音盤ながし -15ページ目

スティーヴ・クロッパー『Dedicated』

●STEVE CROPPER『Dedicated』

 メンフィスのギタリスト、スティーヴ・クロッパーのこのアルバム、Amazonで前から見かけていたんだけど、ジャケット写真が若かりしスティーヴなので、彼の若い頃のセッション・コンピュレ物かと思い、買わずにいました。ところがどっこい、これが新作アルバムと判り即購入。内容も超ゴキゲンで嬉しい1枚ですよ。


 スティーヴ・クロッパーは言わずと知れたメンフィス・スタックス・レコードのセッション・ギタリスト。MG'Sのメンバーとしてオーティス・レディングを始め、数々のソウル・レコーディングで活躍。またオーティスの絶唱「ドック・オブ・ベイ」の共作者としても有名ですね。MG's解散後もリヴォン・ヘルム&リコ・オールスターズやブルース・ブラザーズ・バンドなどで活躍し、テレキャスターによる味わい深いバッキングには定評がありますね。


 さてこの新作アルバム、なんと有名なR&Bグループ、ファイヴ・ロイヤルズへのトリビュート・アルバムです。ギタリスト、ロウマン・ポーリングを擁した人気コーラス・グループの5・ロイヤルズ、いいですね~大好きよ。てなわけで、先ず飛び出す1曲目でノックアウトされた。快調なイントロ・リフに切り込んでくるのはステーヴ・ウインウッド!いなせなボーカルがなんともかっこいい!そしてB.B.キング、ベティ・ラヴェット、ルシンダ・ウイリアムス、バディ・ミラー、ダン・ペンなど、次々に歌声を披露。ブライアン・メイまでギターで参加し、あの音色で流麗なソロを披露したり。もうけた!って嬉しさでいっぱいです。


 バックには、ベースにデヴィッド・フッド、ピアノ・オルガンにスプーナー・オールダム、ドラムにはスティーヴ・ジョーダン、スティーヴ・フェローンと素晴らしいメンツが集合。主役のクロッパーは、いつもよりソロ多め、音大きめで、彼のファンだけでなく、ギター・ファンにも楽しめる音盤となっています。いやあ~嬉しいなあ~♪
Dedicated/Steve Cropper
¥1,303
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センチメンタル・シティ・ロマンス『やっとかめ』

●センチメンタル・シティ・ロマンス『やっとかめ』

 名古屋の弟の里帰りと合わせたように、このアルバムが届いた。”やっとかめ”名古屋弁で”ひさしぶり”。”八十日目”と書いて”やっとかめ”とは、この新作アルバムの帯で知り得た豆知識。

 '75年にでたデビュー・アルバムは当時の愛聴盤で、同じ頃に日比谷野音でライヴも見ている。いかにもウエストコースト~アメリカン・ロックな、当時の俺好みなバンドで、「うちわもめ」のギターはコピーした憶えがある。結成38年目の現役バンド、25年ぶりのオリジナル新作アルバム、ええっ!?そんなに”やっとかめ”だった?とびっくり。竹内まりやのバックや、最近ではフジロックで加藤登紀子のバックで達者な演奏を披露していたセンチの皆さん。そうか、アルバムは25年ぶりだったか。

 さて、聴いてみた。ずいぶんAORだな、と面食らう。まるっこいロックなんだよね。もちろん演奏は巧いし、ボーカル・ハーモニーは素晴らしい。告井延隆のスライド・ギターは絶品だと思う。だけど、どうにも、マイルドでまるっこいロックなんだなあ。悪くはないんだけど、ちょっと意表を突かれた感じで、俺の思い込みとは少し違って、センチとはもともとこうゆうバンドだったってことかな。悪くはないんだけど、、、

やっとかめ/センチメンタル・シティ・ロマンス
¥3,150
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小川糸『食堂かたつむり』

●小川糸『食堂かたつむり』

 『シブミ』と『サトリ』の間の箸休めに『食堂かたつむり』。出版当初は、なんか話題先行な感じで、まあ読まなくてもいいと思っていた。ただ、根津で古着物の店を営む女性の話『喋々喃々』がなかなか良かったので、文庫化された本書を読んでみた。

 失恋して全てを失い、声まで失い、故郷に帰るヒロイン。料理の腕を生かして食堂を始める。こだわりの食堂と訪れるお客さん。不仲だった母親との暮らし。そんなことが、すらすらと綴られてゆく。なんかもったいないんだよな。エピソードの数ばかり増えてる印象で、もっとひとつひとつの話しを深く丁寧に書けば、しっとりとした落ち着きのある小説になったような気がするけど。悪くはないけど、ちょっと残念。
食堂かたつむり (ポプラ文庫)/小川 糸
¥588
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トレヴェニアン『シブミ』上下巻

●トレヴェニアン『シブミ』上下巻

 警察小説の名作『夢果つる街』のトレヴェニアンですね。その彼の作品としてこれまた有名なのが『シブミ』なんですが、私未だ未読。読むの忘れてました。なんで慌てて『シブミ』に手が伸びたかといえば、ドン・ウィンズロウが続編ともいうべき『サトリ』を書き上げたからです。『サトリ』を読む前に、やはり『シブミ』は読んでおきたかった。


 主人公はニコライ・ヘル。戦前の上海で亡命ロシア人貴族の母親に育てられ、日本軍の上海占領の後は岸川将軍に庇護され、母の死後は岸川将軍の尽力により日本に渡り、囲碁の名人の家で生活し勉学に励み、自身囲碁の達人となる。えっ!?これでは”孤高の暗殺者ニコライ・ヘルに結びつかない!?でしょ(笑)


 この小説は、ニコライの少年時代から青年時代、そこから一挙に飛んで、引退してバスク地方で暮らすニコライを描いているので、彼の華々しい(らしい)”孤高の暗殺者”時代の活躍はまったく登場しません。そのすっぽり抜けてる暗殺者時代を描いたのが『サトリ』らしいのですが、まだ読んでいないのでわかりません。


 僕がこの小説を楽しめたところは、前半の上海での少年時代から日本に渡ってからの青年時代。成長小説とも青春小説とも言えるところが好きですね。バスクの洞穴における冒険小説的な描写は、スリリングではあったけど、いまいち楽しめなかったし、この小説の主軸かもしれないCIAやPLO絡みの謀略スパイ・スリラーは、ニコライ・ヘルそのものの魅力の前には、その存在が薄れてしまう。


 題名シブミは邦題ではなく『SHIBUMI』であり、日本語の「渋み」からきているそうだ。一見フジヤマ・ゲイシャ・ショーグン・ニンジャのような安易な日本趣味なんじゃないかと思われがちだけど、いやいや作者の日本文化への洞察力は凄いんだよ。例えば「...シブミという言葉は、ごくありふれた外見の裏にひそむきわめて洗練されたものを示している。この上なく的確であるが故に目立つ必要がなく、激しく心に迫るが故に美しくある必要はなく、あくまで真実であるが故に現実のものである必要がないことなのだ。シブミは、知識というよりはむしろ理解をさす。雄弁なる沈黙。人の態度の場合には、はにかみを伴わない慎み深さ。シブミの精神が〈寂〉の形をとる芸術においては、風雅な素朴さ、明確、整然とした簡潔さをいう。シブミが〈侘〉として捉えられる哲学においては、消極性を伴わない静かな精神状態、生成の苦悩を伴わない存在だ。そして、人の性格の場合には...なんといったらいいか? 支配力を伴わない権威、とでもいうのかな?」と、”渋み”について岸川将軍がニコライに話す。以来ニコライにとって”渋み”は人生の最終目標となる。というお話し。


 そうなんだ、この小説は”シブミのある人間”になるために人生を歩むニコライ・ヘルの物語。そしてそんなニコライに道を指し示す人、そして共に歩む同士、岸川将軍、大竹七段、ド・ランド、ル・カゴに献詞を捧げているところに、作者が自身生み出したニコライ・ヘルとその仲間達をとても愛していることがわかる。


 トレヴェニアンのこの小説では、日本文化への愛情と裏腹に大国アメリカへの蔑みが所々に表れる。僕は以前、トレヴェニアンをヨーロッパの作家、フランスあたりの作家だとずっと思っていた。ところが彼はれっきとしたニューヨーク生まれのアメリカ人であった。2005年、74歳で他界した。『シブミ』は'79年の作品。

 さて、いよいよ『サトリ』を開くかな。
シブミ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)/トレヴェニアン
¥882
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シブミ〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)/トレヴェニアン
¥882
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トゥー・マッチ『TOO MUCH』

●トゥー・マッチ『TOO MUCH』

 ”70年代ニュー・ロック黎明期に結成された傑作アルバム ” と帯にあるとおり、71年にアトランティック・レーベルよりリリースされたアルバムがCD化されたんですね。なんとなく雰囲気は判っていたけど、思った通り、英語で歌う本格派ハード・ロック。やはり物足りなさだけ感じた。当時日本のこうした”本格派ロック”へのアンチテーゼとして”はっぴいえんど”は登場したんだとあらてめて思った。70年代のあたまに、このトゥー・マッチのアルバムと英米ロックのアルバムが並んでいれば、やはり本場の人気ものを買ってしまうだろうし、そんな中”はっぴいえんど”のような日本語ロックがあれば、ナニコレ?って感じで手が出てしまうかもしれなかった。かもしれなかった、というのは、”はっぴいえんど”もやはり売れなかったんだよね。

 70年頃の、まだ本場のロックバンドの来日公演があまり無かった頃には、こうした上手いハードロック・バンドがライブのロック・コンサートでは
必要とされたんだろうな、と思う。やはり時代なんだよね。それによく言われることなんだけど、当時のレコーディング技術そしてカッティング技術では、英米ロックの重く分厚いサウンドが表現できなかったらしい。このアルバムでもそうだけど、サウンドが軽く薄い感じで、これはハードロックには致命的だった。だからまさに黎明期なんだけど。日本ロックの苦闘の歴史が感じ取れる一枚だった。トゥー・マッチは上手いハードロック・バンドですよ。念のため。
TOO MUCH/TOO MUCH
¥2,940
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