講演ネタ レント2 | 秋山のブログ

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次はどのような形でレントが拡大するか説明します。
まずどのようにして経済が成長するのか以前説明したのを思い出してください。
知識や技術などが進歩し、一人当たりの生産能力が増え、多くを供給した分収入が増えます。ところが胃袋に限界があるように生産物ごとに大凡の需要の限界も存在しています。当然人が余ってくるわけです。そこで失業が生まれるわけですが、失業者は新たな仕事を見つけなければいけません。それが円滑にいけば、経済はどんどん成長していくわけです。
ところがこれは必ずしもうまくいきません。一つには皆が望むような仕事が新たに見つからないといったこともあるでしょう。しかし成長がうまくいかない最大の理由は、そのような仕方ないことではなく、レントの増大によるものであって、政策等によってある程度防げる、又は間違った政策によって助長されてきたことなのです。
より多く生産してもそれによって収入が増えなければ、人々が移った別の新たな産業の生産物を購入する余力が生まれません。経済全体から見れば、借り入れが増えてマネーストックが増大する必要がありますし、個々の国民から見れば多く生産した分賃金が増えなくてはいけません。より多く売れてもそれが消費者でもある労働者の手に渡らずに、金庫に仕舞いこまれたり、証券になるようであれば、需要が増えないからです。
現実の例で説明してみましょう。
米国の大恐慌の切っ掛けとして、農業の進歩がありました。より多く生産できるようになったのです。ところがそのため農作物の価格が大幅に下落しました。供給過多はもちろん価格下落の大きな要因です。ただ他にも示唆に富む現象が観察されています。それは農業に関わる労働者が失業したり、賃金の大幅な下落が観察されたことです。売れると予想される量を供給するために必要な労働力が減れば、失業者が生まれます。労働者の分のコストが減って儲かってもそれを労働者に還元する動機は資本家にはあまり存在しません。失業者が増えたことで、さらに安く雇うことも可能になりました。一方、失業者が増え、消費者でもある労働者の収入が下がっているのですから、モノも売れなくなります。デフレスパイラルも同時におこったのでした。
生産能力の増大は、順調に成長に繋がることもあれば、不況のもとになることもあります。生きた時代の状況によって、好意的に捉えていたのがアダムスミスであり、否定的に捉えていたのがマルクスです。しかしこのようにどちらが正解ということはありません。近年の実証研究が証明しているように、格差が経済成長を妨げる、すなわちレントの増大こそがどちらになるかのポイントですので、これに注意を払って政策を考えることが必要になってくるでしょう。
特に注意しなくてはいけないことは、目先の利益を望む資本家によって、間違った理論のプロパガンダがおこなわれており、それが世界的不況の原因になっていることです。現在主流派となっている新古典派経済学は、この片棒を担いています。
その基本的な手口は、経済は自然に最適な状態になるという思想です。アダムスミスの見えざる手という表現が、アダムスミスの本来の趣旨をはずれて、過剰な形で主張されています。実証上はむしろ否定的であるにも関わらず、生産能力が上がれば需要は自然についてくるかのような前提になっています。非自発的失業は存在せず、見かけても僅かな景気の変動によって発生したものに過ぎないなどという馬鹿げた話になっています。
ですから経済学はプロパガンダを排したエビデンス中心のものに変わっていく必要があるでしょう。