第519話「岩城刑事 ロッキーにて殉職」(通算第727回目)

放映日:1982/8/20

 

 

ストーリー

岩城は長年の夢だったロッキー山脈登山を実現させるため、休暇をとり、カナダに赴いていた。

岩城は走行中の一般人の乗用車に乗せてもらった。

一係室に、中原重信という男が自宅の応接間で殺害されているという内容の通報が入り、七曲署捜査一係が出動した。

中原は中原興業の社長で、金庫を開けたところをゴルフクラブで頭部を殴られて殺害されていた。

中原の死亡推定時刻は昨夜の午後10時から午後11時の間だった。

発見者は中原の秘書の寺田であり、応接間に客を接待した痕跡があった。

寺田は中原が誰と会っていたかを知らなかったが、石塚と山村に、中原が約半月前、単独でシカゴに旅行に行った時から、金のことで苛立ち、挙動不審になっていたことを証言した。

岩城は乗用車を下り、船に乗った。

中原は3日前、銀行から5000万円を直接下ろしていたが、用途不明で、金庫の中からも発見されていなかった。

中原宅から採取された指紋から、貿易商の杜丘忠彦(39歳)(小野進也さん)の指紋が発見された。

杜丘は2年前(1980年頃)に交通事故を起こしていた。

西條と竹本はアパートの杜丘宅の隣人の主婦から、杜丘が頻繁に家を留守にすること、シカゴで勤務していることを聞いた。

杜丘は強引に独立したのが裏目に出て、ここ数年、多額の借金に苦しんでいた。

石塚と原が3日間の海外渡航者リストを調査した結果、杜丘が一昨日の夜、本名でカナダのバンクーバーに高飛びしていたことが判明した。

藤堂は西條と竹本に、バンクーバーに飛び、岩城と合流するように命令した。

岩城は山小屋に到着後、バンクーバー市警の警察官から、杜丘の事件のことを告げられた。

FBIのバージル刑事(キム・バスさん)が乗用車で、アメリカとカナダの国境を通過していた。

西條と竹本はバンクーバー市警に到着し、警察官に、市内のホテルとモーテルを調査するため、リストと地図の提出を求めた。

岩城はロッキー山脈登頂寸前に、バンクーバー市警にUターンしていた。

岩城は西條から拳銃を受け取った。

岩城は竹本と一緒に捜査中、バージルの尾行に気付き、曲がり角で対峙した。

バージルは岩城の質問に答えず、竹本を襲撃して逃走したが、岩城との格闘の末に投げ飛ばされた。

バージルは岩城の不意をついて、岩城に拳銃を突き付け、竹本に拳銃を捨てるように命令した。

バージルは岩城と竹本が杜丘の友達であると思い込んでおり、岩城と竹本に杜丘の居場所を教えるように要求した。

バージルは竹本から警察手帳と手錠を見せられるも、自分の身分がFBIの刑事であることを教えた。

岩城と竹本はバージルから、事件の全貌の情報を入手していた。

杜丘はシカゴで、ある非合法な賭博組織に雇われており、約3年前(1979年頃)から、日本人の客引きと借金の取り立てを引き受けていた。

中原はシカゴでの賭博の客で、借金をつくったことで、杜丘からその支払いを強要されていた。

杜丘は以前から大金を掴むチャンスを待っており、中原を殺害し、5000万円を持ち逃げしていた。

バージルが杜丘を捜索していたのは、賭博組織を壊滅させるため、杜丘の証言が必要であるからだった。

西條はバージルとお互いに情報交換できるように申請することを決定し、岩城と竹本に、ホテルとモーテルのチェックを指示した。

石塚はサラリーマン風の男から、杜丘の恋人が北澤光子(26歳)だったという情報を突き止めた。

北澤はアスレチッククラブにて勤務していたが、3年前に杜丘と別れ、カナダに飛び立っていた。

北澤の元同僚は野崎と原に、北澤が現在、バンクーバーの日本料理店「キッシン」で勤務していることを教えた。

北澤(髙瀬春奈さん)は杜丘がカナダに来ていたことを知らず、岩城と竹本から、杜丘が殺人を犯した疑惑があることを告げられ、否定した。

岩城は西條と一緒に北澤を尾行し、密かに撮影した。

北澤はポール川瀬(鈴木弘道さん)という男と密会していた。

野崎と原もカナダに到着し、竹本と合流した。

岩城は野崎に、一歩手前でロッキー山脈から引き返したのが悔しかったが、カナダに来て良かったと思っていることを告白した。

岩城は現地の人々を見ていて、山や自然を愛する気持ちが人命を愛する気持ちに通じるということを理解し、刑事の仕事を続ける自信を改めて持っていた。

令子(長谷直美さん)は石塚から、岩城が殺人事件の捜査で登山をせず、バンクーバーに戻っていることを告げられていた。

令子は今朝、岩城の湯飲みを落として、割っていた。

北澤は岩城と竹本の尾行に気付き、大混雑している市場の中を通り、モーターボートを単独で運転して逃走した。

竹本は北澤の追跡中、バージルにぶつかったことから、バージルが追跡を妨害したと思い込み、憤慨した。

北澤は杜丘と再会した。

竹本はバージルが自分達に協力をする気が全くないと思い、苛立っていた。

バージルは杜丘から証言を取り、賭博組織を壊滅することだけを考えていた。

竹本の捜査で、約2時間前に杜丘と北澤がキャンピングカー「DBC-333」をレンタルしたことが判明した。

杜丘と北澤のキャンピングカーは、ホープ付近のガソリンスタンドでガソリンを補給し、通過していた。

ホープで道は1号線と3号線に分岐し、1号線はキャッシュクリークで北に行く道と東に行く道と分岐し、3号線は5号線に繋がっていた。

杜丘と北澤はロッキー山脈に向かう可能性があった。

ロッキー山脈へ向かう道では無線が届かないため、行く先々では電話連絡をすることになった。

杜丘と北澤のキャンピングカーがガソリンを補給し、北のバーノンに向かったという情報が入っていた。

バーノンを北上すれば、1号線にぶつかり、その先がロッキー山脈を経て、バンフとなっていた。

野崎は飛行機でカルガリーへ飛び、逆方向からバンフに向かうことを決定し、岩城には1号線で西條と合流するように指示した。

岩城と竹本はカムループスに直行することにし、杜丘と北澤を山に逃げ込む前に逮捕しようとしていた。

岩城と竹本は、西條と原と合流した。

杜丘と北澤はバーノンから先に入っていなかった。

西條は道が一直線であるため、杜丘と北澤がバンフに行ったものと推測していた。

岩城は杜丘と北澤が警察の裏をかいたものと直感し、遠回りを覚悟してこのまま北上し、ジャスパに向かうことを決めていた。

野崎はカルガリーに飛び立ったが、バージルに尾行されていた。

西條と原は、杜丘と北澤が1時間前にガソリンスタンドで給油していたことを突き止めた。

西條と原は途中で野崎の覆面車とすれ違い、合流した。

杜丘と北澤はバンフリーに向かっておらず、岩城の直感が的中していた。

午後11時、藤堂は昨夜が当直だったのにもかかわらず、野崎の、杜丘逮捕の第一報を聞くため、帰宅していなかった。

山村と石塚も藤堂に同感し、一係室に残っていた。

令子は裕太と陽子を寝かせようとした時、岩城の割れた湯飲みのことを思い出し、岩城の捜査が終わっていると自分に言い聞かせていた。

岩城はジャスパに向かう途中、杜丘と北澤のキャンピングカーが駐車場に停まっているのを発見し、竹本に街の調査を任せ、山に急行した。

竹本は野崎と西條と原に、杜丘が街にいないことを報告した。

岩城はロッキー山脈を捜査していた。

野崎と西條と原と竹本、バージルもロッキー山脈に駆けつけた。

岩城は、ロッキー山脈を登っている杜丘と北澤を遂に発見し、拳銃を突き付けた。

杜丘は、北澤が岩城を食い止めている隙に、拳銃を取り出し、発砲して抵抗した。

岩城は杜丘の発砲を回避している途中、付近にリスがいるのを発見した。

杜丘は岩城に向かって、点火したダイナマイトを投げてきた。

岩城はダイナマイトの爆発からリスを守るため、岩陰から飛び出してダイナマイトを回収し、火を消すことには成功したが、その時に杜丘に腹部を3発撃たれ、倒れ込んだ。

杜丘は北澤を見捨て、逃走した。

岩城は駆けつけた野崎と西條に、杜丘を追跡するように懇願した。

岩城は野崎から、リスなどの動物達が無事であることを伝えられ、ロッキー山脈の大自然を守ったことを称賛された後、野崎と西條に看取られて絶命した。

原と竹本は、野崎の絶叫を聞き、岩城の死亡を知った。

野崎は藤堂と山村と石塚に、岩城の死を連絡し、謝罪した。

令子は山村から岩城の死を告げられ、山村の帰宅後に号泣した。

山村は帰り際、アパートの階段で令子の号泣する声を聞いていた。

野崎と西條と原と竹本は、岩城が死亡した場所に木碑を建て、花を手向けた。

令子は一係室を訪れ、岩城のロッキー山脈縦走を実現させたいという思いから、藤堂に、岩城を風葬にして、ロッキー山脈の上から岩城の遺灰を捲くように願い出た。

 

 

メモ

*番組10周年記念作品で、カナダロケーション編の前編。そして、5代目新人刑事のロッキーが殉職。

*前編時点でのカナダの到着組は、長さん、ドック、ロッキー、ジプシー、ラガー。三田村氏は当時、かなり多忙だったはずだが、海外ロケーションに参加している。

*ロッキーの在籍期間は5年で、新人刑事としては歴代最長となった。結婚、子供の誕生を経て、新人刑事から中堅の役割になるという、今までにない役割だったこともあり、今回での殉職は残念。

*「カナダははるかカナダ」byドック

*「この旅行でロッキーはきっと生まれ変わってくる」と発言する山さんだったが、別の意味で生まれ変わってしまうことに…

*前回の海外編である「逃亡者」、「追跡者」の段階では英語が話せなかったロッキーだったが、今回は多少話せるようになっていた。

*「何が面白いのか、山登りなんて」と、ロッキーがいない間に毒舌を吐く令子。

*外国の大自然がよく似合う木之元氏。

*ドックとラガーと合流後、登場編の時期に着用していたジーンズの上下に着替えるロッキー。登場した時期と比べると、髭がかなり綺麗に剃られ、整えられたことがよく分かる。

*現地の外国人に日本語で質問し、無視されるラガー。

*「キッシン」で流れていたのは、八代亜紀氏の「雨の慕情」。

*ジプシーがラフな服装で捜査をするのは、今回のカナダ到着前が最後となり、以降は背広を着ての捜査が定着する。

*長さんとロッキーの会話が感慨深い。

*ロッキーとラガーの追跡を妨害したバージルに対し、自分達とは目的が違うので、協力しないのは当然と、バージルの意を理解するジプシー。

*大自然を守るため、ダイナマイトの火を消そうとしたところを杜丘に撃たれ、絶命したロッキー。これまでの回でかなりの頑丈さ、タフネスさを発揮していただけに、若干あっけなさも感じる。

*瀕死のロッキーに、「せっかくロッキー山脈まで来たんじゃないか」と叫ぶドックと、涙ながらにロッキーの名前を絶叫する長さんが胸に響く。

*ロッキーの殉職シーンはこの後、マミーの主演作でことあるごとに挿入されている。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

西條昭:神田正輝

竹本淳二:渡辺徹

岩城創:木之元亮

原昌之:三田村邦彦

 

 

岩城令子:長谷直美

松原直子:友直子

北澤光子:髙瀬春奈

杜丘忠彦:小野進也

バージル刑事:キム・バス、ポール川瀬:鈴木弘道

金尾哲夫、寺内よりえ、三沢もとこ、伊藤健、三上剛(後の三上剛仙)

協力:カナダ政府観光局、B.C.州政府観光局、CP Air、阪急交通社

 

 

石塚誠:竜雷太

野崎太郎:下川辰平

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、古内一成

監督:山本迪夫