第512話「婚約者の死」(通算第722回目)

放映日:1982/6/25

 

 

ストーリー

石塚と竹本は柔道の練習をしていた。

七曲署捜査四係刑事の松本英治(三ツ木清隆さん)に、本庁に昇進することが決定する辞令が下った。

石塚は松本からそのことを告げられて大喜びし、松本と一緒に酒を飲んでいた。

松本は秋、相原君枝という女性と結婚することになっており、9月4日に挙式することを決め、石塚に出席するように頼んだ。

夜、小泉巡査が巡回中、不審な物音を聞いて自転車を下りた直後、物陰に潜んでいた謎の人物に、麻酔薬を染み込ませた布を嗅がせられ、失神する事件が発生した。

小泉は本能的に抵抗し、謎の人物の腕に引っ掻き傷を残したが、拳銃を強奪されてしまった。

七曲署捜査一係が現場に急行した。

野崎は小泉の指の爪に血痕が付着しているのを発見した。

小泉の拳銃の銃弾は5発だった。

犯人はナイロンストッキングを覆面にした男で、背後から巡回中の小泉を襲撃しており、人相も特徴も一切不明だった。

鑑識の結果、ガーゼに染み込ませて小泉を失神させた麻酔薬が医薬用のクロロホルムであること、小泉の爪の間から採取した異物が、O型の人物の皮膚の組織の一部であることが判明した。

小泉はAB型だった。

藤堂が野崎と岩城に麻酔薬の入手経路、他の捜査員に現場付近の聞き込みを命令した直後、矢追公園で男女のカップルが撃たれるという事件が通報された。

死亡した被害者の女性は相原で、矢追警察病院に搬送された男は松本だった。

石塚は矢追警察病院に急行し、執刀を終えた松本を見送った。

執刀医(成田次穂さん)は石塚に、松本がかなり出血していたが、幸運にも2発とも急所を外れていたため、生命に別状が無かったことを説明し、摘出した銃弾を提出した。

野崎は相原が刑事の恋人だから事件に巻き込まれたのではないかと思っていた。

相原は城西病院に勤務する薬剤師で、清和薬科短期大学を卒業後、2年前(1980年頃)の4月に城西病院に就職していた。

相原は松本とは高等学校時代の同期生で、卒業後も交際を続け、9月4日に結婚披露宴を開催するはずだった。

犯人が使用した拳銃はニューナンブM60リボルバーで、小泉の拳銃だった。

石塚は晴子(水沢アキさん)に、松本と相原が挙式する予定で、2人の夢が一瞬にして崩れ去ったことを手話で伝えた。

石塚は松本が相原の死を知ったら、死よりも辛い思いをすることを心配した。

石塚は今回の事件で、家庭を持つことに恐れを抱いており、晴子が危険な目に遭うことを危惧した。

晴子は石塚が守ってくれると固く信じていた。

松本は意識を取り戻したが、石塚から相原の死を告げられた。

松本は今日に非番を取り、それに合わせて休みをとった相原と一緒にデートをしていた。

松本は新宿で映画を見た後、矢追公園を散歩し、ベンチで休んでいた時に、25m先の公衆便所の脇で黒く光る物を発見し、拳銃と認識し、咄嗟に相原を庇うようにして立った。

犯人は松本に向けて2発を発砲した後、相原に1発を発砲して殺害していた。

松本は変な方向に動かなければ、銃弾が自分の方向に集中していたはずであると後悔しており、犯人が自分を標的にして、相原がそれに巻き込まれたものであると考えていた。

松本は犯人の顔をはっきりとは見ていなかった。

松本は石塚に、深夜に男の声で3回、殺害を予告する脅迫電話が入っていたことを告白した。

松本は捜査四係勤務、暴力団担当で、恨みを買われることも多かった。

松本が捜査四係刑事として七曲署に赴任してから3年、その間に担当した暴力団関係の事件は97件だった。

暴力団員(森岡隆見さん)は石塚と竹本に追跡され、拳銃を発砲しながら逃走し、付近にいた女性を人質に取り、拳銃を突き付けた。

石塚は人質に取られた女性が晴子に見えたことから、暴力団員に突進し、拳銃を蹴り飛ばし、格闘で叩きのめして逮捕した。

松本は相原の遺体と対面し、自分がそばにいたのに守り切れなかったことを激しく悔やみ、号泣した。

石塚は矢追公園のベンチに花束を置いた。

石塚は松本の発言を思い出し、公衆便所の脇の森に立ち、犯人の視点からベンチを狙った。

ベンチは右側部分が木の枝でよく見えなかった。

松本は石塚に、相原が自分の左側に座っていたことを証言した。

石塚は岩城と竹本に、松本と相原の役割を演じさせ、ベンチに座らせた。

犯人からの位置では、松本を狙うには枝が邪魔になり、相原のほうが全身を捉えられ、狙いやすかった。

犯人の標的が相原である可能性が出てきた。

山村は松本への殺人予告の電話が、相原への殺意を松本のほうにすり替えるカモフラージュではないかと推理した。

石塚は藤堂に、自分が松本を狙うと仮定すると、狙撃場所にあの位置を選ばないと意見し、相原の身辺捜査を自分にさせるように申請した。

石塚と竹本は城西病院を訪れ、相原と同じ時期に就職した、薬局の薬剤師から話を聞いていた。

薬剤師は相原と、休日には一緒にショッピングや旅行に行く仲だった。

石塚は薬剤師の小西祐一(下村彰宏さん)の右手首に包帯が巻かれているのを見て、小泉の拳銃を強奪した犯人の腕に引っ掻き傷があることを思い出した。

石塚は小西と対面し、相原が狙われた可能性があるという推理を告げた。

小西は相原と同じ調剤部に勤務していたが、動機に心当たりが無かった。

小西は石塚に、一昨日に休暇を取ったことを指摘され、風邪で休んでいたこと、自宅でずっと寝ていたが、独身なのでそれを証明する人物がいないことを説明し、右手首の傷については、どこかのヤクザと因縁をつけられ、喧嘩の末にできた傷であることを答えた。

石塚は小西が吸った煙草の吸い殻を回収した。

小西の血液型が犯人の血液型と一致した。

小西は犯行当日に病院を休んでおり、アリバイが成立せず、薬剤師の立場上、クロロホルムの入手が可能だった。

状況証拠ばかりで、決定的証拠が皆無だった。

石塚は松本に面通しをさせることを提案し、山村から承諾された。

早朝、石塚は小西に、白樺荘から出勤する松本を面通しさせた。

松本は小西が犯人であるかどうか分からないと述べた後、石塚と岩城に矢追警察病院まで送迎された。

石塚は射撃訓練中、暴力団員に突撃した時、晴子を助けるためなら死んでもいいという決心で突撃したことを思い出し、松本が決死の覚悟で自分の手で犯人を逮捕しようと、面通しの時に嘘を吐いたのではないかと推察した。

石塚は矢追警察病院に急行したが、松本が30分前に病室から脱走していた。

石塚は松本の、傷が完治していない体では無茶であると思い、激しく心配していた。

岩城は藤堂に、松本が捜査四係の課長に辞表を提出し、手帳と拳銃を返還したこと、遺留されたが決意を変えなかったことを報告した。

松本は電話ボックスから、小西を呼び出した。

西條と竹本は小西を張り込み中、小西の動揺した態度を見ていた。

松本は小西の顔を記憶していた。

小西は電話を終えた後、行動を開始していた。

山村は柏木のサラリーマン金融を調査し、小西が競馬や競輪のギャンブルで、300万円の借金をしていたという情報を入手していた。

小西は利息の返済ができずに四苦八苦していたところを、戸川組組員の柿沼久(島村卓志さん)に目を付けられていた。

小西は薬品の管理の立場を悪用し、覚醒剤の原料を柿沼に横流ししていたが、それを相原に気付かれていた。

相原は小西の将来を思い、公表を控えていたが、戸川組の圧力で定期的に原料の調達を迫られた小西に抹殺されていた。

竹本は小西を尾行し、藤堂に、小西が戸川組の事務所に入ったことを報告した。

松本は小西の背後に戸川組がいることを知らないため、危険だった。

小西は柿沼に、松本から3000万円を要求されたことを打ち明け、助けを求めた。

柿沼は竹本の張り込みに気付いた。

石塚が竹本と合流し、戸川組の事務所に踏み込んだ時には、室内には組員(三浦康治さん)が1人いるだけだった。

組員は小西のことを否定したが、石塚と竹本に詰問された。

松本は小西を資材置き場に呼び出し、小西が現金入りの鞄を取り出した直後に突進し、小西が隠し持っていた拳銃を奪い取った。

松本は小西に銃口を向けた直後、柿沼と3人の組員に拳銃を向けられ、拳銃を捨てた。

石塚は組員を激しく詰問し、小西の居場所を聞き出し、竹本に藤堂への報告を任せ、単独で急行した。

松本は組員に激しい暴行を加えられ、銃撃の際にできた傷から出血した。

午後2時55分、柿沼と小西と組員は松本を、南郷建設の作業員控室に連れ込み、手を縄で拘束し、時限爆弾のタイマーを5分にセットした後、作業員控室を立ち去った。

石塚は資材置き場に到着し、ドラム缶に飛び込んで銃撃を回避した後、血痕が地面から作業員控室まで続いていることを発見した。

石塚は作業員控室まで疾走し、扉を破って松本を救出した。

作業員控室は大爆発を起こした。

松本は相原を殺害した小西をこの手で逮捕したいと思い、行動に出ていた。

石塚は資材の陰に松本を隠し、2人の組員の拳銃を撃ち落としたが、途中で、1人の組員が松本を射殺しようとしていることに気付いた。

石塚は表に出て組員の拳銃を撃ち落としたが、柿沼に左腕を撃ち抜かれてしまった。

石塚の拳銃の残弾数は残り2発だった。

柿沼も予備のマガジンで銃弾を補充した。

石塚は、柿沼と小西を引き付けようとする松本を制止した後、松本の出血が酷くなっているのを見て、わざと広場の中心に出て、柿沼と小西を引き付けた。

石塚は後ろを振り向き、自分を射殺しようとした柿沼の拳銃を撃ち落とし、小西に銃口を向けた。

小西は拳銃を前方に投げたが、再び拾おうとしたところを石塚に阻止され、格闘の末に殴り倒された。

西條と岩城と竹本が資材置き場に駆けつけ、柿沼と組員を逮捕した。

松本は石塚から手錠を手渡され、小西を逮捕し、石塚に感謝した。

石塚は晴子とデートをしていた。

 

 

メモ

*「人質を返せ!」と同じく、ゴリさんの後輩が昇進を前にして悲惨な目に遭う回。(同じ峯尾氏の脚本)

*若い男を引き連れての、ゴリさんと戸川組の銃撃戦は「石塚刑事殉職」を思い出す。布石になった?(そちらも事件に覚醒剤が関与している)

*ゴリさんの柔道着姿は久々。

*三ツ木氏は約5年ぶりの出演だが、以前に出演した「孤独」、「ゴリ、爆発!」と同じくゴリさん主演作に出演している。「ゴリ、爆発!」とは似たような役柄で、重傷を負ったが、今回は生存した。

*作業員控室の大爆発は炎がかなり大きく、大迫力。銃撃戦と、「青春のテーマ」バックの格闘もかなり見応えあり。

*ゴリさんはロッキーに言わせれば「マイホーム党」らしい。

*ゴリさんにデートのことを積極的に尋ねるジプシー。だいぶキャラクターが軟化してきた。

*今回は「真相は……?」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

麻生晴子:水沢アキ

松原直子:友直子

松本英治:三ツ木清隆

小西祐一:下村彰宏

矢追警察病院の執刀医:成田次穂、柿沼久:島村卓志、戸川組組員:三浦康治(三浦伸)、松田茂樹、三上剛(後の三上剛仙)、手話指導:大槻年巳

植村由美、佐藤知多子、岸本功、鈴木真美子、暴力団員:森岡隆見

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:峯尾基三

監督:竹林進