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 ジョブスは2011年になくなってしまったけれど、当時より今の方が、ジョブスの考案したiPadが流行っているから、むしろ、その製品発想に関して理解しやすいだろう。2012年10月初版。

 

 

【デザイン】
 To design something really well, you have to ‘get it.’ You have to really grok what it’s aii about.
 本当にいいものをデザインするためには、その機能が分かっていなければならないそれが一体何かということを、本当に心の底から理解していなければならないのだ。(p.70)
 The broader one’s understanding of the human experience, the better design we will have.
 経験に対する理解が広がるほど、デザインというものはさらに洗練されていくのだ。(p.72)
 ジョブスが関わっていたマッキントッシュの製品って、クリエーター寄りの機能とデザインに特化するという目的で作られたものなんだろうと勝手に思っていたから、この本にある様々なジョブスの言葉を読んで、それがとんでもない誤解だったことが分かった。技術と芸術を融合させるというマジな考えで作っていたのだった。

 

 

【経験と創造性】
 人は経験と経験を結びつけて知恵を得ていくものだ。そういう知恵が豊かであればこそ、有と有を結びつける着想も豊かになるのである。
 同じ物を見ているにもかかわらず、発想に大差がつくのは、どれだけ多くのことを経験しているかの差なのだ。経験が足りないと直線的な解決策となり、経験が豊富ならオリジナリティのある創造性に結びつく、というのがジョブスの考え方である。(p.73)
 発想と経験を結びつけるこの考えは、下記リンク著作の主旨と同じである。
   《参照》   『天才論』 茂木健一郎 (朝日新聞社)

             【創造性】

しかし、より本質的な“ひらめき”に関わる“創造性”は、経験ベースではない。
   《参照》   『宇宙人遭遇への扉』 リサ・ロイヤル&キース・プリースト (ネオデルフィ) 《前編》

             【ひらめき:「情報のダウンロード」】

 

 

【ジョブスと盛田】
 ジョブスは盛田昭夫を心から尊敬していた。1999年には、製品紹介に先立ち、逝去したばかりの盛田の名をあげて讃えている。ジョブスやアップル社員は盛田にインスピレーションをもらった、だから製品発表を盛田も喜んでいるはずだ、と言った。2001年にはiPodを「21世紀のウォークマン」とも呼んでいる。(p.80)
 盛田さんの製品開発技法(発想)を受け継いだのは、ソニーではなくアップルのジョブスだった。
   《参照》  『ゲームニクスとは何か』 サイトウ・アキヒロ (幻冬舎)

            【iPod メガヒットの理由】

 

 

【コンピュータの使用目的】
 ジョブスにとってコンピュータは単なる商品や金儲けの手段ではなかった。個人を豊かにし、世界を変えるロマンだったのだ。(p.125)
 ジョブスはコンピュータを人類最高の発明の1つと讃えている。だが、それはコンピュータを使えば人間の創造性が広がるからであり、コンピュータそのものが何かを生み出すとは考えていない。(p.141)
 「コンピュータを用いて、人間の創造性を広げ、世界を変えよう」、ということ。
 「世界を変えよう、変革しよう」っていう発想は、とてつもなくクールである。
   《参照》   『ウェブ時代 5つの定理』 梅田望夫 (文藝春秋) 《前半》

             【Power to the people】

 

 

【宇宙に衝撃を与えるアップルの社員】
 一流企業の出身者からすると、彼らは「やくざなプログラムを書くしか能のない、ちょっと腕のある素人」にすぎなかったが、一流企業の出身者が「面白みのない、HP社が発売しそうなコンピュータしかつくれない」のに対し、マックチームがつくり上げたのは世界を変えるほどのコンピュータだった。
We attract a different type of person ― Someone who really wants to get in a little over his head and make a little dent in the universe. (アップルはいささか変わったタイプの人間を引きよせてしまう。- 少々背伸びをしながらも、宇宙に何がしかの衝撃を与えたいと心の底から考えているような者たちだ)。
「宇宙に衝撃を与える」という言葉にも、ジョブスの型破りな人材観がうかがえる。(p.157-158)
 時代は、ウインドウズのマイクロソフトから、検索のグーグルへ、そしてiPadのアップルへと潮流に変化がある。グーグルでは通過儀礼として『スター・ウォーズ』を見ることが必須だったというけれど、シリコンヴァレーは、地球上にありながら宇宙的な発想に馴染みやすい人々が集う所らしい。
   《参照》   『ウェブ進化論』 梅田望夫 (ちくま新書) 《前編》

             【グーグルの人材採用】

             【マイクロソフトの人材採用】
   《参照》   『ウェブ人間論』 梅田望夫・平野啓一郎 (新潮社) 《後編》

             【グーグルの通過儀礼としての 『スター・ウォーズ』 】

 

 

【イノベーションは額の問題ではない】
 Innovation has nothing to do with many R&D dollars you have . . . It’s about the people you have, how you’re led, and how much you get it.
 イノベーションは研究開発費の額ではない。それは抱えている人材の問題であり、どこまでそれに入れこんでいるか、そしてどれだけ目標を理解しているのかという問題なのである。(p.160)
 アップルがマックの開発を進めていた時、IBMは少なくとも私たちの100倍を上回る金額を研究開発費につぎ込んでいた。 ・・・(中略)・・・ 肝心なのは金額でなないのだ。
 巨人IBMには優れた技術者がたくさんいたし、研究開発費も無尽蔵だった。にもかかわらず、誕生したのは目新しさのかけらもない凡庸なパソコンだった。
 一方、アップルには宇宙に衝撃を与えるほどのコンピュータをつくるという明確な目標と、野心にあふれた技術者、ヴィジョンに突き進むジョブスがいた。イノベーションには、意思、人、リーダーが欠かせない。(p.161)
   《参照》   『人生応用力講座』 日下公人 (PHP) 《前編》

             【予算と知恵の関係】

 

 

【自分の飛行機をハイジャックする奴】
 ジョブスは何度も日本を訪れている。そんな父ジョブスから「13歳になる時はどこでも好きな所に連れて行ってやる」と約束された子どもたちも日本を選び、ジョブス一家は何度か日本、中でも京都を訪れている。
 2010年も体調が一時回復したジョブスは自家用ジェット機で妻ローリーン、長女エリンの3人で京都に飛び、俵屋旅館に泊まり、寺を幾つも訊ねた。 ・・・(中略)・・・ 。
 ちなみにこの旅の帰り、ジョブスがお土産に買った手裏剣を関西空港で没収されるという事件が起き、ジョブスが「自分の飛行機をハイジャックする奴がいるか」と激怒したという記事が週刊誌などに載った。(p.152)
 この記述を読んで笑ってしまうけれど、ジョブスの立場であれば、そりゃあ激怒するだろう。
 もっとも、日本人として生きていたって、「ルールですから」と言うトコトン融通のきかないお役所発想の石頭に、散々辟易してきた経験は何度もあるのである。
 「ルールを作るに至った目的」よりも、「ルールを守ること自体が目的」になっているのである。日本人は、子どもの頃から「ルールを守りましょう」と洗脳されて、本質を考える知力が完全に失われているのである。完全に衆愚である。そして、衆愚であることすら自覚がないので、これを糺すという発想すら全然出てこないのである。これぞ、衆愚の極み。
 チャンちゃんがこの時、ジョブスのそばにいたら、「オヌシこそ曲者じゃ、オタンコナスの石頭めぇ、割れてしまえーーー」って、検査官に手裏剣を投げつけてやったかも。
 自分で考え判断することができない公務員的日本人が、ジョブスのようなピッカピカの企業家を、愚鈍さの自覚もないままに苛めるのである。
   《参照》   『ヘンな感じの日本人』 カイ・サワベ (講談社) 《後編》

             【自分で判断する能力】

 

<了>

 

  梅田望夫・著の読書記録

     『フューチャリスト宣言』 梅田望夫・茂木健一郎

     『ウェブ時代 5つの定理』

     『ウェブ進化論』

     『ウェブ人間論』