ドラマ「僕の姉ちゃん」 | 日々是本日

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bookudakoji の本ブログ

テレビ東京 ドラマ「僕の姉ちゃん」

毎週水曜 深夜1時&Amazon Prime Videoにて独占配信中

次回(第3話)は8月10日(水)深夜!

 

 ドラマ「僕の姉ちゃん」は7月27日(水)深夜からテレビ東京で放送が開始された連続ドラマである。

 

 昨年の9月に Amazon Prime Video で既に独占配信が開始されていたので、この枠用に製作された作品ではない。

 

※主演の黒木華と杉野遥亮、原作者、監督のコメントあり

 

 主演は黒木華と杉野遥亮の二人で、原作は益田ミリさんの同名漫画である。

 

▼益田ミリ「僕の姉ちゃん」マガジンハウス2011

僕の姉ちゃん

 

 原作本の初刊は2011年なので、じわじわと人気が出てきた結果としてのドラマ化なのだろう。

 

 益田ミリさんの原作で黒木華さん主演ならバズレ作品な訳がない!

 

 7月27日(水)の初回放送を観たら、やっぱり面白かった。

 

 あっ!、Amazon Prime 会員無料じゃん!

 

 ということで全10話、観てしまいました。(笑)

 

 前置きが長くなりましたが、こんなドラマです。

 

▼ドラマ「僕の姉ちゃん」公式サイト:イントロダクション

※主演の黒木華と杉野遥亮、原作者のコメントあり

ユーモラスで辛辣な姉・白井ちはる(黒木華)と、姉に翻弄されるが素直に話を聞いてくれる弟・白井順平(杉野遥亮)は、両親不在のつかの間、二人暮らしをしている。
仕事を終え帰宅した部屋で、お酒を飲み、それぞれ好きなものを食べながら、恋・仕事・趣味・人生にまつわる会話を繰り広げる。姉弟だからこそのぶっちゃけトークで炸裂する“姉ちゃんの本音“は、一見ひねくれていて意地悪なように聞こえるが、実はしごく真っ当で、順平は妙に納得してしまう。

 

 基本的にはこんな内容で、各話の半分ぐらいを二人の会話の場面が占めている。

 

 ユーモラスで辛辣な姉・白井ちはる(黒木華)は輸入家電の会社に勤める30歳のOLという設定である。

 

 黒木華さんは1990年生まれなので製作当時31歳だからほぼ実年齢である。

 

 素朴でまっすぐに育ってきた弟・白井順平(杉野遥亮)は社会人1年目、冷凍食品メーカーに勤める23歳という設定である。

 

 杉野遥亮さんは1995年生まれなので製作当時26歳だから、23歳で社会人1年目という設定に全く違和感がなかった。

 

 黒木華さん演じる姉ちゃんは「ユーモラスで辛辣」という設定である。

 

 ユーモラスというのはその通りだと思ったが、辛辣の方については割と当たり前のことを率直に言っているという印象であった。

 

 また杉野遥亮さん演じる弟からは、姉弟であるという雰囲気と素朴でまっすぐに育ってきたという人柄が十分に感じられた。

 

 テレビ放送の第1話を観たところで期待の通り面白いとは思ったのであるが、ただ面白かったというだけではブログ記事になら~んと思っていたら第3話で本のネタが出てきた。

 

 そうそう待っていたのはこれですよ。

 

 このブログは本のブログ!

 

 

---以下、ネタばれあり注意---

 

 

 ということで、第1話と第2話の内容に簡単に触れてから、第3話の感想に進みたいと思う。

▼ 第1話 家庭的キーワード
 冒頭、姉のちはる(黒木華)がテーブルでビールを飲んでいる。
 そこに風呂上りの弟・順平(杉野遥亮)が現れると、ちはるが呟く。
 「考えてみたらさぁ、人生ってあっという間なんだよねぇ。」

 順平がテーブルの反対側に座るとちはるは、

「お風呂はいる。」

と言って立ち去る。

 こんなテンポ感である。

 第1話なので、姉弟それぞれの人柄と状況説明が主である。

 同じ部署のイケメンを狙っている姉の同僚が、「アイロンかけながら」とか「いつも寄る花屋」といった家庭的キーワードをいちいち入れ込んでくるのが癇に障るという話を肴に、人の心の裏をうまく読めない弟のまっすぐさが描かれる。

 後日、会社の歓送迎会で飲んで帰ってきたちはるに順平が水を持ってくる。

 ちはるは水を飲みながら、件の同僚が同じ部署のイケメンの隣に上手く座るという話から、イケメンについての持論を語りだした。

 そして、

「そのイケメンて彼女がいるんじゃないの?」

と返した順平に“姉ちゃんの本音“が炸裂する。

 

フリーのイケメンは敷居が高い!

 

 その心は、イケメンと付き合うのは浮気ぐらいが丁度よくて、それは、

「イケメンと付き合った過去があるなぁ。」

と青春を振り返る小道具みたいなものだからだと言うのだった。

 面白いねぇ。

 ちはるのイケメン話が一段落したところで順平は、

「姉ちゃんて人生でやり直したい事とかなさそう」

という感想を洩らす。

 ちはるは、

「そんなことない。いつも30分前をやり直せるといいわな。」

と答える。

 こういう答えがその人の価値観や考え方を表すような問答が、この後の回でもちょいちょい挟まっていて、このドラマの会話劇というスタイルが上手く活かされている。

 人生あっという間という話から始まって、イケメンと付き合うのは青春を振り返る小道具みたいなものと言いつつ、でもやり直したいのは30分前という訳だ。

 遠い昔のことをやり直したいと思っているということは、過去の出来事に縛られているということであって、人生短いなら余計に過去は受け入れて現在を前向きに生きる方がいいと言っているように感じられた。

 かと言って、過去を振り返ってしまうということはやはりあるにはあることであって、そういう時に青春を振り返る小道具があるといいということなのだろう。

 過去を振り返っても、その小道具でまた現実に戻れる。

 今現在を重視している価値観を提示する、上手い流れである。

 そして、やり直したいのは30分前という訳だ。

 これについては、観終わってからちょっと考えてみた。

 個人的には、今現在を重視しているという価値観であれは、ここでの答えは「やり直したいことはない」という答えでも良かったのではないかと思ったからである。

 「30分前」に上手くやれてないことは、物事全体としてはもう一度やっても上手くやれるとは思われないので、次の機会に向けて今から努力するという方が、ちはるの今現在を重視しているという価値観に合うのではないだろうか。

 そうすると敢えて「30分前」をやり直したいという答えの真意はなんだろう。

 「30分前」をやり直して現実的なメリットが得られるケースというのは、ちょっとした失言とか料理で指を切ったとかそういう場合であろう。

 だからこの「30分前」のやり直しは、やり直しと言っているけれども、過去のやり直しというよりも現在の調整なのではないかと思われた。

 これは「やり直したいことはない」という答えの別の言い方、つまり、「やり直したいことはない」けど、現在の調整はしたいと言っていると見ることができるが、ちはるの性格からすると人並にやり直したいとは思うことはあるけど過去にこだわらないから、やり直したいのは「30分前」になる、と考えた方が自然だろう。

 すると、はじめは「やり直したいことはない」という答えでも良かったのではないかと思ったが、ドラマの脚本が描いているのは、やり直したいことがないというほど達観はしていないが、現在を重視する人が何をやり直したいと思うかというと「30分前」という現在の調整になってしまうということであると思われた。

 落とした食べ物について3秒以内ならセーフとする「3秒ルール」があるように、ちょっとした失敗をなかったことにできる「30分ルール」があったらいいなぁ、ということなのであればちはるらしい答えであると思われた。

 

【補足】

 ドラマの感想としてはここで終わっておくのが良いとは思うので、以下は補足とした。

 ちはるの在り方は、現在を重視してやり直しをしたくないという達観ではなかったから、このことは、やり直しをしたいかどうかということと、現在を重視するか過去の出来事に縛られるかどうかは別々に規定され得るということを示唆している。

 すると、

やり直しをしたい × 過去の出来事に縛られる = 弟

やり直しをしたい × 現在を重視 = 姉

やり直しをしたくない × 現在を重視 = 達観

という整理になる。

 それでは残る組み合わせ、

やり直しをしたくない × 過去の出来事に縛られる

はどういう在り方だろうか。

 ネガティブに考えると諦めあるいは絶望、ポジティブに考えると縛られてはいるが受容された過去ということかもしれない。

 いずれにせよちはるの、過去を振り返ってしまうこともあるし、やり直しはしたいと思うものであっても現在志向であるという在り方は、「過去を振り返る小道具」と「30分前」によってリアリティーあるものになっていると思われた。

 

 細かい失敗の積み重ねが長い目で見ると人生を大きく左右しているという教訓に通じるところもあるとは思ったが、この脚本にそこまで読み込むのは深読みし過ぎだね。

 

 とまぁ、感想を整理しながら書いていた案外長くなってしまった。

 

 簡単に触れるだけのつもりだったのに!(笑)

 

 ということで、明日の記事に続きます。