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 東京MXTVに、丸メガネの福田さんが出ていたのを見て、古書買い置き書架から取り出して読んでみた。ピンとくる箇所は全然ない。99年10月初版。

 

 

【近代の超克】
 昭和17年7月に、当時の日本を代表する知識人を集めて行われた会議です。
 参集したのは、西谷啓治ら京都学派の哲学者たち、亀井勝一郎ら日本浪漫派の文学者たち、そして『文學界』の同人である小林秀雄ら批評家たちでした。歴史学者、作曲家や映画批評家も集まりました。
 彼らはその会議で、前年の12月からはじまった世界大戦の意味づけをすることを試みたのです。その結果として会議は「近代の超克」と名づけられました。(p.7)
 この会議で、「日本人は戦争を通じて、近代自体を乗り越え、超克しよう」と知識人たちは考えていたのだという。
 それから半世紀以上たっているけれど、知識人といわれる人々は、いつの時代でも、こういうことを考えるのが好きなのである。この本も、著者が何人もの知識人と対話して、日本がどうすべきなのか、どうあるべきなのかを思索している内容の書籍である。
 知識人の思索って、学生時代なら率先して読んだけれど、今はあんまり読む気になれない。多くの書物を読んで得た知識がどれほどあろうと、知識人の思索って、インターネット時代には、時流遅れになってしまっているんじゃないだろうかと思うことがある。過去の知を集めて普遍性に至ろうとする方法は、労力の割に成果が少ないんじゃないだろうかと思うこともある。今は、過去からではなく未来から色んなものを獲得すべき時代ある。
 チャンちゃんは学生の頃から「知」による改革は無理で、人間が神のごとくなることで、つまり人間が進化することで初めて世界は変容するという考え方を選択していたから、人間改造を目的とする密教などを若干実践しつつ読む本は神秘学関連が多くなっていった。その基盤は、今日でも、アセンション系列の著作に引き継がれている。
 下記リンクのコメントに書いておいた吉田宏哲さんの著作は、チャンちゃんに「密教」の鋭利な知性を強烈に印象付けた本だった。
     《参照》   『今、ここからすべての場所へ』 茂木健一郎 (筑摩書房)

               【廣松渉著『<近代の超克>論』】

 

 

 

【明朝と江戸幕府】
 明治7年の「征台の役」の発端は朝鮮半島です。もっと遡れば江戸時代にもありました。中国で明朝が滅んで満州族の清朝が統一を果たしたとき、大陸を追われた明の亡命政権が台湾に逃げていった。とくに日本とつながりの深かった鄭成功の一族が台湾に政権を作るのですが、この政権は清朝の台湾進攻が迫ると何度も江戸幕府に援助を求めてきて、そのたびに徳川幕府で大議論が起きる。とくに三代将軍家光の時代に、清国が本格的に朝鮮支配に乗り出したときには台湾海峡が緊迫しました。すでに鎖国していた家光も、日本の安全上、台湾を軍事的に支援すべきと考え、日本軍の派遣の一歩手前までいったのです。(p.32)
 これは地政学的な問題というだけのことではない。
    《参照》   『新説2012年 地球人類進化論』 中丸薫・白峰 (明窓出版) 《前編》

              【古代ユダヤと秦一族の繋がり】

 客家と言われる人々のルーツが、江戸時代以前に日本に来ていて、現代においてはルーツを同じくする人々が台湾やシンガポールを中心にアジア経済を支えている。

 

 

 

【マハティールの発言】
 マハティール首相に日本経済をどう思うかと聞いたところ、彼は「日本は中国を恐れすぎる。中国に驚異を抱きすぎるから、アメリカ寄りになる」と言っていました。「中国を脅威に仕立てることで、アジアに楔を打ち込むのがアメリカの作戦だ。日本は中国を恐れるな。アメリカから距離を置け」というのがマハティール一流の言い方です。(p.62-63)
 この通りなのだけれど、日本の政官財はアメリカに支配されてしまっている。
     《参照》   『日本よ!今地球運命の最低値からこう脱出せよ』 高島康司&ウイリアム・スティックエバーズ

               【日本はヘタをすると、中国の後塵を拝することになる】

     《参照》   『アーリオーン・メッセージ』 アートライン・プロジェクト (徳間書店)

               【日本はアジアに・・・】

 でも、まあ、日本は西洋と東洋の結節点の役割をも果たさなければならない。

 

 

 

【トービン・タックス】
 最近、アメリカの主流派の経済学者たちは、国際的な資本取引になんらかにの規制をかけるべきだと言い出しています。・・・中略・・・。エール大学のトービン教授は、以前から国際的な資本取引すべてに税金をかけようと言っている。いわゆるトービン・タックスですが、・・・中略・・・、恣意的で部分的な規制ではなく、全体を緩やかに規制する。この方向でグローバリゼーションは進んでいくと私はイメージしています。(p.67)
 こうイメージしているのは竹中平蔵さんである。
 世界中でジャブジャブに供給されたマネーの殆どは、民間生活市場より先に、国際的な資本取引市場において顕著な効果を表すのだから、順番とすれば、消費税よりトービン・タックスが先に実施されるのが、確かに筋というものだろう。

 

 

 

【日本が発信する文化】
 ウォークマン以降、何が日本の文化を代表していくのか。鎖国のない日本が、「日本的なもの」から離れてどういう文化を発信していくか、楽しみです。(p.122)
 この対談が99年だったことを踏まえれば、その後、ほぼ無国籍化したコンテンツであるスーパーマリオやポケモンなどが、日本文化発信の先兵として瞬く間に世界の子供たちに広がった。いわゆるクールジャパンである。
   《参照》   『「知」のネットワーク』 大前研一 イースト・プレス

               【文化の担い手が変った。大人文化から子供文化へ】

   《参照》   『クール・ジャパン 世界が買いたがる日本』 杉山知之 (祥伝社)

 諸外国に比べてタブーが希薄な日本は、これからもインターネットなどを通じて先進的な文化を発信し続けるだろう。

 そして、ハート・チャクラが活性化する時代は、身分を問わず「おもてなし」が普通にできる日本人の資質が世界中に知れ渡るようにもなるだろう。

 

 

 

【ポストモダンの戯画?】
浅田彰 理科系なら遠山啓くらいは読んでいる。文科系なら、ただちにカントやウェーバーとは言わないまでも、せめて丸山眞男くらいは読んでいる。近代の最低常識として、高校を出た時点でその程度のことは知っておいて欲しい。学校は頑固な権威としてそういう近代の常識を叩き込む場であればいいんです。それがまったく機能していないんですね。
オウム真理教 ・・・中略・・・ 大学まで行ったあげく、あんな宗教詐欺師にころりと騙される。まさにポストモダンの戯画ですよ。
福田 うちの大学でも毎年、「なんでこの大学は超心理学の講座がないんですか」と真顔で言ってくる学生がいますよ。切望的なくらい幼稚になっている。(p.128-129)

浅田 中沢新一の怪しげなオカルト色をむしろ面白いと思うけれど、オウムにも影響を与えたあんなホラ吹きに通産省ともあろうものがコロッとだまされるというのは、これまたポストモダンの戯画ですよ。(p.136-137)
 密教や超能力は「ポストモダンの戯画」ではないだろうし、超心理学が「稚拙」だとは全く思わない。
 20年前はスピリッチュアリズムは、まだそれほど広がっていなかったけれど、今日では普通に広まっている。それは宇宙史的なサイクルによって人類社会に生じている変容の顕れである。それを「戯画」だとか「幼稚」だとか言っている人々が大学で権威を持っているようじゃあ、ちょっと困るんじゃないだろうか。まあ、そんな先生が居てもいいけど、学生はそんな先生の講座を受講しなければいいだけのことである。
 タントリズム(密教)を僅かであれ覗いた人々は、今日の温暖化の元となっている宇宙サイクルの変動を知っている。そしてその通りの世界になっているのである。知識人と言われる人びとの冴えた知性によって、近代を仮に超克できたとしても、その知性で宇宙史の超克はできないだろう。知性と叡智は違う。
 ところで、浅田彰の 『構造と力』 は学生時代に買って読んだけれど、3分の1ほど読んだところで完全に放棄したのを憶えている。理由は“分からなさ過ぎ”である。「高校を出た時点でその程度のことも知っていない奴」 は読んでも無駄な本ということなのだろう。

 

 

 

【人情というヒューマニズム】
福田 信仰と信頼の危機の時代に日本人が取るべき解決法があるのでしょうか。
山折 それには、義理人情に代表される日本人のヒューマニズムの回復しかないと私は考えています。人情が義理を圧倒的に凌駕していく精神こそ日本人のヒューマニズムの神髄です。弱者に対する慈愛、敗者に対する共感、劣者に対する同情といった精神のあり方です。これは浄瑠璃にもあるし、股旅物の世界にも武士道にもある。弱いものに対する負い目を担いつづける精神です。ただし、現代においてこれを実践するには、相当の精神力を要求されるだろうと思います。(p.168)
 「人情」という言葉を使うと重たいけど、「愛」という言葉に置き換えたら馴染みやすいだろう。
 世界の現実がどうであろうと、人は愛に基づいて生きる。
 とりたてて精神力が必要ということはないだろう。
 シンプルなことである。
 Choose Love.

 

 

<了>
 

  福田和也・著の読書記録

     『「日本」を超えろ』

     『「愛国」問答』

     『何が終わり、何が始まっているのか』

     『価値ある人生のために』