音盤ながし -29ページ目

松本大洋『竹光侍』/CHARLIE MINGUS『TIJUANA MOODS』

●松本大洋『竹光侍』
 
六、七、八巻読了してついに完結。松本大洋の絵の力に圧倒されっぱなしだった気がするが、終わってみれば貴種漂流譚だったのかと一件落着。しかしラストに至るまでの永福一成のストーリー仕立ても巧かったなと感心。それにしても松本大洋、もう漫画家というより画家、松本画伯と呼びたいね。

CHARLIE MINGUS『TIJUANA MOODS』
 チャーリー・ミンガスの邦題『メキシコの想い出』。なんとこれ『THE PERFECT JAZZ COLLECTION 25 ORIGINAL ALBUMS』というCD・BOXの中の1枚。このBOX、驚くなかれAmazonにて4,586円で販売されたもので、1枚あたり183円!この安さは助かるよね。BOXはしっかりとした作りだし、各盤は紙ジャケ仕様で(安っぽい作りの紙ジャケだけど)ジャズの雰囲気が出ていて、なかなか良いBOXだと思う。
 ミンガスのこれは、LPでは持っていたけどCDでは始めて。気軽に聴けるので嬉しい。録音は'57年で、あの名作『直立猿人』『道化師』に続く作品。ミンガス自身が「我が最高の作品」とジャケットに記しているほどの自信作だった。妻を亡くし傷心の日々を送っていたミンガスが気分転換に旅行した先がメキシコのティファナ。そこでの印象を音楽にしたのが本作だと言われている。ミンガスらしいダイナミックなジャズだけど、ここには『直立猿人』『道化師』のプロテストや闘争的咆哮はない。それでもエキゾティックであり色彩的であり豊かな音楽性が感じられて好きなアルバムだ。'56'57年というジャズの最盛期に生まれたミンガスの傑作群に乾杯したい気分になった。
竹光侍 8 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)/松本 大洋
¥980
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The Perfect Jazz Collection: 25 Original Albums/Various Artists
¥4,548
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Tijuana Moods/Charlie Mingus
¥770
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2010年に読んだ83冊

読んだ順に....川上弘美『これでよろしくて?』 船戸与一『群狼の舞 満州国演義3』 船戸与一『炎の回廊 満州国演義4』 浅川マキ『こんな風に過ぎて行くのなら』 船戸与一『灰塵の暦 満州国演義5』 さいとうたかお『ゴルゴ13 伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』 高田郁『八朔の雪 みをつくし料理帖』 矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん!』上 ロバート・B・パーカー『プロフェッショナル』 金城一紀『フライ, ダディ, フライ』 北重人『白疾風』北重人『蒼火』 文藝別冊『追悼加藤和彦』 藤堂志津子『きままな娘わがままな母』 北方謙三『楊令伝 十二』 川西蘭『あねチャリ』 本間健彦『高田渡と父・豊の「生活の柄」』 佐々木譲『北帰行』 久世光彦『触れもせで 向田邦子との二十年』 宮本昌孝『風魔』上中下 歌野晶午『黄桜の季節に君を想うということ』 平岩弓枝『黒い扇』上下 金井美恵子『柔らかい土をふんで、』 冲方丁『天地明察』 北方謙三『楊令伝 十三』 豊島ミホ『リテイク・シックスティーン』 浅田次郎『月島慕情』 北重人『鳥かごの詩』 北重人『夏の椿』 北重人『月芝居』 北重人『汐のなごり』 宮部みゆき『小暮写眞館』 関川夏央『「坂の上の雲」と日本人』 速水健朗ほか『バンド臨終図鑑』 船戸与一『新・雨月 戊申戦役朧夜話』上下 樋口毅宏『日本のセックス』 樋口毅宏『さらば雑司ヶ谷』 宮原芽映『海の見える観覧車』 レジナルド・ヒル『骨と沈黙』 浦沢直樹『BILLY BAT 4 坂東真砂子『ブギウギ』 マイケル・バー=ゾウハー『ベルリン・コンスピラシー』 北方謙三『楊令伝 十四』 山本兼一『命もいらず名もいらず』 小川洋子『夜明けの縁をさ迷う人々』 萩原朔美『劇的な人生こそ真実~私が逢った昭和の異才たち』 横溝正史『人面瘡』 絲山秋子『絲的メイソウ』 長嶋有『夕子ちゃんの近道』 ジョン・リーランド『HIP:THE HISTORY/ヒップ - アメリカにおけるかっこよさの系譜学』 山田風太郎『甲賀忍法帖』 北重人『夜明けの橋』 小西康陽『マーシャル・マクルーハン広告代理店。ディスクガイド200枚』 CDジャーナルムック『加藤和彦読本』 平安寿子『おじさんとおばさん』 ミュージックマガジン増刊『クロス・レヴュー1981-1989 TR・スミス『チャイルド44』上下 鈴木清写真集『流れの歌』 高田郁『花散らしの雨~みをつくし料理帖』 レコードコレクターズ増刊『プログレッシヴ・ロック』『ブルース』『日本のロック/フォーク・アルバム・ベスト100 1960-1980 奥田英朗『家日和』 近藤よう子『逢魔が橋』 向田邦子『男どき女どき』 大沢在昌『ブラックチェンバー』 北重人『火の闇~飴売り三左事件帖』 山田風太郎『太陽黒点』 明野照葉『家族トランプ』 北方謙三『楊令伝 十五巻』 花村萬月『ウエストサイドソウル』 日暮泰文『のめりこみ音楽起業』 志水辰夫『引かれ者でござい』 角田光代『ひそやかな花園』 池上永一『トロイメライ』 中森明夫『アナーキー・イン・ザ・JP』 松本大洋『竹光侍 6-8巻』以上。
それぞれの感想はChamky Box 内『2010年に読んだ83冊』 でどうぞ。
http://www1.ocn.ne.jp/~chamky/book2010.htm

北方謙三『抱影』/ボブ・ディラン・モノ・ボックス

新年初ブログ。すでに4日。スタートからだらけてるな(笑)
●北方謙三『抱影』
 北方の現代モノは久しぶりかな。ずっと中国モノを読み続けていたから、ちょっと新鮮。で、ちょっとなんだよ違い、やはり北方謙三だ。現代でも水滸伝の世界でも、北方はくどいほど、男に生き様を語らせる作家なんだってこと。だから水滸伝も北方ハードボイルドとして読めるんだよね。
 今年の1冊目『抱影』の主人公はストイックだ。自分の流儀に拘る。端から見て、なんでそこまで、と思わせる程。で当然ながらかっこいい。ひとり静かに酒を飲み、葉巻を嗜む。ただ、命なんかいつ捨ててもいい、というような怖いモノ無しに生きる人物を主人公にするのって、どうなのかな、、、俺はそんな小説に飽きたのかもしれない、とこれを読みながら考えていた。

●『ボブ・ディラン・モノ・ボックス』
 原題は『BOB DYLAN THE ORIGINAL MONO RECORDINGS』。'62年のデビュー・アルバム『Bob Dylan』から'68年『John Wesley Harding』までの8作品を、モノラルミックスでCD化したもので、紙ジャケのほか日本盤には当時と同じ帯まで付いていて、マニア心をくすぐるボックスとなっている。しかも
中村とうよう氏による当時のライナーノーツも入っているから、丹念に読めば(まだ読んでいないので、、、)、ディランが当時の日本で、どのような存在だったのかが伺えるような気がして興味深い。60年代のディラン作品だから、全部持っているのは当然のことで、ボーナス・トラックも無いわけだから目新しさは無いのかも知れなし、モノだと言われても俺の普段のリスニング環境(店内)ではピンとこないかなとも思った。でも買ってしまったのは、既に持っているディランCDの音質への不満があるからで、ディランに限らず、CD時代に入った頃に続々リリースされたCDは、たいてい音質が悪いからです。安直にCDに焼き直したのが多かったんだよね。せっせせっせと好きだったLP盤をCDで買い直したんだけど、気がつけばなんでこんなに音が悪いの?となったわけ。これは悲しかった。だから好きなアルバムのリマスター盤が出る度に買わされるハメになる。これは音盤好きの宿命なのか(笑)いい加減にしないとな、という自戒も「リマスター」の名の下に忘れられ、、、。という言い訳の上に、この立派なディラン箱が手元にあるわけです。まだ数枚しか聴いていないけど、ほんと音が良いよ!生き生きとしたディランの歌とギターとサウンドが凄く新鮮。これは買って正解でした。
抱影 (100周年書き下ろし)/北方 謙三
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ボブ・ディラン・モノ・ボックス/ボブ・ディラン
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『アナーキー・イン・ザ・JP』中森明夫/ハル・ウィルナーの良い仕事

 今年は途中からメインのMacとOSを変えたので、HPで書いていた「音盤日記」も「音盤ながし」というブログに移行した。移行したのはいいんだけど、年末でまとめていた年間読書報告のようなものが、HPとブログに分かれてしまったために、何冊読んだとか全体の感じが見えにくくなってしまった。どうやってまとめようか思案中。
●中森明夫『アナーキー・イン・ザ・JP』
 にわかパンク少年がイタコおばばにシド・ヴィシャスの降霊を頼んだら、降りた霊はなんとアナーキスト大杉栄だったというお話し。しかも大杉がパンク少年の脳内に巣くってしまったからさあ大変面白い。大杉栄の大きさが現代を軽く飲み込み、パンクを軽く飛び越えカオスに至るアナーキー青春小説だ。戦前の左翼~無政府主義者が次々に登場し、それは日本だけじゃなくてロシアやパリへも広がるという脳内タイムマシン小説でもある。おまけに可愛いアイドルともイイコトやっちゃって、、、(笑) いやはや面白かった。

●『LOST IN THE STARS/THE MUSIC OF KURT WEILL』
●『STAY AWAKE/Various Interpretations of Music From Vintage Disney Films』
 ハル・ウィルナーのプロデュース・アルバムで'85年のクルト・ワイル集と'88年のディズニー映画音楽集。この2作品の間にセロニアス・モンク集があるんだけど、なぜか素通り。いつか聴こうとは思ってますが。
 ハル・ウィルナーの作品が面白いのは、その出演者にあるわけで、クルト・ワイル集ではマリアンヌ・フェイスフル、ヴァン・ダイク・パークス、ルー・リード、スティング、トッド・ラングレンなどロック・サイドから、そしてヘンリー・スレッギル、ジョン・ゾーン、カーラ・ブレイ&フィル・ウッズ、チャーリー・ヘイデンなどジャズ・サイドからの実力者達が、それぞれのクルト・ワイルを歌い演奏する。
 このクロスオーヴァーな試みは『STAY AWAKE』ディズニー映画音楽集へも引き継がれ、ナタリー・マーチャント、ロス・ロボス、ボニー・レイット(「Baby Mine」が素晴らしい!)、トム・ウェイツ、スザンヌ・ヴェガ、アーロン・ネヴィル、ガース・ハドソン、シンニード・オコナー、更にジェームス・テイラー、ハリー・ニルソン、リンゴ・スターなどロック界の大物まで参加し、ジャズ・サイドからはベティ・カーター、ビル・フリーゼル、そしてなんとサン・ラと彼のオーケストラまで参加。なんとも豪華で贅沢なアルバムとなっている。
 誰もが知っている名曲を、個性的なミュージシャンが独創的に歌い演奏する。スリルあり安らぎあり、とても楽しめる音盤です。
アナーキー・イン・ザ・JP/中森 明夫
¥1,680
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Music of Kurt Weill/Various Artists
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Stay Awake: Various Interpretations of Music fr.../Various Artists
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池上永一『トロイメライ』

 クリスマス・イブの24日がスノーダンプ出動初日となった。まさにホワイト・クリスマス(笑)。30センチ程の積雪と、たいした量ではなかったけど、今期初ということで身体が慣れていない。雪の重さが腕にくる。ようやく俺の身体に、冬のスイッチが入ったようだ。

●池上永一『トロイメライ』

 「お前が憎いっ!
お前が憎いっ!お前が憎いっ!」「アガーッ!アガーッ!アガーッ!お許しください長老様。」この大貫長老と新米筑佐事(岡っ引き)武太の、毎回出てくるやりとりが可笑しい。時は幕末琉球王朝時代、舞台は那覇。江戸市井物語を那覇に置き換えた趣もある。主人公は岡っ引きの武太。仕事はまだまだ半人前だが、三線と唄は天才的(本人の自覚は薄い)。事件のない夜は長虹堤の畔で三線を弾く。「民は唄の巧い武太を平和の声と親しんでいた。長虹堤で唄が聞こえる夜は、王国が平和だったという証拠だ。」と作中にあるとおり。武太の唄い奏でる琉球の歌と共に、物語りの重要な役割を果たしているのが、鍋(ナビー)・竈(カマドウ)・甕(カミー)という名前の三姉妹が料理の腕をふるう「おなり宿」。三姉妹が作る琉球料理がじつに美味そうで、読みながら腹が鳴る(笑)。民謡と料理に彩られた那覇の民の物語りに、そこにまた実に魅力的な人々が絡む。謎の覆面義賊 " 黒マンサージ " 、絶世の美女ジュリ(遊女)の魔加那、そして民の救済所涅槃院住職大貫長老など、キャラ立ちがじつにお見事!
 あ~面白かった。続編を是非お願いしたい!それにしても池上永一、近未来小説『シャングリ・ラ』の重厚さも良かったけど、この琉球物の方が俺は感心した。ということで、今更ではあるが『テンペスト』も読むことにした。
トロイメライ/池上 永一
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