ドラマ「僕の姉ちゃん」その8/#尽くさない女 | 日々是本日

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bookudakoji の本ブログ

テレビ東京 ドラマ「僕の姉ちゃん」

毎週水曜 深夜1時&Amazon Prime Videoにて独占配信中

次回(第9話)は9月21日(水)深夜1時!

 

 このドラマの記事はもう書かなくていいかと思っていたのに今回も書いてしまうので、もう第10話の最終回まで書くことにした。(笑)

 

 ということで第7話の記事に続き、今回もドラマ「僕の姉ちゃん」の話である。

 

 ドラマの情報については公式サイトのイントロダクションのみ再掲して、第8話の感想に進む。

 

 その他の情報および感想等については過去の記事を参照されたい。

 

▼ドラマ「僕の姉ちゃん」公式サイト:イントロダクション

※主演の黒木華と杉野遥亮、原作者のコメントあり

ユーモラスで辛辣な姉・白井ちはる(黒木華)と、姉に翻弄されるが素直に話を聞いてくれる弟・白井順平(杉野遥亮)は、両親不在のつかの間、二人暮らしをしている。
仕事を終え帰宅した部屋で、お酒を飲み、それぞれ好きなものを食べながら、恋・仕事・趣味・人生にまつわる会話を繰り広げる。姉弟だからこそのぶっちゃけトークで炸裂する“姉ちゃんの本音“は、一見ひねくれていて意地悪なように聞こえるが、実はしごく真っ当で、順平は妙に納得してしまう。

 

▼このシリーズの過去の記事

 

 

---以下、ネタばれあり注意---

 

 

▼第8話 尽くさない女

 今回も冒頭の二人の会話シーンから見ていく。

 いつもの通り、夕食後であろう夜の時間をテーブルで過ごしている二人。

 弟・順平(杉野遥亮)が荷物の包みを開けている。

 ドリンクを飲みながらそれを見ていた姉・ちはる(黒木華)が呟き始める。

 

「わたしへのおみやげやプレゼントを、

 バッグから出してる時の男子たちの俯いた顔の、

 写真集欲しいな。」

 

「ねぇよ。」

 

 荷物の包みを開けて取り出したノートパソコンのスタンドを組み立てながら、順平は即座に答えた。

 

 姉ちゃんにとっては包みの中の物など、どうでも良いのである。

 やっぱり、この姉ちゃんのセンスは面白過ぎるなぁ。
 もう観ている方は驚かないのである。

 

「プレゼントって中身を見る前の方が、大抵は楽しいよね。
 そこだけ集めておいたら、いつでもその時の期待感を思い出して楽しめるじゃん。」


というちはるの心の声を想像すらしてしまうのである。

 即答した順平くんも同じ気持ちだっただろうか、それともノートパソコンのスタンドの組み立てに一生懸命だったから現実的な回答をしたのだろうか、いや、それどころじゃないから姉ちゃんとの面倒くさい会話を拒否したのかな。

 

 でもってこれがまた、この後の話の伏線なんだよね。

 今回のタイトルは「尽くさない女」なので、流れとしてはちはるの恋愛話が予感された。

 場面は、ちはるが同僚の女性とレストランで女子会をしているところへ進む。

 同僚の女性二人とデザートを食べていると、話題がキュンとしたいという話になる。

 ちはるが、

「王子様みたいな男子にサッと連れ去られたい。」

と言うと同僚の女性が、

「ちょっと強引にね。」

と続けた。

 しかしその後の会話では、あんまり遠くに連れ去られても困るし、強引な男は飽きるから無難な男子がイイという結論になったのであった。

 

 なんだかなぁ~(笑)

 

と思っていると、場面は家で英会話の練習をしている順平に切り替わった。
 

 無難な男子である。

 上手いなぁ。

 

と思っていると、そこにちはるが帰ってきて順平に、
無難がイイって。」
と言うのだった。

 

 恐らくこれも伏線なのだとは思うが、まだ話が見えてこない。

 

 その後、ちはるはちょっと良さそうだと思っていた男性とのデートが決まる。

 美容室へ行ったちはるの表情は実に明るい。

 家に帰ってきて、ちはるが自分の部屋でペディキュアを塗っている(!)と順平がやってきた。

 そして、髪が短くなっていたちはるに順平は、

「あっ、髪切った?」

と言うのだった。

 ここで“姉ちゃんの本音“が炸裂する。

 

「世の中のモテる男は『髪切った?』とは言わないのである。」

 

「女はこの一言が欲しくて髪を切るのだよ。」

 

「可愛い。」

 

 翌日の夜、順平は仕事の帰り道で男性と歩いているちはるを見かける。

 この後、映像はちはるのデートのシーンになるのだが、そこに弟のナレーションが挟まる。

論理も、理屈も、美しい筋道も見えないのだけれど、

姉ちゃんなりの何かで、

毎日を送っている。

それは、一見バラバラなピースに見える。

なのに、根気よく並べていけば、

僕が太刀打ちできないような真っ当さのようなものが、

うっすら見えてきそうな気もするのです。

 

 この姉ちゃんについてのコメントには、考え方や価値観の違う人についての感想として納得感があった。

 そして、考え方や価値観の違う姉ちゃんに弟が見たものは「真っ当さ」だった。

 順平がこう思ったのは、順平が無難な男子だからというだけでなく、それが実際にちはるが持っている人柄でもあるからだろう。

 また、「うっすら見えてきそう」という心境については、考え方や価値観の違う人を理解するのは難しいという意味もあるのだろうが、まだうっすらとしか見えないのかぁという感想もあった。

 

 一軒目の店で食事をしたちはる達は二軒目のバーへ。

 男性からのプレゼントだろう、ちはるの荷物にはリボンの付いた小箱が増えている。

 バーを出ると男は、

「もう一軒行きますか?」

と誘ったがちはるは、

「明日早いから、今日は帰ります。」

と言ってタクシーに乗った。

 タクシーの中で、気になっていた男性とのデートの感想が弟のナレーションで説明される。

気になっていた人とのデート。

それなりに胸はときめいたのだけど、

話しているとなにかが引っ掛かる。

なに?

言葉では説明できないなにか。

説明できないからこそ自分が大切にしていることではないか、

と姉ちゃんは思い、タイプの顔だし、ちょっと勿体ないけど……

 この時、ちはるの乗っていたタクシーは丁度、東京タワーの脇を走っていた。

 ライトアップされた、東京タワーを見てちはるは軽く微笑んだ。

 

 この東京タワーによって語られていたことは何だろう。
 デートの時に引っ掛かっていた何かに気づいたということだろうか。
 それが、東京タワーのような存在感と安心感ということだろうか……

 

 家に着くとちはるは、ソファーで本を読みながらウトウトしていた順平に、

「ワイン飲む?」

と声をかけた。

 男からのプレゼントを開けると中身はおしゃれなロウソクだった。

 そのろうそくを灯して、ちはると順平は縁側でワインを飲み始めた。

 

 このおしゃれなロウソクを取っておかずに、使ったところに意味があるのか……

 

 話を始めたのは順平だった。

「姉ちゃんて彼氏に尽くす女ではないよね。」

 ちはるがデートをしてきたということについて了解はあったが、いきなりその話もためらわれたのだろうか。

 とは言え、いきなりそこかいとは思ったが、ちはるの反応は案外真っ直ぐだった。

「尽くす女ねぇ……」

と反芻してから、

「うん、尽くさない。」

と断言した。

 その理由はこうだった。

「アタシが生まれた朝にさぁ。若かったお父さんとお母さんがさぁ。彼氏に尽くす女になりますように、な~んて願ったと思うか?」

「アタシもアンタも、誰に尽くさなくても世界から求められて生まれてきたのであ~る。」

 ちはるの答えは実に真っ直ぐだった。

 

 ここで思ったのは、男であれ女であれ尽くすことはそんなに悪いことだろうか、ということであった。

 また、「尽くす」ということを「人のためになることをする」と言い換えると、親が子どもに人のためになる人間になって欲しいと望むことはあるだろう。

 だから、ここで「尽くす」という表現に込められている意味はよく考えてみる必要がある。

 順平が言いたかったのは、少しイイ男をモノにするために男に尽くすようなタイプではないよね、ということであるように思われた。

 そしてちはるの説明には、人は一人では生きられないのだから世界が必要としていることをしていけばいいよ、という意味が込められているように思われた。

 ちはるにとってそれは、誰かに必要とされるために尽くすというようなことではないということなのだろうなぁ。

 

 そして今回もまた、ここでは終わらないのである。

 翌日、ちはるは海外出張でベルギーから帰ってきた長野という男性から、会社でおみやげをもらう。

 その長野という男性はまず他の人にチョコレートを配った。

 そして、ちはるが女子会をしていた同僚の女性と一緒にいるところに来て、「特別バージョン」と言っておみやげの袋を渡した。

 袋の中身はハードロックカフェのTシャツであった。

 次の休日、このハードロックカフェのTシャツを着たちはるは、スーパーでお湯を入れたカップ焼きそばを持って、近くの海岸まで歩いた。

 そして、海岸でそのカップ焼きそばを食べた。

 何かを予感させる最後であった。

 

 このカップ焼きそばの意味は何だろうか……

 ちはるなりのTシャツを着た気分の表現だろうか……

 海岸でジャンクフードを食べて解放感を味わう?

 まぁ、実際のところどうなのかは定かではないが、今回の重要アイテムがプレゼントなのはわかった。

 やっぱり最初のプレゼントの話から物語は始まっていたのだ。

 そして、気になっていた男性とのデートは、プレゼントの箱を開けて中身を知るということだったのだ。

 こういう伏線だったか!?

 そしてそして、姉ちゃんの現実を少しずつ理解している弟。

 姉ちゃんを通して現実の見方が少しずつ広がっていく弟。

 現実をよく見ている姉ちゃんには、弟が太刀打ちできないような真っ当さがあった。

 これは、現実をよく知るほど現実に圧倒されるということの結果ではないかと思う。

 現実をよく知るほど、世界の素晴らしさも見えてくるが、残酷さも見えてくる。

 つまり現実をよく見ている人ほどまた、現実に圧倒されるのであって、それでも前向きに生きていくのに、真っ当さはなかなか助けになるということなのではないかと思う。

 だから、プレゼントの中身を見る前の楽しさには別次元の楽しさがあるのだ!

 そして更に、デートの相手がくれたプレゼントと出張から帰ってきた長野のおみやげが対比されているのだろう。

 ちはるの真っ当さは、あのデートの相手がくれたロウソクを使って捨て、ハードロックカフェのTシャツを楽しんだということなのだと思われた。

 次回が楽しみだなぁ。


 

次回(第9話)は9月21日(水)深夜1時!

 

▼Amazon Prime(全話独占配信)

 

▼益田ミリの原作マンガ「僕の姉ちゃん」マガジンハウス2011

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