志水辰夫『つばくろ越え』 | 音盤ながし

志水辰夫『つばくろ越え』

 どうやら梅雨入りのようだ。まだ5月末なのに、今から梅雨ってのもなんだかなあ。後ろの田んぼでは、雨の中、家族総出の田植えが忙しそう。

●志水辰夫『つばくろ越え』
 『引かれ者でござい~蓬莱屋帳外控』
を先ず読み、そしてシリーズ前作にあたる『つばくろ越え』を読んだ。ただ単に『つばくろ..』を読み忘れていただけなんだけどね(笑)。連作短編集だから、どこから読んでも大丈夫。この蓬莱屋シリーズは江戸時代の飛脚の話しなんだけど、ただの飛脚ではない。
 先ずは説明。この時代、江戸の商取引は公儀の禄高を上回る程で、日本橋界隈の大店を移動する金だけでも、一日十万両は下らなかったとある。江戸京都大阪間の商取引は為替切手による相殺勘定が多く、正金(現金)が動くことは多くなかったようだが、商業経済が十分でなかったその他諸国になると、正金のやりとりが中心で、その運送を一手に引き受ける飛脚問屋も少なくなかった。とは本書より勉強。さて、大金を安全に運ぶとなると多くの人手が必要で日数もかかり、したがってその費用もばかにならない。そこで考え出されたのが、少人数でひそかに運ぶ方法。そこで必要になってくるのが、慎重で用心深く肝が据わり機転が利く、そして腕も立てば足の速い、そんなスーパー飛脚だ。
 本書
蓬莱屋シリーズは、そんなスーパー飛脚の物語。だからそりゃもう面白いのなんの。山岳冒険小説のスリルに、ホロリとさせる庶民の物語が加味され、これは今までになかった時代小説だと思う。股旅ものがあったか、、、?(笑)
 志水辰夫は冒険小説時代、その叙情豊かな文体から「シミタツ節」とよばれ人気があった。今のシミタツは、ある意味過剰だった叙情に頼らず、簡潔で力強い表現、真っ直ぐな視線で人々の営みを描き、その空気感は澄んだ叙情と言ってもいいように思う。時代小説としては地味だとは思うけど、これは素晴らしい小説だ。時代小説という大きな山脈があり、その中に独居峰として高く屹立する山、それが今の志水辰夫だと思う。

 ちなみに、『つばくろ越え』の中「ながい道草」には、松之山の豊原峠を越えて、そして秋山郷へ、という道行きが記されます。おお!我が津南町が舞台となるのか?さあてどうなることやら、、、(笑)
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