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 読み終わるのに3日間もかけてしまい、その間に熱心に別のことをしていたから、この書籍の全体構造が分からなくなってしまった。であるにせよ、2006年2月初版当時ならかなり先進情報的な内容だったはずだから、日本においては、現実が追いついてきた分、数年遅れて読んだとしても、かえって分かりやすいところもある。

 

 

【グーグルの人材採用】
 創造的であると同時に競争的で、普通の人ならへとへとになりそうな仕事環境を好む優秀な技術者ばかりを採用する。そしてテクノロジー、つまり得意のITと検索技術を駆使して組織マネジメントを行えば、創造性を上げつつ生産性を高めることができる。そういう考え方だ。「凄く頭のいい優秀な連中というのは皆、自分を管理できるのだ」 という、身もふたもない原則に支えられたプロセス。米国に脈々と流れる 「ベスト・アンド・ブライテスト」 信奉に、徹底的な情報共有の考え方を取り入れ、それをテクノロジーで支えようというのである。(p.82)
 グーグルには、「20%-80%」 ルールがあるという。「時間の80%は既存のプロジェクト開発に充て、20%はオリジナルな仕事にあてなければならない」 というルールである。(p.86)
 日本の地方公務員にも 「20%-80%」 ルールがある。「80%はボーっとして過ごし、20%は何も考えないでただただ規則に従ってボンクラ労働をしていればいい」 というルールである。
 学生時代、かなり優秀だった人でもグーグルに採用される可能性は高くはないだろう。学生時代そこそこ優秀だった人でも、生え抜きの地方公務員として10年経過すれば、間違いなく完璧なボンクラ親父になっている。

 

 

【マイクロソフトの人材採用】
 「ゲイツが考える最高のプログラマーとは、「超秀才(super smart)」 である。この 「超秀才」 というのはゲイツが好んで使う言葉で、多くの属性を表わす。そのうちのいくつかをあげると、新しい知識をすばやく 「リアルタイム」 で飲み込む能力、鋭い質問をする能力、異なる分野の知識を関連づけて理解する能力、プリントアウトされたコードを一目見ただけで理解できるほどプログラミングに長けていること、ドライブや食事の時までコードのことを考えているような熱意、極度の集中力(中略)、自分が書いたコードを写真のように思い浮かべることのできる能力などがある」 (p.83)
 この記述が意味する才能はどちらかと言うと、左脳型ではなく右脳型のようである。
 グーグルにしてもマイクロソフトにしても、並みの秀才では採用されない。

 

 

【ヤフーとグーグル】
 グーグルがゴールとして目指しているのは、「グーグルの技術者たちが作りこんでいる情報発電所がいったん動き出したら 「人間の介在」 なしに自動的に事を成していく」 世界である。 ・・・(中略)・・・ 
 「 ・・・(中略)・・・ ヤフーは、人間が介在することでユーザー経験がよくなると信ずる領域には人間を介在させるべきだと考えている。そこはグーグルと決定的に違うな。そして、ヤフーはコンピュータが完全に人間の代わりができるとは思っていない」 (p.94)
 グーグルの方がSF的で面白いけれど、本当に実現したら、人類は胸にハート型の穴があいているロボットみたいになっているかもしれない。

 

 

【NC構想】
 インターネット時代の到来からまだまもない1995年秋、ネットワーク・コンピューター(NC)という構想が提唱された。NCとはハードディスクを持たないPCのことで、当時は500ドルPCとも称された。新しいコンピューティング・スタイルにおいては、インターネットの 「こちら側」(端末)に情報を蓄積する機能(ハードディスク)は不必要になる、情報はすべてインターネットの 「あちら側」 に持てばよいのだから、という思想が背景にあった。(p.57)
 ものづくりの現場でファコムを使って作業をしていたオジさんたちが、NCという言葉を聞いたら、ニューメリック・コントロール(数値制御)の工作機械を想像するのだろうけれど、若者たちにとっては、そっちの方が分からない。
 現在の日本では、10インチほどの小さな純然たるNCより、HDのついたNCの方が、需要が多いのではないだろうか。 自分用のデータも全て 「あちら側」 に保管というのは、現時点でも、誰だってちょっと心配になることだろう。
 ところで、このNC構想の実現は、PC(パーソナルコンピュータ)が出現する以前、IBMが帝国を築いていた時代の産業用コンピュータ・システムが行っていたホスト・コンピュータ処理方式と同じ様なことになってしまう。NC構想は、マザー・コンピュータによる全人類の支配という暗黒側面をキッチリ備えている。

 

 

【Web 2.0】
 これからのウェブの進化は、「あちら側・信頼あり」 のボックスが牽引していく。Web 2.0 時代とは、突き詰めていけばそう言うことである。(p.224)
 発想のあり方として、ネットのあちら側・こちら側。不特定多数無限大への信頼のあり・なし、で分類できる。この2×2=4つの象限(ボックス)で分類すると、
 Web 2.0 は、         「あちら側、信頼あり」
 ヤフーや楽天は、       「あちら側、信頼なし」
 リナックスは、         「こちら側、信頼あり」
 大組織の情報システムは、  「こちら側、信頼なし」 となる。
 グーグルは、Web 2.0 とヤフーの中間に位置すると著者は考えている。
 グーグルは、思想的に 「不特定多数無限大を信頼する」 という会社ではない。むしろ 「ベスト・アンド・ブライテスト」 を集めて才能至上主義的唯我独尊経営を志向する会社だ。 ・・・(中略)・・・ 彼らの斬新な組織マネージメントも 「才能を認め合った仲間うちだけでは完ぺきに情報を共有しよう」 というもので、外部に対してはとても閉鎖的な会社だ。(p.225)
 そう、グーグルこそが “機神界“ の一極支配を構想している企業なのであろう。しかし、それは実現しない。
 未来における ” 正統・神霊界“ と ” 邪統・機神界“ の決着は既についているからである。