官僚だったんですね/『わが上司後藤田正晴』
わが上司後藤田正晴
佐々淳行
自伝か評伝でも読もうと思い、たまにテレビで見るけど佐々ってひとはどんな人だろうと手に取った本です。
警視庁から防衛庁にいって、いったん完全に役人を止めたあと、内閣安全保障室長になるという異例の経歴。
豪放磊落な語り口調から官僚とは思ってませんでしたが、コテコテの官僚だったんですね。
しかも、本当に国民のことを考えた官僚。自分では「護民官」と書いていました。
その尊敬する上司が後藤田正晴。
中曽根総理大臣の内閣官房長官だった人です。
これも役人から政治家になった人。
このひとも「カミソリ後藤田」と呼ばれ徹底した能力主義の異端の人でした。
各省に横串を入れる組織として内閣5室を誕生させてときは、後藤田五訓として各省の代表に
1、省益ではなく国益
2、悪い、本当の事実の報告
3、勇気をもって具体策を述べよ
4、自分の仕事ではないというな
5、決定が下れば命令に従うこと
と述べたそうです。
そうしたら様様な苦情が集めリ収集をつけるのが大変になったとも書いてあります。
それでも内閣5室を誕生させ機能させていった手腕はさすがです。
こんな高潔な人たちでも、役人としてやっていくには、処世術が必要だったようで、部下・上司の扱い方が色々と述べられていて、なかなか勉強になるとともに、こんな人たちでも結局苦労するのは人間関係なんだなとなんだか励まされる思いでした。
佐々淳行
- わが上司 後藤田正晴―決断するペシミスト (文春文庫)/佐々 淳行
- ¥620
- Amazon.co.jp
自伝か評伝でも読もうと思い、たまにテレビで見るけど佐々ってひとはどんな人だろうと手に取った本です。
警視庁から防衛庁にいって、いったん完全に役人を止めたあと、内閣安全保障室長になるという異例の経歴。
豪放磊落な語り口調から官僚とは思ってませんでしたが、コテコテの官僚だったんですね。
しかも、本当に国民のことを考えた官僚。自分では「護民官」と書いていました。
その尊敬する上司が後藤田正晴。
中曽根総理大臣の内閣官房長官だった人です。
これも役人から政治家になった人。
このひとも「カミソリ後藤田」と呼ばれ徹底した能力主義の異端の人でした。
各省に横串を入れる組織として内閣5室を誕生させてときは、後藤田五訓として各省の代表に
1、省益ではなく国益
2、悪い、本当の事実の報告
3、勇気をもって具体策を述べよ
4、自分の仕事ではないというな
5、決定が下れば命令に従うこと
と述べたそうです。
そうしたら様様な苦情が集めリ収集をつけるのが大変になったとも書いてあります。
それでも内閣5室を誕生させ機能させていった手腕はさすがです。
こんな高潔な人たちでも、役人としてやっていくには、処世術が必要だったようで、部下・上司の扱い方が色々と述べられていて、なかなか勉強になるとともに、こんな人たちでも結局苦労するのは人間関係なんだなとなんだか励まされる思いでした。
クライム桐野ワールドは大体分かったかな/「OUT」
OUT
桐野夏生
いわずとしれた桐野夏生の有名作品「OUT」。
主人公の雅子のパート友達弥生が、不倫をきっかけに夫を殺してしまいます。
弥生は雅子を頼り、夫を殺したことを話します。
雅子は弥生の意志を確認した上で、その遺体を処理することを決意します。
そしてパート友達ヨシエを誘い、また金のにおいをかぎつけた邦子が仲間に入ります。
そして、共犯たちの人間模様と腐臭をかぎつけるハエのような輩が集まり始める、物語は「桐野ワールド」に入っています。
相変わらずの桐野ワールド。
社会不適合因子を持つ主人公。
あるきっかけから、犯罪世界に足を踏み入れ、そして自身のその因子について確信を深めます。
周囲の人は何か息苦しく、それぞれの性格の弱さから様様な破綻がやってくる、悪意だらけの世界です。
オビには「抜群の説得力」「あれよあれよの展開だ」などとかかれていますが、なんといっても読みどころは桐野夏生が犯罪傾向をいかに理由付け、その傾向を加速させるか、というところと、人間に対する悪意の加速にあるのではないでしょうか。
基本的には損得でしか見ない作者の視点が非常に居心地を悪くさせますが、その発想と作文技術がその傾向と混ぜ合わさることで、桐野夏生独特の世界が作り出されます。
うーん、一気に読んで面白かったのは確かですが、クライム系桐野夏生はそろそろいいかも。
クライムノベル以外も最近はでているので、「桐野ワールド」がどうなっているか、楽しみでもあります。
桐野夏生
- OUT 上 講談社文庫 き 32-3/桐野 夏生
- ¥700
- Amazon.co.jp
- OUT 下 講談社文庫 き 32-4/桐野 夏生
- ¥650
- Amazon.co.jp
いわずとしれた桐野夏生の有名作品「OUT」。
主人公の雅子のパート友達弥生が、不倫をきっかけに夫を殺してしまいます。
弥生は雅子を頼り、夫を殺したことを話します。
雅子は弥生の意志を確認した上で、その遺体を処理することを決意します。
そしてパート友達ヨシエを誘い、また金のにおいをかぎつけた邦子が仲間に入ります。
そして、共犯たちの人間模様と腐臭をかぎつけるハエのような輩が集まり始める、物語は「桐野ワールド」に入っています。
相変わらずの桐野ワールド。
社会不適合因子を持つ主人公。
あるきっかけから、犯罪世界に足を踏み入れ、そして自身のその因子について確信を深めます。
周囲の人は何か息苦しく、それぞれの性格の弱さから様様な破綻がやってくる、悪意だらけの世界です。
オビには「抜群の説得力」「あれよあれよの展開だ」などとかかれていますが、なんといっても読みどころは桐野夏生が犯罪傾向をいかに理由付け、その傾向を加速させるか、というところと、人間に対する悪意の加速にあるのではないでしょうか。
基本的には損得でしか見ない作者の視点が非常に居心地を悪くさせますが、その発想と作文技術がその傾向と混ぜ合わさることで、桐野夏生独特の世界が作り出されます。
うーん、一気に読んで面白かったのは確かですが、クライム系桐野夏生はそろそろいいかも。
クライムノベル以外も最近はでているので、「桐野ワールド」がどうなっているか、楽しみでもあります。
箱庭の外/『泣かない女はいない』
泣かない女はいない
長嶋有
いつもの長嶋有ですが、今度は居心地が悪い世界です。
「泣かない女はいない」
郊外の搬送センターに勤める事務員の主人公。
そこはメルヘンもロマンもない郊外で、夢も未来もない会社です。
系列の中小会社にありがちな、経営改革で会社全体の意欲もなくなっていくようななか、
長嶋有の主人公は、自分の世界を守りながら何とか暮らしていきます。
屋上に上ったり、近くの公園でお弁当を食べたり、リフトの運転の練習をしてみたり。
そんな世界の冬のワンシーズンを切り取った話でした。
「センスなし」
「ほんの数歳遅くに生まれていれば、私も好きな音楽はスピッツだのオザケンだったのに」
「まあね。私の場合、数年後に生まれてもスッピツじゃなくてシャランQとかに走ってたかもしれないけどさ。それにしても聖飢摩Ⅱだからね」
といつもどおり絶妙のところをついてくる長嶋有の登場人物。
主人公は、携帯の使い方もよく分からず、レンタルビデオもPCもよく知らない。
そして夫には浮気され、離婚するかもしれない。
そんな雪の日に、夫のAVビデオを返しに行くという話。
この2本「夕子ちゃんの近道」とは違い、世界は居心地がよくありません。
それでも自分のスタイルを守り、愛して、不器用に、こじんまりと生きていく姿はなぜか興味深く読んでしまうものがあります。
しかし、今、チャゲアスを歌うのはイタイのかな。
イカ天バンドもイタイ?
長嶋有
- 泣かない女はいない/長嶋 有
- ¥1,470
- Amazon.co.jp
- 泣かない女はいない (河出文庫 な 23-1)/長嶋 有
- ¥515
- Amazon.co.jp
いつもの長嶋有ですが、今度は居心地が悪い世界です。
「泣かない女はいない」
郊外の搬送センターに勤める事務員の主人公。
そこはメルヘンもロマンもない郊外で、夢も未来もない会社です。
系列の中小会社にありがちな、経営改革で会社全体の意欲もなくなっていくようななか、
長嶋有の主人公は、自分の世界を守りながら何とか暮らしていきます。
屋上に上ったり、近くの公園でお弁当を食べたり、リフトの運転の練習をしてみたり。
そんな世界の冬のワンシーズンを切り取った話でした。
「センスなし」
「ほんの数歳遅くに生まれていれば、私も好きな音楽はスピッツだのオザケンだったのに」
「まあね。私の場合、数年後に生まれてもスッピツじゃなくてシャランQとかに走ってたかもしれないけどさ。それにしても聖飢摩Ⅱだからね」
といつもどおり絶妙のところをついてくる長嶋有の登場人物。
主人公は、携帯の使い方もよく分からず、レンタルビデオもPCもよく知らない。
そして夫には浮気され、離婚するかもしれない。
そんな雪の日に、夫のAVビデオを返しに行くという話。
この2本「夕子ちゃんの近道」とは違い、世界は居心地がよくありません。
それでも自分のスタイルを守り、愛して、不器用に、こじんまりと生きていく姿はなぜか興味深く読んでしまうものがあります。
しかし、今、チャゲアスを歌うのはイタイのかな。
イカ天バンドもイタイ?
表紙との幸せな出会い/『夜は短し歩けよ乙女』
『夜は短し歩けよ乙女』
森見登美彦
アジカンのCDのジャケットで有名な中村佑介 の表紙を持ってきたのが最大の勝因ではないでしょうか。
「オモチロイコト」が大好きな黒髪の女性、
頭に議会を持っている森見流妄想炸裂の文学青年、
3階建ての路面電車に住んでいる大金持ちで性悪の老人
と絵柄的には事欠かかない作品。
ともすれば古典的な文学パロディになりかねないところを、当世流の表紙の絵柄を持ってきたことで、「こんな話もありかも」と思ってしまう読者も多かったのでないでしょうか。
やんちゃな女性を追う、平凡な妄想青年、まわりの濃いキャラとおかしな状況設定。
漫画ではありがちな設定も小説で行うところが新鮮でした。
しかしどっちがいいといわれれば、個人的にはまだ作者の闇が見えそうな「走れメロス 」のほうが読みがいがありました。
これでしばらくは森見氏は読み止めということで。
森見登美彦
- 夜は短し歩けよ乙女/森見 登美彦
- ¥1,575
- Amazon.co.jp
アジカンのCDのジャケットで有名な中村佑介 の表紙を持ってきたのが最大の勝因ではないでしょうか。
「オモチロイコト」が大好きな黒髪の女性、
頭に議会を持っている森見流妄想炸裂の文学青年、
3階建ての路面電車に住んでいる大金持ちで性悪の老人
と絵柄的には事欠かかない作品。
ともすれば古典的な文学パロディになりかねないところを、当世流の表紙の絵柄を持ってきたことで、「こんな話もありかも」と思ってしまう読者も多かったのでないでしょうか。
やんちゃな女性を追う、平凡な妄想青年、まわりの濃いキャラとおかしな状況設定。
漫画ではありがちな設定も小説で行うところが新鮮でした。
しかしどっちがいいといわれれば、個人的にはまだ作者の闇が見えそうな「走れメロス 」のほうが読みがいがありました。
これでしばらくは森見氏は読み止めということで。
陶器の麺棒/『図説 イギリスの生活誌-道具と暮らし-』
図説 イギリスの生活誌
-道具と暮らし-
ジョン・セイモア
18-19世紀の、イギリス人の身の回りの道具達を描きながら時代背景や風俗を語った本です。
こんな本は学校の図書室以外にどこに行き所があるんだろう、というほどマニアック。
写真は改題の新装版。
図書館の処分本で手に入れました。
「台所の道具」「牛乳と乳製品」「洗濯の道具」「家のまわりで」「織物の道具」「家を飾る」
とこれまた、これで1章なりたつのか、という章立てですが、それでも十分に面白いのですね。
カラフルな陶器やガラスのパンの麺棒、様様な模様を刻むためのバタースタンプ、28個にもおよぶブラシの絵、ラグマットの作り方、様様なレースの模様とボビン、それらを丁寧に描き、説明を加えています。
様様なものに囲まれながら、いちいちがわずらわしい準備や日常のメンテナンスを必要とするものだらけで、今は何でも手軽に省力化していることがよく分かります。
どちらを選べといわれると、現代のものを愛することが少なくなったことも残念だし、かといって何もかもを生活の準備に縛り付けられるつらさも分かるような気がします。
ま、ところどころにそんな社会的なことを考えながら、微に入り、際を穿ち、その事物を列挙していくページは眺めているだけでも十分よく、読んでもなお楽しいという本です。
目に付いたら是非ぱらぱらとめくってみてください。
-道具と暮らし-
ジョン・セイモア
- 図説 イギリス手づくりの生活誌―伝統ある道具と暮らし/ジョン セイモア
- ¥3,990
- Amazon.co.jp
18-19世紀の、イギリス人の身の回りの道具達を描きながら時代背景や風俗を語った本です。
こんな本は学校の図書室以外にどこに行き所があるんだろう、というほどマニアック。
写真は改題の新装版。
図書館の処分本で手に入れました。
「台所の道具」「牛乳と乳製品」「洗濯の道具」「家のまわりで」「織物の道具」「家を飾る」
とこれまた、これで1章なりたつのか、という章立てですが、それでも十分に面白いのですね。
カラフルな陶器やガラスのパンの麺棒、様様な模様を刻むためのバタースタンプ、28個にもおよぶブラシの絵、ラグマットの作り方、様様なレースの模様とボビン、それらを丁寧に描き、説明を加えています。
様様なものに囲まれながら、いちいちがわずらわしい準備や日常のメンテナンスを必要とするものだらけで、今は何でも手軽に省力化していることがよく分かります。
どちらを選べといわれると、現代のものを愛することが少なくなったことも残念だし、かといって何もかもを生活の準備に縛り付けられるつらさも分かるような気がします。
ま、ところどころにそんな社会的なことを考えながら、微に入り、際を穿ち、その事物を列挙していくページは眺めているだけでも十分よく、読んでもなお楽しいという本です。
目に付いたら是非ぱらぱらとめくってみてください。
やせない理由/『やせる旅』
やせる旅
都築響一
編集者・カメラマン都築氏が「旅をしつつも痩せてみたい」という企画で世界中を回ります。
長野の高級リゾートで断食や京都で精進料理。
シンガポール・チェンマイ・ヨルダン・ハワイでエステ。
礼文島やブータンでトレッキングやハンガリーや熊本で温泉三昧。
読んでいると、酒をやめたり食事を控えたり本気でやせるように努力しているようにも見えるのですが、数字なんかを出していないので分かりません。
ただ写真をみると、ちょっとはやせたのかなぁ、という気もします。
しかし読んでいて感じたのは、エステの気持ちよさそうなこと。
シンガポールの6時間のエステコースや、チェンマイやハワイのアーユルヴェーダの体によくて気持ちのよさそうなこと。
よくきく「女性にだけやらせておくのはもったいない」というのもちょっと分かるような気もしました。
「肥満格言」など肥満についてのコメントも色々書いてあり(タオルが好きとかお先にどうぞ、とよく言うとか)その中の一つに「ダイエットしても面白くないから長続きしない」というのがありました。
飲み会でアルコールを飲めないのは、友人も限られてくるし、女性も誘いにくい。
うーん確かに。しかし逆にそういった太る元になる生活を中心においているのが問題ということが浮かび上がってきます。
しかし、ま、旅は一過性のものだから、当然ずっとやせる、というのとは基本ちがうのだろうなと。
要するに「食事」ではなく「ダイエット」を目的とした楽しいたびの提案、と読むのが正しいのでは、と思いました。
『珍日本紀行』『TOKYO STYLE』でも有名な人ですが、こんな体験紀行文もやるんですね。
都築響一
- やせる旅/都築 響一
- ¥1,995
- Amazon.co.jp
編集者・カメラマン都築氏が「旅をしつつも痩せてみたい」という企画で世界中を回ります。
長野の高級リゾートで断食や京都で精進料理。
シンガポール・チェンマイ・ヨルダン・ハワイでエステ。
礼文島やブータンでトレッキングやハンガリーや熊本で温泉三昧。
読んでいると、酒をやめたり食事を控えたり本気でやせるように努力しているようにも見えるのですが、数字なんかを出していないので分かりません。
ただ写真をみると、ちょっとはやせたのかなぁ、という気もします。
しかし読んでいて感じたのは、エステの気持ちよさそうなこと。
シンガポールの6時間のエステコースや、チェンマイやハワイのアーユルヴェーダの体によくて気持ちのよさそうなこと。
よくきく「女性にだけやらせておくのはもったいない」というのもちょっと分かるような気もしました。
「肥満格言」など肥満についてのコメントも色々書いてあり(タオルが好きとかお先にどうぞ、とよく言うとか)その中の一つに「ダイエットしても面白くないから長続きしない」というのがありました。
飲み会でアルコールを飲めないのは、友人も限られてくるし、女性も誘いにくい。
うーん確かに。しかし逆にそういった太る元になる生活を中心においているのが問題ということが浮かび上がってきます。
しかし、ま、旅は一過性のものだから、当然ずっとやせる、というのとは基本ちがうのだろうなと。
要するに「食事」ではなく「ダイエット」を目的とした楽しいたびの提案、と読むのが正しいのでは、と思いました。
『珍日本紀行』『TOKYO STYLE』でも有名な人ですが、こんな体験紀行文もやるんですね。
- TOKYO STYLE (ちくま文庫)/都築 響一
- ¥1,260
- Amazon.co.jp
- ROADSIDE JAPAN―珍日本紀行 西日本編 (ちくま文庫)/都築 響一
- ¥1,890
- Amazon.co.jp
- ROADSIDE JAPAN―珍日本紀行 東日本編 (ちくま文庫)/都築 響一
- ¥1,890
- Amazon.co.jp
そんな男はやめなさい/ナラタージュ
ナラタージュ/島本理生
大学生となった主人公に、高校の演劇部の担任から連絡があり、演劇部の手伝いをしてくれないかと誘われます。
集まってみると、かつての旧友とその知人、後輩達、そしてずっと忘れられない先生がいるのでした。
演劇の練習を続けていくうちに、やはり自然に気持ちを共有できる先生に心惹かれる自分を感じながら、それは成就しないことをわかっているため、いつのまにか旧友の知人に心惹かれるようになります。
そして、新しい恋が始まるのですが・・・
思春期の淡い心の移ろい、というよりもある種の人種がお互いに同じ人種であることに気づき、お互いに心惹かれあうのを認めるが、社会常識がそれを阻み成就しない、と言う話ですね。
ある種の人間というのはなんというのでしょうか。
まぁ性格のタイプですね。
人一倍感情の起伏は強いものの、それをあまり表に出さない。
出さないことは肯定しながらも、それに気づいてほしい。
そんなタイプですね。
小説の細かいところでは、性の強要が裏の水脈として流れていたりして、緊張感のある作品になっています。
しかし、物語中盤、主人公が「先生のためなら死んでもいい」と言った後に、先生が妻との籍を抜いていないことに、主人公が猛烈に裏切られたと感じることは、もちろん先生はろくでもないやつだな、と思いつつ、おいおいそんな簡単に先生を嫌いになるなよ、主人公の命もずいぶん安いな、と思ってしまいました。
「命をかけても」「死んでもいい」と思うことはありますが、冷静にそうなった状況を見てみると結構危うい前提条件であることも多いのだな、と思ってしまいました。
しかし主人公や周りの人物の設定など色々いう前に、主人公の愛した相手の先生が、あまりにダメ男でイマイチ物語に入り込めませんでした。ダメな相手だからこそ余計にその恋愛の妙が純粋に浮かび上がってくるのかもしれませんが、それにしてもね、こんな相手をずっと思うことはありませんよ。探していればきっと同じように心を共有できる人が見つかりますよ、だから泣くなよ、と、めずらしく登場人物に納得できない本でした。
結構話題になった本ですが、そのへんは皆さんどうだったのでしょうか。
- ナラタージュ/島本 理生
- ¥1,470
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大学生となった主人公に、高校の演劇部の担任から連絡があり、演劇部の手伝いをしてくれないかと誘われます。
集まってみると、かつての旧友とその知人、後輩達、そしてずっと忘れられない先生がいるのでした。
演劇の練習を続けていくうちに、やはり自然に気持ちを共有できる先生に心惹かれる自分を感じながら、それは成就しないことをわかっているため、いつのまにか旧友の知人に心惹かれるようになります。
そして、新しい恋が始まるのですが・・・
思春期の淡い心の移ろい、というよりもある種の人種がお互いに同じ人種であることに気づき、お互いに心惹かれあうのを認めるが、社会常識がそれを阻み成就しない、と言う話ですね。
ある種の人間というのはなんというのでしょうか。
まぁ性格のタイプですね。
人一倍感情の起伏は強いものの、それをあまり表に出さない。
出さないことは肯定しながらも、それに気づいてほしい。
そんなタイプですね。
小説の細かいところでは、性の強要が裏の水脈として流れていたりして、緊張感のある作品になっています。
しかし、物語中盤、主人公が「先生のためなら死んでもいい」と言った後に、先生が妻との籍を抜いていないことに、主人公が猛烈に裏切られたと感じることは、もちろん先生はろくでもないやつだな、と思いつつ、おいおいそんな簡単に先生を嫌いになるなよ、主人公の命もずいぶん安いな、と思ってしまいました。
「命をかけても」「死んでもいい」と思うことはありますが、冷静にそうなった状況を見てみると結構危うい前提条件であることも多いのだな、と思ってしまいました。
しかし主人公や周りの人物の設定など色々いう前に、主人公の愛した相手の先生が、あまりにダメ男でイマイチ物語に入り込めませんでした。ダメな相手だからこそ余計にその恋愛の妙が純粋に浮かび上がってくるのかもしれませんが、それにしてもね、こんな相手をずっと思うことはありませんよ。探していればきっと同じように心を共有できる人が見つかりますよ、だから泣くなよ、と、めずらしく登場人物に納得できない本でした。
結構話題になった本ですが、そのへんは皆さんどうだったのでしょうか。
長嶋有的箱庭/夕子ちゃんの近道
夕子ちゃんの近道
長嶋有
主人公は、アンティークショップ「フラココ屋」の2階に住んでいる青年。
アンティークショップに暇つぶしにくるイラストレータとのやりとりがある「瑞枝さんの原付」や
大家の双子の孫の夕子ちゃんと不思議な交歓のある「夕子ちゃんの近道」と
芸大の課題をこなし、日々家の前で無口に作品を作っている麻子ちゃんについての「麻子ちゃんの箱」など、
アンティークショップ周辺の人物を描いた連作集。
長嶋有特有の、無気力というわけではなく、かといって何かがんばるのではなく、無欲というほどかっこよくもない、世間や一般社会と自分のベクトルがずれている(自覚も無自覚も含め)人々の生活を淡々と書き、一つの閉じた世界を作り上げた作品です。
ためしに「もっとさ、前向きに、建設的に働こうよ」という人物が出てくると何もかもぶち壊しになってしまうのは容易に想像できます。
今回は全体的に、人間臭いところにはあまり触れないものの瑞江さんとのやり取りの中で
「じゃあ君、私の子供つくってくれる」えっといった後で、あーはいと言ってしまう。
中略
瑞枝さんの子供の精子提供者になってもいいかどうか、改めて考えてみた。いいといえばいいし、困るといえばすごく困る。そう思った。セックスはしたいのだろうか。まあやぶさかではない。
と、このあたりで、生々しい感覚があり、あぁこの作品の人々も世俗の中で生きているんだなぁ、感じられました。
そういった、世俗に生きていながらも、自分の生理・好き嫌いを優先的にあたりまえにしている人々で構築したこの本の世界は、人によっては自分を肯定されたような心地よい世界に感じられるのではないでしょうか。
こういったものを世間への強い好悪なしに構築できる長嶋有は、やはり一つの才能といっていいのでしょう。
そのあたりが大江健三郎賞受賞の所以でしょうか。
長嶋有
- 夕子ちゃんの近道/長嶋 有
- ¥1,575
- Amazon.co.jp
主人公は、アンティークショップ「フラココ屋」の2階に住んでいる青年。
アンティークショップに暇つぶしにくるイラストレータとのやりとりがある「瑞枝さんの原付」や
大家の双子の孫の夕子ちゃんと不思議な交歓のある「夕子ちゃんの近道」と
芸大の課題をこなし、日々家の前で無口に作品を作っている麻子ちゃんについての「麻子ちゃんの箱」など、
アンティークショップ周辺の人物を描いた連作集。
長嶋有特有の、無気力というわけではなく、かといって何かがんばるのではなく、無欲というほどかっこよくもない、世間や一般社会と自分のベクトルがずれている(自覚も無自覚も含め)人々の生活を淡々と書き、一つの閉じた世界を作り上げた作品です。
ためしに「もっとさ、前向きに、建設的に働こうよ」という人物が出てくると何もかもぶち壊しになってしまうのは容易に想像できます。
今回は全体的に、人間臭いところにはあまり触れないものの瑞江さんとのやり取りの中で
「じゃあ君、私の子供つくってくれる」えっといった後で、あーはいと言ってしまう。
中略
瑞枝さんの子供の精子提供者になってもいいかどうか、改めて考えてみた。いいといえばいいし、困るといえばすごく困る。そう思った。セックスはしたいのだろうか。まあやぶさかではない。
と、このあたりで、生々しい感覚があり、あぁこの作品の人々も世俗の中で生きているんだなぁ、感じられました。
そういった、世俗に生きていながらも、自分の生理・好き嫌いを優先的にあたりまえにしている人々で構築したこの本の世界は、人によっては自分を肯定されたような心地よい世界に感じられるのではないでしょうか。
こういったものを世間への強い好悪なしに構築できる長嶋有は、やはり一つの才能といっていいのでしょう。
そのあたりが大江健三郎賞受賞の所以でしょうか。
世代の甘え/昭和出版残侠伝
昭和出版残侠伝
嵐山光三郎
嵐山光三郎が、自分の上司の後を追って平凡社をやめて、学研関係会社から雑誌「ドリブ」を創刊するまでの話です。
当時の出版状況と雑誌を創刊するというのは、こういうことか、というのが得意の昭和軽薄体に近い形で書かれており、バブルの香りが懐かしくなるような内容です。
嵐山光三郎版「本の雑誌血風録」といったところでしょうか。
退社、新雑誌創刊、と面白くないわけはないのですが、水滸伝をきどった『「仁義礼編集屋兄弟」の八文字を見た夜・・・』など、この世代の南伸坊や嵐山光三郎のたまに文章に垣間見れる、軽いけど分かってこういうことやっているんだよ、教養はあるんだよ、的な部分がどうも肌に合いません。
これは世代的なものもあるのでは、というぐらいに。
なんだかしたり顔でやっている割には、たいしたことをやっていなくて、でもそれはさらに旧世代のたいしたことに対するアンチテーゼだったりするわけですね。
そんなややこしいものを、同時代以外に求めるな、という感じです。
私だけでしょうか。
ま、私自身が圧倒的な知識差を感じて、なお相手がお茶らけているのを耐えられない、ということでしょう。
未熟な証拠です。
しかし「文人暴食 」みたいなストレートなものは面白いんですよね。
嵐山光三郎
- 昭和出版残侠伝/嵐山 光三郎
- ¥1,575
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嵐山光三郎が、自分の上司の後を追って平凡社をやめて、学研関係会社から雑誌「ドリブ」を創刊するまでの話です。
当時の出版状況と雑誌を創刊するというのは、こういうことか、というのが得意の昭和軽薄体に近い形で書かれており、バブルの香りが懐かしくなるような内容です。
嵐山光三郎版「本の雑誌血風録」といったところでしょうか。
退社、新雑誌創刊、と面白くないわけはないのですが、水滸伝をきどった『「仁義礼編集屋兄弟」の八文字を見た夜・・・』など、この世代の南伸坊や嵐山光三郎のたまに文章に垣間見れる、軽いけど分かってこういうことやっているんだよ、教養はあるんだよ、的な部分がどうも肌に合いません。
これは世代的なものもあるのでは、というぐらいに。
なんだかしたり顔でやっている割には、たいしたことをやっていなくて、でもそれはさらに旧世代のたいしたことに対するアンチテーゼだったりするわけですね。
そんなややこしいものを、同時代以外に求めるな、という感じです。
私だけでしょうか。
ま、私自身が圧倒的な知識差を感じて、なお相手がお茶らけているのを耐えられない、ということでしょう。
未熟な証拠です。
しかし「文人暴食 」みたいなストレートなものは面白いんですよね。
物語がなくても面白い/バガージマヌパナス
バガージマヌパナス
池上永一
池上永一
-
- バガージマヌパナス―わが島のはなし (文春文庫)/池上 永一
- ¥590
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日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
風車祭などを読んで面白いと思って気になっていた作家です。
やはり沖縄モノが読みたくて初期(1994)の作品を読んでみました。
沖縄で育つ綾乃は高校生だが、最近には珍しく、ひどく怠け者の女性。
いつも高校をさぼっておばぁとおしゃべりをして、テーゲーに毎日を過ごしていました。
そこには建設的な精神はなく、何とかなるさー、という感じで、
性格半分、ヤマトンチュへの反抗心半分で毎日を無為にしかし心から楽しんで過ごしていました。
そこに神様から「ウタになれ」といわれたものの、やっぱり反抗していると
天罰が下るようになり、おばぁの進めもあり、少しずつでもユタとしておいのりをしていくのでした。
そして物語の最後には・・・。
神様が現れるのが半分以降となっているように、このころからすでにプロットではなくキャラで読ましてます。
3つ子の魂100まで、ではないですが初期作品にして、今の作品と遜色のないできでした。