《前編》 より

 

 

【創造の音】
 メタトロンが右手を前に伸ばすと、上に向けたてのひらからカラフルな光が飛び出して、驚くような速さで螺旋を描いていった。光は一カ所に収束してひとつのかたまりになるかと思われた瞬間、いくつもの三角形が重なった明瞭な形が現れた。
「音が聞こえましたか?」 メタトロンが尋ねる。幾何学模様が螺旋を描いていく動きは、何百という声が一斉に「アーーー」と歌っているようだった。
「美しいわ。それにすごく癒される」 わたしは答えた。「これはなんなの?」
「創造の音です」とメタトロンが答える、「アドナイから答えや導きが得られた瞬間、あなたは『ああ!』となるはずです。それが、宇宙の叡智との真のつながりで、そのときに、わかったというひらめきがあなた方の生全体を駆け抜けるのです」
「わたしに聞こえたあの音がアドナイ?」 メタトロンの言うことは、なんとなく感覚ではわかるのだけれど、本当に自分が理解できているのか確かめておきたかった。
「そのとおりです、マケダ。論理でも理屈でもない。直感的にわかる、という感覚です」 とメタトロンは説明する。「どんな文化でも、自分たちの創造主の呼び名に“ア”という音を直感的に使っています。ここイスラエルでは、アドナイという語が使われています。他の文化では、ガット、ヤハウェ、ブラフマー、ラー、バールなど、呼び名はいろいろですが、すべてに共通するのはアです」 (p.167)
 日本文化で言っても、「アメノミナカヌシ」であるにせよ「アマテラス」であるにせよ、上記に該当している。
 そもそも「あ」は、言霊一覧のカナ(神名)の最初である。

 

 

 

【メタトロン立方体】
 彼は最初にひとつを指さして説明を始めた。「これは三角形または四面体です。二つ目の形は立方体。続いて八面体、そして十二面体、最後に二十面体です」
「これが」 そう言ってメタトロンは、5つの回転する形を両手でさっと掃いた。「創造の基礎になっているものです。こんなふうに、これら5つをまとめると」 ―― 五つすべてがひとつになって、メタトロンが最初に示してくれた回転する渦巻になる ―― 「ほら、“アーー”という創造の音が聞こえるでしょう? すべてが合わさったこの形を、わたしの、いやメタトロン立方体と呼ぶ人もいますが。(p.168)
 プラトン立体を重ね合わせたものがメタトロン立体。
    《参照》   『謎の古代図形』  秋山清  コスモトゥーワン
             【プラトン立体とひし形多面体】

 創造の基礎となっている個々のプラトン立体の属性については、下記リンクに。
    《参照》   『宇宙の羅針盤 (上)』 辻麻里子 (ナテュラルスピリット) 《後編》
 この既述の後に、黄金比に関することも書かれているけれど、下記で代用。
    《参照》   『2013:人類が神を見る日』 半田広宣 (徳間書店) 《後編》
              【黄金比】

 

 

【ヒラムの死】
 サンダルウッドの香りから、マケダにとって大切な人であると思っていた建築技師のヒラム。
 ヒラムは、自分の作品を守ろうとして、アドナイの神殿で焼死してしまった。
 なんとかして、わたしに彼を助けることはできなかったのだろうか。わたしは自分を責めた。
「われわれでさえ、ヒラムを死から救えなかったのです」 大天使の声が応えて、わたしをなだめようとする。ミカエルが前に進み出て、かれの命を救うことで、ヒラムの自由意思を侵害することはできなかったのだと説明する ―― 自分にできたのは、ヒラムに警告することだけだったという。「それは何度もやったのです。弟子たちが彼への敵意を強めている、というわたしの警告をヒラムは聞いていました。でも彼は、自分の彫刻技術の秘密を守り通すことのほうが重要だと考えていました。彼はわかっていて、あの選択をしたのです」 (p.193)
 大天使でさえ、ひとそれぞれの個人意思には介入できない。
 だから文学が表現する余地があるのだけれど、著者のようなスピリチュアルな叡智ある視点を持たない人が、小説を描くと、単に不条理の一言で終わってしまう。そして学びもない。

 

 

【神の性別】
「アドナイは神なんですか? 女神なんですか?」 わたしは疑問を口にした。
「両方ですよ!」 メタトロンがクスクス笑う。それから、混乱しているわたしの表情に気付いたのか、さらに説明を続けてくれた。「まったく逆のように見えることもすべて、ワン・フォースの一部なんです。熱いと冷たい。暗いと明るい。男性と女性。わたしたちは男性と女性を区別するとき、“二項対立”ということを行っています。これは私たちの中に、アドナイから自分たちを区別したり、お互いを区別したりする感覚を生じさせます」
「どんな人間のなかにも、男性と女性の両方のエネルギーが宿っています。男性のエネルギーは強さとか保護。女性のエネルギーは養育とか美です・・・中略・・・。あなたは、神のことも男性とか女性とか言う目で見ています。それはつまり、あなたがその神の特性を認めているからです。たとえば、あなたのアルマカは、太陽の放射熱と輝く光が男性の強さを象徴しているため、男性として見られています。ところが、実際には、太陽は生命を与え、その生命を育みます。それは女性の特質です ―― ですからアルマカは、他の強い男性同様、女性的な性質も持ち合わせているのです。女性について、その逆もまた然りで、女性のなかにも男性的な性質を見ることはできます。アドナイが宇宙の母であり、父でもあるというのは、そういう理由なのです」 (p.196-197)
 二元性の世界に生きていると、どうしてもそれに沿った考え方になってしまう。
 日本神話のアマテラスは女性のはずなのに、霊能者によっては「男性である」と言ったり「女性である」と言ったりする、と思っている人は多いだろうけれど、それも、その霊能者が観る「神の働きの側面を表現している」というだけのことである。
   《参照》   『ガイアの法則[Ⅱ]』 千賀一生 (ヒカルランド) 《中編》
             【永遠性の獲得】

 

 

【それぞれの王国で】
 ソロモンとわたしは、大天使が寄り添うそばで、お互い、別々の道を行かねばならないことを悟った。この痛みは、幸いにも大天使が和らげてくれる。ソロモンとわたしは、あらゆる意味で魂の伴侶だ。ともに王家に生まれ、父王亡きあと王位を継いで、高潔の心と平和を強く求め、人生の目的を全うしていく・・・たとえなにがあろうとも。 (p.248)
 ソロモンと婚礼の儀を行った翌日に、マケダはシバ王国へ戻ってゆくのだけれど、大天使たちの存在を認識できなかったら、とてもじゃないけど耐えがたい人生になってしまうだろう。
 高い視点での人生認識があれば、感傷は超えられるけれど、高貴さを伴わない場合は、往々にして感傷を住処としてたゆたうだけで、次元を超える学びになることなく終わってしまう。

 

 

【聖櫃(アーク)のゆくえ】
 司祭長は、メネリクがアークをシバへ持ち帰ってくれるなら、それを手伝うと言っている。それどころか、アークに近づいて危険が及ばないのは自分だけだから、アークに随行するとまで申し出てくれている。(p.261)
 この小説では、二人の間に生まれたメネリクが、長じて父ソロモンのイスラエル王国を訪れて帰国する際、二人の婚礼を取り行った司祭長が随行することでアークは、シバ王国へ運ばれたことになっている。
 この物語は、ここで終わっているのだけれど、アークは、その後、日本まで来ている。

 

 

【大天使が守護する聖櫃(契約の箱)】
 大天使たちは、アークの上にある彫り装飾の、翼のある像そっくりに見えた。わたしは、大天使(アークエンジェル)という語も、聖櫃(アーク)と同じ語源なのだろうかと考えた。(p.148)
 下記リンクでは、ケルビムと書かれているけれど、上記の記述は後に何か役立つかもしれないと思いつつ書き出しておいた。
    《参照》   『日本人のご先祖様は聖書のアブラハム』 小石豊 (ヒカルランド)
              【契約の箱】

 

 

【ソロモン・プロジェクト】
 せっかくソロモン王に関する著作なので、ソロモンに関するものをリンクしておきます。
    《参照》   『地球維新 黄金神起 二十四の瞳』 千天の白峰・白山楠竜 (明窓出版) 《後編》
              【松本亜代】
    《参照》   『空なる叡智へ』 サアラ (ヒカルランド) 《前編》
              【サウルと竪琴の名手・ダビデ】 【ソロモン】

 

 

 

  ドリーン・バーチュー著の読書記録

     『エンジェル・フェアリー』

     『魂の伴侶と出会う旅』

     『ソロモン王と聖なる天使たち』

     『チャクラ・クリアリング』

 

<了>