中国の国家資本主義 | 秋山のブログ

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インドネシアにおける高速鉄道の受注競争において、日本が中国に敗れたことは有名なことだ。中国は日本がとても出せない、即ち大きく赤字になるような条件で高速鉄道を受注した。この件に限らず、中国はアジアでの受注で、日本がとても太刀打ち出来ない条件を出してくるそうだ。これは中国人の人経費が安いからとか、手抜き工事だから(しばしば誤魔化しもするだろうが)等の理由で可能なわけではないだろう。理由の一つとして、中国が約束を守ることに無頓着であるということがある。インドネシアの高速鉄道が頓挫しており、ゴタゴタしていることは有名だ。そんなことは日本人にはとても真似できることではないし、真似すべきでもないだろう。もっともこれには限度があるし、彼らにも面子がある。

利益度外視の入札ができる最大の理由は、それらが個々の企業のビジネスであるだけでなく、中国政府の事業であるということだ。こんな風に考えれば分かりやすいだろう。何らかの交渉のために他の国に資金提供する気があるとする。しかしその事業自体を提供する国自体が請け負えば、失業や供給力の余剰がある限り、タダみたいなものになる。嘗て日本がODAでやっていたことだ(日本の場合贈与比率が低いので、阿漕な要素が強かった)。中国は自国の失業対策や自国の存在感の増大のために、国有銀行が国有企業に融資して採算の合わない事業をおこなっていると考えれば、辻褄が合うし、中国が損しないことも分かるだろう。

 

この話を書いていたら、日経BPの新しい記事で、『中国「国家資本主義」の抑止策が日本主導で始動』という記事が出ていた。この記事の重要なポイントは、『日本をはじめ先進国は、経済協力開発機構(OECD)のガイドラインによって、公的資金による開発援助は自国企業から調達と結びつけないという、いわゆる「アンタイド(ひも付きにしない)」が義務付けられている』というところと、『これに縛られない中国は、中国企業からの調達を「タイド(ひも付き)」にするのが通常』というところだ。これをみると、単純に中国けしからんという考えになる人もいるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。最初のルールは本当に正しいのか?ひも付きで貸すというなら禁止されることもあり得るが、お金も出すというなら出さない奴がとやかく言う筋合いのものではないはずだ。援助される国にとってマイナスなことはほとんどない。このルールは、どこかの国がどこかの国の援助を決めたならば、そこからも上前をはねようという多国籍企業の思惑によるものだろう(しかも企業は援助の財源を、一般国民に求める)。

中国がやっていることは、嘗て日本がやっていたことでもある。国家資本主義の定義は、確固たるものがないが、日本の高度成長期の修正資本主義、米国が繁栄を謳歌したケインズ主義はその範疇に入るだろう。新自由主義と比べてみれば、その国の国民にとって好ましいのは、国家資本主義だろう。トリクルダウンだとか、高度成長期のように発展しないのは少子高齢化のせいだとか、エビデンスのない、話にならないような嘘をバラ撒き、間違った政策に誘導した新自由主義こそ災厄であり、現在の状況を作っている。このまま日本が間違った政策(対外企業優遇、財政均衡)を継続するのであれば、日本人のあらゆる努力に関係なく、制度的な制約で中国の後塵を拝するだろう。

 

中国がいかに上手く立ちまわっているか、ここ何回か書いたが、最後にそれをさらに裏付けるレポートを見つけたので紹介する。「中国企業の海外進出の展開」というレポートである。日本が多大な技術援助をしていた時代とは全く違った様相である。私は危機感を感じた。是非一読されたい。