ドラマ「僕の姉ちゃん」その9/#ハイヒール | 日々是本日

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bookudakoji の本ブログ

テレビ東京 ドラマ「僕の姉ちゃん」

毎週水曜 深夜1時&Amazon Prime Videoにて独占配信中

次回、最終話(第10話)は9月28日(水)深夜1時!


 このドラマの記事を書き続けることにしたので、第8話の記事に続き今回もドラマ「僕の姉ちゃん」の話である。

 

 もう次回が第10話の最終回である。

 

 終わりが見えてきた。

 

 ドラマの情報については公式サイトのイントロダクションのみ再掲して、第8話の感想に進む。

 

 その他の情報および感想等については過去の記事を参照されたい。

 

▼ドラマ「僕の姉ちゃん」公式サイト:イントロダクション

※主演の黒木華と杉野遥亮、原作者のコメントあり

ユーモラスで辛辣な姉・白井ちはる(黒木華)と、姉に翻弄されるが素直に話を聞いてくれる弟・白井順平(杉野遥亮)は、両親不在のつかの間、二人暮らしをしている。
仕事を終え帰宅した部屋で、お酒を飲み、それぞれ好きなものを食べながら、恋・仕事・趣味・人生にまつわる会話を繰り広げる。姉弟だからこそのぶっちゃけトークで炸裂する“姉ちゃんの本音“は、一見ひねくれていて意地悪なように聞こえるが、実はしごく真っ当で、順平は妙に納得してしまう。

 

▼このシリーズの過去の記事

 

 

---以下、ネタばれあり注意---

 

 

▼第9話 ハイヒールを履く

 冒頭、いつもの通り夕食後であろう夜の時間に、弟・順平(杉野遥亮)が居間の座卓で本を読んでいる。

 玄関から、

「ただいまー」

という姉・ちはる(黒木華)の声がする。

 順平が、

「おかえりー」

と返している間にちはるは居間に入ってきて、

「つかれたー」

と言いながら順平の前に座り込んだ。

 そして一息ついてからゆっこりとこう言うのだった。

「仕事は人生のすべてではないが、『私には仕事がある』と思うと乗り越えられることもある。」

 画面は、玄関の大きな花の飾りのついたちはるの靴を映してから、オープニングが始まった。

 う~む、言っていることはもっともだが何のことか……

 今、ちはるは仕事をすることによって何かを乗り越えていることはわかったが……

 恋のない日々だろうか?


 後日、順平が上首尾に仕事を終えて帰ってくる。

 風呂上りのビールを飲む順平。

 ちはるはまだ帰っていない。

 ソファーでうたた寝をしている頃、ちはるが帰ってきた。

 大分、酩酊していたちはるは玄関で順平を呼んだ。

 順平が玄関に倒れ込んでいるちはるに肩を貸して、ソファーまで運ぶとちはるはこう言った。

「人は全人類に好かれなくても生きていけるよなぁ。」

「問題ない。」

 順平は確信に満ちた声で言った。

 

 う~む、今回は随分じわじわと来るなぁ。

 

 翌日、休みだった順平は買い物に行った帰りに、幼馴染みのメイちゃんと偶然に会う。

 順平はちはるに会いたいというメイちゃんを自宅に連れてきた。

 二人が居間に入るとちはるは不在で、座卓の上にちはるが読んでいたであろう雑誌が広げてあった。

 開かれていたのは、見てるだけのノルウェーの観光情報のページだった。

 ちはるが戻ってきた頃、入れ違いで順平はメイちゃんを近くの駅に送っていた。

 道々話していると、メイちゃんは

 「ちはるさんみたいな人、憧れちゃう。」

と言った。

 メイちゃんを見送った後で順平のナレーションが入る。

姉ちゃんを支持する女子が、姉ちゃんに似ているとは限らない。

ということが、僕は怖い。

 

 う~む、ホントにじわじわ来るなぁ。

 

 家に帰ってきた順平は、入れ違いで戻ってきていたちはるとメイちゃんの話をする。

 ちはるはメイちゃんのことを覚えていた。

 そして、昔よくお菓子を分けてくれたが、メイちゃんはチョコ派じゃなくてクッキー派だったと言う。

 順平は、面白いことを覚えているなぁと思ったようだった。

 その後、メイちゃんがちはるに憧れていると言っていたことを伝えると、ちはるは一言、

「センスある~」

と返しただけだった。

 ここでまた、会話のセリフではなく順平のナレーションが入る。

なんでだろう、言って損した気がする。

 

 まだ話の全体像は見えないが、やっと会話劇らしくなってきた。

 メイちゃんがちはるに憧れていると言っていたことを話した順平が、姉ちゃんに期待していた反応は、

「わ~、そうなんだ~、嬉しい~」

といった類のものだろう。

 しかし、ちはるの反応は、案外素っ気なかった。

 このズレについては、メイちゃんを見送った時の順平のナレーションから考えていかねばなるまい。 

姉ちゃんを支持する女子が、姉ちゃんに似ているとは限らない。

ということが、僕は怖い。

 このナレーションによる順平の感想は、案外面白いところを突いている。

 まずメイちゃんは姉ちゃんとは対照的に、少し派手な感じが似合うカワイイ女子である。

 この「姉ちゃんとは対照的な女子」が、姉ちゃんに憧れると言っていることが恐いというのである。

 メイちゃんが姉ちゃんに憧れるところというのは、順平が前回で語っていた「真っ当さ」を備えたような人柄であろう。

 ここで「姉ちゃんとは対照的な女子」が「憧れる」と言うのには、それは「憧れ」であって自分はそうではないという意味が含まれているとすれば、実に的を得ている。

 順平が怖いと感じた理由も、ここにあるのではないかと思う。

 順平が好きになりそうなのは、姉ちゃんタイプではなくてメイちゃんタイプであろうが、メイちゃんタイプの女子は姉ちゃんタイプの「真っ当さ」を備えてはいないのである。

 このナレーションを振り返ると、姉ちゃんが、メイちゃんはチョコ派じゃなくてクッキー派だったと言ったところに意味が見えてくる。

 姉ちゃんは暗に、ワタシはメイちゃんとは違うタイプよと言っていた訳である。

 これはメイちゃんが自分とは対照的なタイプであるということは理解しているということの提示であって、その上で、「真っ当さ」に憧れるけど自分はそうではないあり方をしているメイちゃんに支持されても嬉しくはないということを、素っ気ない返事で表現していたのだと思う。

 チョコとクッキーにそれぞれ象徴的な意味か込められていたかどうかは定かではないが、チョコは甘さという実質の塊でクッキーは嵩は大きいが中身はスカスカといったイメージが投影されていた可能性はある。

 自分の「真っ当さ」を評価してるところだけは認める、

「センスある~」

という返しは実に上手い。

 順平は、メイちゃんタイプの女子が姉ちゃんタイプの「真っ当さ」を支持はしても備えていないことには気づいたが、この姉ちゃんの心理までは思い至らなかったという訳だ。

 

 さて後日、ちはるは会社で打ち合わせをしている。

 相手は、前回の話の中で、ベルギーのおみやげとしてハードロックカフェのTシャツをくれた長野という男性社員である。

 打ち合わせの後、お茶を飲みながら世間話をする二人。

 その日ちはるは、高そうなアイスクリームを買って家に帰った。

 居間の座卓に向かい合って座り、アイスクリームを食べるちはると順平。

「なんか、イイ感じの人とデートでもしてきた?」

 順平は姉ちゃんが上機嫌な理由を探っていく。

「前から知っている仕事相手の人と、なんとな~く飲みに行っただけ。」

 順平が腑に落ちない様子でいると、姉ちゃんが続けた。

「気の回る人でもないしね、おみやげのポイントも外すし。」

 腑に落ちないままの順平は、

「何の話をしてたの?」

と質問を重ねた。

 そう訊かれてちはるは、

「あれっ?」

と小声で言ってから、当惑した表情になった。

 そして、

「なんの話か覚えてないし、タイプの顔でもないのに、なんか楽しかった……って恋じゃん。

と自分で答えを出した。

 

 今回はここを“姉ちゃんの本音“としたい。

 炸裂はしなかったが。(笑)

 

 また後日、ちはるはハイヒールを履いていた。

 表情は晴れやかだったが、踵の靴ずれには絆創膏が貼られていた。

 家で、ソファーに寝そべっているちはる。

 風呂上りの順平がビールを飲みはじめると、ちはるが言った。

「靴ずれがお風呂にしみたよ~」

「新しいの買ったの?」

と順平は訊いた。

「ちょっとヒール高いかと思ったんだけど、足長に見えるかと思って頑張って履いたんだよね~」

と返した後でちはるは、パーティーに行きたいと言いはじめて理想のパーティーの妄想話をだらだらと続けた。

 この後、画面は玄関にきちんと揃えられたハイヒールを映してから、縁側で先日拾った野良亀に餌をやっているちはるに切り替わった。

 会話はおやすみの挨拶のみで、姉ちゃんについての順平の語りがナレーションで流れる。

どうやら片思い中の男子が出張中らしい。

なので、今夜はなんだかとてもリラックスしているようです。

突然、ご飯に誘ってくれないかな~

って思わなくていいからみたいです。

 

そんな僕の姉ちゃんは、

僕の幼馴染の女子にとって、

憧れらしいです。

 そして、エンディングがはじまった。

 

 最後にもう一度、メイちゃんとの比較ネタをもってきた。

 やっぱりこれが今回のテーマだったのだろう。

 メイちゃんは、「突然、ご飯に誘ってくれないかな~」と期待するタイプでもなく、だから相手が出張中でリラックスするということもない。

 姉ちゃんは、ちょっと自分を良く見せようと思ったらわざわざハイヒールを履くような女子である。

 こういうことだったのか!

 順平のナレーションによる語りは、そんなメイちゃんが憧れはしてもメイちゃん自身はそうではない姉ちゃんのあり様を讃えているように思われた。

 

 そして今回もまた、ここでは終わらないのである。

 エンディングの後のエピローグというほどの内容でもない会話はこうだった。

 

「デート中のバーで、どうして泣いてるのって言われてさぁ。

『話が長すぎてあくびしたから。』

って言ってる夢みたわぁ。」


 順平が好きになりそうなメイちゃんタイプとは違う姉ちゃんタイプの人柄を讃えておいてからの、姉ちゃんタイプの実像ってまぁこういう感じでもあるよね、というメッセージであるように思われた。

 

 姉ちゃんタイプどうでしょう?


 

次回、最終話(第10話)は9月28日(水)深夜1時!

 

▼Amazon Prime(全話独占配信)

 

▼益田ミリの原作マンガ「僕の姉ちゃん」マガジンハウス2011

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