに謝罪し、岩城が人の生命を守るという初心に戻り、カナダの大自然を傷つけまいとして殉職したことを訴え、説得した。
石塚の信念は、岩城のためにもこれ以上、一人も傷付けたくない、杜丘の逮捕さえできれば、喜んでFBIに協力し、逮捕した杜丘を先にアメリカに引き渡してもいいというものだった。
北澤は杜丘の逃亡先を自白しようとしなかった。
バージルが北澤の病室に入り、FBIが杜丘と取引せず、七曲署捜査一係に協力することを宣言した。
バージルは石塚の説得を受け、杜丘を信じることを断念していた。
北澤は遂に杜丘の居場所がカルガリーであることを自白し、野崎にスタンピードの切符を手渡した。
野崎と石塚と西條と原と竹本は、スタンピードパレードが開催中のカルガリーに直行した。
杜丘は乗用車を下りたところを警察官に発見され、逃走した。
捜査員は手分けして杜丘を捜索していた。
原は杜丘を発見し、バージルと一緒に追跡した。
石塚はハドソンベイ付近で、逃走中の杜丘を発見したが、杜丘を見失ってしまった。
杜丘はボウ川付近で、地元民の夫婦に銃口を向け、乗用車を強奪したが、原にタイヤを銃撃され、断念した。
原は杜丘の発砲で右足を負傷してしまい、野崎に無線連絡した。
野崎は杜丘を発見して、疾走して追跡した。
杜丘は野崎の右腕を銃撃したが、拳銃の弾を撃ち尽くし、野崎に徹底的に叩きのめされて逮捕された。
北澤は失意の表情でロデオを見ていた。
バージルは野崎を「侍」と呼んで称賛した。
杜丘の自供で、強奪した5000万円がスイスの銀行に預けられていることが判明した。
バージルは杜丘の証言で、賭博組織を壊滅させるめどがたったため、喜んで帰って行った。
野崎は成田空港から岩城宅に直接向かい、岩城の遺影に手を合わせた。
野崎は令子(長谷直美さん)に、岩城がカナダで撮影した写真を渡し、写真のおかげで事件が解決したことを告げた。
令子は写真を見て、岩城におめでとうと一言言い、涙を浮かべた。
午前9時5分頃、野崎は藤堂に、現場の捜査から引退し、警察学校の教官として後進の指導にあたることを告白した。
野崎は藤堂に、今回の事件の責任を取るということではなく、岩城のような優秀な刑事を一人でも多く育てることが、岩城のために自分ができる唯一のことだと思っていることを話した。
藤堂は野崎の意を汲み取った。
山村は野崎に感謝し、野崎が育てた刑事と一緒に勤務することを楽しみにしていることを伝えた。
メモ
*番組開始10周年記念作品で、カナダロケーション編の後編。
*番組放送開始からレギュラーとして在籍し、『太陽』の縁の下の力持ちであった長さんが、警察学校の教官に異動という形で退職。
*「ジプシー刑事登場!」から使用されてきたタイトルバックは今回が最後の使用。また、「スニーカー刑事登場!」から3年にわたって使用された「メインテーマ’79」も、オープニングテーマとしては今回が最後の使用となった。
*ロッキーが殉職しているが、タイトルバックの変更はなし。
*前編の回想のナレーションは長さんが担当している。
*ロッキーが生前に、地元の住人と楽しそうに撮影している写真を見て、感動する長さんがいい。
*ヘリコプターに乗ってから、ロッキーが殉職の前に着用していたジーンズの上下を着用するドック。
*英語を流暢に話せるジプシー。
*ロッキー刑事のテーマが随所に流れているのが、いい味を出している。
*馬を利用し、自動車のタイヤがスタックする砂丘の中に入ることで、ドックとラガーをまく杜丘。
*ゴリさんがカナダに到着し、長さん達と合流。
*ゴリさんに緑茶を差し入れる長さん。
*「警察官になって30年、これほど犯人を憎いと思ったことはない」と告白し、今までの中で最も犯人に対する怒りを燃やす長さん。
*目的の違いから長さん達と対立しつつも、最終的には全面協力するバージルがいい味を出しており、印象深い。
*あくまで杜丘を愛しているのか、杜丘の居場所を頑なに自白しようとしなかった北澤。
*長さんの「最後の激走」のフォームが華麗。
*凄まじい勢いで杜丘を叩きのめし、逮捕する長さん。「貴様」の声が、最も荒ぶっている。
*令子は今回を以てしばらく登場しなくなり、令子が一係に刑事として着任する「マミー刑事登場!」までお預けとなる。
*ラストの山さんと長さんの「世話になった」(長さん)、「いや、私のほうこそ本当に世話になった」(山さん)という会話、ボスの「長い間ご苦労さん」という台詞は、役柄を越えて素での感謝のように思え、非常に感慨深い。
*「長さんが育てた刑事と一緒に働く時を楽しみにしている」と言う山さんだが、「ブルース刑事登場!」で実現する。
*長さんはこの後、「ブルース刑事登場!」と「殉職刑事たちよ やすらかに」での2度の再登場を経て、PART2で捜査一係に復帰する。
*ジプシー登場編では、3週分が放送されていない。
*次回でボギーが着任し、すぐ後にゴリさんが殉職してトシさんが着任する。そのため、この時期は激動の時期となった。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
西條昭:神田正輝
竹本淳二:渡辺徹
岩城創:木之元亮(回想と写真出演)
原昌之:三田村邦彦
岩城令子:長谷直美
松原直子:友直子
北澤光子:髙瀬春奈
杜丘忠彦:小野進也
バージル刑事:キム・バス、ポール川瀬:鈴木弘道
立川義男:簗正昭、立川の愛人:高瀬佳子
協力:カナダ政府観光局、B.C.州政府観光省、CP Air、阪急交通社
石塚誠:竜雷太
野崎太郎:下川辰平
山村精一:露口茂
脚本:小川英、尾西兼一
監督:山本迪夫