イメージ 1

 小中学生向けに書かれた本だから、それぞれの分野に知識のない一般人向けとしても、読みやすく分かりやすい記述になっている。

 

 

【1979年に時速500kmを突破】
 日本のリニア開発のパイオニア京谷好泰さんを取材した記事が最初に書かれている。
 1979年12月には目標としていた時速500kmを突破。最高時速517kmを記録したのである。 (p.32)
 30年も前に高度な技術が完成しているのに、何故それからリニアは日本で実用化が推進されなかったのだろう。上海でリニアが走っているからといって中国のリニアの技術力が日本より秀でているわけではない。

 

 

【失礼千万】
 京谷さんがアメリカのテレビ局の取材を受けたとき、両親は日本人か?祖父祖母は日本人か?という質問を受けたのだという。
 “日本人にリニアモーターカーのような独自の技術を開発できるわけがない。外国人の血が混ざっているんじゃなか?” という、なんとも失礼千万な話じゃないか。
 ぼくはね、 “日本人は物マネ民族だ” といわれるのが一番腹が立つ。(p.49)
 ホント、失礼千万な話である。ところが、日本人の技術力の高さを認識していない日本人も結構多いから、ホトホトなさけなかったりすることもある。

      《参照》   『韓国人は日本人をどう思っているのか』 朴相鉉 (新人物往来社) 《前編》
                【日本人は創造性がない?】

 

 

【黒船に鉄道模型】
 「明治になる以前に 『黒船』 を先頭に外国の船がたくさんやってきて、日本に開国を迫っていたでしょう。じつはあのときに、外国の連中は鉄道模型も一緒に持ってきていたんだ・・・中略・・・」 (p.16)
 「鉄道模型」 というような具体的な記述はとても重要なポイントだと思うけれど、“外国の政治的な開国の圧力” という視点でしか記述していない歴史書が多いのではないだろうか。この黒船は、海底ケーブル敷設にも用いられている。

 

 

【太平の眠りを覚ました蒸気船、大西洋横断海底ケーブル敷設に活躍】
 最初の大西洋横断ケーブル・・・中略・・・、このとき随伴船としてケーブル艦隊に加わっていたのが 「サスケハナ号」 という名のアメリカ海軍の蒸気船でした。じつはこの船、ぼくが調べたところでは1853年にペリー提督が乗って日本にやってきた旗艦なんですよ。つまり、「サスケハナ号」 こそが “黒船” だったというわけなんです」
 江戸幕府に 「開国せよ!」 とにじり寄った脅威の軍艦が、その数年後には大西洋で海底ケーブル工事・・・。なんともダイナミックで愉快な時代ではないか。 (p.49)
   《参照》   『マンハッタン一番乗り 我が郷愁のニューヨーク』 アイク田川 新風舎
               【セントラルパーク】

 

 

【通信衛星と海底ケーブル】
 国際通話をする場合、衛星と海底ケーブルの2つの回路がある。前者は2万4千回線、後者(光ファイバー)は12万回線の通話が可能 (p.51) なのだという。およそ6倍の性能。
 なので、近年では後者の使用が圧倒的に伸びている。現在も海底光ファイバーケーブルは、世界中の国々を巡ってドンドン伸延していることだろう。これなくして今日のインターネット時代はなかった。

 

 

【海底ケーブルの故障対応】
 「修理に費やす日数は平均10日。総額1億円もの大仕事になってしまうんです」 (p.64)
 故障は、たいてい起伏の激しい海底地形の個所で発生する。ゆえに、敷設に先行して綿密な海底地形の調査を行い、平坦なルートを選択して敷設するのだという。海洋の平均水深は、およそ6000mである。
 もしも故障が発生したら、150kmごとにある接点の中間点付近の左右を調べ、その異常側の中間点の左右を調べ・・という昔ながらの繰り返し作業なのだという。

 

 

【明石大橋の建設に携わった方】
 本四公団の古屋信明さんと言う方が、以下のように言っている。

 最近はエンジニアに必要な慎重さや視野の広さを持てるようになってきましたが、ぼくだって本四公団に入ったときから橋のエンジニアに向いた性格だったわけじゃありません。長年かけて、徐々にエンジニアらしくなっているんですよ。最初からそれを求めていたら、ぼくなんか落第だったかもしれない(笑)。
 日本の社会にはね、ものすごい天才はいないんです。それをみんなが力を合わせて、きわだった組織の力でカバーし合って成り立っている。橋づくりはその典型かもしれませんね」 (p.111)

 協調性と謙虚さ、これこそが日本人の天才性そのものである。諸外国人に、この様な天才性はない。

 

 

【明石大橋:日本の国力の象徴】
 「橋づくりに必要なのは、技術力と国全体の経済力です」 (p.107)
 巨大な橋は “国力” と対応している。明石大橋は、現在世界最大の吊り橋である。ということは、とりもなおさず日本の国力が、実質世界一ということである。
 1883年当時、世界最大の吊り橋・ブルックリン橋をつくったアメリカは、20世紀後半になって会社をTOBなどの投機の対象にしてしまい、また全体的にも脱工業化社会に変転してきてしまっているため、昔日の工業力・技術力は有していない。かつてアメリカ国内に架けられた巨大な橋梁が老朽化し掛け替えることになれば、それを請け負えるのは日本の企業だけということになる。
 ニューヨークの地下鉄は、日本企業がつくった車体を船で運んで搬入したものであり、火力発電所ですら、日本企業が熱効率の上がった設備に刷新するのを機に、その中古品を解体して船で運びアメリカで組み立てて使っている。こういったことは 長谷川慶太郎さんの書籍に書かれている。
 
 

  長谷川慶太郎・著の読書記録

     『破綻する中国、繁栄する日本』

     『12億の常識が世界を変える インド』

     『破綻する中国、繁栄する日本』

     『アジアの行方』

     『メガ・グループの崩壊』

     『反「デフレ不況」論』

     『アジアが日本に屈する日』

     『情報王』

     『日本と世界の大潮流』

     『中国「反日」の末路』

     『大展開する日本2006』

 

<了>