黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』
●黒岩比佐子『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』
著者黒岩比佐子の気迫のこもった渾身の一作にして名著として語り継がれる作品だと思います。ほんと素晴らしい! 彼女は2010年7月にこの本を書き上げ(発刊は同年10月7日)、11月17日膵臓がんのため逝去されました。本書のあとがきには「堺利彦のようにいつもユーモアを忘れず、楽天囚人ならぬ " 楽天患者 " として生きることで、きっと乗り越えて行けるだろうと信じている。」と書かれてありました。残念です、、、。
さて堺利彦です。不勉強なので知ってる事と言ったら、幸徳秋水と並ぶ戦前の社会主義運動の大物で、大逆事件というでっち上げの罪で死刑となり殺された幸徳、また憲兵に拘禁され虐殺された大杉栄に比べ地味な存在、それくらいしか知識がなかったというか興味がなかったわけです。しかし本書を読んだ今では、その精神的な強さ、天性の優しさ、機を見て敏なる行動力などなど、人間堺利彦の魅力に魅せられてしまいました。
明治大正昭和の初期、社会主義運動への苛烈な弾圧、そんな " 社会主義運動冬の時代 " に、貧窮する同士達に生計の道を与えるために起こした「売文社」にスポットを当てた意義は大きく、そこからは文学者でありペンの人であった堺利彦の魅力が浮かび上がります。大正三年読売新聞に掲載された堺の一文には「ペンを以てパンを求むるは僕等の営業である。今度僕の社で拵える年始の葉書には、食パンに万年筆を突きさした画をかいて、それを商標の代わりにすることにして居る。.....世にはペンとパンとの関係を秘密にする者がある。或いは之を曖昧にする者がある。.....僕等はペンを以てパンを求めることを明言する。」と高らかな宣言があります。で、どんな社員がいたかというと、アナーキスト大杉栄、社会主義者荒畑寒村・山川均、日本初『資本論』全訳者高畠素之、『人生劇場』の尾崎士郎、人気演歌師添田唖蟬坊の息子で♪ラメチャンタラギッチョンチョンデ、パイノパイノパイ「東京節」を歌った添田知道など、まるで梁山泊のような会社に思えますね。
さらにその仕事の内容もユニークで、売文社営業案内には、写真説明文の英訳、雅号の選定、商標考案、新刊雑誌発行趣意書、雑誌原稿、英文及独文書簡、カタログ編集及意匠、仏文和訳、演説草案起稿、某学校卒業式生徒総代答辞、某氏自伝談話筆記及編集、性欲記事英訳(笑)、まだまだあるが、とにかく今で言う広告代理店・編集プロダクション・翻訳会社の業務を一手に引き受けていたわけです。先見の明というより、ペンで食べていくという強烈な意志を感じてしまいます。
戦前の社会主義者を扱った本なので、当然暗く惨い話も出てはくるけど、ペンの人・フェミニスト・天性のユーモリストとしての堺利彦に光を当てたことにより、真に前向きに生きることを思い、そこから風通しの良い戦前史が立ち上ったように思えました。
著者黒岩比佐子の気迫のこもった渾身の一作にして名著として語り継がれる作品だと思います。ほんと素晴らしい! 彼女は2010年7月にこの本を書き上げ(発刊は同年10月7日)、11月17日膵臓がんのため逝去されました。本書のあとがきには「堺利彦のようにいつもユーモアを忘れず、楽天囚人ならぬ " 楽天患者 " として生きることで、きっと乗り越えて行けるだろうと信じている。」と書かれてありました。残念です、、、。
さて堺利彦です。不勉強なので知ってる事と言ったら、幸徳秋水と並ぶ戦前の社会主義運動の大物で、大逆事件というでっち上げの罪で死刑となり殺された幸徳、また憲兵に拘禁され虐殺された大杉栄に比べ地味な存在、それくらいしか知識がなかったというか興味がなかったわけです。しかし本書を読んだ今では、その精神的な強さ、天性の優しさ、機を見て敏なる行動力などなど、人間堺利彦の魅力に魅せられてしまいました。
明治大正昭和の初期、社会主義運動への苛烈な弾圧、そんな " 社会主義運動冬の時代 " に、貧窮する同士達に生計の道を与えるために起こした「売文社」にスポットを当てた意義は大きく、そこからは文学者でありペンの人であった堺利彦の魅力が浮かび上がります。大正三年読売新聞に掲載された堺の一文には「ペンを以てパンを求むるは僕等の営業である。今度僕の社で拵える年始の葉書には、食パンに万年筆を突きさした画をかいて、それを商標の代わりにすることにして居る。.....世にはペンとパンとの関係を秘密にする者がある。或いは之を曖昧にする者がある。.....僕等はペンを以てパンを求めることを明言する。」と高らかな宣言があります。で、どんな社員がいたかというと、アナーキスト大杉栄、社会主義者荒畑寒村・山川均、日本初『資本論』全訳者高畠素之、『人生劇場』の尾崎士郎、人気演歌師添田唖蟬坊の息子で♪ラメチャンタラギッチョンチョンデ、パイノパイノパイ「東京節」を歌った添田知道など、まるで梁山泊のような会社に思えますね。
さらにその仕事の内容もユニークで、売文社営業案内には、写真説明文の英訳、雅号の選定、商標考案、新刊雑誌発行趣意書、雑誌原稿、英文及独文書簡、カタログ編集及意匠、仏文和訳、演説草案起稿、某学校卒業式生徒総代答辞、某氏自伝談話筆記及編集、性欲記事英訳(笑)、まだまだあるが、とにかく今で言う広告代理店・編集プロダクション・翻訳会社の業務を一手に引き受けていたわけです。先見の明というより、ペンで食べていくという強烈な意志を感じてしまいます。
戦前の社会主義者を扱った本なので、当然暗く惨い話も出てはくるけど、ペンの人・フェミニスト・天性のユーモリストとしての堺利彦に光を当てたことにより、真に前向きに生きることを思い、そこから風通しの良い戦前史が立ち上ったように思えました。
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