できれば本に埋もれて眠りたい -17ページ目

容疑者も被害者/空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ
池井戸 潤



空飛ぶタイヤ/池井戸 潤
¥1,995
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名前は変えられているものの、三■自動車のリコール隠しにまつわる人身事故を、事故を疑われた運送会社の社長の視点から描いたものです。

被害者はもちろん子供と夫を残してなくなってしまうのでつらい話なのですが、運送会社の社長にその視点を置くことで、事故関係者としての苦悩、自分は加害者でないかもしれないという迷い、財閥系大企業への責任追及の困難、会社経営の薄氷を歩くような資金運用などを、肉薄してかかれています。

本の中では実際にその社長が、車会社の事故を綿密に調査し、そこに問題がなかったか確証を探します。
実話でもここまでひどい話なのでしょうか。

この件のウィキペディア を見ると本とは書いてあることがちがって、小説は小説なのですが、ウィキにも違和感を感じてしまいます。

大企業に謎解きを挑むという面白さもあり、また、自分のために社内改革を起こそうとする自動車会社社員と既得権益者のと駆け引き、ダメ大会社に融資を苦慮する担当銀行員、なんとか運送業をこなしながら、地元ではPTA会長として厄介ごとに巻き込まれるなど、それぞれの立場と考え方から考えており、刺激的です。

一番問題は最初の出だしですが、そこを過ぎればどんどん読めてしまいます。
よくかかれた現代小説として十分楽しめました。

絵本色々3/本気で絵本

懲りずに子供にいくつか絵本を読ましています。
その結果報告です。

●動物モノ

うさぎの本/ピエール・ド ユーゴー
¥1,260
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はじめての発見

以外に手ごろな動物や植物の写真だけの本ってないんですね。
下手をすると「パンダの一生」といった感じで、かわいいのそっちけで赤ちゃんの写真をのせたり、糞の写真を載せたり。
そのなかでもこの「はじめての発見」シリーズは、子供が見ても楽しめそうな感じに作ってあります。
色々な種類のウサギがいたり、夜になったり昼になったり。
この本の最大の製本上の特徴は、透明のプラスチックのページがあるところでしょうか。
変化があって悪くありません。

一人でページをめくったりしていました。



●古典

しろくまちゃんのほっとけーき (こぐまちゃんえほん)/わかやま けん
¥840
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しろくまちゃんのホットケーキ
わかやまけん

ただただ材料をそろえてホットケーキをつくる話ですが、入手当初は1冊ごとにこの本を持ってくる勢いでした。
しろくまちゃん、ミッフィー、しろくまちゃん、ペネロペ、しろくまちゃん・・・
クライマックスの食べるページを飛ばしたりもして、その意図は不明。
とにかく、こぐまちゃん強し。




いやだいやだの絵本 4冊セット/せな けいこ
¥2,520
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もじゃもじゃ、いやだいやだ、ねないこだあれ
せらけいこ

せらけいこも強い。
とにかく、もじゃもじゃの髪を非難したり、泣く子をいやがってみたり、寝ない子を脅してみたりと、子供のマイナス面をあてこする内容なのに、きりえの絵柄とその口調に子供は惹かれるのでしょうか。反応は悪くありません。
うーん、でも「にんじん」以外はちょっと違和感を感じるのが正直なところ。


ひとまねこざる/H.A.レイ
¥672
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じぶんでひらく絵本/H.A.レイ
¥1,305
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じぶんで開く絵本
 おかあさんとこども
 だれのうちかな

H.A.レイ

同じ本の絵がなかったので同じ作者の違う本も載せています。
何冊かセットになった本で、たとえば「おかあさんとこども」では、動物の絵がかかれていて、片側のページが半分折りり込まれており、そこをめくると子供の動物が出てくる、というしかけのある本です。
馬とか牛とかはかわいいのですが、鶏はまだら模様だし、羊は黄色が雑に塗られています。
だれのうちかな」では、うさぎとかは穴に住んでいてかわいいのですが、かたつむりは少し気持ち悪いし、さなぎから蝶になるのも蛾に見えるし、とちょっと違和感がありますね。
でもよく読んでいます。

黄色い縞模様の羊を見ても「メーメー」といっています。


●本気の雑誌
げんき 2007年 11月号 [雑誌]
¥480
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読ませる絵本は、やっぱり絵に情緒があって、絵がよくて、世界が広がるようなものをみせたいなぁ、という親の甘えを吹き飛ばすような雑誌。
子供の人気長寿番組の「おかあさんといっしょ」のキャラクターや、NHKのなかでも抜群の視聴率をほこる「いないないばあ」のキャラ、出演者、はてはディズニーのキャラクターまで出して、「子供の目を引く」ことを第一に作られた本で、それはもうあざといなぁ、と思いながらも抜群の引きがあった本でした。
おべんとうが12種類も写真が掲載されているあたりに(「みんな、いっぱいたべてね」)、その意気込みを感じます。
しろくまちゃんのホットケーキにも負けない回転率で読んで(読まされて)いました。


●料理本
NHK きょうの料理 2007年 10月号 [雑誌]
¥500
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ケンタロウの10分ごはん (NHKきょうの料理シリーズ)/ケンタロウ
¥924
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鮭、いか、あじはえらい!―365日魚のおかず/藤野 嘉子
¥1,470
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non・noお料理基本大百科
¥4,725
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とくにせがむわけでもなく、自分で料理本をひらいて、「アー」といって盛り上がっています。
ほっとくとどんどんページをめくって破いたりするので要注意です。

ちなみに上の「お料理基本大百科」前半は和洋中の基本料理、中盤はTPOにあった料理、後半は食材辞典になっています。
興味本位で食材を買ったときなど、一応辞典部分で引いて、どんな料理にするかめどがつけられるので結構重宝しています。
大さじの量から、魚のおろし方、冬瓜の料理方まで、色々お世話になっています。
ちょっと高いですが、普段の料理用で、基本料理をあまりしない方にはおすすめです。




こうしてみると、動物と食べ物がでてくるのに食いつきがいいのがわかります。
ストーリーとかはまだまだまったく関係そうですね。
この分野、本気を出せばまだまだ、開拓できる余地はありそうです。


そろそろ「てぶくろ」とか読ませたいけど、まだはやいんだろうな。

てぶくろ―ウクライナ民話/エウゲーニー・M・ラチョフ
¥840
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ジャージの似合う長嶋有/ジャージの二人 タンノイのエジンバラ

長嶋 有

ジャージの二人
タンノイのエジンバラ

ジャージの二人/長嶋 有
¥1,575
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タンノイのエジンバラ/長嶋 有
¥1,400
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NHKのニュースを見ていたら、テレビ同行で「ジャージの二人」の元になった山小屋に行く長嶋有の様子が出ていました。
以外に精悍そうで、そうか、実体験に近い話なんだ、と思ったら興味が出てきて「ジャージの二人」を読了。
悪くなかったので「タンノイのエジンバラ」も読んでみました。

ジャージの二人はこれといって山のないオフビートな話。
主人公は売れない作家。作家が子供のころから、夏はその小屋で過ごすのが一家の習慣でした。
主人公は成人し結婚し妻は不倫中、父は離婚し再婚。そんな二人がその小屋で夏の数日を過ごす話です。

何がいいかというと、色々小言や押し付けを言わないことですね。
自分の思ったくだらないことをただただ書き付ける。
決して健やかでない小屋の話や、いつまでも気になる妻の不倫のことや、父の相変わらずのいい加減さなど。
これをあえて盛り上げずに書いて小説に書いてしまうのが腕なんでしょうか。
大江賞も取りましたしね。

タンノイのエジンバラ
こちらもオフビート短編集。

「タンノイのエジンバラ」
仲良くもない隣人の子を突然1日預かることになってしまっても、まぁほぼマイペースで過ごす1日の話。
主人公が「ジャージの二人」によく似ています。

「夜のあぐら」
姉、妹の私、弟、が離婚した父の資産をどうにか手に入れようとする話。
親の資産の相続になってもどこか人事のような私の話でした。

「バルセロナの印象」
私と妻と私の姉とで、姉を励ますためにバルセロナに行く、という話。
これも海外旅行にいっているのにやはりどこかマイペース。

「三十歳」
ピアノの教師だった私が教師を辞め、パチンコ屋の店員になっている日常の話。
30歳でピアノもできるのにパチンコ店員、というギャップになかでも淡々と過ごす主人公。

うーんこう書いてみると、なにか切羽詰った状況にあるのにマイペースでしかいられない私、というのが基本線みたいですね。
やっぱり「ジャージの二人」がよい日常色がでていて、しっくりした感じがしました。悪くありません。

多くの人からは同意を得られなそうですが、桐野夏生に似ているな、と思いました。
すべては日常の視点から始まるところが。
日常の視点がどうしてもはずせないところが。
桐野夏生のプロットの日常からの乖離具合はまったく似ていませんが。



多弁でめずらしい人/米原万里

米原万理

久々に他に類を見ない作家を見つけたので何冊か読んでみました。


嘘つきアーニャの真っ赤な真実

魔女の1ダース

パンツの面目ふんどしの沽券

他諺の空似 -ことわざ人類学-

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)/米原 万里
¥580
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魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)/米原 万里
¥500
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パンツの面目ふんどしの沽券/米原 万里
¥1,680
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他諺の空似 ことわざ人類学/米原 万里
¥1,470
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ロシア語の同時通訳として有名な米原氏。
出自は、父が共産党員で、1959-64年、在プラハ・ソビエト学校に小学校・中学校と学んだあたりにあるようです。
世界各国の共産党のエリートがプラハに集まり、その子供達と育っていく筆者は、実に稀有な体験をしていきます。
一本筋の通った共産党思想が読みどころともいえます。

●嘘つきアーニャの真っ赤な真実
今回読んだ中で一番面白かったもの。3篇のエッセイからなっています。
自分の思春期をすごしたプラハのソビエト学校時代の友人に会いに行く話。
さすがにウン十年も経っているので、人探しも難航してミステリ的要素もでてきます。
ソビエト崩壊と各国人としてのキャラクターと読みどころは多く、同じ時代を生きていながら違った国に生まれただけでこうも人生が変わっていくのかという、波乱万丈なエッセイ。


・ギリシア人のリッツァの見た青空
美人で大人びていて、しかも下ネタ好きで勉強嫌いのリッツァがドイツで医師となっていたことや、あれだけ男にうるさかったのだから、さてどんな方と結婚しているか、歯に注目、という話です。

・嘘つきアーニャの真っ赤な真実
ルーマニアの官僚の娘として贅沢に暮らしながら、他愛もない嘘をついていたアーニャ。
英国で結婚して編集者となり、かつての共産党の理想もルーマニアの貧困にも関心がなくなっている様子は、個性と歴史の奇妙なブレンドを感じます。

・白い都のヤスミンカ
ユーゴスラビア出身の美術・勉学ともに優秀なヤスミンカ。
安否を激動のユーゴ情勢のなか、家族が戦地にいるまま、一市民として暮らしているところが胸を打ちます。

そのなかで印象に残ったのはつぎのような言葉。
ロシアでは才能はみんなのもの。ヨーロッパでは個人のもの。
ロシアではどんな小さな才能でも認められれば、周りのみんなから祝福される。
しかしヨーロッパでは、無視され、妬まれ、形になってからやっと認められる。

うーん。多くの欠陥はあるけれども、偉大な国でもあるようです。ロシアは。

●魔女の1ダース
世界各国の友人と席をともにして学んだことと、その後ロシア語通訳としてさまざまな国の人と接することから得た見識を元に書かれた、各人の常識は他の人の常識ではない、という話。
例で出てくる各国友人の話が多岐にわたっていて面白い。

●パンツの面目、ふんどしの沽券
米原氏の個性の一つである下ネタ。
これは最終的には、パンツが先に発明されたか、ふんどしか先か、というのを時代をさかのぼって考証していく話です。
こんな話をよくもまぁ1冊の本にしたとも思いますが、紀元前まで戻るとも思いませんでした。
いやぁ、こんなフックでももっていると古代遺跡の埋蔵物を見る眼が変わってくる面白さがあるのですね。

●他諺の空似
他の国の諺と日本の国の諺を似ているものを挙げてみるという物ですが、比較にて最近の本なので、所々に入っている政治批判が結構こぎみよくてよかったですね。
けっこう諺は好きなほうですが、ここまで世界各国の諺が乱立している本は初めてでした。


総括としては知識量も多く言いたいことも多くあるのですが、それがうまくまとめられていない印象です。
「あれも言いたい、これも言いたい」と知識といいたいことを紙面に押し込んで書いているようで、好みとしては取捨選択の上、言いたいことをまとめてほしいと思いながら読んでいました。

ただ、「ロシア語通訳者」という稀有な位置は他に類を見ない特徴で、非常に面白い部分が多くありました。
旺盛な執筆意欲をどうコントロールするか、ということになるかと思うのですが、もうなくなられてしまったのですね。
非常に残念です。
晩年の作品も読んで見たいと思います。


父の選ぶスパイ小説ベスト3



アメリカの刺客
J・セイヤー

針の眼
ケン・フォレット

一弾で倒せ
G・シーモア


この夏、実家に帰ってぼんやり本棚を見ていると、突然父が「いい本を紹介してやる」といって3冊の本を持ってきました。

うん十年前、私が中学生のころに、やっぱり「面白い本を紹介してやる」といって父が持ってきたのが

開高健 「オーパ」

広瀬隆 「クランゼヴィッツの暗号文」
江藤淳 「こもんせんす」

でした(多分)。

いまだにそのセンスが分かりませんが、これをきっかけに開高健を読むようになって、本の世界が広まったのは確かで、それについては感謝しています。

今回もそんな出会いがあるのかと期待していると
「結局読み直して面白かったのはこの3冊だな」
といって持ってきたのが、この3冊。

「アメリカの刺客」
 J・セイヤー
「針の眼」 ケン・フォレット
「一弾で倒せ」 G・シーモア

スパイ小説でした。


うーんちょっと期待はずれ。「一弾で倒せ」は読んでいるし。
でも過去の経緯に敬意を払って、十ウン年ぶりにスパイ小説を読んでみることにしました。

「針の眼」 ケン・フォレット
第二次世界大戦末期のイギリス。潜入していたドイツ人スパイ「針の眼」はあることを調べるように連絡をうけます。それはドイツ上陸作戦の出発港の確認です。
連絡のあった場所に赴き、大戦の大勢変えかねない重大な情報を握った「針の眼」は本国に伝えるため、イギリス脱出を試みます。そして嵐の中の出国で流れついた孤島で、最後の死闘が繰り広げられるのです。

スパイ小説らしい、大きな歴史なの中の、誰にも知られていない小さいけれど重大な秘密をめぐる屈強な男達のお約束なストーリーでした。しかしお約束とは分かっていながらも、あきさせないストーリー展開と細かい描写には引き込まれあっというまに読んでしまいました。

「アメリカの刺客」 J・セイヤー
第二次世界大戦末期。連合国は徹底抗戦を行うドイツに対して1つの決定を下します。
それはヒットラーの暗殺。
収容所に捕らえられていたアメリカ人にその任務が与えられ、収容所脱出から脱出しベルリンを目指します。
そしてその指令を察知したドイツ軍は、ドイツきっての刑事にそのアメリカ人の逮捕を命じ、捕り物劇が始まります。

これは笑えました。アメリカ人のタフさがまるでアンドロイドのようで、どんな傷を負ってもあらゆる困難を乗り越えベルリンに向かい、どんなに無理な状況でもヒトラーの暗殺をあきらめないのです。
ベルリンに入ってからのタフネスぶりは、読んでいて楽しいものがありました。


久しぶりのスパイ小説で、そのしっかりした話の運びとキッタハッタの楽しさを思い出しこれもこれでいいなと改めて思うのでした。
でもこの3冊、もうAMAZONのアフィリエイトにないのですね。

うつろうのが早いなぁこの世界は。

オーパ/開高 健
¥1,000
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久しぶりの現代エンターテイメント小説/Lady, GO

Lady, GO
桂 望美

Lady,GO/桂 望実
¥1,575
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派遣社員の厳しい生活をこなしていく毎日に疲れる主人公。
突発的な物入りのとき、「1日だけ」とキャバクラに体験入店。
自分に自信がないので、おしゃべりしているだけでお金が
もらえることが信じられずに、また派遣の生活に戻ります。
でも生活がきつい。そしてひょんなことから知人の姉が
キャバクラで働いていることをしり、またそこで働いてみることに。

そのキャバクラでは友達の姉はNo.1 。
自分に自信がなかった主人公ががその友人の姉のまねをして営業をかけてみると、
少しずつ反応がでてきます。
それに答えていくうちに、やがて自信もつき、店での売上も上がっていき・・・


という、女性出世エンターテイメントでした。
見るべきところは、派遣職の時給1200円と1300円の違いに、応募するかしないかの葛藤する様子や
キャバクラの「お客さん一人につきいくら」というわかりやすいシステムに簡単に
やる気をかきたてられるところでしょうか。

久しぶりにこういった本を読んでいると、この手の本の意味について色々考えてしまいます。
確実に読ませて面白くて、いい意味で軽くてあとに何も残らない小説。

消費する小説としてこういった小説も必要なのでしょう。
10年20年たつと、今のの雰囲気をうまく切り取った小説として扱われるかもしれません。


才能を証明するも短編は不向きか/復活、へび女

復活、へび女
池上永一




風車祭(カジマヤー) を楽しく読んだものの、その他の作品には手を出せなかった池上永一ですが、書評家豊崎氏の誉めている書評を読んで、手にとって見ました。

復活、へび女」ですが、8編の短編。始めの4編が得意の沖縄もの、あとの4編が都会ものです。
得意の沖縄オバアものから青春倒錯物、ファンタジー系と多岐にわたっています。

前世迷宮など、クラスで疎外さている女の子がだんだんと前世占いにハマって行く様子が、ユーモアのあるパニック映画のようで楽しめました。

この短編で場所や人物に寄らなず自分のスタイルで小説が書けることを証明はしましたが、なんだか技の羅列のようで、物語に深みがありません。ま、初期の作品なので筆慣らしといったかんじでしょうか。

池上永一ならやっぱり長編でそのほかにはないユーモアと連鎖的想像力の爆発を楽しみにはまるのがいいのではないでしょうか。

胸の中に潜む何か/始祖鳥記

始祖鳥記
飯嶋和一

始祖鳥記 (小学館文庫)/飯嶋 和一
¥730
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周りから見て、なんの不満もないような生活なのに、本人にしてみると何かが不満でしょうがない。
それが何かと問われると何ともいえないのだが、そこに不満の種があることだけがわかっている。

そんな人種の行動を「空を飛ぶ」ということにからませて物語にしたのが本書です。


時代は江戸の天明から始まります。
手先の器用な主人公は、表具師として城下で有名になるも、凧作りに夢中になり、ついには空を飛ぶための凧(グライダー)の製作と実際の飛行を繰り返すようになります。
そんな姿を人か妖怪かも分からぬまま地元備前の人は鵺として、ダメ当主への反感の証として祭り上げていき、結局空を飛んでいることが発覚し、備前を出なければならないようになります。

場所は変わってお江戸の塩事情。
悪商人が牛耳る塩商売に風穴を開けるべく孤軍奮闘する商人がいます。
しかしそれには、多くの人の協力、とりわけ潮を調達し運ぶ商船の力を借りなければいけません。
味方にも理解されずくじけそうななるところ、備前の鵺騒動の話を聞きその反骨精神に勇気付けられ、塩の新しい販路を築くのに奔走します。
そしてある商船との出会い。その商船には、「鵺」として騒がれた主人公が乗っているのでした。

船をおりた主人公は、新しい町に根を下ろし、必死に働きます。
そしてやっとそれ相応の地位を築き、自分で封印していた凧作りの依頼を受けたとき、再度胸のうずきを思い出したのでした。
また、なにかに駆られての凧作り。そして今度こそはと本当に空を飛べる凧を作っていくのでした。



「人を焦燥にかる何か」「世界で始めたかもしれない空中飛行」「職人気質」「正義」
とそれぞれで小説になる要素をうまく掛け合わせ魅力的な作品になっています。

胸の中のなにか、についての小説は開高健以来久しぶりに読んだ気がします。
なにか胸が熱くなるものがありました。
久々に初めて読んだ日本人作家で、いい本読んだな、と感じました。


ところでラスト、それ相応に年月を重ね同じように空を飛ぶことに執着するのはどうでしょうか。
円ではなく螺旋になる、となっていないのが残念です。
なにか上への別のベクトルを加えることはできなかったのかな、と思います。
後進の指導とか。


最近感じていた読書のスランプを少し晴らせてよかったです。


ジョン・アーヴィングの楽しみ方/第4の手

第四の手
ジョン・アーヴィング

第四の手/ジョン アーヴィング
¥2,310
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「熊を放つ」「ガープの世界」以来、久々のジョン・アーヴィングです。
上記2冊を読んで、面白いながらもなんだかイマイチしっくりこなかったのが本当のところで、それからあまり読んでいませんでした(10年以上か)。

書評家の豊崎氏の「そんなに読んでどうするの」を読んで「とにかく登場人物のすべてについて書き込むジョン」というような記述を読んで、なるほど、と思い再度手にとる気になりました。
つまりある程度の深みのある人物の群像劇と思って読んだらいいわけですね。
そう思って読んでみると、安心して読むことができました。

あらすじは、とにかくよいルックスと押しの弱い性格でなぜかモテる主人公。
しかしモテることとは裏腹に、人生を流れるがままに過ごしていきます。
テレビのキャスターをやっていくうちに、いつのまにかジャンクなニュースを専門に扱うようになり、インドにライオンの取材をしに行ったときに、片手を噛み千切られてしまいます。
そして片手のない生活になれたころ、片手の移植手術を行い、とりあえず成功。
そして移植した片手の持ち主の妻(未亡人)と面会し、その女性に恋をしてしまうのです。
しかし相手は、移植した手に会いたいだけ。
そして手には拒否反応が現れ始め、このあたりからやっと主人公は生の実感らしきものを手に入れ始めるのでした。

才能のある人が才能だけで生きてきて、場末に流れ着いてなおそのことに気づかず、手に入れ難い恋をして初めて人生の実感らしきものを感じ始めるのは、我が我がのアメリカ人らしいいといえばらしいのですが、それが事実であるのも否めないでしょう。

特殊な登場人物と特殊な設定ながらも、それぞれが織り成す物語を淡々と書いてあり、この異世界に引きずり込まれてしまうのはさすが熟練の技というべきでしょうか。単行本でP387と「小説は長ければ長いほどよい」というジョン・アービングにしては短めですが、久しぶりに読むにはちょうどよい長さです。
でもジョン・アーヴィングの「とにかく書き込む」とスタイルでは、この長さは物足りないのも確かでした。
今まで刊行した本に、上下巻がやたらに多いのはそれなりに意味があるんですね。

それにしても、片手のモテ男の初恋話を意味深く語れるのは、ジョン・アーヴィングぐらいです。

ぜんぜん違う世界をじっくり俯瞰してみたいとき、ジョン・アーヴィングは悪くありません。


熊を放つ〈上〉 (中公文庫)/ジョン アーヴィング
¥840
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熊を放つ〈下〉 (中公文庫)/ジョン アーヴィング
¥800
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確か処女作。ロードノベル型の青春群像劇。
荒削りながらもすでにジョン・アーヴィングです。
ガープの世界〈上〉/筒井 正明
¥740
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ガープの世界〈下〉/筒井 正明
¥780
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この作品で有名になりましたね。
レスリングの描写がタフながら母のお腹にいる赤ちゃんをみているようで、閉塞感と奇妙な居心地のよさを感じます。
そんなに読んで、どうするの? --縦横無尽のブックガイド/豊崎 由美
¥1,680
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豊崎氏にしては珍しく?ほぼ全部誉めています。
まったく手探りの海外作品については、ガイドブックとして結構お世話になっています。

戦う相手と場所/人生の旅をゆく

人生の旅をゆく
よしもとばなな


人生の旅をゆく/よしもと ばなな
¥1,365
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最近のよしもとばななは実に説教臭いと思いませんか。
相変わらず、そういう感じはあるねという情感の発見とその表現はうまいのですが、そこに結びつける目的が前よりもはっきりと見える分、説教くさくなっているように思えます。

しかし基本的に説教臭いのは、うなずける部分があれば私は歓迎なので、最近のよしもとばななも楽しく読んでいます。

で、この「人生の旅をゆく」、旅にまつわるエッセイをまとめたものですが、タイトルからしてなんだか語り入りそうな感じですが、予想に違わず結構色々語っています。

語るにも色々技があるのですが、そこは小説家よしもとばなな、まだ語りの方は初心者なのでいまいちですが気になった部分がいくつかありました。
そのうちの1つを長いですが抜き出してみます。

単純に、バカみたいに」の一部 

・・・私は,現代の要求に飲み込まれてしまい、今はもう現実に参加できなくなったり、とことん体を壊してしまったり、人相が悪くなってしまっていて、もう話もできなくなってしまったような知人がいっぱいいる。
何ものかよ、元の彼女たちを返してくれ! と心から思う。
私の頭の中には、その人たちが元気で生き生きしていた頃の映像がいっぱいつまっている。それはなにがあっても損なわれるべきではないものだった。
みんなかけがえのない才能、替えられない笑顔、優しい心を持った普通のお嬢さんたちだったのに、どうしてあんなことになってしまったんだ、と言いたい。
彼女たちこそが炭坑のカナリアなのだろう。

・・・こうやって書いていると絶望的なようだが、若い敏感なお嬢さんたちは、そろそろ気づきはじめていると思う。

・・・「クウネル」とか「Arne」という雑誌がある。とてもよく売れている雑誌だ。そこに出てくる人たちは、日本にしかない新しい時代を創るやり方を模索している若い人たちや、社会からはずれても自分のやり方を通してきた年上の人たちだ。

・・・みんなどうしてしまったんだ、そんなにすごくならなくてもいいじゃないか、と思う。
今日みたもののことを考えたり、しゃべったりしながら、普通に友だちとか家族とかと過ごそう。仕事はそこそこできて、失敗もして、たまには達成もして、それを自分の誇りしよう。みたくもないものやしたくないことのために使う時間を減らそう。ただ漫然と生きているだけの時間を減らそう。でもしゃかりきに何ものかになろうとしたり、自分から発信したりなんかしなくていい、そんな疲れることはやめよう。ペースを落として、ひとつひとつの行動を寝る前に振り返ろう。一日健康でいられたことに、平和に、家族が生きていたことに普通に感謝しよう。

・・・こういう考えを「子供じみている」という古い考えと戦うために、私はちっぽけな小説をこつこつと、まずは自分の満足と楽しみのために書いていく。もしもそれを人が喜んで読んでくれたら、ほんのしばらくその中で憩ってくれたら、私の人生はもう充分すばらしい。デブでもものぐさでもブスでもバカでもセンスが悪くても何でもかんでも、もうそれで充分なのだ。

・・・個人の力はものすごく大きい。・・・一度閉店してしまった青山ブックセンターが復活したら、みんなにこにこして本を買っていたじゃないか。それはこれまでに店員さんがつむいできた大事なものが実ったからだ。一見評価されにくくても、個人の輝くところ、必ずそこには何かがある。
全ては自分の中からはじまり、幼いときから生涯を通じて続いてきたのだ。そのヒントは自分の中にしかない。自分はいちばんよく自分を知っている自分の友だちだ。今はその感じがばらばらで、みなとまどっているいるだけなのだ。本能の声を聴いて、耳を澄ませていけば、必ず自分と自分がぴったりくるポイントがあると思う。そしてそれが一致したとき、個人はとても大きな力で、日常を、周囲をてらすだろう。


よしもとばななが若さだけではなく、戦うべき相手と自分の立場を明確に理解していることが伺えます。
感性ではピカイチのよしもとばななが明確に自分の仕事を意識したことは、個人的には、最近の作品の目的の明確さにうなずくとともに、ますますこれからの作品が楽しみになりました。

この本もまだまだ明瞭明確というわけではありませんが、その断片がちりばめられ、玉石混合でありながらも楽しみことができました。

そういえばこの感性と目的の明確さはパウロコエーリョに似ていますね。