会社法が施行され、実際に活用できるようになったのが今年5月1日。
 それから1ヶ月が経過しました。
 
 新聞紙上などでは、上場会社が会社法で新しく認められた制度を
 6月に多く開催される株主総会で決議して導入を目指す、
 などが取り上げられていますが、
 それ以外の会社では目立った動きや混乱はないようです。
 
 ですから、1ヶ月経った現在では、
 「会社法、会社法といって恐れていたけれど、変わらないんだね」
 「ウチの会社には影響ないんでしょ」
 と安心される経営者の方もおみえになるかもしれません。
 
 しかし、会社法をキッカケとして、会社経営における
 法的リスクは格段に高まっているのは間違いないと思っています。
 
 たとえば、1株持っていれば「株主代表訴訟」といって、
 株主が取締役の責任を追及することができますが、
 会社法によって「株式の保有期間」制限(これまでは6ヶ月)が
 ほとんどの株式会社では不要になりました。
 
 ですから、相続などで株を取得した人は、極端な話を言えば、
 その日から「株主代表訴訟」をすることができるようになったのです。
 
 「株主代表訴訟と言っても、上場会社だけの話でしょ」と
 「対岸の火事」だと思われるかもしれませんが、
 実は中小企業にも結構あるのです。
 
 中小企業で多い理由はいくつかありますが、まず、法的な不備が多いこと。
 会社法では3ヶ月に1度は取締役会を開催する義務がありますが、
 実際に開いていない会社が多いのも事実。
 
 そのように法的な不備は、相手方にとっては格好の「攻撃材料」。
 だれかの「入れ知恵」があれば、中小企業には何らかの
 「攻撃材料」が見つかります。
 
 また、感情から訴訟に発展するのも中小企業に多いでしょう。
 
 内紛で対立し、経営権を奪われた側が、一泡ふかせてやろう、
 困らせてやろう、ということで訴訟を始めるケースがよくあります。
 これは親族間の争い、もしくは友人同士で起業したケースに特に多い。
 
 昼ドラのようにドロドロになることが多く、
 会社としてはそこにエネルギーを注がざるを得ず、
 本業に注力できないということになります。


 上記は一つの例ですが、こんなリスクを事前に知り、
 対策を打っておくのが経営者の仕事です。

 ちまたでは、今年の税制改正でのデメリット
(具体的には「役員給与の給与所得控除相当額の損金不参入」)を免れるために、
 全く関係ない第三者に株を11%以上持たせようと考えている
 中小企業経営者の方がおられるようですが、目先の税のメリットだけで
 判断してはあまりにキケンだといわざるを得ません。
 
 会社法が要求しているのは「身の丈にあった経営(体制)」。
 会社法の根底の思想は「規制緩和=自由=自己責任」です。

 会社法は無関係だと考えるのはもう少し先にして、今のうちに
「身の丈にあった経営(体制)」かどうかを検討してみてはいかがでしょうか。

 それがふりかかる「火の粉」から会社を守ることになるかもしれません。