音盤ながし -21ページ目

東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』

 娘を友達の家まで送りに、米原まで行ってきた。車で10分のすぐそこなんだけどね。俺の同級生も多いし専業農家も多い。かつては開拓のムラで、先人達は苦労してこの大地を耕し田畑に変えた。今はユリの一大産地となった。食える農業を目指し実践してきたムラだ。若手後継者も多いようだ。今津南町で一番元気があるのは、こうした農業者で、この米原や貝坂に来るとそれが実感できる。

●東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』
 2011年本屋大賞受賞作である。悲しい!なんでこの程度の小説が受賞したんだろ?メディア戦略とか働いてるのかな?
『博士の愛した数式』小川 洋子、『夜のピクニック』恩田 陸、『一瞬の風になれ』佐藤 多佳子、『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎、『天地明察』冲方丁など、過去の受賞作に比べて数段落ちる作品だと思う。ひどい小説じゃない。なかなか面白い。だけど大賞を取る程じゃないと思うけどなあ。
 ヒロインの刑事宝生麗子は大富豪の令嬢。当然キャディラック・リムジンに執事付き。相棒刑事風祭はこれまた大会社社長の坊ちゃん。シルバー・メタリックのジャガーを乗り回す。この刑事二人の名前と令嬢坊ちゃんぶりから、ああこれはキャラ優先のライト・ミステリだと判ってしまう。麗子と執事の景山と風祭の三人が主要キャラ。犯人・被害者・関係者は主要キャラ三人を引き立てるための背景のような扱い。どっちかといえばマンガに近い小説だな。だから判りやすいし面白い。カバーは人気の中村祐介。
 最初からTVドラマ・アニメ・映画など映像化されることを望んで書かれたような小説で、そうした商売的あざとさを感じさせる小説であり、それを本屋の皆さんが押してしまうって、なんか選考した書店員のレベルが低くなったとしか思えないな。
謎解きはディナーのあとで/東川 篤哉
¥1,575
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桜井芳樹・西脇一弘『far home』

 雨だなあ。まあ梅雨だからしょうがないけど。今日は集落の田休み行事があるので、行事の主催者はこの雨に気を揉んでいることだろう。晴れ上がって欲しいね。

●桜井芳樹・西脇一弘『far home』

 ゴンチチ、デパペペ、山弦などギター・インスト・デュオによる音楽は以外と人気があるし、TVなどでもBGMとして耳にする機会が多い。まあアコースティック系のインストなので、耳に優しいってのも人気の要因だと思う。
 ロンサム・ストリングスの桜井芳樹とさかなの西脇一弘によるギター・デュオ・アルバムに気安さとか気楽なBGMを求める人は、彼等のファン、熱心な音楽ファンにはいないだろう。それ程、彼等のセンスの良さと実力は認められているし、なにより一筋縄ではいかない音楽を奏でてきた二人だからだ。
 本盤は2010年のリリース。お互いが、アコギ、エレキ、クラシック、リゾネイターなど様々なギターを使用し創り上げた、オリジナル曲中心のインスト作品。メロディーと音色、そして鳴りに細心の工夫が施されている。静かで深く、そして妖しい、この上なく魅力的なギター音楽がここにある。素晴らしい!
far home/桜井芳樹・西脇一弘
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ドン・ウインズロウ『フランキー・マシーンの冬』上下巻

 3時のコーヒータイムを終えたら外に出て草刈と除草剤散布をしようと思っていたら、雨が降ってきた。しかも雷も聞こえるので外仕事は中止。店番しながらブログ書いて暇つぶし。

●ドン・ウインズロウ『フランキー・マシーンの冬』上下巻

 元マフィアの殺し屋、その正確無比な仕事ぶりからフランキー・マシーンの異名を持つ男フランク・マシアーノ。そんな伝説の凄腕も、今や62歳。 " 餌屋のフランク " として地元サンディエゴの人達から親しまれている。そんな引退した元マフィアが、突然命を狙われることになる。何故か?相手は?命を狙うほど自分を恨んでいる奴は一体誰なのか、過去を振り返る。逃げながら闘い、闘いながら逃げそして考える日々が始まる。
 ギャング物であり、クライム・ノベルなので、暴力や殺人のシーンは多い。でありながら陰惨な感じがしないのは、スピーディーなストーリーの展開と、悪い奴らながらちょっとユーモラスなセリフ、そしてフランクの筋の通った正義漢(ギャングなのにw)、これらの要素が物語を悪漢小説ではなく、極上のエンタテイメントとしているように思う。
 なんといってもフランク、腕っぷしだけでなく頭脳も冴え度胸も人一倍、そして家族思いの老フランキー・マシーンがかっこいいんだよ!。
フランキー・マシーンの冬 上 (角川文庫)/ドン・ウィンズロウ
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フランキー・マシーンの冬 下 (角川文庫)/ドン・ウィンズロウ
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ロンサム・ストリングス&中村まり『folklore session』

 昨夜は外丸の福原君という若者に誘われ、十日町Twitter交流会に出席。サバスでの飲み会なんだけど、久しぶりに若い人達(俺より若いってことね)といろんな話しができて楽しかった。

●ロンサム・ストリングス&中村まり『folklore session』

 桜井芳樹、田村玄一、原さとし、松永孝義という凄腕が揃ったロンサム・ストリングスが、アメリカン・ルーツ・ミュージックの素晴らしい歌い手中村まりを迎えて作り上げた傑作。新作にしてすでに名盤です。ハリー・スミス編集の『アンソロジー・オブ・アメリカン・フォーク・ミュージック』の世界が時空を越えて、ロンサム・ストリングス&中村まりにより、今の音楽として生まれ変わった、そんな感じがする。
 中村まりの歌声は、ちょうどマリア・マルダーが『オールド・タイム・レイディ』を出した、あの頃に似ていて、とても雰囲気のある歌声だ。マリアのような艶っぽさはないけどね(笑)。ロンサム・ストリングスの演奏も、今まで以上にストレートでキレがいい。松永の安定感あるボトムに乗って、桜井、田村、原が、それぞれ達者な腕前で生き生きと奏でる。 
 こうしたアルバムはミュージシャン冥利に尽きるとも言えるし、中村まりという若い才能が歌うことにより、若い人達がこうした古い音楽を、まったく新しい音楽として出会い興味を持ってくれる、そんな気もする。
 ちなみに、少し前にリリースされたバディ・ミラーの『ザ・マジェスティック・シルバー・ストリングス』と盤面デザインが似た趣向(楽器それぞれの弦を絡めたデザイン)になっているのが面白い。桜井さんがTwitterで「やられた!」とつぶやいたのが可笑しかった。
フォークロア・セッション/ロンサム・ストリングス
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志水辰夫『つばくろ越え』

 どうやら梅雨入りのようだ。まだ5月末なのに、今から梅雨ってのもなんだかなあ。後ろの田んぼでは、雨の中、家族総出の田植えが忙しそう。

●志水辰夫『つばくろ越え』
 『引かれ者でござい~蓬莱屋帳外控』
を先ず読み、そしてシリーズ前作にあたる『つばくろ越え』を読んだ。ただ単に『つばくろ..』を読み忘れていただけなんだけどね(笑)。連作短編集だから、どこから読んでも大丈夫。この蓬莱屋シリーズは江戸時代の飛脚の話しなんだけど、ただの飛脚ではない。
 先ずは説明。この時代、江戸の商取引は公儀の禄高を上回る程で、日本橋界隈の大店を移動する金だけでも、一日十万両は下らなかったとある。江戸京都大阪間の商取引は為替切手による相殺勘定が多く、正金(現金)が動くことは多くなかったようだが、商業経済が十分でなかったその他諸国になると、正金のやりとりが中心で、その運送を一手に引き受ける飛脚問屋も少なくなかった。とは本書より勉強。さて、大金を安全に運ぶとなると多くの人手が必要で日数もかかり、したがってその費用もばかにならない。そこで考え出されたのが、少人数でひそかに運ぶ方法。そこで必要になってくるのが、慎重で用心深く肝が据わり機転が利く、そして腕も立てば足の速い、そんなスーパー飛脚だ。
 本書
蓬莱屋シリーズは、そんなスーパー飛脚の物語。だからそりゃもう面白いのなんの。山岳冒険小説のスリルに、ホロリとさせる庶民の物語が加味され、これは今までになかった時代小説だと思う。股旅ものがあったか、、、?(笑)
 志水辰夫は冒険小説時代、その叙情豊かな文体から「シミタツ節」とよばれ人気があった。今のシミタツは、ある意味過剰だった叙情に頼らず、簡潔で力強い表現、真っ直ぐな視線で人々の営みを描き、その空気感は澄んだ叙情と言ってもいいように思う。時代小説としては地味だとは思うけど、これは素晴らしい小説だ。時代小説という大きな山脈があり、その中に独居峰として高く屹立する山、それが今の志水辰夫だと思う。

 ちなみに、『つばくろ越え』の中「ながい道草」には、松之山の豊原峠を越えて、そして秋山郷へ、という道行きが記されます。おお!我が津南町が舞台となるのか?さあてどうなることやら、、、(笑)
つばくろ越え/志水 辰夫
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