去る5月1日、ついに会社法が施行されました。

 施行日当日は、ゴールデンウィークの真っ只中ということもあり、
 大した混乱はなかったようで、新聞・雑誌等で「新しい時代!」などと
 取り上げられたわりには静かなスタートだったようです。

 ゴールデンウィーク明けの今週あたりから、会社法を活用した例が
 本格的に出てくるでしょうし、6月末には3月決算の上場会社の多くが
 株主総会を開催しますので、そのあたりでさまざまな問題が出てくると
 思います。

 さて、この会社法ですが、新聞・雑誌などでは主に上場会社に関すること
 のみ話題になっていますが、それ以外の会社にとって、
 会社法とはどんな意味があるのでしょうか?

 以下で、それを考えてみることにします。

 まず、会社法の特徴を一言で言えば、「規制緩和」。
 (それを裏返して言えば「自己責任」です)

 その典型的な例は
 「最低資本金制度の撤廃(1円以上お金を出せば会社ができる)」
 「取締役1名でOK」
 「類似商号制度の廃止」など、「会社設立手続の簡素化」でしょう。

 以前とは比較にならないくらい会社設立手続がカンタンになりました。

 「これで起業して会社をつくる人が増える!!」
 「ドンドン会社をつくろう!!」

 一見すると会社法はそのような意味を持っているのでは?と思います。

 ところが、それと矛盾するような税制改正が今年度行われました。
 それが「役員給与の給与所得控除相当額の損金不参入」。

 ここでは詳しく述べませんが、この税制改正によって個人事業者が会社を
 つくることの税金面でのメリットが激減するといわれています。
 節税目的のみで会社をつくろうとしていた個人事業者に
 ストップをかけたのです。

 この改正と会社法の会社設立手続の簡素化は
 大きく矛盾しているように見えます。
 しかし、よくよく考えてみるとこれが矛盾していないのです。

 個人事業者は、ムリに会社にする必要がないのです。
 「会社」としての体を備えていないのであれば、
 ムリに会社にしてはいけない、ということです。
 会社を「隠れ蓑」にする「実質個人事業者」は排除する
 という流れになってきているのでしょう。

 そして、会社にするのであれば、「会社としての実質」を備え、
 「社会の公器」として振舞いなさい、意識を高く持ちなさい、
 ということだと思っています。
 それが会社法に流れる「自己責任」のルールなのです。

 そして、そのような意識であれば、積極的に会社をつくるべきだ、
 ということで、会社設立の手続が大幅に緩和されたのだと思っています。


 一見矛盾しているようにみえる、今年の税制改正と会社法の起業促進。
 実は矛盾しているわけではなく、「会社」はこういうものだ、
 というのを示したのが会社法であり、今年度の税制であるのです。

 意識の高い、志が高い人たちが会社をつくったのであるならば、
 「自己責任」として規制を緩和しても大丈夫だろう。

 会社法はそのように我々に語っているのではないでしょうか。