お久しぶりです。
今回はいまさらハマってる曲について。

 

アニメ「葬送のフリーレン」の後期OPとして使われた「ヨルシカ」の「晴る」。

youtube等で公式でミュージックビデオが公開されているのをご存じでしょうか?

 

 

ヨルシカのMVはなんというか、曲の世界感を重視したものが多く刺さる人には刺さります。

「晴る」に関してはアニメ制作会社による公式MVもありますが、今回はオリジナルMVの方のお話。

 

本当は別ブログ(wordpressで作成)で記事にしようかと思ったのですが、そちらでは歌詞を掲載するのはNGなので、JASRAC(作品コード776-4897-8)と包括契約しているアメブロで記事にすることに。

 

多分アメブロで掲載するのは大丈夫なはず。

 

 

「葬送のフリーレン」の主題歌であることから曲を知ってる人は多いと思いますが、MVは知らないという人も多いと思うのでこれを機会に知ってもらえれば幸いです。

 

なお、解釈に関しては私個人のものなので、「勘違い」「解釈不足」などもあると思います。
そこはそれ、みんなの解釈の仕方があるということで。

 

 

 1番

 

貴方は風のように
目を閉じては夕暮れ
何を思っているんだろうか

目蓋を開いていた
貴方の目はビイドロ
少しだけ晴るの匂いがした

晴れに晴れ 花よ咲け
咲いて晴るのせい
降り止めば雨でさえ
貴方を飾る晴る

胸を打つ音よ凪げ
僕ら晴る風
あの雲も越えてゆけ
遠くまだ遠くまで

 

(イントロ)

 

晴れた空の下、男性が道を歩いています。
MVのサムネにもあるように、おそらく男性が少年を抱えながら歩いているのだと思います。
 

「晴る」という題名から分かるように、天候はこの曲の重要な要素であり、登場人物、状況という要素とのダブルミーニングとして使われています。

 

貴方は風のように

目を閉じては夕暮れ

何を思っているんだろうか

 

家の軒先で疲れ果てたかのように休む二人。
MVを見ていくと分かりますが、おそらく二人は親子。
(次でポストの描写があるので)親子の家のようですが、枯れ木で囲まれていてあたかも廃墟のようにも見えます。

父親の方には影が、子供の方には光が差したコントラストで描かれています。

 

目蓋を開いていた
貴方の目はビイドロ
少しだけ晴るの匂いがした

 

ビイドロはポルトガル語でガラスを表すVidroで、日本語でもガラスのことを指します。
貴方の目=ガラスのような目という意味でしょう。

 

一瞬父親の方を見て目が合ったような雰囲気になりますが、すぐに少年は父親から目を離し、「晴るの匂い」を嗅ぐ仕草の後にポストに向かいます。

陰鬱な雰囲気の中で「晴るの匂い」の部分だけ少しだけ希望を感じ取れるシーンとなっています。

 

 

晴れに晴れ 花よ咲け
咲いて晴るのせい
降り止めば雨でさえ
貴方を飾る晴る

胸を打つ音よ凪げ
僕ら晴る風
あの雲も越えてゆけ
遠くまだ遠くまで

 

最初のシーンで父親が歩いていた道を抜け、丘の上で何かを掘り起こそうとしている少年。

(おそらく音に気付いて)上空を見上げると飛行機。
かなり低空飛行であること、そして次のシーンの焼け野原になった街並みを見ると、おそらく爆撃機なのでしょう。

 

フレーズの中で何度も「晴」という言葉が使われていることから、強く「晴」を願っているのが感じ取れます。

 

最後のシーンで背後の壁は「葬送のフリーレン」でよく名前のモチーフになっているドイツの「ベルリンの壁」、かと思いましたがどうやら「嘆きの壁」がモチーフになっている可能性が高いようです。

 

 

 

 

 2番

 

貴方は晴れ模様に
目を閉じては青色
何が悲しいのだろうか

目蓋を開いている
貴方の目にビイドロ
今少し雨の匂いがした

泣きに泣け 空よ泣け
泣いて雨のせい
降りしきる雨でさえ
雲の上では晴る

土を打つ音よ鳴れ
僕ら春荒れ
あの海も超えてゆく
遠くまだ遠くまで

 

貴方は晴れ模様に
目を閉じては青色
何が悲しいのだろうか

 

空模様が変わっていて、1番とは時間が空いているようです。
「貴方=天候」
「青色=雨の色」
「悲しい=雨が降り始めた」

というのが表面上の歌詞の意味。
薄い雲掛かった夕方(1番)から、今度は雨模様に。
これは天候と同時に、登場人物の感情も表しています。

 

少年は室内で何やら書き物をしていて、それを家の外から父親が見守っています。

1番では光と影、2番では室内と室外と、二人の距離が描写されていますね。

距離的には近いはずなのに二人が目を合わせることはなく、二人とも空の雨模様を見ながら何かを思っています。

 

目蓋を開いている
貴方の目にビイドロ
今少し雨の匂いがした

貴方の目はビイドロ⇒貴方の目にビイドロ
と変わっているので「少年の目に雨が映っている」という意味になります。
泣いている描写はありませんが、雨=涙のダブルミーニングでもあるのでしょう。

家を出てきた少年は父親を見ることはなく。
「今少し雨の匂い」は風景描写と一緒に少年の心の内も表しています。

少年の頬にキスをしますが、ガン無視で走り出す少年。

 

ここまで一貫して、「子供を気遣う父親」「父親を無視する子供」という描写ですが…

 





 

泣きに泣け 空よ泣け
泣いて雨のせい
降りしきる雨でさえ
雲の上では晴る

 

土を打つ音よ鳴れ
僕ら春荒れ
あの海も超えてゆく
遠くまだ遠くまで

 

伏線回収回。

1番で掘り起こしていた地面が映っていますが、2番は掘り起こしが終わった後日のシーン。
嘆きの壁に手をつきながら、少年は感情を昂らせて悲しみにくれます。
父親は少年を気遣いますが、その際に地面の水たまりに自らが映っていないことに気づく。

 

このことから、父親はすでに死亡(父親の映像は、父親自身の妄想的なもの)していて、父親自身そのことにこのタイミングで気づいたのでしょう。

最後に少年が掘り起こした地面にカメラがズームアップしますが、(見づらいですが)よく見ると(父親のトレードマークの)茶色のベレー帽が見えます。
今まで何度か穴が見えるシーンはあったのですが、(父親が自分の死を認識した直後の)ここで初めてベレー帽が確認できます。

 

父親(幽霊)はずっと少年についていたのではなく、時々少年のそばに現れて(自らが死んでいることに気づかないまま)少年を見守っていたのでしょう。

 

 

 

 3番

 

通り雨 草を靡かせ
羊雲 あれも春のせい
風のよう 胸に春のせ
晴るを待つ

晴れに晴れ 空よ裂け
裂いて春のせい
降り止めば雨でさえ
貴方を飾る晴る

胸を打つ音かなで
僕ら春風
音に聞く晴るの風
さぁこの歌よ凪げ!

晴れに晴れ 花よ咲け
咲いて春のせい
あの雲もこえてゆけ
遠くまだ遠くまで

 

通り雨 草を靡かせ
羊雲 あれも春のせい
風のよう 胸に春のせ
晴るを待つ

 

ここにきてタイトルコール。
父親が(自らが死んだという)現実を受け止めるまでのお話

 

 

晴れに晴れ 空よ裂け
裂いて春のせい
降り止めば雨でさえ
貴方を飾る晴る

胸を打つ音かなで
僕ら春風
音に聞く晴るの風
さぁこの歌よ凪げ!

晴れに晴れ 花よ咲け
咲いて春のせい
あの雲もこえてゆけ
遠くまだ遠くまで

 

ここから少年視点。

2番で少年が書いていたのは父親の墓に供える、父への手紙。

 

家からでてきたシーンの構図や服装が同じなので、時系列的には2番と同じ。
お墓に供えた手紙(?)が家から持ち出した時点で汚れてる理由ですが、もしかしたら最初に墓に入っていた手紙を持ち出して、追記してから戻したのかな?
と思います。

 

手紙を墓に供えた時には雨が晴れている理由は

① 泣き崩れたのは父親の妄想
② 実は3番の途中から日が変わっている
③ 2番と3番は別の世界線

等の理由が考えられますが、どうなんでしょうか。

2番では水たまりに膝をついてガッツリ服が汚れるシーン(正し映ってるのは右手ですが)があるのですが、それにしては手紙を置くシーン(左手)の服が綺麗すぎる気もします。

 

 

いずれにせよ、少年は父親を失った悲しみを乗り越え「晴る」を迎えたというのは確かでしょう。

 

墓に花が飾られているのが、「葬送のフリーレン」のヒンメルの像周りの花畑シーンと重なります。

 

  その他の疑問点


全体を通して「ポスト」がキーパーツになっていますが、1番の時点で父親は死んで(少なくとも少年はそう認識)いるはず。
これは、1番の時点で「父親の墓」があるのから明らかです。

 

にもかかわらず、少年はポストから何かが届くのが待ち遠しい様子が描かれています。

 

1つの予想としては、1番の時点では少年は「父親の死を知りながら」も受け入れることが出来ておらず、「もしかしたら父から手紙が届くかもしれない」という希望と現実に板挟みの記憶障害的な状態だったのかもしれません。

 

だから、ポストを覗きつつ、墓を掘り起こす行動もとったのでしょうか。

ちなみに1番で墓を真上から俯瞰する映像がありますが、ベレー帽は確認できず。
「穴がまだ浅かった」という可能性もないわけではないですが、どちらかというとこれは「(父親視点なので)自分の死に繋がる描写はこの時点では認識できていない」の方が有力でしょう。

 

2番では少年は手紙を書いていて、3番では家を出る時に既に封筒が汚れているのは、上で書いたように元々墓には「ベレー帽」と「手紙」が入っていたのではないでしょうか?
でないと家を出た時に手紙が汚れている理由が分かりません。

 

つまり少年の行動としては

・1番

墓に埋められていた手紙の回収

・2番

何かを手紙に追記

・3番

再び手紙を墓に埋める


という流れと予想。

 

 

もう一つ、上で少し述べた「雨」と「水たまり」の描写について。
やはり、3番で手紙を置いた少年の手や袖が綺麗なことが気になります。

 

これは「雨」というのが、「現実の雨」でありながら、「心象風景の雨」とのダブルミーニングが原因である可能性が高い。

 

3番では少年の心象風景としては

降り止めば雨でさえ
貴方を飾る晴る

という歌詞からも「晴る」になっているので、雨の汚れすら取りさり、「晴るを飾る」という感じのイメージに近づけている。

 

昔、「シンフォニック=レイン」という似たギミックの名作ビジュアルノベルがありましたが、今回のMVに関しても「風景はあくまで主観者の観測結果」ということで考えればそう無理もない描写と思えます。

 

 

 

最後に

 

というわけで、今回は「晴る」のMVに関する考察的な何かでした。

 

ポストのくだりに関しては、ファーストインプレッションでは「戦争に行った父からの便りを心待ちにしている」と安易に考えてしまったのですが、墓のことを考えるとどうしてもそうは解釈できずに、ややこじつけになってしまったかも。

 


書いたばっかりの手紙(封筒)が汚れてる
⇒墓に入ってた?
⇒じゃあ何を追記したのか?

 


ベレー帽と一緒に埋められていたのだとしたら、普通に考えたら父親の遺言に何かを追記したのでしょうか。

「俺が居なくなっても…」⇒に「僕は一人でもがんばっていく」を追記。
または最初埋めた時は「父さんが死んだという知らせは届いたけど僕は信じていない」というような感じの文章だったのかもしれませんね。

 

 

疑問点はいくつか残りましたが、見れば見るほど引き込まれるMVでした♪

「晴る」は音の使い方が特殊で聞いていて飽きない曲で、非常にするめ曲。
難しい言い回しも多く、日本語ならではの歌だと思います。

きちんとした英語バージョンというのは不可能かもしれない…

 

前期のOP曲であるYOASOBIの「勇者」と並んで素晴らしかったです。

「勇者」ほどガッツリと「葬送のフリーレン」に沿った歌というわけではありませんが、これはこれでいい。