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 重工長大型産業および軍事技術分野に詳しい著者による具体的な記述は、読み応えがある。瞬く間に読み終えてしまった。しかし、同意できない箇所がいくつかある。2014年2月初版。

 

 

【空母・遼寧の戦力】

 35機の艦載機を積んでいます。ところが、使える戦闘機は、5機しかないのです。(p.20)

 訓練されたパイロットが5人しか乗っていないから。
 米のニミッツは、80機搭載され。パイロットは3交代で対応できるように200人乗務している。

 そもそも、この「遼寧」はガスタービンで動きます。(p.21)

 ガスタービン空母「遼寧」の、継続潜航期間はわずかに2か月半。原子力空母なら3年。
 また、戦闘機が発進する際には、高温高圧の蒸気で押し出すカタパルトという装置を使うのだけれど、その際、必要な動力がガスタービンでは不足する。

 「遼寧」の艦載機は燃料半分で、ミサイルなどの兵器は搭載せず、機体を軽くしないと飛ばせないのです。・・・中略・・・。戦力 としてまったく意味がなく、軍事的に何の役にも立たないのです。(p.23)

 

 

【人民解放軍の見込み違い】

 緊張状態から戦争に突入したらどうなるか。人民解放軍は負けます。そして負けたら中国は本当に分裂の危機を迎えるでしょう。だから緊張状態には限度があるのです。しかし、その怖さを人民解放軍は知らないのです。また、知ろうとしない。だから、防空識別圏設定という国際的に非常識なことが出来るわけです。(p.34)

 どの国にも、防衛産業でメシを食っている人々は沢山いる。兵器を作っている企業は定期的に消費されないと干上がってしまうから、本気で戦争を画策している。
 同じ穴の貉どもが、世界中どの国にも、もちろん中国にも日本にもいる。

 人類の進化に寄与しないどころか、これをぶち壊そうとする邪悪な輩ばかり。
 

 

【中国から逃げ出した、アメリカの駐中国大使】

 米国のゲイリー・フェイ・ロック前駐中国大使は逃げ出しました。2013年11月に突然一方的に、近く辞任すると声明を発表したのです。(p.37)

 表向きの理由は、PM2.5関連で家族の健康問題ということを言ったらしい。
 本当の理由は、中国国内で頻発している暴動が多すぎて、身に危険を感じてきたからと書かれている。

 

 

【中国の病院】
 病院が民営化され、高額な治療費を払えない大衆は、見殺しにされている。

 国有病院は共産党員しか受け付けません。農民など一般市民は国有病院には入れないのです。特権階級の病院なのです。だから、市民の病院に対する恨み、辛みは凄いものがあります。(p.44-45)

 日本だって、国が定める保険以外に、自分で保険に入っているかどうかを確認してから、病院側は治療をどこまでするかを決めているだろう。
 もっとも、いくらでも取れるとなれば、あえてガンと診断し、ぼったくられたあげく殺されるのである。
 北ノ海も千代の富士もガンで死んでいるのは、そういうことだろう。ガン治療の仕組みを知らない人々にとっては、有名人のガン死亡ほど大きな洗脳効果になる。
    《参照》   『これが[人殺し医療サギ]の実態だ!』 船瀬俊介×ベンジャミン・フルフォード 《2/3》
              【抗がん剤という猛毒】

 

 

【習近平による汚職撲滅】

 官費の無駄使いと官官接待、官民接待、贈答行為などを厳しく禁止し、・・・中略・・・・ その目的は中国国民の不満の解消と言われていますが狙いは違うところにあったのです。(p.64)

 この政策によって、多くの党員が首になり、消費が減速したのは確かだけれど、習近平の狙いはそこではない。

 人民解放軍の幹部たちを締め上げる、それこそが本当の狙いだったのです。(p.64)

 接待場所として常用されていた高級ホテルの経営は、人民解放軍がしていたのだということ。
 間違っても、社会を良くしようとしての汚職撲滅ではない。なぜなら、

 ブルームバーグは2012年6月、習近平国家主席(当時は副主席)の親族が巨額の蓄財をしていると報道しました。その後、同社のホームページは中国で閲覧できなくなり、新たに中国に長期赴任する記者にもビザが出なくなっているのです。・・・中略・・・。汚職撲滅を政治権力闘争の道具にしているに過ぎないのです。(p.119-120)

 

 

【シャドーバンキング倒産】

 2013年6月になってから「シャドーバンキング(影の銀行=当局の規制が厳しい銀行を介さずに資金を貸し出し、融資をやり取りする金融業者。通常の銀行ではなく特殊な金融業態の総称。銀行が相手にしない中小企業や、独自に資金調達ができない地方政府が主に利用している)」問題が中国でクローズアップされてきました。(p.68)

 シャドーバンキングは、リーマンショック後に自然発生的に出来た金融業態らしい。ゆえに、規制はほぼない状態だった。日本で言えばサラ金みたいなものだけれど、日本のサラ金は「理財商品(私募債的な金融商品)」までは扱っていない。
 この「理財商品」こそが、中国経済の終わりを告げる爆薬になるだろうと多くの人々が思っていたのだけれど、いまだに中国経済の崩壊は起こることなく、なんとかなっている。これには、別の理由があるのだけれど、ここでは触れない。
 実際に破綻したシャドーバンキングは凄い数になっているらしい。習近平は本当に市場を救済しなかったからである。なぜなら、

 中国共産党による人民解放軍への締め付け、圧力を掛けるためだったのです。・・・中略・・・。その理由は多くのシャドーバンキングの経営者は人民解放軍の幹部たちだったからです。(p.69)
 今は主に「理財商品」を国民に販売して調達しています。しかし、設立当初は違っていました。・・・中略・・・。当初は何と、軍事予算を活用したのです。つまり、人民解放軍の軍事費を「浮き貸し」することを中国政府は認めたのです。そのことが、大切です。(p.88)
 シャドーバンキングは単純な経済問題ではなく、政治問題であるということなのです。こういう認識がないと、真相がわからなくなります。(p.70)

 習近平の命令に従うなら救済、従わないなら倒産。

 その脅しが効いて、習近平は人民解放軍の中で、最も「力」のある瀋陽軍区を訪問して「人民解放軍は共産党の命令には絶対服従しなければならない」という演説をしたのです。これは、習近平が人民解放軍を抑え込んだというシグナルなのです。(p.90)

 

 

【瀋陽軍区と北朝鮮(張成沢)】

 これまで瀋陽軍区は共産党にとって「頭の痛い」存在でした。勝手な行動をとり、そのたびに習金平は窮地に立たされてきたのです。それまで、北朝鮮は国境を接している瀋陽軍区のコントロール下に置かれていました。ですから、北朝鮮が実施してきた核開発、核実験やミサイル発射は瀋陽軍区が金正恩に命令して実行させたのです。そのたびに中国は北朝鮮の勝手な行動を許しているとして、国際社会から厳しい批判にさらされてきました。
 そこで、習近平はこうした事態から脱却するために、瀋陽軍区の幹部が経営しているシャドーバンキング救済を武器にして、瀋陽軍区の支配に乗り出したのです。それが成功しました。・・・中略・・・。
そして、この瀋陽軍区の北朝鮮側窓口の責任者が張成沢だったのです。つまり、北朝鮮は瀋陽軍区から習近平、共産党のコントロール下に入ったために、張成沢の存在は必要でなくなったのです。だから、粛清されたのです。(p.12-13)

 この本が書かれて2年半が経過したけれど、その間、朝鮮は、コンスタントにミサイルをぶっぱなし続けている。ということは、瀋陽軍区は、習近平にコントロールされていないことになってしまう。
 この説明は成り立たないだろう。


 

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