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 タイトル通りの内容です。20世紀と21世紀を比較相対的に捉える著者の考えは、経済音痴の私でも分かりやすく、興味が持てる内容に満ちています。


【世界的なデフレの原因2つ】
 前世紀の世界諸国は、戦争と冷戦によって、一般民間市場経済と比較すると、極度に高額な兵器に対して財政出動せねばならず、これがインフレの元になっていた。今世紀はアメリカの一極安定支配が続き、平和を基調とする状態が継続する限りにおいてデフレ基調が続く。 日本の財政政策失敗は、いずれ再びインフレになると予測していたからである。
 もう一つのデフレ要因。経済発展中の中国、インド、ブラジルなどの労働人口の多い国々が、人件費の高騰を発生させない。背後に控えている労働者の数が膨大なので、これらの国々からの製品輸出価格は低価格が続く。


【原油高はいつまでも続かない】
 現在の原油高は、前世紀の産油国の主権行為による高騰ではない。石油に代わる代替エネルギー供給が可能になれば、原油高は収まる。


【日本製工作機械の市場占有率】
 1982年以来、日本の工作機械市場占有率は世界の1位である。現在は24%にも達している。つまり世界中の工場の4分の1は日本製の工作機械でつくられているということである。


【オギハラという町工場】
 非上場のオギハラという会社がある群馬県太田市には、DHLという国際宅配便の営業所がある。世界中の自動車工場が、この会社の打ち抜き金型を必要としているからである。30トンもある金型の輸送費だけで数千万円が必要である。この優れた金型は世界中でオギハラという町工場でしかつくれないから、それも止むを得ないのである。


【エネルギー消費の比較】
 世界全体に占める日本のGDPは16%、エネルギー消費量は5.3%。これに対して中国の割合は、前者が4%、後者が12%であるとう。つまり日本のエネルギー効率は、世界平均の3倍、中国の9倍である。日本がエネルギー効率において優れていることより、中国が極度に劣悪であることに注意しなければならない。


【BRICsの長短】
B:ブラジル:工業、農業、鉱業、エネルギーいずれも、もっとも安定的に発展しつつある。著者は、経済産業面で最も期待できるのはブラジルであろう、と記述している。
R:ロシア:世界で最大の資源供給国家になるのは間違いない。既に西欧諸国向けのパイプラインは一部建設され、なお、新規分を施工中である。現在、プーチン大統領は、ロシアの権益を墨守するために、批判者を惜しみなく粛清中のようであるが・・・・・。
I:インド:既にIT技術者の強国となっているインド。IT以外でも、国家発展の機関と成る鉄鋼業について、世界的な鉄鋼業経営といわれるミタル財閥の存在は大きい。また英国統治時代にできたICS(インディアン・シビリアン・サービス)の伝統によって、他の諸国に比べ賄賂を要求する役人は少なく行政機構の質は最も高い。
C:チャイナ:共産党支配、環境問題(資材浪費)、賄賂国家、など問題点が多い。
s:上記4国以外では、オーストラリアに注目。アデレード~ダーウィン間の縦貫鉄道が2004年に開通し、中央で産出する鉄鉱石の輸送が可能になった。不足するであろう労働力を東南アジア諸国から供給する政策があれば、順調に発展するのは間違いない。

 

<了>

 

  長谷川慶太郎・著の読書記録

     『破綻する中国、繁栄する日本』

     『12億の常識が世界を変える インド』

     『破綻する中国、繁栄する日本』

     『アジアの行方』

     『メガ・グループの崩壊』

     『反「デフレ不況」論』

     『アジアが日本に屈する日』

     『情報王』

     『日本と世界の大潮流』

     『中国「反日」の末路』

     『大展開する日本2006』