非正規雇用と失業 | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

アベノミクスで就職状況がよくなってきたことをもって、現在人手不足であると誤解している人が増えてきたように思われる。ここでまた説明しておこう。

 

人々は働いてお金をもらうが、その分配には必ず偏りが出る。すると使い切れない(需要飽和)、若しくは貯める誘惑ゆえに使わない人間が出てくるだろう。その一方、お金が足りないために使うのを我慢しなくてはいけない人間も出てくる。その結果、有効需要不足のために、供給力があるのに供給しないという状況に陥る。逆に、国が介入するなど、何らかの方法で需要が増大するならば、供給される。これが反セイの法則である。人々の生産性が高い現代においては、よく成立する。

需要不足の状況でどのようなことが起こるかと言えば、全員が働く必要がないので失業が発生する。もう一つの可能性は、一人当たりの生産性を下げて多くの人間を使う。ワークシェアリングである。非正規雇用によって、労働時間の短い人間を雇うことは、これにあたるだろう。すなわち、ワークシェアリングがなされている状況であれば、失業率が高い状況と変わらないということだ。

失業の問題点の一つは、労働者の賃金が下がることだ。雇用者(株主も)の取り分が多くなるので、分配の偏りはより大きくなり、やはり有効需要は縮小するだろう。非正規雇用化も賃金の低下が大きく存在する。正職であれば会社が支払うはずの社会保険や退職金、ボーナスなどがない分、計算される時給に差がなくても、大きな差がある。また、繁忙時に利用される非正規雇用に比べて、正職は忙しさに波があって忙しくない時も同じ賃金をもらっている。それを考えれば、非正規雇用の賃金はかなり低いと言えるだろう(医師の場合のみ、非正規の方が時間あたりの賃金が高いが、これが本来のあるべき姿だと思う)。

経済成長を考える上で、生産性を向上させるためには、消費されるアテがある必要がある。生産する能力が増大するのに比例して、収入も増大する必要がある。消費者の大多数を占める労働者の賃金が上昇していかなくてはいけない。求人倍率が何倍の職業があろうが、賃金が上がってこないということは、多数の失業者がいるか、ワークシェアリングがおこなわれているからということだろう。求人倍率が高い職場というのは、条件が悪いから高いのであって、さらに言えば条件が悪いから他職からの移行や育成も進まずずっと高いままだろう。現在求人倍率が高い業種がある一方で、希望者が殺到する求人だって存在しているのだ。国民の賃金がどんどん上昇していく局面になるまでは、人手不足と考えるべきでは全くないだろう。

 

以上のことを理解していれば、金利を上げてインフレを抑制するという政策がいかに馬鹿げているかも理解できるだろう。労働者の取り分が減り、投資家の取り分が増大する。確実に需要抑制になる。消費者の収入が抑制されるため、当然インフレも抑制されるが、景気も悪化し、経済成長も抑制される。景気の悪化、失業率の増加は、金利を上げればほぼ確実に観察できることだ。ところが、こんな馬鹿げた主張がなされる背景は、非自発的失業は存在せず、需要不足も存在しない馬鹿げた思想(長期的に成り立つとしている)によるものである。もちろんそうであるエビデンスはどこにもない。

以前マクロ経済政策の目的に、インフレの抑制が入っていることは誤りだと説明した。それをさらに進めて、その代わりに入れるべきことを述べよう。その大事な目的は、一般国民の収入の増加だ。思い返せば、高度成長期の内閣は所得倍増を謳っていたが、それはまさに正しかったのである。