日本カフェ興亡記
高井尚之
日本経済新聞出版社
ISBN978-4-532-16697-7

日本カフェ興亡記/高井 尚之

¥1,680
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<目次>
第1章 手軽さのドトール vs. 楽しさのスタバ
第2章 鳥羽博道氏 vs. ハワード•シュルツ氏
第3章 「居心地」を提案した喫茶文化の歴史
第4章 現代型「セルフカフェ」 vs. 昔ながらの「喫茶店」
第5章 多様性重視の「総合型」 vs. 絞り込んだ「テーマ型」
第6章 カフェ vs. コーヒー飲料
第7章 ドトール、スタバの「次にくる」のは?

本書は、徹底的にカフェの本です。

テーマはカフェですが、マーケティングの例として他業種にも言える内容がたくさんあります。


カフェの歴史としては、文明開化の明治時代がスタートです。

最初は舶来の飲み物として、非常に値段の高いものでした。

よって、お金のある知識層を主体として広まっていきました。


ゆえに最初の喫茶店はただコーヒーを飲むだけでなく、サロン的役割もあったようです。

この方向性は現代でも似ています。


カフェはコーヒー主体であるものの、コーヒーオンリーでなく、他の要素と組み合わせた形態が可能です。

まんが喫茶、メイドカフェ、などは組み合わせの最たるものです。

過去にもたくさんの組み合わせがありました。

きっとこれからも、新しい業態が出てくるでしょう。


業態をミックスしたカフェの例を考えれば、別のビジネスでもミックスによる新業態のアイデアの参考になるのではないでしょうか。

また、ドトールコーヒーとスターバックスコーヒーという、チェーン店の中でも対極に位置づけられる店の内容を説明してくれています。

最終的な目的は、コーヒーを楽しむこと、になるわけですが、手段がまったく違うところが面白いところです。


また、現代の「カフェ」と昔ながらの「喫茶店」の対比も時代と文化の差で論じると興味深いテーマです。

カフェを通して、日本の文化の変遷と、消費者の嗜好の変化を見ると、他ビジネスにも参考になるのではないかと思いました。
こんなに使える経済学
大竹文雄 編
ちくま新書
ISBN978-4-480-06400-4

こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)/著者不明

¥756
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<目次>
第一章 なぜあなたは太り、あの人はやせるのか
第二章 教師の質はなぜ低下したのか
第三章 セット販売商品はお買い得か
第四章 銀行はなぜ担保を取るのか
第五章 お金の節約が効率を悪化させる
第六章 解雇規制は労働者を守ったのか


本書のスタートは、「経済学は、実社会に直接役に立たないのでは?」に対する回答です。

確かに、学問としての経済学はただの学問のようにも思える事があります。

経済学が社会の経済活動をすべて説明しきれていないように感じているからだと思います。

しかし、本書を読むと、経済学の考え方は、身近なところで使えるようです。


例えば、太る事とやせること。


これを経済学で説明することができるそうです。

読んでみると、太ることには太る理由が経済学的にあることがわかります。

人間の行動を経済学の理論で分析すると、確かにそうだと思えてきます。


経済学で読み解く特徴は、すべて数値に表して観察し、必要に応じて計算してみることです。

こうすることで、科学的アプローチで理解し、将来予測に役立てられます。

自分は、読んでいるうちに社会科学の分析方法として、経済学の理論が使える、と感じました。


経済学は、数字中心の定量的なドライな学問のイメージがありました。

一方社会科学は、定性的な印象でした。

それをミックスすると、数字による説得力が持て、社会科学の表現が分かりやすくなる、という感じです。

自分には今ひとつ身近に感じられなかった経済学が、やっと自分の中に入った、と思えるようになった本でした。
最新 行動経済学入門
真壁昭夫
朝日新書
ISBN978-4-02-273406-8

最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス (朝日新書)/真壁昭夫

¥735
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<目次>
第1章 行動経済学ってなんだ?
第2章 人間の本質をとらえる - プロスペクト理論
第3章 直感はバカにできない? - ヒューリスティック
第4章 満足度をはかる心の帳簿 - 心理勘定
第5章 その思い込み、大丈夫? - フレーミング効果
第6章 時間とお金の不思議な関係 - "せっかち度"
第7章 それとなく誘導する仕掛け - ナッジ
第8章 こんなに役立つ行動経済学

本書のサブタイトルは『「心」で読み解く景気とビジネス』となっています。

「経済学」と「心」が結びつく事に違和感を感じますが、しっかり関係しています。


20世紀の経済学には前提があります。

それは、「人間は常に経済的合理性のある行動をとる」ということです。

同じ価値で2つの値段があれば、必ず安い方を買う。

それも全員が。1億人いれば、1億人が。

という前提です。


理屈のうえではそうですが、自分の周りを見ると、違う行動をする人がいると思うはずです。

実際に人間の行動を観察すると、経済的合理性だけでは行動しない、ということが分かってきて、それを経済学にフィードバックしないと、正しい結果が得られない事が明白になってきました。


そこで生まれたのが、「行動経済学」です。


実にあたりまえの話ですが。


「心」の動きは影響を受ける変数の数が多いので、分析には困難があります。

しかし、法則がわかってきているものがあり、本書で紹介されています。

読んでみると、どれも納得できると思います。

なぜなら、実生活ですでに体験しているからです。

昔から、儲けていた商売人は行動経済学を知らなくても、体験からその法則を会得していたのでしょう。

日本マクドナルドの原田泳幸会長兼CEOもその著書の中で、売れている屋台のラーメン屋のオヤジのほうが商売を知っている、ということを紹介していました。

言うまでもなく、行動経済学のエッセンスを体で理解しているからでしょう。


学問の良いところは、体験することなく、要点を知る事ができる点です。

ビジネスに関わる人は、知っておいて損は無い内容だと思います。
フリーのカラクリ
キーワード101[編]
光文社
ISBN978-4-334-97616-3

[図解]フリーのからくり (Kobunsha Paperbacks Business)/著者不明

¥1,260
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<目次>
Chapter.1 食 無料なのに、こんなにおいしい!
Chapter.2 エンタメ 無料なのに、こんなに楽しい!
Chapter.3 知 無料で、知恵を分かち合う
Chapter.4 暮らし 無料なのに、こんなに役立つ
Chapter.5 男と女 無料なのに、こんなこと、あんなこと
Chapter.6 仕事 無料なのに、こんなに使える!


フリー、無料、というキーワードは、現代ビジネスに欠かせません。

実は今に始まったことではありません。

昔も無料を活用したビジネスは存在しましたが、デフレの現代ではより活用されているものなのです。


本書は、59の無料ビジネスモデルをわかり安く図解で説明したものです。

それぞれの事例が端的に説明されているので、自分のビジネスに流用できるものも見つかるのではないでしょうか。


どの事例もうまく無料の仕組みを考えています。


仕組みとは、無料をきっかけにして、お金を使わせるように仕向けることです。

「フリーランチは無い」と言われる通り、無料のまま終わるほど、ビジネスの世界は甘くありません。

消費者としては、無料の先にある有料の仕掛けを知っておくと、賢く使えることになります。


まあ、あまり無料だけをむさぼるのはマナー違反であり、嫌われるモトですのでほどほどに。


現代らしいフリーの代表は、Googleなどのインターネットサービスでしょう。

無料で使える対価とは何でしょうか?

それは、広告というのが前時代の答えです。

テレビ、雑誌といったマスメディア時代のビジネスモデルです。


インターネットサービスでは、個人の行動をすべて記録し、それを分析することでより効果的なマーケティングをするのがトレンドです。

いわゆるビッグデータの活用です。


Googleで検索したキーワードやクリックした記録が、無料で使える対価として知らず知らずのうちに提供していることになっています。

また、ケータイに配信されるクーポンも、使用した履歴と個人情報が結びつけられて、次の販促に活用されています。

これも、割引クーポンの利益と引換えに自分の行動記録を提供している、という取り引きになっています。


つまり、本当の無料は無い、ということです。

こうしたことを頭に入れながら、ビジネスに活用し、賢い消費者として利用していくのが現代の生き方ですね。
価格競争は暴走する
エレン•ラペル•シェル
楡井浩一訳
筑摩書房
ISBN978-4-480-86407-9

価格戦争は暴走する/エレン・ラペル・シェル

¥1,995
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<目次>
序 グレシャムの法則
第1章 安売り大国の誕生
第2章 激安商法の創始者たち
第3章 こうして価格に騙される
第4章 アウトレットの策略
第5章 値下げという集団狂気
第6章 職人の死
第7章 ますます貧しくなる生活
第8章 安い食べ物の落とし穴
第9章 双頭の竜 - アメリカと中国の結託
第10章 正しい価格を求めて


本書はアメリカの安売りを分析した本ですが、日本の状況と同じであることに驚きます。

価格を安くすることの歴史から説明が始まります。

価格が安くなり始める頃は、社会にとって善でした。

安く作ると、買いやすくなる。生活が便利になる。皆が豊かになる。

しかも、生産者にも仕事が増え、購買力が上がる。

いいことづくしでした。


少し前までは。


ここで前提がいくつかあります。

ひとつめは、生産者と消費者が同じ商圏にいることです。

同じ街、同じ地域、同じ国、です。

こうすれば、お金がきちんと回ります。


ふたつめは、適正な安値です。

生産者にきちんと対価が渡らないと、お金が回りません。


現代の価格戦争は、上記2つの条件を満たしていないため、おかしなことになっています。

現代は、グローバル経済のもと、生産者と消費者が別々の地域にいます。


例えば、ユニクロの生産者は中国やベトナムなどの東アジアの国で、消費者は日本人です。

安く売るために、工賃の安い国で生産することになります。

すると、日本人は生産しないので、日本での仕事がありません。

つまり、消費者が必要とするお金が外国に落ちているのです。


これでは、消費したくとも消費する元手が手に入りません。

さらに、生産している国に適正な賃金が払われていなければ、国際的な富の搾取になります。

グローバル経済では、世界の中で役割分担をし、各自ができることを最大限に仕事とすれば、効率的にお金が回る、ということを前提にしています。


しかし、実態はそんなにうまく行きません。


アメリカや日本の全ての人が先進的な仕事をできるわけではありません。

経済の理屈と、実際の人の動きが乖離しているのです。

価格が安い事は抗いがたい魅力なのは万国共通です。

しかし、行き過ぎた価格競争が本当の豊かさを奪っているとするならば、是正していく必要があるはずです。

人間とは、人と人のあいだで生きるものです。

世界中の人が共存できるルールのもとで、豊かに生きていきたいものです。