朱鷺色三角/樹なつみ
先日紹介した「OZ」の作者、樹なつみさんの割と初期の連載作品、
「朱鷺色三角(ときいろ トライアングル)です。
絵はまだ昔という感じで、OZの頃程の上手さはないのですが、
話はやっぱりというか、かなり面白いです。
主人公はクソがつくほどのマジメ人間・穂津見霖(ほづみりん)。
そしてその「従弟」の坂本零治と森生蕾。
霖は元モデルでハーフの母親に育てられました。
父親は早くに亡くなったので良く知りません。
その母親が交通事故を起こし急死、そんな時に父方の
実家の代理人という弁護士が訪ねてきます。
聞く所によると父親は瀬戸内海に浮かぶとある小島の
旧家の出で、やっとその息子である霖を見つけ出し
一度島へ来て欲しいとのこと。
天涯孤独だと思っていた霖は「自分にも親戚がいたんだ」と
いそいそと島へ向かいます。
その島は古いしきたりがあり、言うならば横溝正史の世界。
親戚たちにも会いますが、何か違和感を感じます。
そんな時に庭で見つけたみすぼらしい格好の少女。
彼女はどういうわけか親戚連中から嫌われています。
母屋に寝泊りもさせていないのです。
そして従弟だという少年。
彼はなんというか・・軽薄な感じでマジメな霖には
どうもついていけません。
そんな時数々の殺人事件が起きます。
殺されたのはその親戚の人たち。
操作の手も入りますが不可解なことが多く捜査は進みません。
この「犬神家~」のようなおどろおどろしい事件の謎は一体?
というのが1巻のだいたいのあらすじです。
実は彼ら一族は秘められた力というものを持っており
それは霖にも現れます。その力の為に最終巻である5巻まで
こんこんと悩む霖くん。
うーん、これも是非読んでみて下さい。
ついでにこれは続編が出ました。
タイトルは「パッション・パレード」。
これについてはまた後日・・ということで。
コミックス(白泉社発行)全5巻、文庫版 全3巻です。
秘密/清水玲子
久しぶり?に布団の中で読み返していた本。
先日「竜の眠る星」
をご紹介した清水玲子さんの作品で、
今の所2巻まで出ています。
実はこれ、ジャンル分けに悩みました。SFといえばSFでは
あるんだけど、ホラー的な要素もあったりして。
映画だとSFホラーと分けられるのでしょうか?苦苦苦・・・。
どんな話かというと、また「映画になりそうな内容」です。
と、共に清水玲子さんの発想は凄いと感じました。
もしこの内容をハリウッドの関係者や海外の作家が考えていたら
映画化されて案外ヒットしていたかも?R17指定位で。
といいつつもしかしたら同じ題材の小説は既にあるのかも
しれません。あるかどうかも知りません。ホホホ。
「もし死んだ人の脳に残った映像を見る事が出来たら」
「ぼくは死んだ人が見えるんだ 涙」的な内容ではありません。
死んだ人が生前目にしていたモノが、脳を通して
見る事が出来たなら・・・
様々な問題も起こるでしょう。特にプライバシー関連。
私だって嫌だなあ。
素敵な風景の中とか善行ばかりしてきたとかならまだ少しはマシ。
もし「お父さんは心配症」などを読んでいた時に
突然地震か何かが起きて死んでしまって、その脳を
覗かれたら佐々木光太郎さんだの片桐だの飛び散るはなぢ
だのが見られてしまうのだろうか。いやぁぁぁぁぁぁぁ。
又はマッチ棒が立った腐ったケーキ?残飯を食うJ?
そっちもちょっとヤダ・・。
この「秘密」ではその脳を覗くという行為が犯罪捜査に
使われます。他人事で考えたら検挙率も高くなりそうだし
いいなとも思いつつも、覗くのが異常犯罪者の脳だったら・・
そんなわけでこの漫画には少女漫画なのに、実にグロくて
目をそむけたくなるシーンも数多く出てきます。
共にそれを見てしまう捜査員の精神にも障害をきたします。
そもそも清水玲子さんは華やかで煌びやかな絵を描きつつも
題材はというと初期はロボットとか宇宙とか人間に変身する
犬とか、恐ろしくも美しい天女とかで、ただの恋愛物とかは
描いておりません。
次第に人類の終末をテーマにしたりと、どんどん独自の世界を
作り続けてきました。
やがて最新連載作の「輝夜姫」では古の伝説から始まり
クローン人間や未知のウィルス、ロリータコンプレックス、
レズビアン・・・と更に躍進していきました。(泣)
この「秘密」も割と最近の作ですが、人体に興味を持ったのか
実に緻密に内臓だの筋肉だの・・・。
なので本気でそういう世界がダメな方には、たとえ題材が
面白くてもオススメ出来ない、かなりコアでヘビーでディープな
作品なのです。
とりあえずホラー・スプラッター系の映画は全くダメな私ですが
これは美しい絵に助けられて?なんとか読み、2巻にまで手を
伸ばしてしまいました。
まず死者の脳を覗く原理は本によると
「人は物を目で見ているものではなく「脳」で見ている。
(この世界では)乳児の頃から病気予防のために脳に
チップを埋め込んでいるが、このチップに電気刺激を
加える事で見てきたものが最大二年間分再現される。
但し、音は再現されない」です。
まず1巻は二つの話で構成されています。
プロローグ的な第一話は、米国大統領暗殺事件。
大統領を誰が殺したのか。 クックロビン・・
脳の画像を見て読唇術により、会話を解析するのが主人公。
それで見てはいけない物を見てしまった・・・
第二話からは舞台も日本の科学警察研究所に移ります。
ここに若いのに警視正となった少年のような男性が
出てきますが、個人的にはなぜ?と思う。
別にやり手の美人(女性)でも良かったんじゃないかと。
清水玲子さんは今は美少年が好きなのかな?
ま、そういうのは置いといて、捜査員は過去28人の少年たちを
殺害し、留置所で自殺した凶悪犯の脳を覗く事になるのです。
惨くて異常な世界があなたを待ってます。
第三話(2巻)
失踪した新人女性捜査官・・・こちらも壮絶な異常犯罪が。
今度は被害者の脳が捜査本部に届き、それを解析する事に
なります。抽象画の世界が広がります・・。
第四話
謎の少年連続殺害事件。検挙された中年男性は死刑執行された。
しかし本当に彼が犯人だったんだろうか?
彼の脳を覗く事になる・・・。
盲目の少年と愛犬のエピソードは泣けました。
犬の愛って素晴らしい。
だけど少年たちの遺体ゴロゴロシーンは別の意味で泣けました。
今の所ここまで読めます。
清水玲子さんは今後どこまで突き進んでいくんでしょうか。


「秘密」(1) 清水玲子 「秘密」(2) 清水玲子
麒麟館グラフィティ~二回目の結婚 菊子
無視して下さい。
結末知ってから、改めて読むというのもオツなものだけど、
麒麟館は是非最初からのゴタゴタを読んで、宇佐美の言動に
妙と一緒になってブチ切れてから、最終話を読んだ方が、
感動も何もかも違ってくると思うのです。
菊子の一度目の結婚は自分の意志など全くありませんでした。
たまたま隣に住んでいた大学生に見初められ?
家の深刻な事情もあったということで、あれよあれよと
気付いたら結婚してたっていう感じでしょうか。
それにちゃんと「愛」もあったのなら、誰もが納得する
でしょう。とりあえず「愛」っつーもんは途中で変化も
するもんだから、宇佐美が暴力を振るう前に、そんな
幸せな時間もあれば、まだ菊子は「自分に気付いて欲しい」
なんて思わなかったと思う。
だけどこの結婚にはそんなもん最初から存在しなかった。
元々菊子がおとなしいウブな少女だったこと、
そして菊子の実家の複雑な事情を利用されただけ。
結婚当初から旦那は海外赴任の上にそこで女の人と
暮らしていたのも会社の人に見られている。
更にその相手は宇佐美の従妹。
正直この従妹が改心したのは感動であり、現実には
あり得るのかな?とも思ったけど、そこは漫画なんだし
これで改心もクソもなかったら、ますます菊子は報われない。
そんなのも嫌だし、いいことだとしてよう。
宇佐美の言う「口答えしたから殴った」も、オイオイだよ。
そんな程度で殴ってヨシなら、一体どの位の奥様が
殴られているんだろう。普通は殴らないよ。宇佐美さん。
結局冬の夜も菊子は殴られ着の身着のままで飛び出した。
その結果道端で発熱し倒れたところを妙に発見されたん
だけど。もし見つけたのが妙じゃなかったらどうなって
たんだろう。救急車呼ばれて宇佐美に連絡がいって?
そうなると「恥をかかせた」とまた殴られそうな・・。
前回、結婚とはゴールでもないし、イコール幸せという
ものじゃないのを漫画に書いているとかいたけど
二度目の菊子の結婚は「幸せ」なものと描かれている。
だけどそこに行き着くまでの多大な困難を読んだから
本当に偽善でもなく、祝福できる。
そしてこれこそが本当の結婚なんだと思う。
新しい夫となる美棹は菊子と出会った当時、貧乏学生で
菊子は憧れの存在でしかなかった。
菊子も全く意識してなかった模様。
美棹の中ではさっさと好きだと言いたい気持ちもあるけど
なにしろ相手は別居中とはいえまだ人妻。
その旦那も性格はアレだけどエリート中のエリート。
自分なんか到底敵う相手でもなかった。
だけど菊子さんが好きという気持ちはつのるばかり。
学校で「好き」だと女の子に言われても、「好きな人が
いるから」と断る始末。
菊子にやっと好きだと言えても「自分は結婚してるから」と
振られてしまいとことん落ち込む。
だけど負けないのは彼の父親譲りの根性なのかも。。
振られても「諦めませんから」とサラッと言いのける。
もしそれが美棹じゃなかったら、ただのストーカーか。
でも不安定な気持ちに押しつぶされる菊子をぎゅうと
抱きしめるシーンは本当に泣けた。
本当はこういうのはアンタの役目なんだよ。宇佐美さん。
この2人がようやく結婚した。
誰からも祝福を受けて。
結婚式のシーンで泣けた漫画というのも実は数少ない。
その後のふたりの生活については何も書かれていないけど
きっとずっと幸せに暮らしているんだろうな。
道端のたんぽぽのような菊子と、それを踏みつけず
優しくいたわる美棹。
激しい荒波を乗り切った結婚って幸せも続きそうな予感。
じゅうたんにも愛をこめようか
ドケチといえばジェイムズ君。
彼のドケチぶりといえば徹底してそうで、実はそうでもない
部分もある。
これは31巻でわかった事なのだが、暴利をむさぼった後は
どうも気が大きくなるようで、じゅうたん屋の客引きを無視する
どころか、「ぼくは値切りするよ」と言っている。
あの後本当に買ったのかは不明。さんざん値切って店員を
泣かせたかもしれない。本当に値切って買ったかもしれない。
そこらへんは不明。
だけどボロ毛布が好きなジェイムズ君が、どんな柄に興味を
持ったのかはちょっと気になるところ。
私的願望としては、ペケル兄弟・・だと何か申し訳ないので、
アスランかどこかで、値切り倒して90%オフくらいにさせて、
彼のトレードマークであるツギハギ柄のじゅうたんを
オーダーして欲しいところです。似合うだろうな。
パッと見ボロ布模様のじゅうたんだけど、実はオーダー物の
高級じゅうたんなんてオシャレじゃないですか。
隠された男のお洒落心。それはさりげなく持つ高級品。フッ。
あ、ペケル兄弟といえば今更気付いたことがある。
エロイカの31巻のニコリーニさんのセリフで
「ケペル」
とある。実はさっき気付いたばかりの新情報?
ニコリーニさん自身が「ケペル」と勘違いしていたら
それはそれで面白いと思う。
または彼なりの皮肉をこめたジョークなのかも。
だって取り戻せたとはいえ、大切な家宝を盗まれたのには
変わりはない。
かといってあの店の仕事は気に入っているから、
ブラックリストには入れたくない。
だからあえて「ペケル」を「ケペル」と言った。
それに対して伯爵も何もツッコミを入れてなかったので
「気付いてないや~~~」と内心ニンマリしたのかも。
それか伯爵も「ん?」と思ったけど、そこは余裕ある英国紳士。
お年寄りに恥をかかせては、その名が廃ると流したのかも
しれない。
ところでこの「じゅうたん」といえば「ビザンチン迷路」。
少佐の情報源としてトルコでじゅうたん屋を開業する
ペケル兄弟が初登場した。
お目目キラキラ・・といえばかつての少女漫画の代名詞だけど
このお目目キラキラさんはヒゲ&ハゲ(またか)親父。
以前ドイツで少佐にお世話になったらしく、彼を崇拝してる。
また働きぶりも実に有能で、少佐も一目置いている存在。
あえて短所を挙げるなら、少佐曰く「暑苦しい」くらい?
この兄弟には美人の妹もいて、少佐と部下Aにも紹介する
んだけど、美人妻がいるにも関わらず、鼻の下をのばす
A君の姿には笑ってしまった。
実際、トルコって美男美女が多いんですよね。
おまけに親日国で、治安も割合いいという事で、観光
スポットとしても人気なよう。
もしトルコの生活に興味を持ったら、実際にトルコ人と結婚した
漫画家・高橋由香利さんの>「トルコで私も考えた」
を読むと
いいです。日本人の視点から見たトルコ。面白いです。
おっと話がずれた。
で、このペケル兄弟たちが売っているトルコじゅうたん。
大層な値段がする模様。
31巻でもボーナムが「天文学的な数字が並んでいる」と
言ってましたっけ。
また「ビザンチン迷路」の中で、ハーカンが
「気が向いたらうちの店に寄れよな。
キリムを一枚サービスしてやるよ」と言います。
(30巻 22ページ)
私はキリムってなんじゃらほい?だったので、手軽なとこで
ネットで調べてみた。
結果、なんとまあいい値段がすること。
サイズは小さいのに。
これであの値段なら、じゅうたんだと・・・バタ(倒れた)
一体伯爵がオーダーメイドしたじゅうたんは
HOW MUCH?
めちゃ気になる。
じゅうたんの後日談としては、そのせいでジェイムズ君より
極貧生活を強いられているくらいしかわかりません。
ま、お金なくなっても、ボーナム君協力の上でジェイムズ君が
いつぞやのオタク向けHソフトを売り出せばきっと
じゅうたんの分は元が取れるでしょう。
今回の宝剣で、マニア相手に暴利をむさぼるという
知恵をジェイムズ君も知っただろうから。
麒麟館グラフィティ/吉村明美
何度読んでもグングンと引き込まれてしまう名作です。
大抵の少女漫画って結婚はラストであり、とても幸せなことだと
表現されがちです。でもこの作品は違う。結婚後のドロドロとした
部分もちゃんと書いてある。だけど「少女漫画」なのです。
主人公は2人。
妙という勝気で男顔負けの根性と行動力を持つ、火のような女性。
そして菊子。
高校を卒業して望まれてバタバタと結婚した蒲公英のような女性。
物語は冬の北海道から始まります。
父方の祖母より残された学生用の下宿アパートの管理人と
なった妙が夜道を車で走らせていると、路上に軽装の女性が
倒れているのを発見します。
彼女は発熱しており危険なのでアパートに連れて帰ります。
彼女の名前は菊子。
軽装の理由は暴力旦那から逃げてきたからだとわかります。
その旦那の名前を聞いて妙は愕然とする。
大学時代の憧れの先輩の名前だったから。
結局彼は同姓同名の他人ではなく、れっきとした本人だと
わかり混乱すると共に、あの先輩がこんな女と・・と
嫉妬心にかられてしまいます。
菊子はおっとりとした特に美人でもなく普通の女性。
(ただ妙と違って家事能力には長けています。)
その普通の女性をあの先輩が殴ったりとかする?
なんて妙は信用してなかった模様。
実際ね、暴力(DV)旦那って外面いい人が多いと
DV問題のサイトに統計として出てたりするのですよ。。
その後、旦那が迎えに来ても帰さず、菊子はこのアパートで
暮らすことになります。
そうしながら妙は暴力旦那・・宇佐美秀次と何かと対立
することになります。
あの菊子を殴るなんて!と憤りを感じる反面、やっぱり
この男性が好きだというジレンマに陥り悩む妙、
アパートの住人である貧乏学生・火野美棹の菊子に対する
憧れと愛情、そして男として旦那を超えたいと成長していく姿、
どれも必見です。
宇佐美秀次の妻に対する言動は、読んでいる側も
妙じゃないけどムカムカしてきます。
そして妙と同じように
「人間を何と考えているんだ!」
「反省さえも出来ないのか!このクソ男っっっ!!!」
と言いたくなります。物語に入り込んでいるのですね。
とにかく酷いです。口答えも赦しませんし、気に入らないと
殴る蹴る。更に浮気も平気でするし、その追及さえも
許しません。ハナっから愛情もないそうです。
結婚した理由も「大人しくて便利だから」。
こんな事をサラッと言ってくれます。
愛情なんて最初から存在しなかったそうです。
そういう男に対して恋心を隠しながらも、読者のかわりに
言いたい事を激しくぶつけてくれるのが妙。
静かに反省してもらおうとするのが美棹です。
そしてその妻、菊子の悲しい願望。
「(旦那に)自分の存在を気付いて欲しい」
あまりにも悲しすぎます。
読んだ後に色々考えさせられてしまう、重たいテーマ
ですが、吉村明美さんの美しい絵と登場人物たちによって
ただの社会問題漫画で終わってない所に力量を感じます。
妙と美棹の想いはどうなっていくのでしょうか。
そして菊子と秀次の壊れた夫婦関係は?
是非読んでみて下さい。
単行本 全12巻プラス番外編の全13巻(小学館)
文庫版 全8巻
麒麟館グラフィティー(第8巻)
麒麟館グラフィティー(第7巻)