第二次世界大戦後のマクロ経済学 | 秋山のブログ

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ネットで色々調べていたら「第二次世界大戦後のマクロ経済学と金融理論の変遷」という平山健二郎氏の論文を見つけた。以前書いた経済学史以降の話にあたるが、かなりよい内容であると思われる。今回これを取り上げてみたい。

 

第二次世界大戦後の経済の流れとして

『1. ケインズ経済学の時代
2. マネタリズムの台頭と席巻
3. マネタリズム・マークII(合理的期待学派)の登場
4. 1980 年代以降のニューケインジアンと新古典派マクロの勃興
5. 2000 年代の新たなコンセンサス
6. 世界同時不況の激震』

といった経過になっていると筆者は書いている。これには異論のないところであろう。時代の変遷にともない、それぞれの理論が否定され、別の理論が台頭してくる様子が説明されている。

 

ケインズ経済学一色の時代から、マネタリストが反対勢力として出現し、対立しながら、それぞれ変化していった。そして1990年代になって両陣営ともに『「マクロ経済学のミクロ経済学的基礎付け」という意味で統一されたアプローチ』をおこなうようになった。その結果、『対立と混乱から抜け出し、マクロ経済学は一つに収束した』と考えられて、『学界では大きな事業を成し遂げたという達成感に満ちていた』のだそうだ。当時の経済学者の自信満々のコメントが取り上げられているが、その後リーマン・ショックがおこり、そのマクロ経済学が役に立たないことを白日に晒してしまった。

 

この論文を読んでで気がついたことは、現実に成果を出しているのがケインズ経済学に基づく政策だけであるということだ。第二次世界大戦後、経験的には反動不況に見舞われると思われたいたところ、ケインズ経済学の処方によって発展と成長を謳歌することができたことが書かれている。

ケインズ派を否定し、主流派に踊りでたフリードマンであったが、彼の主張する政策が何か成果を得たことはない(彼の主張自体は、正しいこともあれば誤りもある)。そしてその後の学派も現実的な成果を出した様子はない。

一方、理論に関する自信だけはすごい。例えば、『セミナーの途中で一人の助教授がルーカスに「非自発的失業」について質問した。ルーカスは「イェールでは未だに非自発的失業などとわけのわからぬ言葉を使う人が居るのか。シカゴではそんな馬鹿な言葉を使うものは学部の学生の中にも居ない」と答えたものだ。』といった記述がある。また、ニューコンセンサスに関してはこんな記述がある。『この 30 年の間にマクロ経済学は大きく変化した—–しかもそれは良い方向にである。マクロ経済学は今や確固たる経済学の原理に基づいている。』とある。

 

この最悪の状況をもたらしたのは、間違いなくルーカスである。彼が経済学を誘導した方向、ミクロ経済学的基礎付けやルーカス批判にはマイナスの要素しかない(他にもたくさんある)。この論文にはポストケインジアンについての記載がないが、ルーカスによる異端派排除がいかに強かったかを物語っているだろう。