極私的映画と音楽のススメ -8ページ目

極私的映画と音楽のススメ

印象に残る映画には印象に残る音楽がある。
思い出の名場面に流れていた音楽、言葉などをご紹介



世の中の不条理を
やさしい視点でくるんだような映画です。

2つの話が平行して進みます。


それは、老人を襲って金品を強奪する黒人の男の視線と
リトアニアからパリにやってくる女性ダイガの視線。


黒人の男のやっていることはあまりにも卑劣な犯罪であり、
この男自体が社会のゆがみを現しているんだと思う。


ダイガは女優を目指してパリにやってきた。
叔母の紹介でホテルに住み込むことになる。
彼女の視線は、ごくごく単純な、夢を抱えた女性の姿を捉えている。



この普通に考えると共通点のまるでない二人の
接点となるのが舞台であるパリ18区。


パリの中でも、ムーランルージュに近く、華麗さと混沌さが入り混じったこの地区で
彼女たちが刹那的な邂逅をする。

最後のシーン。
とあるバーでダイガは一人でくつろいでいる。
そこに入ってくる黒人の男。

彼を見てダイガはにやりと微笑む。
まるで彼が何者であるかを総て知っているかのようなまなざしで。



この映画、日常を淡々と描くのみである。
だけどどことなく、生きるのに不得手な登場人物たちが
悩み、考え、行動していくさまには共感を覚えてしまう。


それはだれもがみんな
生きることに絶対的な自信をもてずに、たたずんでいるからなのかもしれない。



ラストのダイガの微笑み。
何かを超越したその微笑みは、
不条理な世界を照らす一筋の光のようだ。


この光こそが映画をくるんでいるやさしさなんだろうな。




しかしまあ、ダイガ役のカテリーナ・ゴルベワのかもし出す雰囲気はすごいもの
があ
りますね。
車を運転していても、バーでたたずんでいても、ただならぬオーラを放っていま
す。
ラフな服装もとてもあっているし、彼女を見るだけでも収穫ありです!!




※再掲載です。(2006/3/31)




大航海時代というのは、その華やかなイメージとは裏腹に
実は、大侵略時代であったのは、周知の事実ですね。

特に南米などは、既存の文明が破壊されつくしましたし。


でアメリカ。

大航海時代より数百年後、アメリカはイギリスより独立を果たします。
そして内陸部への開拓という名の侵略が始まるわけです。



文化が違うわけですから、おそらく両者共に
とても異質なものを感じたに違いないでしょうし
あまりの違いに恐れを抱いたことでしょう。


その恐れから、人々は武器を手にして自衛に走る。



その時に、もし対等な目線での話し合いが行われていれば。。。

そんなことを考えてしまいます。



追い詰められたものは、窮鼠猫を噛むではないですが
必死になって抵抗をする。


戦いが始まると、武器で勝る方に軍配があがるのは自明の理です。



ついこの間、ブラジルで文明と隔離したところにすんでいた
原住民を上空からとらえた画像がネット上に公開されていました。



文化が違うもの同士、
同じ場所での共存は難しいと思います


でも。


お互いの居る場所、テリトリーを侵害しないようにさえすれば
共存はしていけると思うのです。


300年ほど前、そのような決断がなされなかったことが残念です。

失われた伝承、文化。
その重みは計り知れません。



そんな思いはこんなやり取りを読むに付けさらに増加します。

とある博物館でのお話。
展示している遺物をどうするか・・そんなミーティングがあったようで
そこにはネイティブアメリカンの長老も呼ばれていた。
その中で毎晩古い子供向けの人形が、置いてあった場所から動いている、
それはなぜなのか・・そんな話があったそうです。
そのときその長老がつぶやいたそう。
「なぜあなたたちは魂の話しをしないのか。昔の少女の魂がその人形と遊びに来ているのだ」
(星野道夫さんの書籍より。思い出して抜粋。)



いろんなことを考えてしまう映画ですね。








※再投稿です


極私的映画のススメ

価値観というものは
それが自分とあまりにもかけ離れている人物に出会うときに
揺らいでしまうものなのかもしれません。

それを強固に持ち続けようと思えば思うほど、
その揺らぎは大きくなっていってしまう。


揺らぎの渦中にいるときは、
その揺らぎによって、眩暈を引き起こされたような
状態になり、それが落ち着いた後の世界を想像することは
困難なのかもしれないが、ひとたび、その揺らぎが収まってみると
自分が元々いた位置から大分離れた場所に立ってしまっていることにきづいたりする。


そんなときに、人は旅に出るのだろうか。


映画の中の最後の旅立ちは、
はたからみると不幸な旅立ちなのかもしれないが、
本人にとっては、そうではないのかもしれない。
もちろん幸せでもない。


そんな感覚を持ったまま、彼は旅を続けるんでしょう。



Sandpiper・・
良いタイトルの映画ですね。




極私的映画のススメ

90年代初頭のフランス映画に良く合ったような

若者活劇といった趣。


若者特有の悩みを登場人物たちが抱えていて、

何かのきっかけでそれが解消しないまでも、薄まって新しい可能性をつかんでいく



この時期のフランス映画ミニシアター系は、演技もくどくなくて、

役者も演技派がそろっているので、本当に、その辺の雑踏に

たたずんでいる若者達を追っているような気分になります。


エリック・ゾンカってこういう手法がうまかったですね確かに。

『天使が見た夢』はだから、強烈な印象がのこったんだろうなあ



それはさておき、淡々とした流れの中にも

希望を見出せる展開。

この不況の時期に、何かしらの希望を見出せないでいるのであれば

この映画はうってつけかもしれませんね。





キアロスタミ監督は、生きる意味を問いかけること

そんなテーマの映画をとってますね


それも小難しく、見る人に理解を強いるものではなくて

誰もが、映画を気ままにみながら、そんなことをちょっぴりかんがえているという

そんな映画



この風が吹くまま

というのもぴったりのタイトルですね。


ある目的を持って訪れた場所。

死、それ自体が目的であったのだが、

いつのまにか、その反対である生をつよく求めていくようになる



生きていれば、結果が思い通りにならないこともたくさんあります

やつあたりしたくなることもたくさんあります



でも、この映画の主人公のように

それがかえってなにか大切なことを気がつかせてくれることになるかもしれません



死、それ自体に現実味をもっていなかった男性は

生、それ自体を追いかける羽目になってしまったことで

死のほんとうの意味をしることになっていく


きっと

この町に入る前と後では、彼の心情はまったく

変わっているんでしょうね


人生とは時としてこういう仕掛けをもたらしてくれるのかもしれませんね

風の吹くままに






裸足のトンカ
¥2,249


走ること、それは自分自身への挑戦と言ってもいいのかもしれません。

見えない壁を乗り越えること。

短距離であれ、長距離であれ、道具のいらない一番根本的な
運動である”走る”という行動。


それはそんな衝動に突き動かされる人の意識がなせる行動なのかもしれません。



元短距離選手の男が出会った、野性味溢れる女性。

彼らは走るという行動でつながっていきます。



感情の駆け引きもあったし、それにお互いが答えようと努力を重ねていく


その積み重なりが、螺旋のように交わりあって昇華されたとき
お互いの感情は一つになる



この映画ではそれが、現実の場面では達成できずに終わりますが
彼らの心の中では、それが成就されていきます。



なので、多少悲しいラストではありますが、悲壮感が無いんでしょうね。



ジャンユーグアングラードの監督作品。
ちょうどオリンピックも始まることだし、改めて見てみたいですね。

高野聖 (集英社文庫)/泉 鏡花
¥390
Amazon.co.jp

泉鏡花の小説で有名な表題作。
小説自体は、なんだか小難しくてとっつきにくい印象


まあ、司馬遼太郎言うところの夏目漱石が現代日本語の文語体を
初めて小説に置き換えたというのを信ずるならば、
それもいたしかたないかなあと思ってましたが・・
(なんせ明治33年?くらいの作品ですので)


また、演じ手が海老蔵、玉三郎ということもあって
これはおもしろそう!

なかなか演出が面白く、
スクリーンを舞台に張って、お経を唱える僧侶たちの姿を映し出してみたり
影絵風に森に蠢く動物達を表現してみたり
ライトの加減で水の流れを表現してみたり


会場内の電気を落として、照明の調節で
明け方、夕方などを表現していてなかなかうまい演出でした。


見ていて感じたのは、海老蔵がかっこいいということ。
華がありますねえこの人。きちんと成長したら良い役者になるだろうな。


玉三郎さんも、いやらしさが良かったな。


多少中だるみしてましたけど、楽しめました!



31日までやっているみたいです。
高野聖は19時15分からです。





この演目を選んだのは、菊五郎さんと仁左衛門さんが出ているから。
まあ単純な動機です。

この話、愛情と憎しみは表裏一体であることを
まざまざと見せ付けてくれます。

ちょっとした誤解から菊五郎扮する佐七は、
愛する小糸に対して、殺意を抱くまでの憎悪を抱きます。

まあその感情の変化の具合、さすが菊五郎さんだけあって
なかなかにうまい。
(ちなみに江戸っ子風のしゃべり方も、この人はうまい!)

ただですね、憎しみを爆発させてしまったあと
実は誤解していたことに気づいて、途方にくれて慟哭する場面は
あまり良くなかったな~

なーんか感情がこもってない感じ。

でもってその直後に敵役の侍が現れることで
悲しみモードになっていた憎しみが怒りとなって炸裂。
この場面の見得はさすがにかっちょいい。

たくさんの「音羽屋」コールが沸き起こってました。
たしかにラストはすごかったなあ。

とゆーわけで菊五郎さんを満喫できました。

あ、仁左衛門さんはちょい役で出てますが
これまた存在感たっぷり。
そこにいるだけで空気が変わる気がする。
この雰囲気は残念ながら菊五郎さんには無かったなあ・・
あんなに短い出番なのにこれまた「松嶋屋」コールが鳴り響いてました。

ちなみに外国人の方も頑張って声をかけてまして
「オ・トワヤ!」とか言ってたのが健気でした。

4月の熊野がものすごく見たい。
勧進帳も見たいけどこっちの方が見たい。

■ 江戸育お祭佐七(歌舞伎座三月歌舞伎公演) 
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  お祭佐七  菊五郎    芸者小糸  時 蔵
  鳶頭勘右衛門  仁左衛門 倉田伴平  團 蔵
  世話人太兵衛  田之助
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歌舞伎名作撰 曽我綉侠御所染 御所五郎蔵/歌舞伎
¥4,392

仁左衛門さんが07年末に歌舞伎座で演じておられましたね。

※販売中のDVDだと尾上菊五郎さんですが。

仁左衛門さんのかっこよさが炸裂している作品ですね。
やっぱこういう江戸言葉が大好きだなあと再確認

どこかで聞いた言い回しが多いなあとおもったら
これは三人吉三と同じ作者なんですね。

このお話は、恋敵が鉢合わせするオープニングが圧巻
左右の花道から仁左衛門さんと左團次が登場!
これかっこいい
で、お互いをなじりあう
この言い回しが三人吉三っぽくてスキ

で、この二人が同時に惚れてるのが
中村福助扮する皐月

諸事情あって、仁左衛門さんのためを思って
わざと愛想を尽かすような行動に・・

これにいたく傷ついた仁左衛門さん
左團次とその一味を待ち伏せて殺してしまいます
で、なんとまあ愛する皐月さんも殺してしまう・・・

でもそれは実は皐月の衣装を着た逢州なのでした

このシーン二人とも真っ赤な衣装に身を包んで
そりゃあ、どろどろした愛憎劇なわけで・・・

ちょーっと最後があっさりしすぎてるかな・・
もうちょっと盛り上げても良かったような気もしますが

間違えて殺してしまったという悲劇
お祭佐七だったり、意図的だった熊谷陣屋といい
歌舞伎の一ジャンルなんでしょうね

しかしまあ仁左衛門さん、かっちょええ!

現代歌舞伎俳優好きな人ランキングで一位になっちゃうな

■ 曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
  (NHK芸能花舞台―歌舞伎座07年11月吉例顔見世大歌舞伎) 
  鑑賞日: 3月15日(土) 自宅にて
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  御所五郎蔵  仁左衛門   秩父重介  由次郎
  皐月  福 助         畠山次郎三  男女蔵
  逢州  孝太郎         梶原平蔵  友右衛門
  新貝荒蔵  権十郎      星影土右衛門  左團次
  二宮太郎次  松 江     甲屋与五郎  菊五郎
  茶屋女房おわさ  鐵之助         
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ムーンライト・ドライブ/ホアキン・フェニックス
¥2,900
Amazon.co.jp



ホアキン・フェニックスの純朴さと

ヴィンス・ヴォーンのあまりにもはまり役な悪役振りが

みていて楽しい映画


音楽も、アメリカ南部にぴったりな感じでGOOD!



のほほんとした田舎町に訪れた不可思議な青年

彼は、後に連続殺人をおかしていくのですが

この映画、不思議と暗くない


不思議なくらい爽やかな感じがするのはなぜだろう・・



あ、きっと、ヴィンス・ヴォーンの笑い声のせいだなきっと

何かに似ていると思ったら、篤姫の将軍役の堺雅人の笑い声に似てるんだ!


と映画を見てから10数年後に面白い符号があるものだと思いつつ。



あ、この映画はエンドロールの後まで必ず見てください。

そこで、ヴィンスが、やらかしてくれますので。



サントラも買ってしまったくらい、いい音楽満載の映画でした。