麒麟館グラフィティ/吉村明美
何度読んでもグングンと引き込まれてしまう名作です。
大抵の少女漫画って結婚はラストであり、とても幸せなことだと
表現されがちです。でもこの作品は違う。結婚後のドロドロとした
部分もちゃんと書いてある。だけど「少女漫画」なのです。
主人公は2人。
妙という勝気で男顔負けの根性と行動力を持つ、火のような女性。
そして菊子。
高校を卒業して望まれてバタバタと結婚した蒲公英のような女性。
物語は冬の北海道から始まります。
父方の祖母より残された学生用の下宿アパートの管理人と
なった妙が夜道を車で走らせていると、路上に軽装の女性が
倒れているのを発見します。
彼女は発熱しており危険なのでアパートに連れて帰ります。
彼女の名前は菊子。
軽装の理由は暴力旦那から逃げてきたからだとわかります。
その旦那の名前を聞いて妙は愕然とする。
大学時代の憧れの先輩の名前だったから。
結局彼は同姓同名の他人ではなく、れっきとした本人だと
わかり混乱すると共に、あの先輩がこんな女と・・と
嫉妬心にかられてしまいます。
菊子はおっとりとした特に美人でもなく普通の女性。
(ただ妙と違って家事能力には長けています。)
その普通の女性をあの先輩が殴ったりとかする?
なんて妙は信用してなかった模様。
実際ね、暴力(DV)旦那って外面いい人が多いと
DV問題のサイトに統計として出てたりするのですよ。。
その後、旦那が迎えに来ても帰さず、菊子はこのアパートで
暮らすことになります。
そうしながら妙は暴力旦那・・宇佐美秀次と何かと対立
することになります。
あの菊子を殴るなんて!と憤りを感じる反面、やっぱり
この男性が好きだというジレンマに陥り悩む妙、
アパートの住人である貧乏学生・火野美棹の菊子に対する
憧れと愛情、そして男として旦那を超えたいと成長していく姿、
どれも必見です。
宇佐美秀次の妻に対する言動は、読んでいる側も
妙じゃないけどムカムカしてきます。
そして妙と同じように
「人間を何と考えているんだ!」
「反省さえも出来ないのか!このクソ男っっっ!!!」
と言いたくなります。物語に入り込んでいるのですね。
とにかく酷いです。口答えも赦しませんし、気に入らないと
殴る蹴る。更に浮気も平気でするし、その追及さえも
許しません。ハナっから愛情もないそうです。
結婚した理由も「大人しくて便利だから」。
こんな事をサラッと言ってくれます。
愛情なんて最初から存在しなかったそうです。
そういう男に対して恋心を隠しながらも、読者のかわりに
言いたい事を激しくぶつけてくれるのが妙。
静かに反省してもらおうとするのが美棹です。
そしてその妻、菊子の悲しい願望。
「(旦那に)自分の存在を気付いて欲しい」
あまりにも悲しすぎます。
読んだ後に色々考えさせられてしまう、重たいテーマ
ですが、吉村明美さんの美しい絵と登場人物たちによって
ただの社会問題漫画で終わってない所に力量を感じます。
妙と美棹の想いはどうなっていくのでしょうか。
そして菊子と秀次の壊れた夫婦関係は?
是非読んでみて下さい。
単行本 全12巻プラス番外編の全13巻(小学館)
文庫版 全8巻
麒麟館グラフィティー(第8巻)
麒麟館グラフィティー(第7巻)