できれば本に埋もれて眠りたい -16ページ目

タイトル負け/エロマンガ島の三人

エロマンガ島の三人 
長嶋有異色短編作品集

エロマンガ島の三人 長嶋有異色作品集/長嶋 有
¥1,470
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エロマンガ島の三人」はオトナファミに連載されたもの。
ゲーム雑誌編集者二人と広告代理店一人で、バルアツに実在するエロマンガ島に企画で行くという話。
編集者の彼女が日本にいて他の人とデートをしていたり、謎の人物がいたり小説的技術を駆使していますが、タイトル負けの感は否めません

「女神の石」「アルバトロスの夜」はSFのWEBマガジンアニマソラリスに連載。
SFはイマイチのようです。

ケージ、アンプル、箱」は小説現代に官能小説を依頼されかいたもの。
え、官能小説だったの、という感じですが。
「パラレル」にでていた登場人物(ホリエモン似)が主人公です。

青色LED」はエロマンガ島の続き書き下ろし。
謎が解かれるのですが、どうでしょう。カップヌードルのえびの原産地を聞いたような、そんな印象です。

異色短編集という言葉に嘘偽りはないのですが、質はどうなのかな、と思いました。

森永氏、「萌え」を窘められる/「年収300万円時代 日本人のための幸福論」

年収300万円時代 日本人のための幸福論
森永卓郎 カレル・ヴァン・ウォルフレン

年収300万円時代 日本人のための幸福論/カレル・ヴァン・ウォルフレン
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経済論で人気の森永卓郎氏と「人間を幸福にしない日本というシステム」で有名なカレル・ヴォン・ウォルフレンの対談です。

森永氏のクレバーな分析には、ウォルフレン氏も「そうそう」といいますが少しおかしな「陰謀論」「萌えが日本経済を救う論」には、「そうですか?」「???」「萌えは除外してください」といなされ、やっぱりしれは変な話なんだ、というところがわかって面白いですね。

森永氏の「1人の金持ちと99人の貧乏人」「貧乏でも楽しんで暮らす」「高度成長期の日本が一番いい」

ウォルフレン氏
の「達成感からくる満足感こそ深い意味のある幸せ」と経済論というよりは幸福論になっているところが興味深かったですね。

たしかに経済論は手段の問題で、どういった幸福を求めるかによって経済論も変わってくるわけですね。

うーん、がむしゃらに働いていればよかった時代も終わって自分で自分の幸福を選び、社会にもその形を求める時代になってきたのですね。

森永氏の「バブルとデフレは金持ち優遇のための陰謀」という説もなかなか面白かったですが、ウォルフレン氏の「働きすぎは、アメリカ、日本、イギリス」「オランダの医療レベルは決して高くない」など欧米へのクレバーな見解も面白かったです。

経済論は基礎さえ知らないので、個人的にはみんな占いのような状態に感じています。
そんななかでもこの二人の意見は、その内容に取捨選択は必要なものの、なかなか興味深く読むことができました。


人間を幸福にしない日本というシステム/カレル・ヴァン ウォルフレン
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それでも踊る/「オリガ・モリソヴナの反語法」

http://ramaramar.blog118.fc2.com/tb.php/44-21a59b5b オリガ・モリソヴナの反語法
米原万理


書店では、文庫であるのにアフィリエイトではないの?AMAZONは中古のみ?



「ああ神様!これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう。長生きはしてみるもんだ。こんな才能はじめてお目にかかるよ!あたしゃ嬉しくて嬉しくて嬉しく狂い死にしそうだね!」
つまりこれが反語で、「ウスノロ!」と罵っているわけですね。

時は1960-64年、場所はチェコスロバキアのソビエト大使館付属学校。
そこで舞踏教師をやっているオリガ・モリソビナ。1920年代のファッションと自称50で見た目は70-80代。恐ろしい悪態を反語法で彩りながら、しかしダンスの腕はぴか一で、学校全体で行う全体劇での演出を仕切り、その劇を見たものは賞賛を惜しまない、そんな人物。

そんな先生の下、思春期を送った主人公の日本人は、数十年経ったあと、こう思うのでした。
いったいあの時代にチェコにいたあの先生は何者だったのだろう、と。

そこで日本からロシアに行き旧友に会いながら、その波乱万丈な人生をたどっていくのです。
すると現れるのは、双子の姉、ダンサーとしての絶頂期、恐怖政治、シベリア流刑。

激動の20世紀後半のロシア史を体現したような一生は、そのエキセントリックな性格も合わせ、ミステリと講談をあわせたような、ソルジェニーツィンがミステリを書き始めたような、そんな作品で、ページが勝手にめくられるような読みやすさでした。

ネタ本は自著のノンフィクション「嘘つきワーニャの、真っ赤な真実」で、重なるところも多いのですが、友人と会っていくだけの「嘘つきワーニャ」よりも、「オリガ・モリソヴナ」を中心とすることで時代背景が臨場感を持って書くことができ、しっかりとした縦糸ができているように感じました。

自分の体験を小説にするという類の小説は、通常人生に1度しか書けないことが多いと思うのですが、米原万理にとってはそれがこの本だったのでしょう。
表紙の見た目やタイトルに惑わされず、読むことができてよかったです(何も知らずに読むにはちょっとしんどいタイトルと表紙と厚さでした)。つな様 ご推薦ありがとうございました。

そうこれが現実/「ホームレス作家」

ホームレス作家
松井計

家族挽回―離れて暮らす娘との春夏秋冬/松井 計
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(上記は「ホームレス作家」「ホームレス失格」の次の本です)


うーん、恐ろしい。
人はこうやってホームレスになっていくんだ、というノンフィクション。

それなりの著作をもち、文章も悪くなく、専門知識も有している作者が、結婚をして、子供が生まれてくるあたりか少しずつ歯車が狂いだしていきます。

妻はすこし精神失調気味で、子供の面倒もあまり見られない、そして妻の面倒も見なくてはいけないようになっていきます。そうなってくると本を書いている時間などなくなり、妻の調子がよくなるのを待っているうちに引越しを繰り返し、自己資金に余裕がなくなり、ついに公団住宅を退去。

数日はホテルで暮らすものの、妊娠中の妻と子供は施設に預け自分はホームレスとなったのです。

それでも出版社に預けてあった原稿の出版を待ち、前借しようを数日耐え、編集者に会うと「出版の話は流れました」。ついに、本当のホームレスに。

友人にお世話になったり身内・友人にお金を無心したり、古雑誌を拾ったり、なんとかアルバイトを見つけたり、といろいろやりながら、妊娠中の妻と子に会うのを唯一の楽しみとして苦悩の日を送ります。

そしてある思い付きをきっかけに少しずつ生活が持ち直していくのです。


うーん、本当、いまどきはちょっとした不運を並べるだけであっというまにホームレスになってしまうのですね。
しかもホームレスになったからといって何かから開放されるわけでもなく、そのホームレスの状態から人間関係や自己嫌悪、現実的に金を稼ぐことに対応していかなければならないのが、非常にしんどそうです。

この作家自体にも(自業自得というほどではないにしても)偏りは感じられますが、ホームレスになっても拾い食いはしないなどの矜持は、この本の品位をぎりぎりのところで保っています。

他にもこのあとの状況を述べた本もあり、またこの作家のホームページ を見ても、そうか本当の今も続いている話なんだなぁ、とひしひしと実感しまいました。

ノンフィクション作家でも買い物は大好き/何でも買って野郎日記

何でも買って野郎日記
日垣隆


この人も初読み。ノンフィクション系ではそこそこ有名な人のようです。

買い物好き(依存症に近い)の買い物にまつわる日記です。

作家としては成功しているようで、収入は数千万、しかし資料代も数千万ということで、ものすごく裕福、というわけではないようです。

しかしその買い物ぶりは、私から見れば異様です。

一度しかしないネクタイを買い漁り(家には数百本)、クリスタルやオパールのカフスに心を奪われ(もちろんいくつも購入)、飛行機のファーストクラスに乗るために仕事に精を出す。

いや、個人のことですし、家族も含め生活も成り立っているので文句を言う筋合いはまったくありません。

でもすごい。

そういった買い物の値段を公表し、自分なりの意見をつけて、それに子供3人と仕事のことも書いてと、その正直な筆致には好感が持てました。

執筆についてもしっかりとしたポリシーをもって書いているようで、どんな作品にもしっかりと資料を読み込んであたるので、「沖縄戦についてちょっと書いてください、4枚でウン万」なんて依頼は受けられない、というようなことを書いていました。

他の実際の作品を読んでいないのでその主義主張がどうかは分かりませんが、そこまで書く赤裸々な正直さは悪くありません。

中村うさぎとの対談をすすめられ断っているのが笑えました。

でも後一歩で色物扱いされかねない買い物ぶりです。

サイト もあるようですがメルマガでお金をとっているのですね。

そんな人初めて知りました。

でも数千人ぐらいは読者がいるようで、それはそれですごいですね。

余裕があれば実際の作品も読んでみたいと思います。

世界音痴/ 回転寿司が好き

世界音痴/穂村弘

世界音痴/穂村 弘
¥1,365
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ホムホム初読み。日本経済新聞など様々な媒体から集めたエッセイ集。
感想は「おぉ、よく社会人がやっていけるな」というのが正直なところ。
しかし逆にこれでやっていけるのがこの人のすごいところでしょうか。

飲み会で左右の人と自然なバランスで話を聞くのが難しい。
寿司屋のカウンターで注文するタイミングが難しい。
飲み会で遠くから自分の名前を呼ばれると嬉しい。
などという「世界音痴」
ベッドで菓子パンかじるのが最高、という「菓子パン地獄」
ちなみにこの人は歌人で、この本にも自分のや他人の短歌などが色々出ています。

超長期天気予報によれば我が一億年後の誕生日 曇り
穴子来てイカ来てタコ来てまた穴子来て次ぎ空き皿次ぎ鮪取らむ 小池光
ひら仮名は凄まじきかなはははははははははははは母死んだ 仙波龍英

しかし後書きに

「・・・誰のことも、一番好きな相手のことも、自分自身に比べたら十分の一も好きじゃないよね、あなたは」十年間つきあっていた相手が、或る日、私に向かってそう云った。・・・

と書き
「感情から行動のディテールに至る記述には正直を心掛けた」
と書いているようにそうした彼自身が芸になっていることをしっかり理解しているの偉いですね。
もっとしっかりした人なのかもしれませんが、「ぐだぐだ自分大好き」を自分で理解して芸にしている人、と私は理解しました。

日本人だけではない木との付き合い方/木とつきあう知恵

木とつきあう知恵
エルヴィン・トーマス




珍しく木関連で翻訳本です。
筆者はオーストリア(オーストリー?)人でドイツでベストセラーになった本とのこと。

営林署員として木を見ていく内に「冬、新月から数日の内に切った『新月の木』には防虫処理をしなくてもよい。長期に渡り、くるいも少ない」ということに昔ながらの知恵が本当であることに気付き、自分で製材所を始めその実践を行い、さらに様々な「木とつきあう知恵」を学び実践していく内容を綴った作品です。

先人の知恵とそれを現代の家にアレンジしていく様子、手間も費用も時間もかかるが、それを受け入れる消費者などの様子が書かれています。
最後の方には家のすべてを木でつくった場合の防音性、防火性、防電磁波性、そして適度な湿度の調整能力が示され、彼らの進める独自工法「ピュアウッド 」は随分魅力的なものに思えます。

全体として啓蒙書に近く、また作者も作家ではないので、「実用書なら実用書らしくもっと詳細を端的に」「啓蒙書ならその思想を明確に、聞いたことがあるような言葉は排除し、具体例も効果的に」と思ってしまいますが、それにしても海外の作品ということもあり、なかなか新鮮でした。

作者のトーマス氏は日本の木造建築に興味はありそうなのですが、ピュアウッドが日本で普及しているかはちょっと疑問に思ってしまいました。
宣伝が悪いのかなぁ。


情事を扱っていなければ話題にものぼらないような地味な話/顔のない裸体たち

顔のない裸体たち 
平野啓一郎
顔のない裸体たち/平野 啓一郎
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平野啓一郎初読みです。
あらすじは、最終的にはある男女二人が小学校で女性の裸体をビデオ撮影しようとして教師に見つかり男が刃物を振り回し事件を起こすという結末で、その結末に向かってその男女の出会いから丹念に追った小説です。

何事も強く言われると断ることができない、しかしそれ以外は普通の女性教師と、
女性との関係をアダルトビデオのような形でしか結べない男性職員とが、
ネットを通じで出会うことで、関係を持ちさらに映像を撮影していくことでだんだんと社会的な枠から外れていく様子が描かれています。

しかしなんというのでしょうか。
やっていることのわりには二人ともあまりにも普通の範囲内の人格で、あえて普通のままどこまで常規を逸することができるかを書くのが目的のようにも思え、身近な恐さを実感しますが、さして驚くところはありませんでした。

平野啓一郎はその違和感のなさ、同じ常識人として同じ地平にのっている感覚を作りたかったのかもしれません。
「風邪はこじらせたらこわいよ」みたいな。
しかしなんだか結論はうまく出てこないけど読ませるノンフィクションみたいな感じがしました。


変わらない長嶋有/パラレル

パラレル
長島有

パラレル/長嶋 有
¥1,500
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パラレル (文春文庫 な 47-3)/長嶋 有
¥530
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最近読み方が分かって面白い長島有の長篇です。
元ゲームデザイナーの僕と起業家の友人の物語です。

失業中の僕と景気のよさそうな友人とのとくにイベントのない付き合いに、ゲーム好きの女性やキャバ嬢が絡んでくるも、いつもの「長嶋有」の世界が繰り広げられます。

起業家はホリエモンもしくはそういう感じの人を彷佛とさせます。
つまり、他人がなにを考えているかあまり分からず、他人から自分に意識を向けてもらうに社会的成功のみを重視する、という人種です。

長島有の主人公は意識のベクトルが自分とその周辺に向いている人が多く、「ホリエモン」的人種は長島系の人種とはお互いに意識のベクトルが相手に向いていないので、同士というか相手自分のことを気にしないで気楽で、一緒にいるのは苦にならないのでしょう。

キャバクラ嬢やゲームファンなどがでてきますが、やっぱり面白いのは本質的に相手に迫らずにアウトプットのみで接し続ける有り様の気楽さと空虚感でしょうか。
個人的な長嶋有の読みどころとして、このままどんどん進めていくといったいどうなるのだろう、という興味で読んでいます。

詳細の設定は色々変わりますが、私の場合、長島作品はすべて大長篇の一部のように思えました。
同時代的しかけ(ゲームや漫画)もそれに頼らずいいバランスで入り読みやすくもあります。
まだまだ先が気になるので、他の作品も読んでみます。



諸事情により、1ヶ月インターネットがつかえなくなりました。
その間見にきていただいた方、失礼いたしました。
また年末にむけてぼちぼち更新していきますので、余裕があれば見てやってください。

たとえば世界で一番の遺跡を決める旅/行かずに死ねるか!

行かずに死ねるか!
石田ゆうすけ

行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅/石田 ゆうすけ
¥1,575
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南北アメリカ縦断、アフリカ縦断、ユーラシア横断と世界中を自転車で7年半分9万5000キロの旅行記です。
記録のためだけでもなく、自堕落な逃避のためだけでもなく、「世界一周がしたい」という軽い動機で世界中を満喫していく様子は、読んでいて妙な引っ掛かりがなく爽快です。

アラスカから旅をはじめ、メキシコで強盗に遭い、この旅で一番というティカルの遺跡を見て、アフリカではマラリアに罹り、子供達の、血が騒いでいるようなダンスを見て、喜望峰へ向かうチャリ仲間がいつのまにかできて、ユーラシア大陸横断では少女の表情が気になり気の向くまま滞在。

一箇所にたれ込み沈没するでもなく、世界一周の記録にこだわるでもなく、その場所その場所で自分の判断で楽しんでいく姿は、これが旅人の正しい姿勢かとそのバランス感覚に感心してしまいます。

もちろんこんな旅が1冊の文庫に収まるわけはなく、「一番危険なトイレと一番の星空」「洗面器でヤギごはん」など楽しげな本も書かれているようで楽しみです。

あとがきは椎名誠。旅行記にはうるさい人ですが、「まあ、ざっくばらんに書きます」とはじまり、あとがきにありがちな資料的な細かい説明もなく、もろ手を上げて誉めるでもなく、いい感じでした。最後に「・・・タイトルが気に入らない。もう少しさわやかなタイトルの方がよかったのでは」と書かれていますが、これは同感。きっとセンスがない古い編集者がつけたのでしょう。
といってもいいのが浮かびませんが

「世界は笑う」「行けば分かる」「世界横断漫輪記」「自転車(キミ)とどこまでも」「車輪の上」「まだ、旅の途中」「笑顔が出るまで」

うーんやっぱりいいのが出ませんね。

ブログ もあるようです。
いいですね。
こういう現在進行形のいい作家が見つけられるのは人生における小さな幸せの一つです。
他の本も読んでみようと思います。

いちばん危険なトイレといちばんの星空―世界9万5000km自転車ひとり旅〈2〉 (世界9万5000km自転車ひとり旅 (2))/石田 ゆうすけ
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洗面器でヤギごはん 世界9万5000km 自転車ひとり旅III/石田 ゆうすけ
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