音盤ながし -27ページ目

ソウル・フラワー・ユニオン『キャンプ・パンゲア』

●ソウル・フラワー・ユニオン『キャンプ・パンゲア』
 相変わらずテンション高いね。大衆歌謡とロックンロールが祝祭空間で跳ねてる感じ。これ快感だよ。それにしてもソウルフラワー、うっかりしてたけど結成17年にもなるんだね。俺は前身ニューエストモデルからだから更に長い付き合いになる。長いけどそれ程深いわけでなく、新作が出る度に気にはしてるけど全作聴いてるわけじゃない。だけど聴いたアルバムはどれも印象に残るものばかりだった。想えばニューエストモデルとメスカリン・ドライブが合体して生まれたソウル・フラワー・ユニオンは運動体のような雰囲気を放っていた。それは他の日本のロック・バンドとはかなり異質な感じだった。そして指向する音楽も、
世界中の大地に根ざした大衆音楽とロックの融合へと変わっていった。そうした歌謡的メロディーが中川敬の作る反骨の詞によく合った。怖そうで人懐こいっていう得難い個性のバンドが出来上がったような気がする。まあ進行形のバンドだから、この先のさらなる変化があるとすればそれも楽しみだけどね。このアルバムも繰り返し聴くことになるはずで、また感じ方も違ってくるかもしれないけど、信頼できるロック・バンドであることは確かだ。

キャンプ・パンゲア/ソウル・フラワー・ユニオン
¥3,150
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黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』

●黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』
 著者黒岩比佐子の気迫のこもった渾身の一作にして名著として語り継がれる作品だと思います。ほんと素晴らしい! 彼女は2010年7月にこの本を書き上げ(発刊は同年10月7日)、11月17日膵臓がんのため逝去されました。本書のあとがきには「堺利彦のようにいつもユーモアを忘れず、楽天囚人ならぬ " 楽天患者 " として生きることで、きっと乗り越えて行けるだろうと信じている。」と書かれてありました。残念です、、、。

 さて堺利彦です。不勉強なので知ってる事と言ったら、幸徳秋水と並ぶ戦前の社会主義運動の大物で、大逆事件というでっち上げの罪で死刑となり殺された幸徳、また憲兵に拘禁され虐殺された大杉栄に比べ地味な存在、それくらいしか知識がなかったというか興味がなかったわけです。しかし本書を読んだ今では、その精神的な強さ、天性の優しさ、機を見て敏なる行動力などなど、人間堺利彦の魅力に魅せられてしまいました。 
 明治大正昭和の初期、社会主義運動への苛烈な弾圧、そんな " 社会主義運動冬の時代 " に、貧窮する同士達に生計の道を与えるために起こした「売文社」にスポットを当てた意義は大きく、そこからは文学者でありペンの人であった堺利彦の魅力が浮かび上がります。大正三年読売新聞に掲載された堺の一文には「ペンを以てパンを求むるは僕等の営業である。今度僕の社で拵える年始の葉書には、食パンに万年筆を突きさした画をかいて、それを商標の代わりにすることにして居る。.....世にはペンとパンとの関係を秘密にする者がある。或いは之を曖昧に
する者がある。.....僕等はペンを以てパンを求めることを明言する。」と高らかな宣言があります。で、どんな社員がいたかというと、アナーキスト大杉栄、社会主義者荒畑寒村・山川均、日本初『資本論』全訳者高畠素之、『人生劇場』の尾崎士郎、人気演歌師添田唖蟬坊の息子で♪ラメチャンタラギッチョンチョンデ、パイノパイノパイ「東京節」を歌った添田知道など、まるで梁山泊のような会社に思えますね。
 さらにその仕事の内容もユニークで、売文社営業案内には、写真説明文の英訳、雅号の選定、商標考案、新刊雑誌発行趣意書、雑誌原稿、英文及独文書簡、カタログ編集及意匠、仏文和訳、演説草案起稿、某学校卒業式生徒総代答辞、某氏自伝談話筆記及編集、性欲記事英訳(笑)、まだまだあるが、とにかく今で言う広告代理店・編集プロダクション・翻訳会社の業務を一手に引き受けていたわけです。先見の明というより、ペンで食べていくという強烈な意志を感じてしまいます。
 戦前の社会主義者を扱った本なので、当然暗く惨い話も出てはくるけど、ペンの人・フェミニスト・天性のユーモリストとしての堺利彦に光を当てたことにより、真に前向きに生きることを思い、そこから風通しの良い戦前史が立ち上ったように思えました。

パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い/黒岩 比佐子
¥2,520
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LONNIE SMITH『Live at club mozambique』

 娘が幕末モノを読みたいというので池宮彰一郎の『高杉晋作』ならきっと面白いと推薦し文庫本を買ってから気づいた。俺の本棚にその上下2巻があったのだ。本といいCDといい、ここ数年こうした間違いが増えてきた。これも老化なのか、、、。

●LONNIE SMITH『Live at club mozambique』
 ジョージ・ベンソン・カルテットの『It's Uptown』
'66)を聴いた時、そこで黒くグルーヴィーなオルガンを弾いていたロニー・スミスを発見、久しぶりに聴くジャズ・オルガンのかっこよさに惹かれ、ロニー名義のアルバムも聴いてみた。'70年のライブなんだけど、先のベンソンのアルバムによく似た感じのファンク・ジャズで、ベンソンとロニー・キューバー(bs)も参加している。踊れるジャズとしてクラブで受けそうなスタイリッシュなジャズだよね。ハモンド・オルガンというとR&B~ソウルやロックでの演奏の方が馴染み深いけど、どちらにしてもバックから煽るのに適した楽器だと思うんだ。ゴスペルの伴奏でもそうでしょ?この煽りを楽しむにはジャム・セッションが最適なんだけど、そう考えるとジャズとオルガンてのは相性が良いはずなのに、何故かジャズの世界ではメインの楽器になれなかった。たしかにオルガンが入るとソウル寄りに聴こえるし、そこがまたかっこいいんだけど、フォービートや昔ながらのスウィング感をジャズの拠り所にしているジャズ・ファンからすれば、オルガン・ジャズなんて二流に思えるのかもしれない。まあそんな偏狭な人達は昔から相手にしない俺なので、こんなグッド・ミュージックに出逢えてまことに嬉しい次第です。
Live at Club Mozambique/Lonnie Smith
¥1,048
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青江三奈『THE SHADOW OF LOVE〜気がつけば別れ』

●青江三奈『THE SHADOW OF LOVE~気がつけば別れ』

 青江三奈の素晴らしいジャズ・アルバムです。Twitter上で、
音楽ジャーナリストで写真家で雑業家の花房浩一氏がこのアルバムを紹介していて、それに乗せられて聴いてみたわけですが大当たり。これは花房氏に感謝ですね。
 そもそも青江三奈といえば歌謡曲、それも昭和のスターというイメージしか持っていなかった。ア~ア~の「伊勢佐木町ブルース」が先ず頭に浮かぶのが大半の日本人でしょ?(笑)。そんな青江さんが1993年にニューヨークで録音したアルバムで、バックにはマル・ウォルドロン(p)、エディ・ヘンダーソン(tp)、グローヴァー・ワシントンJr(ss)といった錚錚たるジャズ・マンを配した正真正銘ジャズ・アルバム。なんといっても青江さんのジャズ・フィーリングが素晴らしく、日本人だってことを忘れてしまうくらい。この巧さは付け焼き刃ってことがあるはずはなく、もともと歌謡曲歌手としてデビューする前から、クラブとかでジャズを歌っていたんだよね。曲目はスタンダードなナンバーが多いけどそんな中、
「伊勢佐木町ブルース」そしてゴールデン・カップスのナンバー「本牧ブルース」を英語詞とジャズ・アレンジで披露している。青江さんのヴォーカルに触発され、NYの一流ジャズ・マンも百戦錬磨のプレイで熱演。
 しかし残念なことに、これだけの素晴らしいアルバムが、多くの人に聴かれることもなく、そして青江三奈という素晴らしい歌手もこの時代には、過去の歌手として語られていたのが当時の日本だったように思う。
 47歳でこのアルバムを録音し、2000年に54歳で逝去。
THE SHADOW OF LOVE/青江三奈
¥2,520
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パンタ『PANTAX'S WORLD』

 黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』、ようやく半分まで読んだ。

●パンタ『PANTAX'S WORLD』


 頭脳警察を解散しソロ一作目としてリリースしたアルバムがこの1976年作。俺が二十歳の時。だけど残念ながら本作を聴いたのはずっと後のことだった。なんで素通りしちゃったのかな?あの頃聴いていても絶対に好きになったアルバムのはずなのに。パンタのソロは『マラッカ』から聴き始めた。大好きなアルバムだったのに、何故かそこから更にパンタの未聴盤へ向かうことはなかった。あの頃は聴きたい音楽がいっぱいありすぎたんだよね。
 さて
『PANTAX'S WORLD』です。チャーのギターがフィーチャーされていて、これがかっこいいんだよ。チャーはまだ売り出し前で、スタジオ・ミュージシャンだった頃のプレイなんだけど、やはりセンスの良さは隠せない。また塩次伸二のギターも渋く光ったプレイで好印象。チャーと塩次というタイプの違ったギタリストを曲によって使い分けてる。この辺、パンタのセンスなのか、プロデューサーのセンスなのか?ウィーピング・ハープ妹尾のブルース・ハープも効いてるし、ホーン・セクションも加わり、厚いロック・サウンドを聴かせる。というようにサウンド的には申し分なし。
 そしてそれ以上にパンタがいい!その曲も歌も文句なしにいい!パンタは詩人だね。ロック詩人。攻撃性とロマンチシズムが同居した男臭い詞がじつにかっこいい。そしてその吐き出すような歌声にも色気がある。余分な物をそぎ落とした骨太な歌声が痛快だ。きっと、人間として、男として素晴らしい人なんだよ、パンタはさ。
PANTAX’S WORLD(紙ジャケット仕様)/PANTA
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