【三橋貴明】「カネ」も「コミットメント」も「魔法」ではない【無電柱化】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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流行に浮かされずに独り立ち止まり、素朴に真っ直ぐに物事を観てみたい。
そういう想いのブログです。

 私は三橋貴明を批判する記事をいくつも書いている。

 彼を批判するにあたり彼の論説に目を通すわけだが、彼の煽動的で醜悪な文章を見ても慣れっこになっていて、このところ特にムカつくことはなかった(三橋が煽動的な文章を書いていることにつきhttps://ameblo.jp/bj24649/entry-12264331800.htmlなどで述べた。)。

 12日、台風19号が猛威を振るった。

 三橋ブログにとっては追い風である。

 いつも通りの内容が書かれているのだろうと予想しつつも、一応、三橋ブログを覗いてみた。

 すると、こんな記述が出てきて、久しぶりにムカついてしまった。

 

 

 

「「安全」という需要は満たされていない」 三橋貴明ブログ2019年10月12日

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12534814173.html

 

「 特に、台風15号の経験から明らかになったのは、「電柱方式」「電線方式」の送電は、至急、改める必要があるという点です。つまりは、電線地中化、無電柱化の推進です。

 

 現在の日本の電柱の総数は、およそ3500万本。(電力が七割、通信が三割程度)


 ちなみに、主要先進国は日本とは比較にならないペースで無電柱化を推進していっています。

 

 日本で無電柱化、電線地中化が進まない理由は、もちろん「カネ」です。


 無電柱化を事業を実施するにあたっての課題として、市区町村は「コストが高い」を常にトップに挙げます。
 

 カネの問題である以上、政府が貨幣発行(=建設国債の発行)を決断すれば、話が終ります。


 もちろん、400兆円規模ともいわれる全国の無電柱化、電線地中化事業について、短期で実現することはできません。 
 

 政府が、例えば10年以内に無電柱化を完了させると宣言し、計画を立て、予算をコミットメントするのです。そうすることで、土木・建設業者の無電柱化事業への投資が進み、供給能力は拡大していきます。」


 

 

 あまりに非常識ではないだろうか。

 三橋は10年前から「電柱の地中化」を主張してはいた(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10241698679.html)。

 そして、三橋は、5年前、東京都知事選挙において、田母神俊雄候補のブレーンを務め、その政策の中に「電柱電線の地中化」があった(http://www.maniken.jp/pdf/2014tokyo_02.pdf)。

 まさかこんな認識で政策に盛り込んだのだろうか。

 政策の立案にあたり東京の無電柱化事情について本当に調べたのかと、疑問を抱かせる。

 なお、地方公共団体も無電柱化にあたって費用は負担するし、地方公共団体には通貨発行権はなく財政破綻のおそれがあるので、「カネの問題」はきちんと考えておかなければならないだろう。

 

 

 

「3分で解る「田母神としお政策集」」 YouTube2014年2月5日

https://youtu.be/OTNhapEj6Gw?t=46

 

「ナショナリズムと政策」 三橋貴明ブログ2014年2月5日

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11765264947.html

 

 特に、個人的にまずいと思っているのは、東京都に存在する膨大な数の「電柱」です。直下型地震が起きた場合、横倒しになった電柱が何百本、何千本も道路をふさぎ、救援活動の妨げになるでしょう。結果的に、死者の数が間違いなく増えることは、行政側が「自衛隊を入れない」ことで死亡者を増やした阪神淡路大震災の例からも明らかです。


 逆に、今のうちに電柱を撤去し、電線を地中化しておけば、震災時の救援活動がスムーズに進み、多くの人命を救出することができます。さらに、電線を地中化しておけば、電力サービスに対するインパクトも最小限に抑えることが出来ます。被災地で電気が使えるのと、使えないのでは、これはもう「決定的」と言っていいほどの差が生じます。だからこそ、田母神候補は、

「電線地中化などの公共事業を実施する」

 と、明言しているのです。」

 

 

 

 素朴に考えて、疑問に思わないだろうか。

 「電柱の地中化といっても、東京の地下って既にいろんなものが埋まっているのでは?」と。

 その通りなのである。

 NHKが主に東京の無電柱化事情についてレポートを出している。

 

 

 

「電柱大国ニッポン ~“無電柱化”が進まないワケ」 NHKニュースウェブ2019年9月27日

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190927/k10012097021000.html

 

「台風15号の影響で、千葉県で起きた大規模停電。その大きな原因が、「電柱」でした。日本全国にある電柱は、3500万本。その一部が倒れたことで、これだけの被害につながったのです。ただ海外では、電柱が1本もない都市もあるといいます。なぜ、日本は、“電柱大国”になったのか?調べてみると、日本ならではの原因が見えてきました。(社会部記者 清木まりあ 渡辺謙)

電柱は災害に弱い!

最大93万戸余りで停電が起きた千葉県。電柱が倒れる被害が相次いだほか、倒木で電柱からのびる電線が切断されたことなどが、大きな原因でした。今回、千葉県を中心に、2000本の電柱が倒れるなどの被害が出たと推計されています。

この電柱の倒壊。過去、地震や台風、竜巻のたびに、被害が起きています。

 

東日本大震災では、なんと5万6000本もの電柱が被害を受けていました。電柱は、災害にめっぽう弱いんです。

停電対策の切り札 「無電柱化」

 

赤羽国土交通大臣
「地震や台風などの被害を受けにくい『無電柱化』の必要性を改めて認識した。『無電柱化』のスピードアップを推進していきたい」

 

千葉県の被災地を視察した、赤羽国土交通大臣の発言です。今後の対策として挙げたのが、「無電柱化」。ことばは聞いたことがありますが、どれだけ進んでいるのか。国土交通省のデータを、詳しく調べてみました。

「無電柱化」は、電線などを地下に通すことで、地上の電柱をなくすこと。風や地震の揺れで倒れる電柱をなくしてしまう、停電被害をなくすための抜本的な対策です。歩道が広くなるメリットがあるほか、地上の電線がなくなるため景観もよくなります。

遅れる日本の「無電柱化」

海外の事例を調べてみます。多くの都市で取り組みが進んでいて、ロンドンやパリ、香港、シンガポールでは、なんと、「無電柱化率」が100%!つまり、都市に、電柱が1本もないといいます。

一方、「災害大国」日本はというと。東京23区で8%。東京は全国で最も無電柱化が進んでいますが、それでも8%です。

都道府県別に見てみると、「無電柱化率」が1%に満たない県は全体の4割ほどありました。海外の都市に比べ、日本は大きく立ち遅れていました…。

 

さらに驚いたことに、日本は無電柱化が進むどころか、電柱が今も増え続けていました。平成20年には3525万本だったのが、平成29年には3585万本。9年間で60万本も増えていました。1年に約7万本の電柱が増えていることになります。まさに、“電柱大国ニッポン”!!

早い戦後復興を目指したがゆえに…

なぜ、日本は“電柱大国”になったのか?国土交通省の担当者に聞くと、戦後の復興が原点にあると話しました。

実は戦前、日本でも、電線を地下に埋める取り組みが進んでいました。しかし、戦後、いかに早く復興を進められるかという課題に直面します。

 

中でも重要だったのが、早く安定した電力を供給すること。当時の政府が、コストや時間のかかる地下ではなく、地上に電柱を建てることを選択したということなんです。

その流れが、高度経済成長期、そして現在まで続いているのではないかと、担当者は話していました。

早い戦後復興を目指したがゆえに建てた電柱が、いまは大きな災害のたびに倒れ、人を苦しめている…。なんだか皮肉な話に思えました。

立ちはだかる日本ならではの壁

それでは、「無電柱化」を海外のように、ドンドン進めればいいのでは?しかし、そうはいかないようです。

国は、3年前に法律を作って、無電柱化を進めることにしました。再来年3月までの3年間で全国で2400キロメートルを無電柱化する方針を掲げています。しかし、なかなか難しいと言います。

いちばんの理由は、当然、「コスト」。1キロメートルの範囲を無電柱化するには、5億3000万円もの費用がかかり、十分な予算が捻出できていないのです。

コストがかかる理由の1つに、東京など日本の大都市ならではの大きな「壁」がありました。それは、電線を埋める「地下」の問題です。

地下はもう「満タン」?

その「地下」の問題を、実際に見に行ってみよう。建設が進められている東京メトロの新駅「虎ノ門ヒルズ駅」の工事現場に、特別に入らせてもらいました。

地下の暗い通路を歩くと、目についたのは、大小さまざまな「管」。これらが入り組むように、張り巡らされていました。これこそが、無電柱化を阻む、大きな壁だと言います。

 

地下には、電力ケーブルだけでなく、ガス管や水道管、それに通信ケーブルなど、大量の設備が埋まっています。世界一、複雑とも言われる東京の地下。

管やケーブルなどをつなぎ合わせると、東京23区だけでも、10万キロ、地球3周分の長さに達するとも言われているそうです。

実際に地下を歩いてみて、すでに東京の地下の多くは、「満タン」の状態にあるのだと実感しました。

「見取り図」がない! 「図面」に間違いも

さらに、無電柱化を阻んでいるのが、「図面」の問題だといいます。「満タン」の地下に電線などを通すには、管やケーブルの網の目をぬうように、設置する必要があります。

しかし、その「全体の見取り図」を誰も持っていないのです。


ガス管はガス会社、水道管は自治体、電線は電力会社といったように、設備の管理者がそれぞれ分かれているためです。作業では、それぞれの図面を重ね合わせながら通す場所を確認する必要があり、大きな手間になっているそうです。

虎ノ門ヒルズ駅の現場を取材すると、さらに難しい問題も起きていました。担当者は図面が間違っていることも多いと指摘します。

 

「この管は、図面に描かれていた位置よりも、実際は20センチほど下にあったんです。実際の位置が違うと、工事に支障が出ます。この管を埋めた業者と協議して、図面どおりの位置に戻したところなんです」

 

図面と実際の位置が違うなんて、そんなことがあるんですか!

取材をした別の建設団体の関係者からは、さらに衝撃的な発言も。

 

「地図にある位置と実際の位置が違うことって多いんですよ。そのせいで水道管を傷つけてしまったりする事故も起きているんです」

 

この関係者に聞くと、去年1年だけでも、図面が間違っていたことが原因で水道管や電力ケーブルを損傷や切断する事故が、全国で20件ほど発生しています。周辺の地域で、断水や停電が起きてしまった事例もありました。

図面が間違っているだけでなく、どの図面にも載っていない、管理者も分からない管が埋まっていることもあるそうです。こうした管は、「不明管」と呼ばれ、勝手に撤去することもできず、扱いが非常に難しいといいます。

新たな技術で「無電柱化」を加速化

地下の「図面」を、新たな技術を使って作ろうという動きも始まっています。特殊な車で日本全国の道路を走り、地上から地中をレーダーで探査する取り組みです。

 

地下空間の測量を行い、その情報を、AIで分析。ガス管、水道管、通信ケーブル、その他の構造物などを判別し、それぞれの位置や形状も正確に解析して、3Dのマップにしようというのです。

 

地質調査会社と電機メーカーがタッグを組んだ、大規模なプロジェクト。来月から、実証実験が始まろうとしています。

“無電柱大国” に変われるか?

取材をしてみると、無電柱化がなかなか進まないワケが、いろいろと分かってきました。

しかし災害が起こるたびに、私たちの生活に支障を及ぼしているのですから、できないワケばかり並べず、今こそ本格的に進めていく必要があると感じました。

無電柱化の問題、これからも取材を続けていきたいと思います。」

 

 

 

 「カネ」を積めば管やケーブルの問題は解消するのか。

 「カネ」を積めば地下の図面が手に入るのか。「不明管」を洗い出せるのか。

 「カネ」の問題のみならず、権利関係や技術的困難など、様々な問題がある。

 三橋は平成26年の都知事選にあたり、

「公共事業で防災対策、インフラのメンテナンス、東京五輪に向けた整備を」
 と訴えている主要候補が、田母神俊雄ただ一人というのは恐ろしい限りです。別に、「公共事業」以外の手段で防災対策、老朽インフラのメンテナンス、東京五輪の準備ができるというならば、それでも構いませんが、そんな魔法はこの世に存在しないのです。

と述べたが(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11759497219.html)、「カネ」もまた魔法ではないと思うのである。

 

 

 

 三橋が言うところの無電柱化の「需要」は、政府も国会も把握している。

 平成28年には「無電柱化の推進に関する法律」が制定されている(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=428AC1000000112)。

 国土交通省の道路に関する「主な施策」の中に「無電柱化の推進」が挙げられている(https://www.mlit.go.jp/road/sisaku_index.html)。

 そもそも、政府は、昭和61年度から無電柱化に取り組んでいた(https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_09.html)。

 長年にわたり、対象地域を広げつつ、計画、ガイドラインが策定されてきた。

 にもかかわらず、電柱は増え続けたhttps://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_13_03.html)。

 

 

 

https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/

 

 

 

 なぜ電柱は増え続けたのか。

 地下の事情の困難性があるにしても、それは主として大都市圏の問題である(大都市こそ電柱が多く、無電柱化を進める上で大都市の問題が大きいのではないかとは思うが)。

  地方であればあるほどそういう障害は少なくなるはずだが、実は無電柱化率は東京都が最も高く、「大都市部で比較的整備が進んでいる」状況にある(https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_13_02.html)。

 三橋が言うように、「カネの問題」の重大性は否定できない。「カネ」がない地方では無電柱化が進まないという面はあると思う(田舎であればあるほど無電柱化の必要性自体が低下し、費用対効果を失しそうな気はするが。)。

 無電柱化は、1km実施するのに5億3000万円かかり、これは電柱の場合の約20倍にもなる(https://newswitch.jp/p/14079)。

 無電柱化の費用の内訳は、1kmにつき「電力事業者など電線管理者の負担が1億8000万円、地方公共団体や国の負担が3億5000万円」となるとのことである(同上)。

 ここまで価格差があると、無電柱化が進まないのも仕方ないように思える。

 三橋は、「もちろん、400兆円規模ともいわれる全国の無電柱化、電線地中化事業について、短期で実現することはできません。政府が、例えば10年以内に無電柱化を完了させると宣言し、計画を立て、予算をコミットメントするのです。」という。

 単純に考えて、400兆円を10年で割っても1年あたり40兆円である。

 今年度の当初予算は過去最高の101兆4571億円だったが、約4割に相当する規模である(https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/15860.html)。

 ていうか、三橋によると、「「国土強靱化予算」を10年間で200兆円、年間20兆円としています」とのことだが、無電柱化だけで国土強靱化全体の予算の2倍の額になってしまう(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11437894203.html)。

 三橋は、「カネの問題である以上、政府が貨幣発行(=建設国債の発行)を決断すれば、話が終ります。」と、とどのつまり安倍総理大臣の決断の問題とする。

 しかし、いくらなんでも無理のある金額なのではないか。総理の決断1つで何とかなる問題とは思えない。無電柱化にそんなに予算を割いて、他の予算はどうするのか。

 従来の手法だと、三橋のようなふざけた…、非現実的な金額になってしまう。

 だからだと思うが、安倍政権は、3,4年前から、無電柱化の低コスト手法に取り組み、コスト削減のための実証実験を行っているhttps://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_17.html)。 

 また、いくら「コミットメント」で供給能力の拡大を促すといっても、「コミットメント」もまた魔法ではなく、三橋が望むように供給能力が急拡大するかは疑わしい。

 というより、単純に比較できないだろうが、無電柱化に予算規模にして国土強靱化の2倍もの物的・人的資源を投じてしまってよいものなのだろうか。

 それを望むのであれば、外国人労働者の増加も容認すべきだろうし、外資の導入も容認すべきだろう。むしろ推進すべきとさえ言える。

 が、三橋は「移民反対」などとしてそういう政策に反対する(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12428479042.htmlなど)。

 好き勝手な放言のように思える。責任のある言論とは思えない。

 

 

 

 

 

 

 上掲の国交省HPの画像にも映っている通り、横浜市など、各地で無電柱化の取り組みが行われている。

 ググればすぐに見つかるので、気になる人はググってみてほしい。

 例えば、東京都豊島区の巣鴨では、巣鴨地蔵通商店街のアーチが撤去された。無電柱化工事の一環であり、12月に新アーチが設置される予定である(https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201908/CK2019083002000138.html)。

 三橋が大台風に際して薄っぺらな主張をするのを尻目に、無電柱化の取り組みは少しずつ進められている。

 皆の不安に乗じて、三橋のように急進的な主張をする者こそアブないと思う。

 それこそが、「ショック・ドクトリン」の主張である。

 気を付けられたい。

 

 

 

 

 

<18日追記>