世の中の不条理を
やさしい視点でくるんだような映画です。
2つの話が平行して進みます。
それは、老人を襲って金品を強奪する黒人の男の視線と
リトアニアからパリにやってくる女性ダイガの視線。
黒人の男のやっていることはあまりにも卑劣な犯罪であり、
この男自体が社会のゆがみを現しているんだと思う。
ダイガは女優を目指してパリにやってきた。
叔母の紹介でホテルに住み込むことになる。
彼女の視線は、ごくごく単純な、夢を抱えた女性の姿を捉えている。
この普通に考えると共通点のまるでない二人の
接点となるのが舞台であるパリ18区。
パリの中でも、ムーランルージュに近く、華麗さと混沌さが入り混じったこの地区で
彼女たちが刹那的な邂逅をする。
最後のシーン。
とあるバーでダイガは一人でくつろいでいる。
そこに入ってくる黒人の男。
彼を見てダイガはにやりと微笑む。
まるで彼が何者であるかを総て知っているかのようなまなざしで。
この映画、日常を淡々と描くのみである。
だけどどことなく、生きるのに不得手な登場人物たちが
悩み、考え、行動していくさまには共感を覚えてしまう。
それはだれもがみんな
生きることに絶対的な自信をもてずに、たたずんでいるからなのかもしれない。
ラストのダイガの微笑み。
何かを超越したその微笑みは、
不条理な世界を照らす一筋の光のようだ。
この光こそが映画をくるんでいるやさしさなんだろうな。
しかしまあ、ダイガ役のカテリーナ・ゴルベワのかもし出す雰囲気はすごいもの
があ
りますね。
車を運転していても、バーでたたずんでいても、ただならぬオーラを放っていま
す。
ラフな服装もとてもあっているし、彼女を見るだけでも収穫ありです!!
※再掲載です。(2006/3/31)