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 自己啓発書の内容に重なる部分が多く、それに心理学と脳科学が適度に混ざり合って、理解しやすい内容になっている。読後に、著者はどういう方なのだろうと思いつつプロフィールを見たら、「応用スポーツ心理学を基本にしたメンタルトレーニングによるパフォーマンス向上を専門とする」と書かれていた。
 自己啓発書に書かれている内容を実践していても、なかなか成果が上がらなかった人は、集中力を高める上で係ってくる、「認知機能」と「ライフスキル機能」という2つの脳機能をきちんと理解するだけでも、その理由が分かるだろう。良書である。2011年4月初版。

 

【ゾーンに入るためのアウトライン】
 集中状態を作るために必要なことは、脳の認知機能とライフスキル機能のバランスを整えると言うことです。
 ライフスキルとは、心を「揺らがず」「とらわれず」のフロー状態に導く機能のことです。人間は、この機能が未熟なので、認知機能が勝り、集中できないのです。
 本書では、この脳機能を誰でも手軽に磨く方法をわかりやすく書きました。
 この2つのバランスが取れた時に、「ゾーン」はやって来ます。
 「ゾーン」とは、究極の集中状態になり、最高のパフォーマンスを発揮できる状態で、さらには、あなたの能力以上の力を出せる状況のことです。(p.7)
 ここに、「認知機能」、「ライフスキル機能」、「フロー状態」というやや専門的な用語が記述されているけれど、億劫がらずに、通読する過程で、それぞれが意味することを理解してゆけばいい。

 

 

【フロー状態】
 パフォーマンスの質を高いレベルで決定する心の状態を、「FLOW(フロー)状態」と呼んでいる。
 1970年代、シカゴ大学の行動科学の心理学者であったチクセントミハイ博士が提唱した概念だ。
 スポーツ、芸術、ビジネス、勉強、医療などのパフォーマンスの種類を超えて、パフォーマンスの質が高い時の心の状態は全て共通だと考え、その状態をフロー状態を名付けたのである。
 このフロー状態は人からやらされている状態ではなく、楽しさに満ちあふれたマイナス感情の少ない、挑戦に満ちた精神状態だと考えたのである。
 また、フロー状態は次のように表現されることもある。
 「集中力が抜群で、活動に完璧に没頭している最高の状態」
 と。まさに本書に相応しい。(p.22-23)
 バシャールなどの自己啓発系に馴染んできた人にとって馴染みのある「ワクワク」は、生き方のキーワードだけれど、ここにある「フロー状態」とはまさに「ワクワク状態」のことである。

 

 

【ノンフロー状態】
 気が散って集中できない心の状態をノンフロー状態と呼ぶ。ノンフロー状態とは、ひと言でいえば、「揺らぎ」と「とらわれ」の状態だ。
「揺らぎ」とは、さまざまなマイナス感情が思い起こされた不安定な心の状態のことである。
「とらわれ」とは、過去の出来事から作られた潜在意識の中に形成された、思い込みに支配された状態である。(p.27-28)
 フロー(ワクワク)状態であれば、言うまでもなく集中しているけれど、それがうまくできずノンフロー状態になってしまうのは、「揺らぎ」や「とらわれ」から完全に解放されていないから。
 「揺らぎ」や「とらわれ」を解放するには、脳の「認知機能」について理解する必要がある。

 

 

【認知機能の二面性】
 認知脳とは、外側の出来事に向いた脳の機能である。
 すなわち、外部の状況や出来事を判断して、「すること」を明確にする脳である。パフォーマンスの「何をするのか」の部分を支える重要な脳だ。(p.35)
 但し、この認知脳による意味付け作用は、集中力を阻害することもしてしまう。両刃の剣である。
 「環境」と「出来事」と「他人」。
 集中の三大阻害要因である。(p.29)
 人は生きている限り、これらの「環境」「出来事」「他人」が存在し、それらによってノンフロー状態へと導かれ、気を散らせているのだ。(p.30)
 私たちの脳は環境や出来事や他人に対して、さまざまな意味付けを勝手にしていくように仕組まれている。
 その脳の仕組みが意味付けを起こして、心に「揺らぎ」や「とらわれ」を生じさせているのである。(p.31)
 「朝から雨」という状態で、大抵の人は「だから憂鬱だ」という意味付けをする。しかし、「だから力がみなぎる」という人だっている。出来事自体は、常に中立で意味はない。人間がそれぞれに勝手な意味付けをしているだけである。
    《参照》   『マンガでやさしくわかるNLP』 山崎啓支 (JMAM)
              【プログラミング】
              【リフレーム=枠組み(フレーム)を変える】

 

 

【「認知機能」の“短所矯正”より、「ライフスキル機能」の“長所伸展”を】
 実は、意味付けを変えるよりも、今から述べていくライフスキル脳を磨く方が簡単だ。(p.33)
 およよ、である。
 脳の「認知機能」と「ライフスキル機能」のバランスにおいて、前者がもたらすマイナス面除去に傾注するより、後者を活性化させる方が簡単であると言っている。
 即ち、「認知機能」の“短所矯正”より、「ライフスキル機能」の“長所伸展”に傾注すべきであると。

 

 

【ライフスキル機能】
 ライフスキルとは、・・・中略・・・、心の状態をフロー化させる脳機能と定義 (p.25)
 高いパフォーマンスを達成するために必要な「ライフスキル(生きる上での技術)」とは、心を「フロー(ワクワク)状態にする」ためのノウハウ。

 

 

【ライフスキル機能の活性化】
 ライフスキル脳の磨き方には、はっきりと3原則が存在している。
 3原則とは、「知識」「実践」「シェア」である。
 「知識とは、ライフスキル脳の仕組みやライフスキルとはどんなものなのか、フローとはどんな状態なのか、なぜ人はノンフローになるのか、などの知識のことを言う。
 それらをより詳しく知ることが、何よりもライフスキル脳を磨く基本だ。残念ながら忘れてしまうとこの脳機能は低下する。(p.38-39)
 「知識」に関しては、この本をキチント熟読するのが一番いい。
 「実践」に関しては、いうまでもない。
 「シェア」に関しては、
 実践して感じた体験、すなわちフローの感覚をご褒美として脳に刷り込む必要がある。そのためにはシェアということが重要なのだ。
 体感を意識して、言葉にして、人と分かち合うことである。
 多くの人がもっとも苦手なのがこの原則だ。体感を見つめ意識するのも人は苦手だが、それを言葉にするのも得意じゃない。(p.41)
 「苦手だし得意じゃないし・・」で終わってしまったら元も子もない。
 優れたスポーツ選手は、必ずこれをきちんとしている。言葉数は多くなくとも、的確な言葉を用いて、的確に自分自身を理解し表現している。言葉の重要性は、《後編》に書き出しておいた。
 シェアする目的は、あくまでも自分の脳に刷り込むこと。脳に定着させること。自分で発した言葉を自分の耳で聞くことにある。あらゆる学習でにおいて、この方法は有効であり重要である。
    《参照》   『読書力』 齋藤孝 (岩波新書) 《後編》
              【本を読んだらとにかく人に話す】

 聞き手がいなくても、ノートに書いて視覚を通じて脳に刷り込むことができる。

 

 

【バイブレイン】
 認知の脳と、心をフローにするライフスキル脳が同時にバランス良く働いている必要がある。
 その状態を、バイブレインと呼ぶ。(p.79)
 認知の脳(認知機能)によって、「することが明確」になっており、同時に、ライフスキル脳(ライフスキル機能)によって、フロー状態(楽しさに満ちあふれたマイナス感情の少ない、挑戦に満ちた精神状態)を実現している状態。
 バイリンガルと同様、両方の脳がそれぞれに機能するようバランス良く磨き続けていなければならない。(p.79)
 認知脳がもたらすマイナス面に、注意が必要。

 

 

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