《前編》 より

 

【言いわけがフローを止める!】
 言いわけとは、自分という人間は自分の心の状態を自分ではなく、環境や経験や他人に任せて、それ次第で決まってしまう人間なんだという宣言に他ならない。(p.91)
 言いわけが定常化している人は、「認知機能」が、自分自身の内発的営為による目標設定には向かわず、目標を阻害するのはいつも外部である、という“マインドセット”になってしまっている。不平不満や溜口ばかり話している茶飲み友達と一緒の時を過ごしているようでは、低迷確定というド壺に嵌った人生になってしまう。
 Excuse(言いわけ)の反対は No Excuse と言うが、それは「言いわけしない」ということではなく、また「すべて自分のせいにする」ということでもない。
 No Excuse とは、「自分の心は自分で決める」というライフスキルの原点なのだ。つまり、自分の集中は自分で作る。(p.93-94)
 言いわけ人間は、往々にして短慮なので、本を読んでいても結論だけを知りたがる。つまり、この本のような構造化された全体こそが結論である著作を読解できないのである。だから、人に意見を求めてばかりで、自分自身の中に学びとしての蓄積が殆どない。

 

 

【言葉の選択というライフスキル】
 言葉の選択と言えば、イチロー選手を思い出す。イチロー選手がインタビューにゆっくり答えているのは、みんなにどう思われるかではなく、自分の耳にどんな言葉を入れて心の状態をフローに保つのかということに集中している証だと思う。・・・中略・・・・
 海外のプロアスリートたちが、メディア対応のためのメンタルトレーニングを受けているのも言葉の影響を熟知しているからだ。
 ライフスキルの高いアスリートたちが、インタビューに言葉を選びながら対応している姿勢からも、言葉の選択というライフスキルを学んでほしい。(p.100)
 一般人として言葉を選ぶべきなのは、他人や社会に対する道徳的な良識であるのは言うまでもないけれど、脳機能という視点にまで掘り下げて言葉の効果を理解しないと、言葉と脳が生み出す全体認識へは至れない。
 どのような言葉を誰に向かって発しようと、発した自分自身の脳はそれを聞いている。
   《参照》   『「朝の習慣」を変えると人生はうまくいく!』  佐藤富雄  青春出版社
             【大脳の特性】

 

 

【腹式呼吸】
 腹式呼吸は、口から吐いて鼻から吸う。吸うのが1で、吐くのが2の割合でやる。基本は3秒吸って6秒吐く。
 これをマスターすると、どんな時でもリラックスして「とらわれ」から解放され、フローを生み出すことができる。
 この時に意識するのが、武道でも言われる、ヘソ下10センチほどのところにある丹田というところだ。(p.107)
 呼吸法は、表面意識の意識下に潜行する技法として、古神道、密教やヨーガなどで実践されてきたけれど、その機能目的を解明した苫米地さんなどの近代の脳機能学者さんたちの成果を受けて、スポーツ心理学などでも活用されているはずである。
    《参照》   『脳と心の洗い方』 苫米地英人 (フォレスト出版) 《前編》
              【変性意識:呼吸法のカラクリ】
    《参照》   『頭の回転が50倍速くなる脳の作り方』 苫米地英人 (フォレスト出版) 《前編》
              【ストレス解消法】

 

 

【笑顔】
 外部の状況に支配されることなく、自分の心をフローに傾けるために、ライフスキルを動員しながら、笑顔でいるというのは素晴らしいライフスキル脳の力なのだ。
 単に、「笑顔がいい」と言っているのではない。状況に支配されることなく、自分で自分の表情を作って、心をフロー状態にして生きる。 (p.110)
 言葉、呼吸についで重要なのが表情である。
 「外部の状況に支配されない」というのは、崇高な“叡智”である。
 外部状況が悪ければ悪いほど、逆に、「笑顔をたやさず、心を持ちあげて歩く」。
 同一空間に遍在している多次元宇宙存在たちは、その様な個人の在り方を見てサポートしてくれているかもしれないけれど、彼らを認知できず仮にサポートがなかったとしても、自分で自分を助ける self help の脳機能は、全ての人々に備わっている。
 北京オリンピックのソフトボールで金メダルに輝いた上野由岐子選手は、終始笑顔でいたけれど、400球を超え、爪が割れ、股関節も亜脱臼、打たれたら金メダルを失うという状況下で、あの笑顔を続けていたのだという。
 一般的にどんなことをしていても、深い呼吸でかつ笑顔でいればフロー化が起こるのでパフォーマンスの質は高くなる。
 何をするにしても、その時の呼吸と表情を意識してほしいと思う。 (p.205)
    《参照》   『脳を活かす生活術』 茂木健一郎 (PHP)
              【表情筋と脳の回路】

 野球などで、肝心な時に打てなくても、表情を変えずにベンチに帰ってくる選手が増えたのは、スポーツ心理学に通じた、著者のようなトレーナーからの指導を受けているからだろう。
 「悔しさをバネに」、という常套句を口にする人が少なくないけれど、悔しさはポジティブなものではないから、脳機能の視点でいえば、バネにならないはずである。

 

 

【自分を信じるか疑うか】
 信じるか疑うかは、実は根拠や結果ではなく、自分で決められるのだということを多くの人は忘れている。・・・中略・・・。
 もちろん、認知でつくり出す、信じるや、疑うということを否定しているのではない、・・・中略・・・。
 自分に対しても実は同様だ。自信のある人は、根拠の前に「自分を信じる」という、脳の機能を最大限に発揮しているライフスキルの持ち主だ。
 それは、フロー状態を生み出し、パフォーマンスの向上をもたらす。その結果、根拠や結果を作り出す確率が高まり、また認知脳による自信をもたらすことができるのだ。
 どちらを先に大事にするかはあなた自身にかかっている。 (p.127-128)
 「根拠なき自信」という言葉は、まさに「ライフスキル機能」としての技なのだということ。
 「認知機能」は、出た結果を基にしないと「自信」を生まない。
 結果自体は、所詮100%安定したものではない。「認知機能」に依存する自信は不確かである。
 だったら、最初から「ライフスキル機能」という脳機能に全託したほうが賢いというもの。
 「根拠なき自信」を先行させて、「努力」を後付けさせればいい。
 「夢をもとう」というスローガンも、長ずるに及んで「しらけた標語」のように思ってしまうのは、認知脳優勢になってしまっているからである。
 「ライフスキル機能」と「認知機能」、この二つを明確に区分けして理解しておくことが必要。

 

 

【今に生きる】
 誰しも「今に生きることが大事だ」とは知っているはずだ。しかし、それだけでは今に生きられないだろう。認知脳が常にそれを邪魔しているからだ。
 そこで、常に「今に生きる」「今を大切にする」「今に全力」などの言葉を自分に唱えて、今に生きるという思考の選択を脳の中に形成していかなくてはならない。(p.133)
 要は、「認知脳は、時間という幻想に従って機能してしまっているから、そこから出ようよ」ということ。
 スピリチュアルな叡智は、「中今に生きる」とか「ただいま」という言葉で表現されているけれど、認知脳が生み出す時間の観念を破るためには、下記のバシャールの動画なんかを、クリップ留めしておき、定期的に繰り返し見るといい。
    《参照》   【バシャール】 ワクワク 無時間のセオリー
    《参照》   『空 天翔ける歓喜の弥栄』 Mana (三楽社) 《後編》
              【最大のマジック】

 

 

【フォワードの法則】
 「与える心がパフォーマンスを上げる」という章の中に書かれていること。
 与えることで、自分自身にもフロー(わくわく)状態がやってくるという法則だ。それは、与えたら相手から返ってくるからではない。「与える」ということそのものが、自分をフロー状態に傾けるという人間固有の崇高な脳の力だ。(p.161)
 ギブ&テイクではなく、ギブ&ギブのほうが何もかも上手くいく。
    《参照》   『ギブ&ギブンの発想』 佐々木かをり (ジャストシステム) 《前編》
              【ギバーかテイカーか】
    《参照》   『ヒッチハイク女子 日本列島を行く!』 池田知晶 (徳間書店) 《後編》
              【ペイ・フォワード】
    《参照》   『七つの原理』 丸山敏秋 (新世書房)
              【たらい水の例え】
    《参照》   『宇宙銀行』 植西聰 (サンマーク出版)

 

 

【他者を応援する】
 応援する脳機能を持つことが、自分のフローにつながることを知ってほしい。応援されると人は例外なくエネルギーがわく。・・・中略・・・。そして、応援している方が、応援していないよりもあなた自身はフローな方向に傾く。ここが重要だ。
 したがって、応援という「与える脳機能」はフォワードの法則に則したライフスキルの1つになる。(p.167-168)
 相手の失敗を願ったり祈ったりするというのは、先にリンクした【大脳の特性】によって、自らの墓穴を掘ることになるのである。何であれネガティブな心の使い方は、物理的に自分自身の肉体を蝕むことにすらなる。
 心のフロー(わくわく)状態は、外部の状況に関係なく、自分自身の生き方(ライフスキル)として保つべきことであり、外部のマイナス事象に囚われる様では意味がない。
 自らのエネルギーを外部に向けた場合は、フォワードの法則によって、ポジティブなエネルギーであればポジティブなものとして、ネガティブなものであればネガティブなものとして自分に返ってくる。善因善果、悪因悪果という因果の法則。この点は単純明快な事実であり言うまでもない。

 

<了>