【1】“経営”が必然的に変わってしまう時がある?
1》“転機”なのに一歩先に進めない?
地方の老舗料亭K屋には、60年の歴史があります。
現在の主人も女将も二代目で、風光明媚な地域特性に合わせた“料理”で、
観光スポットとして確たる地位を築いていました。
特に、ここ数年、女将が趣味の延長で始めたホームページがヒットし、
今や首都圏や関西圏から、特に中高年の夫婦客が増大しているそうです。
しかし、その老舗料亭が、必然的な転機を迎え、その転機に際して、
主人と女将の見解が、全く正反対に分かれてしまったのです。
もちろん仲たがいをしているわけではありませんが、
お互いに相手の意見に合意できないから何も進まない状況なのです。
2》その“転機”のきっかけは…?
その転機のきっかけになったのが、大学を卒業したばかりの次男です。
次男は進路について迷ったあげく、K屋を継ぐことに決め、
修行のために、都市部の高級居酒屋に就職しました。
特に味だけではなく“集客”術を学びたいからなのだそうです。
本気になった次男に、まず女将が反応します。
そして、息子が帰って来た時、
今の店のままでよいのかと疑問を呈し始めたのです。
父子が二人で料理を作るには店が小さ過ぎますし、
現在近所に“食堂”として出店しているところを息子に任せるには
『お客さんに来てもらえるかどうか』が心配だからです。
3》主人と女将の“価値観”対立
一方、現代的ではあっても、やはり職人気質を残す主人は、
まず一人前に料理ができるかどうか、それが問題だと主張します。
味があれば客は自然についてくるというわけです。
そして“集客”や“時流”あるいは“流行”、つまり“市場”を
神経質に気にし始めた女将が“浮足立って見えてしまう”わけです。
先日も『そんなことより店の仕事に専念しろ』という主人と
『“営業を考えること”こそが今一番大事な仕事だ』
とする女将が対立してしまいました。
【2】“限定”的に試すなら次の一歩は出しやすい!
1》思いは同じでも“残したいもの”が違う女将は、
やる気になった息子に長く仕事を続けられる“商売(事業)”を残したい一方、
主人は同じく、長く仕事を続けられる“腕”を残してあげたかったのです。
思いは同じなのに、視点あるいは観点が違うために、
お互いの力を合わせることができません。
そんなある日“ホームページを見た”と言って、
予約電話を入れてきた客がありました。
50歳代後半の、いわゆる“豊かな層”で、値段を気にするところがありません。
しかも、遠方だというのに、かなりの頻度で“リピート”してくれるのです。
2》しつこい“売り込み”にならない営業なら…
そんな客は、決して多くはありませんが、着実に増えているように感じます。
『ほら、やっぱり営業しなきゃあ』と言う女将と、
ただただホームページの威力に驚く主人が、
今度は冷静な話し合いを持つことができました。
そして、いわゆる広告宣伝は店の歴史的な雰囲気を壊すから嫌だ、
という主人の要望をくんで、宣伝はインターネット上でだけ行う
しかもその内容で決して“売り込み”をしない
という条件で、折り合ったのです。
3》店を宣伝しなくてもリピート客が増えた…?
逆に、方針が決まると、がぜん動き出したのが主人の方でした。
宣伝をせず集客をするためには、店をアピールするのではなく、
この地域の良さを伝えようと、
インターネットで“四季の風景写真”を紹介する形にしたのです。
観光地を訪れる人は、その地域の有名スポットを昼間に見るだけですが、
早朝の景色や路地裏の風情ある光景なら、
結構強い印象を残せるのではないかと考えたからです。
この写真企画は確かに、中高年層を中心にヒットし、
今では毎週のように300件近いメールを配信しているそうです。
しかも、そのメールに“縮小した写真”を添付します。
更に“リピート客”が増えたことは、申し上げるまでもないでしょう。
【3】この“事例”の何が“経営ポイント”なのか
1》窮場きゅうば、つまり変化の場で生じやすい対立?
企業は、この例のような“事業承継”課題ばかりではなく、
顧客層の変化や近隣の競争相手の動向、従業員構成の変化などで、
必然的に変わらなければならない状況を経験し続けるのが普通です。
そしてその都度、状況変化に合わせて方針を変革して行くのが
“経営の醍醐味だいごみ”でしょう。
中堅中小企業の経営は“市場環境適応業”だと言う人もいますが、
まさにその通りである気がします。
しかし、そうした変化対応には、
必ずキーパーソンの間で見解の相違が出るのも、また自然なことなのです。
従来通りのやり方の時には気付かなかった“感性の違い”が、
窮場ではあらわになります。
それがK屋のケースの、主人と女将の“対立”でした。
2》“対立”自体は決して問題ではない!
変化に際して、キーパーソン同士の“対立”は必ずしも問題ではありません。
お互いに、従来気付かなかった部分を気付き合うなら、
対立はむしろプラスでしょう。
ただ問題なのは、意見を合わせる接点(結論)が見つからないために
先に進めないことなのです。
見解の“相違”や“対立”が明らかになった後、
次の一歩への同意を見つける方法がないまま、
立ち往生してしまうケースも少ないとは言えません。
3》変化対応の最大の敵は…?
そして、変化に際してキーパーソンの意見の相違を克服できず、
皆が行動できなくなって、結局今のままでしかたがないと
諦めてしまうことが、変化への対応力を失う最大の敵なのです。
しかしK屋の主人と女将は、その危機をどのように乗り切ったのでしょう。
特別なことをしたようには、決して見えません。
その、特別には見えない“考え方の整理”が、
意外に前進のエネルギーを生み出すのです。
ではいったい何が“整理された”のでしょう。
1》“転機”なのに一歩先に進めない?
地方の老舗料亭K屋には、60年の歴史があります。
現在の主人も女将も二代目で、風光明媚な地域特性に合わせた“料理”で、
観光スポットとして確たる地位を築いていました。
特に、ここ数年、女将が趣味の延長で始めたホームページがヒットし、
今や首都圏や関西圏から、特に中高年の夫婦客が増大しているそうです。
しかし、その老舗料亭が、必然的な転機を迎え、その転機に際して、
主人と女将の見解が、全く正反対に分かれてしまったのです。
もちろん仲たがいをしているわけではありませんが、
お互いに相手の意見に合意できないから何も進まない状況なのです。
2》その“転機”のきっかけは…?
その転機のきっかけになったのが、大学を卒業したばかりの次男です。
次男は進路について迷ったあげく、K屋を継ぐことに決め、
修行のために、都市部の高級居酒屋に就職しました。
特に味だけではなく“集客”術を学びたいからなのだそうです。
本気になった次男に、まず女将が反応します。
そして、息子が帰って来た時、
今の店のままでよいのかと疑問を呈し始めたのです。
父子が二人で料理を作るには店が小さ過ぎますし、
現在近所に“食堂”として出店しているところを息子に任せるには
『お客さんに来てもらえるかどうか』が心配だからです。
3》主人と女将の“価値観”対立
一方、現代的ではあっても、やはり職人気質を残す主人は、
まず一人前に料理ができるかどうか、それが問題だと主張します。
味があれば客は自然についてくるというわけです。
そして“集客”や“時流”あるいは“流行”、つまり“市場”を
神経質に気にし始めた女将が“浮足立って見えてしまう”わけです。
先日も『そんなことより店の仕事に専念しろ』という主人と
『“営業を考えること”こそが今一番大事な仕事だ』
とする女将が対立してしまいました。
【2】“限定”的に試すなら次の一歩は出しやすい!
1》思いは同じでも“残したいもの”が違う女将は、
やる気になった息子に長く仕事を続けられる“商売(事業)”を残したい一方、
主人は同じく、長く仕事を続けられる“腕”を残してあげたかったのです。
思いは同じなのに、視点あるいは観点が違うために、
お互いの力を合わせることができません。
そんなある日“ホームページを見た”と言って、
予約電話を入れてきた客がありました。
50歳代後半の、いわゆる“豊かな層”で、値段を気にするところがありません。
しかも、遠方だというのに、かなりの頻度で“リピート”してくれるのです。
2》しつこい“売り込み”にならない営業なら…
そんな客は、決して多くはありませんが、着実に増えているように感じます。
『ほら、やっぱり営業しなきゃあ』と言う女将と、
ただただホームページの威力に驚く主人が、
今度は冷静な話し合いを持つことができました。
そして、いわゆる広告宣伝は店の歴史的な雰囲気を壊すから嫌だ、
という主人の要望をくんで、宣伝はインターネット上でだけ行う
しかもその内容で決して“売り込み”をしない
という条件で、折り合ったのです。
3》店を宣伝しなくてもリピート客が増えた…?
逆に、方針が決まると、がぜん動き出したのが主人の方でした。
宣伝をせず集客をするためには、店をアピールするのではなく、
この地域の良さを伝えようと、
インターネットで“四季の風景写真”を紹介する形にしたのです。
観光地を訪れる人は、その地域の有名スポットを昼間に見るだけですが、
早朝の景色や路地裏の風情ある光景なら、
結構強い印象を残せるのではないかと考えたからです。
この写真企画は確かに、中高年層を中心にヒットし、
今では毎週のように300件近いメールを配信しているそうです。
しかも、そのメールに“縮小した写真”を添付します。
更に“リピート客”が増えたことは、申し上げるまでもないでしょう。
【3】この“事例”の何が“経営ポイント”なのか
1》窮場きゅうば、つまり変化の場で生じやすい対立?
企業は、この例のような“事業承継”課題ばかりではなく、
顧客層の変化や近隣の競争相手の動向、従業員構成の変化などで、
必然的に変わらなければならない状況を経験し続けるのが普通です。
そしてその都度、状況変化に合わせて方針を変革して行くのが
“経営の醍醐味だいごみ”でしょう。
中堅中小企業の経営は“市場環境適応業”だと言う人もいますが、
まさにその通りである気がします。
しかし、そうした変化対応には、
必ずキーパーソンの間で見解の相違が出るのも、また自然なことなのです。
従来通りのやり方の時には気付かなかった“感性の違い”が、
窮場ではあらわになります。
それがK屋のケースの、主人と女将の“対立”でした。
2》“対立”自体は決して問題ではない!
変化に際して、キーパーソン同士の“対立”は必ずしも問題ではありません。
お互いに、従来気付かなかった部分を気付き合うなら、
対立はむしろプラスでしょう。
ただ問題なのは、意見を合わせる接点(結論)が見つからないために
先に進めないことなのです。
見解の“相違”や“対立”が明らかになった後、
次の一歩への同意を見つける方法がないまま、
立ち往生してしまうケースも少ないとは言えません。
3》変化対応の最大の敵は…?
そして、変化に際してキーパーソンの意見の相違を克服できず、
皆が行動できなくなって、結局今のままでしかたがないと
諦めてしまうことが、変化への対応力を失う最大の敵なのです。
しかしK屋の主人と女将は、その危機をどのように乗り切ったのでしょう。
特別なことをしたようには、決して見えません。
その、特別には見えない“考え方の整理”が、
意外に前進のエネルギーを生み出すのです。
ではいったい何が“整理された”のでしょう。