古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

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Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.112

まとめ

 

これでGambero Rosso Vini d’Italia1989のTreBicchieri受賞ワインを全てご紹介が終了しました。

Vini d’Italia1988のTreBicchieri受賞ワイン、1988追加分の二種、1989追加分の二種も表に載せてあります。

 

Vini d’Italia1988を書き始めた2019年の10月4日から今日まで、ほぼ毎日更新して参りました。

長きに渡りご一読いただき、本当にありがとうございました。

 

Gambero Rosso Vini d’Italia1990も書こうかどうかと思案中です。でも、書かないと忘れてしまいますからね。

再開が出来るよう、資料をまとめておきます。

 

Gambero Rosso Vini d'Italia 1989  ガンベロロッソ ヴィーニィディイタリア1989

TreBicchieri トレビッキエーリ

 

Gambero Rosso Vini d'Italia 1988  ガンベロロッソ ヴィーニィディイタリア1988

TreBicchieri トレビッキエーリ

20周年記念号 ランク漏れ追加分

 

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.111

Prunotto-Barbaresco Montestefano 1983 その2

 

前回の続き、Prunottoです。

 

Beppe CollaからAntinoriにオーナーが移り、Barolo BussiaをはじめBarbarescoなどに自社畑を少しずつ増やしていきますが、残念ながらMontestefanoは購入に至りませんでした。

Montestefanoは長らくPrunottoの看板Barbarescoでしたが、1994年のBeppe Collaの引退に伴い、彼の顔利きで購入していたMontestefano所有者の買いブドウ契約(相手はProduttori del Barbaresco、Gonella、Maffei、 Marcarino、Rocca、更にRivella=Gajaの醸造長Guido Rivellaの会社)を解消します。最終生産年は1994となりました。

Antinoriは地質の調査と畑購入を行いつつ醸造法に関しては手を入れました。1999年には老朽化したセラーを、最新の温度管理機能を備えた施設に一新。発酵槽は、古いコンクリート製のものから、INOXへ。熟成樽はバリックを導入、従来の10,000lスロヴェニアンオーク大樽を、より小さい5,000〜7,500lに変更しました。

 

さて、上記を踏まえるとMontestefano1983は旧スタイル(オーナー&エノロゴはBeppe Colla、買いブドウ、大樽熟成)での醸造となりますが、文句無しの傑作です。

畑位置はBarbarescoきってのポジション。理想的な傾斜、ほぼ全て南向き。Barbarescoの中で最もBaroloらしい出来になるというMontestefano。しかもクラシックな手法で造られた1983は買いブドウも含む構成なれども実に堂々とした出来でした。

契約終了となり、現在は生産されなくなったかと思うと実に悔しい。旧Prunottoは古さが漂うエティケッタの印象と共にやぼったい雰囲気が拭えませんが、現エティケッタのこざっぱりとした感じとは全く違う、実に古式豊かなBarbarescoでした。長期の熟成により液色は薄いのですが酸が残っており、主張し過ぎないタンニンと共に滑らか且つ後味が深く長いタイプです。

自分最高の一本としてもRiserva Montestefano1983を挙げました。なんだかんだと言っても、やはりいかつい堂々としたワインが好きです。

 

当然、会社としては、尊大で無くとっつきやすい赤をさらっと生産する事が一番収益率高いビジネスになるのでしょうが、それにしても手強い赤を追い求める事は良くないのでしょうか?現在のポートフォリオはワイン25種類、グラッパ2種類。現オーナーのAntinoriらしい巨大なカンティーナになりましたが、何気にBarolo Bussia Vigna Colonnello Riservaも生産しており、嬉しい限り。

 

この項 了。

Barbaresco Riserva Montestefano 1983 Prunotto

バルバレスコ リゼルヴァ モンテステファノ 1983 プルノット

Prunotto, Cuneo, Alba  プルノット、クネオ、アルバ

Prunotto, Barolo, Bussia プルノット、バローロ、ブッシア

現行 Barolo Riserva Bussia Vigna Colonnello

バローロ リゼルヴァ ブッシア ヴィーニャ コロンネッロ

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.110

Prunotto-Barbaresco Montestefano 1983 その1

 

Prunottoの母体はCantina Sociale ai Vini delle Langhe(ランゲワイン醸造共同組合)でした。設立は1904年の事。

公証人ではありましたがワイン造りに関しては素人だったAlfredo Prunottoの男気が今日までこのブランドを支えています。

 

Barbaresco Montestefano

オーナー兼エノロゴ:Beppe Colla(1989年版ガイド出版当時)

生産初年度:1961年、

平均年間生産本数:8000~13000本、

畑名:Montestefano、

畑面積:2.9h、

畑展開方角:南~南東だれ、

畑海抜:200~250m、

土壌:密度が高い、ローム、シルト、粘土、石灰質、

栽培法:Guyot、

密植度/h:4800本、

平均樹齢:25年、

resa:50~60qli、

収穫法:手摘み、

ファーマ容器:INOX、

温度調整:29℃、

ファーマ&マセ:15日、

樽熟:スロヴェニアンオーク5000~10000lで10~12ヵ月、フレンチオーク3600~5000lで2~4ヵ月、

平均樽齢:15~20年、

清澄:卵白

 

Prunottoの母体であるCantina Sociale ai Vini delle Langheが出来たのは1904年の事です。

公証人のAlfredo Prunottoが、同じく公証人だった初代Giacomo Odderoと共にCantina Sociale ai Vini delle Langhe(ランゲワイン醸造共同組合)の設立に法律家として立ち会ったのが由縁です。生産者である地元名士が各自のブドウを持ち寄ってワイン造りを行う組合を設立したのです。

その後第一次世界大戦が勃発し、残念ながら組合が経営不振に陥ります。Odderoは自分の一族でワイナリーを経営していた為、Alfredoが自ら手を挙げ、1923年にワイナリーとして創業しました。自社畑を持たず、買いブドウと借畑を使用しての生産でしたが、Alfredoはマーケティングに長けており、国内のみならず、既にこの時代に南米まで輸出を行う様になりました。1956年にAlfredoは引退しますが、Beppe Colla(2019年1月15日没)へ会社を譲渡します。

Beppe Collaはご存知ピエモンテレジェンドの一人。アルバ醸造学校Umberto Iを卒業後、若干19歳で当時アルバ一の大きさを誇ったCasa Vinocola Bonardiに入社し、その後は醸造長として活躍します。更に名を挙げたのがPrunotto購入後ですね。特に70~80年代の作品の数々は正にクラシックの見本でした。

1990年、Beppe CollaからAntinoriに経営権が移り、現在に至ります。

 

次回に続きます。

Prunotto-Barbaresco Montestefano  プルノット バルバレスコ モンテステファノ

 

Alfredo Prunotto アルフレード プルノット

Beppe Colla ベッペ コッラ

Gambero Rosso Vini d'Italia1989 Prunotto  ガンベロロッソ ヴィーニィディイタリア1989 解説

Vigneto Montestefano モンテステファノ畑

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol. 109

Distillati&Liquori di Gualtiero Marchesi

Carlotto-Il Rosolio di Gualtiero Marchesi

 

今回はマルケージのワゴンからリキュールを一本ご紹介しましょう。Rosolio、生産者はCarlottoです。

 

イタリアに渡ってから、彼の地で沢山のリキュールを覚えましたが、古式ゆかしい製法とエティケッタが特徴のCarlottoの製品に触れられた事は、私にとって大きな財産の一つです。

早くにマルケージと友好関係を築いた彼らは、濃厚且つ良質なリキュールの数々をマルケージに優先的に提供し、またマルケージのオリジナルラベル商品の開発にも尽力してくれました。その一本が今回ご紹介するIl Rosolio di Gualtiero Marchesi です。

 

Carlottoの歴史です。

1800年代、ハンガリーをオリジンとする創始者がヴェネトに店舗を構え、パティスリーとローズオイルを生産し始めた事が最初です。良質のブルガリアローズを使用したローズオイルは非常に人気が高く、その製法を基に1883年にはバラのリキュール『Rosolio』のオリジナルリチェッタが書かれます。以来、このリチェッタは門外不出、今でもこの時の使用原料・量・製法はCarlotto家によって守られ・受け継がれています。

徐々にリキュール製造に力を入れ始めた彼らがマルケージと出会うのが1980年。意気投合した彼らが製造したのがマルケージ用のコーディアルリキュール、キナ、アマーロ、そしてこのRosolioだったのです。有難い事に、CarlottoのHPの歴史欄には未だにマルケージとの出会い(L’incontro con Marchesi)が大きく掲載されています。本当に嬉しい限り。

 

Carlotto HP http://www.carlotto.it/

 

さて、現在においてRosolioがこの世に何種類存在するのかは知りませんが、これがオリジンである事には疑いない。とにかくバラの薫りが鮮烈・強烈。甘味とアルコールのバランスが良く、27℃という度数が全く気になりません。特に薫りの飛び方・伸び方が強いヨーロッパでの薫りの拡散具合は優雅且つ華麗です。

お客様前での開栓・サービス時には、薫りに気付かれた他の女性のお客様から『何をサービスしているの』とのお声がかりが非常に多く、その度にRosolioの説明とマルケージとのなれそめをお話ししておりました。

Carlottoは10ml程を冷やして飲むのも良し、フォンダンショコラに入れるも良し、とお勧めしていますが、この薫りを他の薫りでマスキングしてしまうのは勿体ない。個人的には常温で十分。飲みにくければ丸氷で。

マルケージブランドのRosolioはCarlottoのRosolioより柔らかい出来。万人向けの量販品に仕立てられてはいましたが、それでもRosolio未体験の私には、これとのの出会いが深く心に刺さりました。当然、日本行きコレクションに加えられましたが、随分前に飲んだのか、空瓶さえ見つからない。でも写真の通り、マルケージのマーク『7色のペンタッチ』、白いエティケッタ、クリア瓶、ローズピンクの液色(実物はもっと濃いピンクです)、全てが格好良かった一本でもありました。

 

調べるとCarlottoのリキュールはまだ日本未輸入らしい。リキュールの輸入が難しい事は確かですが、勿体ない。

Carlottoのポートフォリオにはザバイオーネ、古来製法で造られた虫入りのアルケルメス等があり、日本への手土産に最適とばかり帰国の手荷物に入れ込んだのですが、ザバイオーネ瓶が鞄内でカチ割れ、空港でちょっとした異臭騒ぎになったのは、今となっては笑い話。何せ強烈な卵とマルサラの薫りが漂う搭乗ロビー。時間ギリギリの為、洗い流す暇もなく、仕方なくビニール袋に割れた瓶をそのままジャリジャリと包み入れましたが、Aeroporto Linateで、ほかほかと美味そうな薫りを漂させながらも素知らぬ顔をしていたのは、何を隠そう、この私です。

 

この項 了。

Il Rosolio di Gualtiero Marchesi by Carlotto カルロット ロゾーリオ マルケージ

ロゾーリオ コーディアルと共に

Carlotto Rosolio カルロット ロゾーリオ オリジナル

Carlotto カルロット 商品の数々

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.108

Ceretto-Barbaresco Bricco Asili 1985 その2

 

Bricco Asili。

なだらかな丘陵の頂上部分で風上なので、他社の農薬散布の影響を受けにくく、現在はBIOで栽培。以降、味に磨きがかかり、より繊細に、よりシャープに、より細部まで表現できるようになった、とはFederico Cerettoの談です(2018年初夏・名古屋にて)。

元来、CerettoのBarolo&Barbarescoはニュアンス勝負なので、BIOやその周辺の考え方には合意しやすいと思います。Barbarescoに関しては、南だれのBernadotや、かつてのRabaja(同じく南だれ)に比べ、Asiliの持ち味は繊細さですね。

飲む度に上品な造りと奥行きの深さを実感します。畑の拡張などを行わず、密植度とresaの調整を行い、現在はBIO導入にて高品質を維持しています。後は生産者の理想スタイルと我々の嗜好が合致するかどうかですが、Asiliに関しては、ざっくりB.Giacosa、P.del Barbaresco、Ca’del Baio、Roagna-I Paglieriに比べ、私は圧倒的にAsili Cerettoを選び飲んだ回数が多いです。つまり、私の好みなのですね。

 

この先のBricco Asiliはどうなるか?生産本数を増やす?Asiliはご存知の通り超人気クリュ。特にCerettoが所有する丘陵頂上Bricco Asili近くの拡張は難しい。(ちょっと条件の悪い)北東側斜面の生産者畑を買収拡張するとは思えず、とすると南側にはP.del BarbarescoとB.Giacosaになりますが、両者共に看板ワイン(僅かにB.Giacosaに可能性ありか。御大のご逝去という大きな問題を解決できずにいますね)。

古くなったAz.Agr.Bricco Asiliを他所に移転させ、跡地を畑にするというアイディアはありますが、それよりもAsiliに拘らずBernadotの様にBarbaresco内の他クリュを購入するほうが簡単そうです(個人的にはSerraboellaをお勧めしたい)。

 

企業全体で考えれば、豊富な資金、量産ワインの供給安定、カンティーナツアー客の取り込む、三つ星レストラン(Piazza Duomo)の経営等、ビジネスセンスも抜群です。更に後継者も育ち、そしてピエモンテ生産者の弱点の一つ・欧米へのマーケティングも早い段階でクリアしています。今後益々発展すると思います。

 

90年代、イタリアで運よく労働許可証を取得できた私は、イタリアで就職活動を行っていました。履歴書と職務経歴書を店のPCで作成し、ミシュランを見て片っ端から郵送、携帯など無かったので、家の電話が鳴るのを待ったものです。

 

はい、現在のイタリアは大変な状況ですが、それでも、そこで働いてみたいなと思っています。

好きなのですね、イタリアが。

 

この項 了。

Ceretto-Barbaresco Bricco Asili バルバレスコ ブリッコ アジリ

Bricco Asili ブリッコ アジリを上空から

Bricco Asili ブリッコ アジリ 立体図

Bricco Asili ブリッコ アジリ 畑展開図

Az.Agr.Bricco Asili ブリッコ アジリ醸造所

ブリッコ アジリ 北側目印の教会。この三叉路を左に進んで下さい

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.107

Ceretto-Barbaresco Bricco Asili 1985 その1

 

相変わらず綺麗な造りのCeretto。

今回はTreBicchieri受賞のBarbaresco Bricco Asiliに絞ってご紹介します。

 

Barbaresco Bricco Asili(Barbaresco) クリュAsiliの頂上部分にBricco Asiliとサブクリュ名を付けた。

畑西側隣接のAz.Agr.Bricco Asiliにて醸造・生産。

生産初年度:1974、

生産本数:7240本(1985)、

使用ブドウ品種:Neb100%、

ブドウ栽培種別:自家栽培、

畑名:Bricco Asili、

畑面積;1.20h、

畑海抜:200~290m、

畑土壌性質:サンタガタ・フォッシリ泥灰土、粘土質48%. 泥土33%, 砂質19%、

畑展開方角:南~南西だれ、

栽培方法:Guyot、

密植度/h:3375本、

平均樹齢:25年、

resa:65~70qli、

収穫方法:手摘み、

ファーマ&マセ容器:INOX、

温度:30~32℃、

冷却法:水冷式、

ファーマ日数:10~12日、

マセ日数:10~15日、カッペッロ・ソンメルソ実施、

ルモンタージュ:初日~5日目=1日2回、以降=1日1回、

マロ:実施、

熟成容器:スロヴェニアンオーク3000~6000l、フレンチオーク300l、

樽齢:大樽:10年、

バリック:新樽100%、

樽熟期間:14~18か月、

清澄:卵白又はゼラチンにより軽度に行う、

特記事項:BIO(2018年現在)

 

次回、詳細を書きましょう。

Ceretto Barbaresco Bricco Asili   チェレット バルバレスコ ブリッコ アジリ

Ceretto Barbaresco Bricco Asili   チェレット バルバレスコ ブリッコ アジリ 1985

非常に美味かった。飲んだのは1997年です。

Ceretto Barbaresco Bricco Asili   チェレット バルバレスコ ブリッコ アジリ 現行品 テクニカルシート

Fratelli Ceretto    チェレット兄弟

Ga

Gambero Rosso Vini d'Italia 1989 Ceretto Barbaresco Bricco Asili

チェレット バルバレスコ ブリッコ アジリ ガンベロロッソ ヴィーニィディイタリア1989 解説

ヴィーニィディイタリア20周年記念号 解説 TreBicchieri 受賞ワイン 一覧

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol. 106

Frescobaldi-Pomino Rosso 1985 その2

 

Pomino Rosso。今回で締めましょう。

Pomino Rossoは1983年にリリースされます。

数多いポートフォリオを誇りつつもChianti等DOC(G)のクラシック路線を得意としたFrescobaldiが、スーパータスカンの時流に乗ったスタイルのワインを最高の畑から白赤共にリリースしたのです。文句なしの旨さと高品質を誇るワインが比較的手頃な価格で、しかも超有名なワイナリーから年々安定供給されたのです。昔も現在も看板ワインの一つであるPomino Bianco=シャルドネと共に一大人気ワインとなりましたが、赤は2006年を最後に生産中止となり、現在はピノ・ネーロを全面にリリースする様になります。

 

Pomino Rossoの品種構成はSvが核となり、そこにボルドー品種のCS,Meとブルゴーニュ品種のPNを混ぜるという独特な構成です(現在のPomino Rosso DOCの原型)。

伊ではかつてLungarottiがCSとPNを半分ずつ混ぜた赤ワインを生産していた事があり、CSとPNの混醸はさほど珍しい事ではありません。

しかし、トスカーナの中でも最高の海抜(標高)を誇るこの地・畑では、SvよりもPNの栽培に適していたのは明白で、昔はともかく、醸造技術の進歩によりPN100%でも十分な作品が造れる様になった今日では、Svなどの生産を止めPNに絞った事は賢明な判断だと思います。当時でも、他社のSv100% Vino da Tavola路線とは異なる、優美且つおっとり感に溢れており、当時のパワフル赤全盛の中では、非常に上品な印象でした。

 

さてこのPomino Rossoもトスカーナ奇跡のヴィンテージ1985の恩恵を得てTreBicchieriを受賞しますが、元来パワー系ではない酒質なので、1985以降はTreBicchieri受賞が途切れます。そうですね、1985の評価は元来上品なこのワインには例外的な事例でしたが、それでも、このワインに対する我々の信頼度はそれ以降も変わりませんでした。当時は、同様の酒質を持ちつつも安定供給を誇ったTignanelloやCabreo Il Borgoと共に数多くの店で活躍しました。

 

皆さん、このワインの事、ちょっと忘れていませんでしたか?

どっかで見つけたら、是非飲んであげて下さい。

今も昔と変わらず、とっても上品で美味い筈です。

 

この項 了。

Frescobaldi   Pomino Rosso   フレスコバルディ ポミーノ ロッソ

Frescobaldi   Tenuta Pomino    フレスコバルディ テヌータ ポミーノ カンティーナ内

Frescobaldi   Tenuta Pomino    フレスコバルディ テヌータ・ポミーノ  古の設計図

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol. 105

Frescobaldi-Pomino Rosso 1985 その1

 

懐かしい。あれだけ触っていたのに、2006年に生産終了。今は幻のワインとなりました。

 

Pomino Rosso

生産初年度:1983、

生産本数:約130,000本、

使用ブドウ品種:Sv60,PN20,CS10,Me10、

畑名:Tenuta Pomino内、

畑展開方角:南~西だれ、

畑海抜:300~500m(最高海抜737m付近はChのみ植えられている)、

畑面積:計約25h、

土壌:砂、山岳特有の岩も混じる、

栽培方法:Guyot、Cordone Speronato、

密植度:2300株/h、

平均樹齢:20年、

resa:60qli、一株当たり2.6㎏、

収穫方法:手摘み、

ファーマ容器:オーク樽、

ファーマ温度:26~28℃、

温度調整機能:無し(自然に任せる)、

ファーマ&マセ日数:12日間、

ルモンタージュ:実施、品種毎に別々の工程で行う、

マロ:実施しない、

熟成容器:フレンチオークバリック225l、

樽齢:異なる、

熟成期間:15ヵ月、

清澄:卵白とゼラチン使用、珪藻土でろ過、コールド・スタビライゼーション、

 

Tenuta Pominoはポミーノ城が建造された1500年に出来上がります。高い標高の畑位置を誇り、そこで造られるブドウとワインは評判の高い物でした。1716年、メディチ大公コジモ3世がトスカーナで最も評価の高い四大ワイン産地を書き記した、あの有名な文献にもChianti、Carmignano、Valdarno di Sopraと共にPominoの名が列記されています。元来はPominoの名前の由来であるPomo(古代イタリア語でりんごの意)の産地として有名であり、冷涼な気候条件を好都合としたシャルドネやピノ・ネーロが早くも1855年に植樹されます。

 

次回、更に詳しく解説しましょう。

Pomino Rosso Frescobaldi   ポミーノ ロッソ フレスコバルディ

Tenuta Pomino テヌータ ポミーノ 場所

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.104

Ferrari-Giulio Ferrari Riserva del Fondatore 1980 その2

 

前回の続きです。

 

創業者のGiulio Ferrariは1879年にトレンティーノ地方生。イタリアにおける重要な醸造学校の一つ、Istituto Agrario di San Michele All'Adige卒業。その後、仏モンペリエ、更に有名な独ガイゼンハイムでも学びます。学ぶ上で、シャルドネを使用したシャンパーニュタイプが地元での生産に適していると気づき、帰国と共に生産を開始します。つまりFranciacortaと同様に、地場における伝統的なワインでは無かったのですね。

 

1902年に会社を設立・生産後、彼の作品は瞬く間に人気となりますが、スパークリングワインの長期熟成という概念は第二次世界大戦時・カンティーナの長期閉鎖を余儀なく行った時に生まれました。約7年の間閉鎖されたカンティーナに眠っていたスパークリングワインを大戦後に抜栓したところ、止むを得ず行った長期熟成のおかげで非常に複雑な旨味を持っていたのです。

 

跡取りに恵まれなかったGiulio Ferrariは1952年に知り合いの地場の酒屋を営むLunelli家に会社を売却します。1980年にLunelli家がようやく長期熟成スパークリングワインの商品化を実現してヴィンテージ1972をリリースした時、創業者に敬意を表し彼の名前を付け販売したのがこの作品の始まりで、以降イタリアスパークリングワインの最高峰の一本として長く君臨します。

これで三つの質問にお答えできたでしょうか?

 

唯一シャンパーニュ(特にブラン・ド・ブラン)に対抗できるイタリアのスパークリングははこれしか無いでしょう。我がFranciacortaは甘さがしばし欠点になりますが、Ferrariは微塵も無く『酸』『コク』『複雑さ』を高度な次元で持ち、ブレの無い『スタイルの持続性』も堅牢です。Trentoという絶妙な土地特性(緯度・日照条件・海抜500m)と長期熟成が『酸』『コク』『複雑さ』を生み出し、、『スタイルの持続性』については良年のみCh100という構成が可能としています。そしてこの四つを可能とする豊富な資金力が(伊発泡性ワインのシェア30%を生産)、シャンパーニュに対抗しうる商品を造り続ける力になっています。

前回も書きましたが、リリース直後が最高の飲み頃でしょう。それ以上の瓶熟成は必要無く早めに飲んでしまい事。重く複雑な味わいを愉しみたいのであれば、泡が元気な時がベストだと個人的に思います。

 

あんまり褒めるとFranciacortaが焼きもちやくので、ここらへんで。

 

この項 了。

 

Ferrari Cantina

Giulio Ferrari

Riserva del Fondatore 現行品テクニカルシート

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.103

Ferrari-Giulio Ferrari Riserva del Fondatore 1980 その1

 

2019年10月21日にご紹介した1979に続き、今回は1980をご紹介します。

畑情報を付記し、更に質問の多かった三点

1、何故Trentoで瓶内二次発酵ワインが誕生したのか?

2、何故1970年代に長期熟成スパークリングという概念が生まれたのか?

3、Giulio FerrariとLunelli家の関係性は?

にお答えしましょう。

 

Ferrari-Fratelli Lunelli

創業年:1902、

創業者:Giulio Ferrari(1952年にLunelli家へ売却)、

現所有者:Lunelli家、

年間生産量:約500万本、

 

Giulio Ferrari Riserva del Fondatore 1980

エノロゴ:Ruben Larentis

生産初年度:1972(市場販売初年度:1980)、

年間生産本数:約32000本、

ブドウ品種:Ch100、

畑名称:Vigneto (Maso) Pianizza、

畑面積:12h、

畑方角:南東~南西だれ、

海抜:420~550m、

土壌:石灰岩、粘土質、

栽培方法:ペルゴラ・トレンティーナ、

密植度:3500~5000株/h、

植樹年:1960年代中旬、

resa:90qli, 2.5kg/房、

収穫方法:手摘み、

ファーマ容器:INOX、

ファーマ温度:20℃、

温度調整法:水冷式、

ファーマ日数:12日間、

マロ:実施しない、

Sboccatura:8~10年間、

清澄:フィルターろ過と冷却、

 

※畑名:諸文献に“Vigneto (Maso)Panizza”との表記もあるが、正しくは”Vigneto (Maso) Pianizza”。”Panizza”はTrento北部の別地域になるので要注意。

※※Maso(マゾ):一族の意味。TAA地方に伝わる慣習の一つで、継承による畑細分化を防ぐ為、一子相伝するという不文律がある。転じて土地名・畑名にも使用される。

 

次回でまとめます。

Giulio Ferrari Riserva del Fondatore  フェッラーリ リゼルヴァ デル フォンダトーレ 1976 1982 1983 1988


Cantina Ferrari Lunelli   フェッラーリ カンティーナ 場所

Vigneto  (Maso)  Pianizza  ヴィニェート (マゾ) ピアニッツァ

Ferrari Vini d'Italia1989 ヴィーニィディイタリア 1989 解説