鈴木慶一『ヘイト船長回顧録』/ 志水辰夫『飢えて狼』
二月が快晴続きだったから、もう春が来ると気を緩めていたら、三月に入って冬に戻ってしまった。今朝は猛吹雪で外は真っ白。だけどもう心配はしていないけどね。春は見えてる。
●志水辰夫『飢えて狼』
1980年頃からいきなり国産冒険活劇小説が勃興したという記憶がある。北方謙三 、谷恒生、大沢在昌、船戸与一達がワクワクドキドキな冒険小説でニョキニョキと登場したからだ。背景には「本の雑誌」で北上次郎がこれらの小説を積極的に援護射撃し、その面白さが徐々に本好きの間に広まったということがあった。
そんな頃に " 驚異のデビュー作 " と凄い前評判を携えて登場したのが本書『飢えて狼』だった。当時の俺は北上信者として冒険小説にのめり込んでいたので、さっそく興奮しながら読んだのだった。そして二十数年ぶりに再読。ずっと読み返したいという欲求はあったけど、新刊読みに追われ、読む機会が訪れなかったが、エイッと新刊蹴散らして、汚れた文庫本を読み出した。
新鮮だったなあ。物語が全然色褪せていない。このストイックな叙情を湛えた文体は、今でも俺の中に心地よさそうに入ってくる。主人公は三浦海岸で小さなボート屋を営む三十男で、かつては一流クライマーとして有名だった男。彼は陰謀に乗せられ択捉島へ侵入する。もちろん非合法に。さてどうなることやら、、、(笑)。
『飢えて狼』は個人と国家の物語だ。個人が国家に嫌悪する物語だ。国家イコール「国」ではなく、国家とは権力のことだ。個人と国民と国と国家。色褪せることのない重い問題がそこにあるからこそ、小説として有効だし喚起する必要もある。とか言うけど肝心の小説がつまらなければ論外なわけで、この志水辰夫はじめ北方、谷、大沢、船戸などは、そんな「個人と国家」を内包しつつ、じつに面白い小説を書いた作家達だった。
●鈴木慶一『ヘイト船長回顧録』
ムーンライダーズ鈴木慶一のソロアルバムにして曽我部恵一プロデュースによるシリーズ三作目完結編です。二作目『シーシックセイラーズ登場』をまだ聴いていないので、ちょっと肩身が狭い(笑)。それにしても、まろやかなサウンド、まろやかな歌声だ。俺は " 丸顔な音楽 " と呼んでみた。音像はシンプルでありながら情報量は多いという底深い音楽だ。
鈴木慶一の作詞・作曲・歌を中心に、鈴木&曽我部のkeiichi×2が編曲とベーシック・トラックを作り、そこに多彩なゲストが共演しているというアルバム。ゲストで注目なのは、スリー・グレイセスとボニー・ジャックスという戦後の日本ポピュラー史を彩ったコーラス・グループ。昭和三十年代の歌謡曲を知ってる世代なら誰もが思い出す懐かしい名前だよね。そんなコーラス・グループを曲のど真ん中に起用してるとこが、鈴木慶一の凄さ懐の深さだと思う。
「すべてはジャズと呼ばれていた」というタイトル曲に象徴されているように、戦後洋楽の何でもありな豊潤さ猥雑さ逞しさを思い起こさせるようなコンセプトが本作にはあると思う。それをナツメロ臭さを感じさせず、21世紀のコクで料理した(料理人は曽我部君)ところが本作の強みだね。ゲストには遠藤賢司、パンタ、あがた森魚、高橋幸宏といった慶一ゆかりの古強者も参加。一筋縄ではいかない音楽なので、ゆっくりと噛み締めながら聴き続けたいアルバムだね。
●志水辰夫『飢えて狼』
1980年頃からいきなり国産冒険活劇小説が勃興したという記憶がある。北方謙三 、谷恒生、大沢在昌、船戸与一達がワクワクドキドキな冒険小説でニョキニョキと登場したからだ。背景には「本の雑誌」で北上次郎がこれらの小説を積極的に援護射撃し、その面白さが徐々に本好きの間に広まったということがあった。
そんな頃に " 驚異のデビュー作 " と凄い前評判を携えて登場したのが本書『飢えて狼』だった。当時の俺は北上信者として冒険小説にのめり込んでいたので、さっそく興奮しながら読んだのだった。そして二十数年ぶりに再読。ずっと読み返したいという欲求はあったけど、新刊読みに追われ、読む機会が訪れなかったが、エイッと新刊蹴散らして、汚れた文庫本を読み出した。
新鮮だったなあ。物語が全然色褪せていない。このストイックな叙情を湛えた文体は、今でも俺の中に心地よさそうに入ってくる。主人公は三浦海岸で小さなボート屋を営む三十男で、かつては一流クライマーとして有名だった男。彼は陰謀に乗せられ択捉島へ侵入する。もちろん非合法に。さてどうなることやら、、、(笑)。
『飢えて狼』は個人と国家の物語だ。個人が国家に嫌悪する物語だ。国家イコール「国」ではなく、国家とは権力のことだ。個人と国民と国と国家。色褪せることのない重い問題がそこにあるからこそ、小説として有効だし喚起する必要もある。とか言うけど肝心の小説がつまらなければ論外なわけで、この志水辰夫はじめ北方、谷、大沢、船戸などは、そんな「個人と国家」を内包しつつ、じつに面白い小説を書いた作家達だった。
●鈴木慶一『ヘイト船長回顧録』
ムーンライダーズ鈴木慶一のソロアルバムにして曽我部恵一プロデュースによるシリーズ三作目完結編です。二作目『シーシックセイラーズ登場』をまだ聴いていないので、ちょっと肩身が狭い(笑)。それにしても、まろやかなサウンド、まろやかな歌声だ。俺は " 丸顔な音楽 " と呼んでみた。音像はシンプルでありながら情報量は多いという底深い音楽だ。
鈴木慶一の作詞・作曲・歌を中心に、鈴木&曽我部のkeiichi×2が編曲とベーシック・トラックを作り、そこに多彩なゲストが共演しているというアルバム。ゲストで注目なのは、スリー・グレイセスとボニー・ジャックスという戦後の日本ポピュラー史を彩ったコーラス・グループ。昭和三十年代の歌謡曲を知ってる世代なら誰もが思い出す懐かしい名前だよね。そんなコーラス・グループを曲のど真ん中に起用してるとこが、鈴木慶一の凄さ懐の深さだと思う。
「すべてはジャズと呼ばれていた」というタイトル曲に象徴されているように、戦後洋楽の何でもありな豊潤さ猥雑さ逞しさを思い起こさせるようなコンセプトが本作にはあると思う。それをナツメロ臭さを感じさせず、21世紀のコクで料理した(料理人は曽我部君)ところが本作の強みだね。ゲストには遠藤賢司、パンタ、あがた森魚、高橋幸宏といった慶一ゆかりの古強者も参加。一筋縄ではいかない音楽なので、ゆっくりと噛み締めながら聴き続けたいアルバムだね。
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