近年、対人支援の分野で注目されている「オープンダイアローグ」。
その中核にある対話実践の手法の一つが「リフレクティング」です。傾聴を学ぶ私にとってこのリフレクティングの理解は、「聴く」という行為の質を大きく変える鍵になりました。
今回は、初めにリフレクティングの基本的な考え方について、ご紹介いたします。
□リフレクティングとは
「話すこと」と「聞く」ことを明確に分けながら、対話の中で参加者が発言した内容を振り返り、異なる視点から考察し、理解を深めるプロセスです。
これは単に話し手の言葉を繰り返すのではなく、聞き手自身の感じたことや考えたことを共有することで対話の質をより豊かにする手法です。
□リフレクティング・ワーク(人数のめやす:3~4人)
グループでの対話実践の基本となるワークです。
1 3~4 人でグループを作り、以下の役割を割り振ります。
①聞き手(ファシリテーター):1 人
②話し手(インタビュアー):1 人
③リフレクティング・チーム(観察しリフレクティングを行う人:リフレクター):1~2 人
2 そのときのテーマについて、以下の流れで話します。
①聞き手と話し手による対話:10 分
②リフレクティング・チームによるリフレクティング:5 分
③聞き手と話し手による、リフレクティングを受けての応答:5 分
④4 人での体験の共有:5 分
3 上記 2 の流れを一巡とし、役割を交代して 4 回繰り返します。
「話す人・聞く人」と、「リフレクティング・チーム」を分けることで、「話すと聞くを分けて」います。
リフレクティング・チームは話し手が語ったことについて自分の中に生まれた思いを「いかがでしょうか」とさまざまな飲み物が乗っているお盆に新たに載せるイメージで場に差し出します(真実として決めつけたりせず、さまざまな意見の一つとして扱う)
安心できる雰囲気の中で、話し手の語りがリフレクティングによって少しずつ広げられ、さまざまな声が尊重されながら共有される場になると理想的です。
そのための「間(ま)」を生み出すのが、リフレクティングという形式です。上述の時間や流れはあくまで一例で、状況に応じて変更可能です。
例えば、リフレクターAが「今のお話を聞いていて、私は少し胸が締めつけられるような感じがしました」と語ると、
リフレクターBが「私はその苦しさの中にも、どこか希望を探しているような印象を受けました」と応じる、といった具合です。
ここで重要なのは、「正しい理解」や「適切な助言」を目指さないことです。
むしろ、多様な感じ方や考えがその場に並ぶこと自体が意味を持ちます。話し手はそれらの言葉を外側から聞くことで、自分自身の体験を新たな角度から見つめ直すことができます。
リフレクティングの目的は問題に対する答えを出すことではなく、「語りうる言葉を増やすこと」「対話を豊かにすること」にあります。
その結果として、話し手自身の中に変化が生まれてきます。
傾聴との関係で言えば、リフレクティングは「内的傾聴を外にひらく実践」といえるでしょう。
私たちは通常、相手の話を聞きながら様々なことを感じ、考えています。
しかし多くの場合、それらは内側に留められます。リフレクティングではその内的プロセスを慎重に言葉にし、共有します。
ただし、ここには繊細な配慮が求められます。語られる内容はあくまで「私にはこう感じられた」という主観的なものであり、断定や評価にならないようにする必要があります。
また、話し手の語りを遮らず、その流れを尊重することも欠かせません。
このように見ていくと、リフレクティングは単なる技法ではなく、「他者とともにある姿勢」を体現するものだとわかります。
それは、相手を理解しようとするだけでなく、「わからなさ」を含んだまま共に居続ける態度でもあります。
カウンセリングを学び始めたとき、私は「何を言えばよいのか」と不安になったことがありました。
しかしリフレクティングの本質はうまく語ることではなく、「感じたことを、そのまま丁寧に扱うこと」にあります。言葉は洗練されていなくてもいいのです。むしろ、飾らない言葉の方が、相手の心に届くことも少なくありません。
まずは自分の内側に生まれる小さな気づきに、静かに耳を傾けることから始めていきたいと思いました![]()
【参考文献】
森川 すいめい氏(著)「オープンダイアローグ私たちはこうしている」医学書院
オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン作成 「オープンダイアローグ対話実践ガイドライン」