音盤ながし -26ページ目

ムーンライダーズ『LIVE at SHIBUYA KOKAIDO 1982.11.16 青空百景

 2月9日、天気予報は大雪なのに快晴。国境の町は天気予報もハズレが多い。などと暢気にしていたら、夕方から荒れ模様になり、夜には雪となった。10日朝の積雪は5センチくらいかな。相変わらず雪の壁は2メートル近くあるし、春の雪消えは遅くなりそうだ。

●ムーンライダーズ『LIVE at SHIBUYA KOKAIDO 1982.11.16 青空百景』
 ライダーズのアーカイブ・シリーズに懐かしいライブ音源が登場。あの頃はよくライダーズのライブには出かけていた。チケットが取りやすかったしね。このライブの後くらいからかな、変に人気が出て、うっかりしてるとチケット取れなかったりして、それでだんだん足も遠のいたんだ。アルバムもそれ程売れてたわけじゃないし、全国的には知名度もそんなじゃないのに、やはり東京では人気のムーンライダーズ、なんだよね。あの趣味性の高さに付き合えるファンなんて東京のような大都会にしかいないだろうし。
 この渋公1982.11.16のライブは、その場で見ていたので、本盤を聴いてると色々と想い出せるんだけど、一言でいうとアコースティック・アンビエント&ポップ・アヴァンギャルド。判りづらい一言(笑)。アルバムでいうと『マニア・マニエラ』~『青空百景』の頃。同時にソロ活動や水族館レーベル設立など、バンド外でも各自が才能を開花させていた時期だった。
 このCDで聴くと、それなりにバンド感のあるまとまったサウンドだけど、実際に会場で聴いた感じでは、バンドとして散漫な印象があったし、ロック度も薄かった気がしたものだ。アンビエント風なインストが差し込まれたり、水族館レーベルからデビューした若手も混じり、独自のポップ・センスを披露してはいたものの、なにか物足りなさを感じたライブだったのを想い出す。やはり
実際の演奏が会場にきちんと伝わるってことは、当時のPA事情を思うと難しかったのかもしれない。
 当時のライダーズは「青春のおじさん達」とか「工場街のフォーク・ソング」とかを標榜していたと思うんだけど、あと『びっくりハウス』の「ヘンタイよいこ新聞」に近い位置にいたんだよね。そんなある種の軽さや諧謔も感じ取れるのが、この時期のライダーズだった気もしている。とにかく一筋縄ではいかない人達なので、いつの時代のライダーズも、目を離せないのだ。
ARCHIVES SERIES VOL.07 moonriders LIVE at SHIBU.../moonriders
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鈴木慶一『ヘイト船長回顧録』/ 志水辰夫『飢えて狼』

 二月が快晴続きだったから、もう春が来ると気を緩めていたら、三月に入って冬に戻ってしまった。今朝は猛吹雪で外は真っ白。だけどもう心配はしていないけどね。春は見えてる。

●志水辰夫『飢えて狼』
 1980年頃からいきなり国産冒険活劇小説が勃興したという記憶がある。北方謙三
  、谷恒生、大沢在昌、船戸与一達がワクワクドキドキな冒険小説でニョキニョキと登場したからだ。背景には「本の雑誌」で北上次郎がこれらの小説を積極的に援護射撃し、その面白さが徐々に本好きの間に広まったということがあった。
 そんな頃に " 驚異のデビュー作 " と凄い前評判を携えて登場したのが本書『飢えて狼』だった。当時の俺は北上信者として冒険小説にのめり込んでいたので、さっそく
興奮しながら読んだのだった。そして二十数年ぶりに再読。ずっと読み返したいという欲求はあったけど、新刊読みに追われ、読む機会が訪れなかったが、エイッと新刊蹴散らして、汚れた文庫本を読み出した。
 新鮮だったなあ。物語が全然色褪せていない。このストイックな叙情を湛えた文体は、今でも俺の中に心地よさそうに入ってくる。主人公は三浦海岸で小さなボート屋を営む三十男で、かつては一流クライマーとして有名だった男。彼は陰謀に乗せられ択捉島へ侵入する。もちろん非合法に。さてどうなることやら、、、(笑)。
 『飢えて狼』は個人と国家の物語だ。個人が国家に嫌悪する物語だ。国家イコール「国」ではなく、国家とは権力のことだ。個人と国民と国と国家。色褪せることのない重い問題がそこにあるからこそ、小説として有効だし喚起する必要もある。とか言うけど肝心の小説がつまらなければ論外なわけで、この志水辰夫はじめ北方、谷、大沢、船戸などは、そんな「個人と国家」を内包しつつ、じつに面白い小説を書いた作家達だった。

鈴木慶一『ヘイト船長回顧録』
 ムーンライダーズ鈴木慶一のソロアルバムにして曽我部恵一プロデュースによるシリーズ三作目完結編です。二作目『シーシックセイラーズ登場』をまだ聴いていないので、ちょっと肩身が狭い(笑)。それにしても、まろやかなサウンド、まろやかな歌声だ。俺は " 丸顔な音楽 " と呼んでみた。音像はシンプルでありながら情報量は多いという底深い音楽だ。
 鈴木慶一の作詞・作曲・歌を中心に、鈴木&曽我部のkeiichi×2が編曲とベーシック・トラックを作り、そこに多彩なゲストが共演しているというアルバム。ゲストで注目なのは、スリー・グレイセスとボニー・ジャックスという戦後の日本ポピュラー史を彩ったコーラス・グループ。昭和三十年代の歌謡曲を知ってる世代なら誰もが思い出す懐かしい名前だよね。そんなコーラス・グループを曲のど真ん中に起用してるとこが、鈴木慶一の凄さ懐の深さだと思う。
 「すべてはジャズと呼ばれていた」というタイトル曲に象徴されているように、戦後洋楽の何でもありな豊潤さ猥雑さ逞しさを思い起こさせるようなコンセプトが本作にはあると思う。それをナツメロ臭さを感じさせず、21世紀のコクで料理した(料理人は曽我部君)ところが本作の強みだね。ゲストには遠藤賢司、パンタ、あがた森魚、高橋幸宏といった慶一ゆかりの古強者も参加。一筋縄ではいかない音楽なので、ゆっくりと噛み締めながら聴き続けたいアルバムだね。
飢えて狼 (新潮文庫)/志水 辰夫
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ヘイト船長回顧録 ラヴ航海士抄/鈴木慶一
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オキ・ダブ・アイヌ・バンド『サハリン・ロック』

 ようやく3月、春が見えてきた。志水辰夫『飢えて狼』を二十数年ぶりに再読している。冒険小説の名作だよね。シミタツ節が妙に懐かしい。

●オキ・ダブ・アイヌ・バンド『サハリン・ロック』
 樺太アイヌの楽器トンコリを弾くOKIの去年リリースの新作。民族楽器による音楽だからといって、プリミティブな素朴さを求めていては面食らうよ。これはダンス・ミュージックだ。
 トンコリは電化され、ぶっ太いベースとドラムにエンジニアも加えたダブ編成。樺太発ダブ・ロック~ワールドミュージックとなっている。バンドのメンバーには沼澤尚(ds)、エマーソン北村(kbd)、中条卓(b)、それにエンジニア内田直之と強力な布陣。
 このリズミカルでカラフルなサウンドを聴いて思い浮かんだのがサカキマンゴー(笑)おっと笑っちゃいけない。中里村の雪原で熱演したサカキマンゴーさんの
とても人懐こい音楽とパフォーマンスが印象に残ってるもんだから。オキは樺太のトンコリ、サカキマンゴーはアフリカのリンバ(親指ピアノ)と、国も楽器も違うのに印象が似ているのが面白い。
 ジャケット写真に写るトンコリを抱えたオキの、その背景は樺太の北緯50度線あたりの町で、ここより南はかつて日本の領土南樺太だった。樺太にしろ国後・択捉など北方四島にしろ、日本政府は思い出したように「北方領土を返せ」と言うだけで、戦後一貫して熱意の無いのは明らかだ。沖縄も北方の島々も、戦後日本によって切り捨てられた土地だったのだ、などと珍しく政治っぽいことを思った。『飢えて狼』の舞台が国後・択捉なので、なおのこと考えてしまった。

SAKHALIN ROCK/OKI DUB AINU BAND
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金城一紀『映画篇』/JEFF BECK『LIVE AND EXCLUSIVE』

●金城一紀『映画篇』
 5篇の短編にそれぞれ映画が纏わる趣向で、もちろんそれぞれに面白かったりホロリときたりで、そしてどの物語もラストに明るさがあり、ラストの「愛の泉」なんか大ハッピーエンド。当然読後感も上々。だけど、金城一紀だからそのくらいの小説はアリなわけでまあ当然。感心したのは、5篇の物語の主人公達が、ある町の区民会館ホールで開催された『ローマの休日』無料上映会に居合わせるという趣向。年代も仕事もバラバラな人達が『ローマの休日』を観に集まるまでのストーリーが良いんだな。

 考えていることも抱えているものも違う人達が同じ場所と時を共有しているってこと、当たり前なんだけど忘れられてることでもあると思う。そんなそれぞれに違った人達が、1本の映画ですこし幸せになれる、そんなことを願い表現するのが「物語」なんだと思ったよ。

●JEFF BECK『LIVE AND EXCLUSIVE』From the Grammy Museum
 当初ネット配信のみの音源がCD化されたという案内が届いたので即買い。近年のベックのギターは神憑ってるからね。2010年4月、LAにあるグラミーミュージアムで行ったライブを収録したもので、親しい人達を集めて行った限定ライブだったらしい。バックのメンバーは ロンダ・スミス(b)、ジェイソン・リベロ(key)にナラダ・マイケル・ウォルデン(ds)。愛しのタル嬢が抜けちゃったのでビジュアル的には90%マイナスだけど(笑)、演奏は流石に手堅い。でも、タル+カリウタの前リズム・コンビに比べると練り込みがまだちょっと足りない感じ。でもここはベックのギターを楽しむことだけで満足だよね。トーンとヴォリュームのコントロールが見事、アームのプレイは神業、エレクトリック・ギターをここまで弾きこなした人は他にいないでしょって感じ。ジェフ・ベック!爺さんとなっても恐るべし!歳は爺さんなのにルックスがぜんぜん変わらないんだもの、イヤになっちゃうね(笑) こりゃあギター魔神だな。
映画篇 (集英社文庫)/金城 一紀
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Live & Exclusive From the Grammy Museum/Jeff Beck
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鈴木清写真集『流れの歌』/ ジェシ・デイヴィス『Ululu』

 晴天続きで春の近づきを感じる。娘はスキー授業でニューグリンピア津南です(2/22)。親がまったくスキーをしないので、娘もスキーするのは学校の授業だけ、だから上手く滑れないと思い可愛そうな気もするけど。俺が20代の頃って猫も杓子もスキーだったんだよね。上野や新宿の駅にはスキーを持った若者がうようよいたし、この辺の若者達はみんな車にスキー積んでスキー場で遊んでた。みんながやることに興味が湧かない天の邪鬼な俺は、だからスキーに背を向け今日に至る(笑)でもね、今の寂しいスキー人口を考えると、あれも一時のブームだったんだなと、これまた寂しさも覚える。

●鈴木清写真集『流れの歌』
 風景よりは人物や世相が写されている写真が好きです。持ってる写真集もそんなものです。この写真集は新聞の新刊紹介覧で見つけて手に入れたんだけど、元は1972年に自費出版されたものです。自慢しようと、友人で新聞記者兼カメラマンのエーイチさんに見せたところ、「俺は元の写真集を持ってる」と言われがっくり(笑)。俺が知らなかっただけで、写真の世界では知る人ぞ知る鈴木清であり『流れの歌』なのだそうです。
 '70年前後の頃の寂れゆくものたち、炭鉱、サーカス、プロレス、旅芸人、そして都市の裏町、そこに息づく人達を静かに写し出します。『流れの歌』の英語タイトルは『soul and soul 』。ここにある魂は、叫ぶ魂ではなく、語りたげな魂、だろうか。一言では言い表せない深みと淀みがこの一群の写真にあると思う。

●Jesse Ed Davis 『 Ululu 』
 ジェシ・デイヴィスの『ウルル』が名盤なのは何を今更で、ほめ言葉を連ねるのも面倒くさい程大好きな音盤。'72年作品、あの頃の言葉で言えばスワンプ・ロック。土埃が立ちのぼるようなザラついた感触なのにほっこり温かく、そして一本気で骨太なロックンロールがここにある。
 演奏メンバーはジェシ(vo.g)、ジム・ケルトナー(ds)、ドナルド・ダック・ダン(b)、Dr.ジョン(p)が基本となり、レオン・ラッセルやラリー・ネクテルなども参加している。ジェシのギター、その代名詞となったスライド・ギターだけど、けっしてテクニシャンではない。しかし、そのちょっとやさぐれたやるせないような音色とフレーズは、ジェシでしかありえない個性的なもので、噛むほどに味わい深まる美味なプレイなのだ。ヴォーカルだって上手いわけじゃない。ほっこりとしたおおらかな歌声には、人懐こさと寂しさがあり、これまた滋味な歌声なのだ。
 ジェシ・エド・デイヴィスは生粋のネイティブ・アメリカンすなわちインディアンに生まれた。そして'89年に43歳という若さであの世に旅立った。
流れの歌/鈴木 清
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