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 2005年7月に出版された本である。著者がタイトルの根拠としているのは、日本の産業技術力である。日本の文化力のことには一切言及せずに、こういったタイトルの書籍が書けるだけの、豊富な知識を著者は持っている。具体的な日本の技術力について知りたい人は、この本を読めばいい。私は、それ以外の箇所を、幾つか書き留めておく。


【環境保全の視点で州法を定めたカリフォルニア州】
 シュワちゃんが知事をしているカリフォルニア州には、片側5車線の高速道路があり、その中央の車線は、渋滞緩和のため2人以上の同乗者がいる車両の優先車線であったが、環境保全の視点で州法を変更し、1リットル当たり19km以上走る低公害車ならば1人乗りでもも走行可能にした。 (p.27)

 1リットル当たり34kmという燃費のプリウスは、アメリカで納車まで10ヶ月も待たなければならない。トヨタのレクサスやプリウスに限らず、日本の高性能車が、実質的にアメリカの市場を占めてゆくのである。


【ニューヨークの地下鉄】
 台湾新幹線だけではない。落書きで有名なニューヨークの汚い地下鉄の車両が刷新された。全て日本のメーカーから導入されたものである。現在のアメリカには地下鉄の車両を生産するメーカーがひとつもない。


【タイの自動車】
 トヨタ・ニッサン・ホンダ・マツダがタイに生産工場を持っている。ここで生産したものを、近隣諸国に輸出しているのである。タイと中国の労働者賃金について、ホンダの例でいえば、中国の広州ホンダの賃金と比べてタイはその80%であるという。またタイは外資に対して法律が優位であるという。(p.164)

 反日暴動以来、日本企業の多くは東南アジア諸国に工場を移転しつつある。驕れる中国の工場設備は大方が日本製であり、環境技術に圧倒的に秀でた日本が撤退してしまっても、やってゆけるのか。
 タイの隣国であるカンボジアに行った時、現地人のガイドさんは、「トヨタのカムリが一番人気です」と言っていた。左ハンドルでシートベルトが自動装着の仕様になっていた。「アメリカから輸入した」と言っていたが、おそらくはタイ工場で生産された車だろう。タイとカンボジアの2国は、たいそうな犬猿の仲なので、「タイから輸入した」とは決して言いたくはなかったのだろう。


【中国共産党の崩壊が東南アジアの繁栄をもたらす】
 タイ経済の発展は、タイ共産党の崩壊によって治安がよくなり実現してきたものである。フィリピンのルソン島の治安も回復した。2002年に中国共産党との関係が断たれたからである。NPA(新人民軍)というフィリピン共産党ゲリラ組織は、中国共産党から資金、武器、情報、人の面で支援を受け続けていたのである。 (p.169)



【北京オリンピックは開催されない】
 と著者は断言している。中国共産党が崩壊するからという理由が第一であるけれど、中国経済自体がかなり減速していることは間違いないのではなかろうか。
 モラルと環境を良好に保てない国に永続的な繁栄などあるわけはない。最近、日本で出会う上海人に尋ねると、「上海はまだ発展している」と答えるけれど、私自身の経験ではそうは思わない。2002年と2006年の上海は、明らかに違っていた。経済政策なしの野放図な経済の実態は、過剰と浪費の結果に行き着くのではないだろうか。
 私は、著者のように、「北京オリンピックは開催されない」とまでは思わないけれど、中国経済がハードクラッシュせずに冷却し、過剰を排して日本の環境技術を取り入れつつ堅実に発展してくれることが望ましいと思う。それが世界の安定と環境問題を考える人々に共通する見解である。

 

<了>