【慰安婦問題】日韓合意は「アウト」なのか?【青山繁晴】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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 青山繁晴氏が、先月28日に表明された慰安婦問題日韓合意について、外務省が公表した英語訳を批判している。


「【青山繁晴】慰〇婦合意に至った経緯 日本側責任者「日本が国として慰〇婦を認め賠償してくれたら最後にすると言われたから手を打った!」インサイト2015年12月30日(水)」
https://youtu.be/vead_DyijoM?t=2m44s


青山:(海外の主要メディアで慰安婦問題の誤解が是正されていないことについて)これはですね、皆さん、外務省の、日本の外務省のホームページにアクセスしていただいて、そこに今回の日韓合意について、英文ではどう言っているかということを、ワンクリックで簡単に見ることができます。
  ぜひ見ていただきたいんですけれども、その冒頭に何と書いてあるかというとですね、これが、「The issue of comfort women, with an involvement of the Japanese military authorities」。
  すみません、英語でそのまま読みましたけれども、これで、アウトです。
  なぜかというと、「an involvement of the Japanese military authorities」というのは、岸田外務大臣がおっしゃった、「日本軍の関与の下、こういうことがありました、すみません」っていうことを言われましたよねぇ。
  この「an involvement」っていうのは、これは中学英語だと思いますけど、「involve」って皆さん習いましたよね。「~を含む」と。これが名詞になっているとですね、要するに言い方はやわらげているけれども、今まで韓国などが言ってきたことを全部まとめて要するに日本軍がやりましたと言っているという意味にしかなりません。
  なおかつ、今言いました「comfort women」という英語ですね。片仮名風に言うと「コンフォート・ウーマン」。
  桜井さん、こういう英語がもともとアメリカ・イギリスにあったと思いますか。
  もちろん、全くない。
  これは奇妙な英語なんですけれども、「慰安婦」っていうのはそのまま外務省の官僚が訳しているんですけれども、このおかしな英語によって、もともと、要するに、売春行為が戦争中も戦争でないときもたくさんあったわけですけれども、現在も世界中にありますけれども、特に戦時中は高価な支払いがあったわけです。
  で、それを普通に言えばいいのに、それを「comfort women」という奇妙な英語にしたために、特別なものがあったんだという誤解がもともとあったんですけれども、今回の日韓合意の英訳によって・・・、もう1回言います、外務省が公式に訳した英訳によって、日本軍が、「性の奴隷」にしてたんだということを全部認めたっていうことに、もう既になっています。


 青山氏は海外経験が豊富で、確かチャンネル桜の番組で、自分は当該言語を特に勉強しなくても耳で聞いているうちに理解して話せるようにもなる、みたいなことを言っていたはずだ。
 私の英語力など、青山氏に到底及ばない。
 政治の理解についても、私などは話にならない素人だ。
 そういうことをわかった上で、あえて異論を述べようと思う。

 私の手持ちの山岸勝榮ほか「スーパー・アンカー英和辞典」(学習研究社、1997年)で「involve」を引くと、この言葉の由来が書いてある。
「ラテン語で「包み込む、巻き込む」が原義。元来は文字どおり「(物を)何かに包み込む」の意味で用いられたが、今日では比ゆ的に事件・犯罪などに「(人を)巻き込む」(1)の意味が普通。さらに事件などと関係なく「・・・を必然的に伴う」(2)などの意味でも用いられる。」
とのことだ。
 青山氏が批判している箇所は、「The issue of comfort women, with an involvement of the Japanese military authorities at that time, was a grave affront to the honor and dignity of large numbers of women」であるが、ざっくりと訳すと、「慰安婦問題とは、当時の日本軍の巻き添えになって、多数の女性の名誉や尊厳が著しく傷つけられたというものだ」ということになるのではないか(同辞書の「involve」の訳語に「巻き添えにする」というものがある。)。
 この英語訳は本当に「アウト」なのだろうか。

 慰安婦問題とはいかなる問題だったのか。
 ざっくりと言うと、「(日本軍による)強制連行」によって「(朝鮮人女性が)性奴隷」にされたという歴史捏造だ。
 慰安婦は民間業者が募集していたのだから軍は連行などしていないし、慰安婦には高い給料が支払われていたのだから奴隷でもない。
 河野談話は、強制連行を曖昧にした原稿を書いたのに、河野洋平官房長官が独断で「強制連行を認めたと解してよい」という趣旨の発言をしてしまったため、今に到る大問題になった。
 河野談話に端を発して、慰安婦問題の歴史捏造は国際社会を駆け巡り、国際連合においては1996年にクマラスワミ報告書が、1998年にはマクドゥーガル報告書が人権委員会に提出され、慰安婦が性奴隷扱いされ、これが国際社会の共通認識となったと言ってよいだろう。
 その後、アメリカにおいては2007年に民主党のマイク・ホンダ下院議員が主導してアメリカ下院が対日批難決議を出した。その後、韓国においても同年に国会が同様の決議を出した。ここでも慰安婦は性奴隷扱いだ。

 「強制連行」を表現するのにはどういう英語を用いるのだろうか。
 「強制」と言うためには、国家による権力性とか、有無を言わさず逆らえないとかの意味合いのある言葉が必要になる。
 青山氏はBBCの報道を問題視するが、ではBBCは何と言ったのだろうか。


「Japan and South Korea agree WW2 'comfort women' deal」 BBC2015年12月28日
http://www.bbc.com/news/world-asia-35188135

「Japan and South Korea have agreed to settle the issue of "comfort women" forced to work in Japanese brothels during World War Two, in their first such deal since 1965.」


 「forced to work」である。
 見覚えがないだろうか。
 「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の時に日韓間で揉めた言葉だ。
 これについて岸田文雄外務大臣は、強制労働を意味するものではないという見解を示した(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken2_000004.html)。
 「スーパー・アンカー」によると、強制労働は「forced labor」である(「forced」の用例に書いてある)。
 「forced to work」は合法な徴用で、日韓間で解決済みということだ(http://www.sankei.com/politics/news/150710/plt1507100010-n1.html)。
 国家権力が強制的に私人を動員するときには、「force」が用いられるようだ。
 前述の通り、慰安婦の募集は民間業者が行っていたので、「force」の要素はなく、BBCは慰安婦問題を誤解していると言える。
 だから青山氏はBBCの報道に怒っているのだろう。
 では、本件日韓合意に「force」が使われているのだろうか。
 外務省の公表している英語訳で検索してみてほしい(http://www.mofa.go.jp/a_o/na/kr/page4e_000365.html)。
 使われていないのだ。

 ところで、クマラスワミ報告では、慰安婦問題はどのように表記されているのだろうか。
 おそらくこれだろう。


「Report of the Special Rapporteur on violence against women, its causes and consequences, Ms. Radhika Coomaraswamy, submitted in accordance with Commission on Human Rights resolution 1995/85」
http://www.awf.or.jp/pdf/h0003.pdf 5ページ

「the issue of military sexual slavery in wartime」


 軍性奴隷問題だと表記されている。
 こういう文言も本件日韓合意には入っていない。

 アメリカ下院の対日批難決議では、慰安婦問題はどのように表記されているのだろうか。


「H.Res.121 - A resolution expressing the sense of the House of Representatives that the Government of Japan should formally acknowledge, apologize, and accept historical responsibility in a clear and unequivocal manner for its Imperial Armed Forces' coercion of young women into sexual slavery, known to the world as "comfort women", during its colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II.」
https://www.congress.gov/bill/110th-congress/house-resolution/121/text

「the “comfort women” system of forced military prostitution by the Government of Japan


 慰安婦が軍の制度だと表記されている。
 「forced」が用いられており、強制性が読み取れる。強制労働の「forced labor」の「labor」を「military prostitution」に置き換えたのだろう。
 なお、参考までに、この対日批難決議に勢いづき、在米韓国人が2010年にニュージャージー州パリセイズパーク市に建てた慰安婦記念碑には「abduct」(「連れ去る」「誘拐する」の意)という文言が使われている(水間政憲「ひと目でわかる 日韓・日中歴史の真実」(PHP研究所、2012年)95ページ)。
 こういう文言も本件日韓合意には入っていない。

 私が思うのは、「involvement」には「強制連行」の意味合いはないのではないか。
 「強制連行」も含む漠とした抽象概念かもしれないが、本件日韓合意をもって日本が「強制連行」を認めたというのには無理があると思う。
 今回の合意には、韓国側の発言を含めて「sex slave」は用いられていないのであり、従来、国際社会が認識していたのより穏やかな表現になっているのではないか。
 「involvement」が「アウト」ならば「セーフ」な対案を示すべきだと思うし、その対案は実現可能かも考える必要がある。

 青山氏は外務省が「comfort women」という訳語を使ったことも批判するが、これもいかがなものか。
 長年使われてきた訳語を今さら変える方が問題があると思うし、原語ともズレてしまう。
 しかも、外務官僚にそんな権限があるのだろうか。
 慰安婦問題の本質を明瞭にした訳語を使えというのは、慰安婦問題という問題は存在しないということを慰安婦問題の訳語で示せ、と言っているわけで、無理な要求だ。
 河野談話によって慰安婦問題という問題は存在することになってしまったのだから、外務官僚としてもこれを前提にして訳語を付けざるを得ないだろう。
 それに、「comfort women」という語を使わなかったら、そっちの方が諸外国に「comfort women」についての合意があったことが伝わりにくいのではないか。
 本件日韓合意によって、日本と韓国、そして仲介したアメリカが、「comfort women」について新たな見解を示したところに意味があるのではないか。
 大体、「comfort women」問題の最終解決を謳う本件日韓合意で、「comfort women」の語を使わないことを求めること自体に無理があると思う。
 青山氏の考え方が私には「普通」だとは思えない。
 なお、うろ覚えでソースを示せないのだが、「慰安婦」という言葉自体が慰安婦募集当時にできた新しい言葉で、「売春婦」と明言することはかわいそうだと女性の名誉に配慮して「慰安婦」という婉曲的な新語を使うようになった、という話を聞いたことがある。日本語としても意味がわかりにくい婉曲的表現なのだから、これを忠実に翻訳すると、やはり英米に存在しない新語になって然るべきではないだろうか。既存の明確な英語表現を充てると、かえってニュアンスが違ってきてしまう気はする。

 外務省は翻訳を訂正しろ、という意見も聞かれるところであるが、それはおそらくできないだろう。
 本件日韓合意は合意文書も作成されておらず、条約そのものではないのだが、条約締結においては、合意内容の争いの蒸し返しを防ぐため、第三国の言語で合意文書を作成すると聞いたことがある(2年前の日中首脳会談に際してそういう話題が出ていた。関連記事としてhttp://ameblo.jp/bj24649/entry-11952081498.html)。
 おそらく、アメリカの立会いの下、日韓で英語訳についても合意があったのではないか(韓国外交部のHPを見ても英語訳が見当たらないのは気になるが。http://urx.blue/qpil。韓国も同内容の英語訳を発表していたら、英語訳にも合意があったということになるだろう。)。
 推測でしかなく、根拠はないが、外務省HPで公開されている英語訳は日本単独で作ったものではないと思う。
 もしそうなら、青山氏の言う通りに外務省が既に公表した英語訳を訂正し、慰安婦問題は存在しないことを明確化する訳語を「comfort women」の代わりに使ってしまったら、それこそが慰安婦問題の蒸し返しであり、本件日韓合意はご破算になるのではかろうか。
 それはアメリカの面子を潰すことにもなると思うが、本当にそれでよいのだろうか。私は本件日韓合意にあたってはアメリカは日本寄りだったと思うが、こんなことをしたら次はアメリカは韓国寄りになってしまうかもしれないとも思う。

 青山氏のように、諸外国のメディアの報じ方をもって本件日韓合意を批判する意見がよく見られる。
 しかし、こういう人たちは対案を持っているのか疑問だ。
 海外メディアが一挙に慰安婦問題の真実を語るという一発逆転の妙案など存在するのだろうか。
 国連人権委員会が「性奴隷」を認定し、日本はこれまで約20年も反論してこなかったわけで、国連で「性奴隷」がまかり通っているのに、海外メディアに「性奴隷」を使うのをやめさせることなど不可能ではないか。
 国連の論調を改めることなくして海外メディアの論調を改めることなどできるのだろうか。
 青山氏のような考え方こそが「アウト」なのではないか。

 仮に、わが国が単独で河野談話を撤回し、慰安婦問題は虚構だったと宣言したとしよう。
 それで諸外国のメディアはなるほどと納得して、慰安婦問題についての誤解が解け、報道が是正され、毀損された先人の名誉が回復するのだろうか。
 私はそんなことはあり得ないと思う。
 「加害者が自国に都合の悪い歴史を隠蔽しようとしている。安倍はやはり歴史修正主義者だ。」と思われるだけで、相手にされないだろう。安倍総理大臣は「ウルトラナショナリスト」だというネガティブ・キャンペーンも行われるかもしれない。東アジア情勢が緊張を増す中、日本の立場が悪くなる。
 あくまで河野談話を出し、従軍慰安婦強制連行を認めたのは日本自身だ。国連にも反論してこなかった(http://www.sankei.com/column/news/150729/clm1507290005-n1.html)。
 20年以上、加害者であるという自白をしてきたのに、今さら日本一国で国際世論を覆すのは著しく困難だと思う。既に積み上がった既成事実は重い。特に国連で積み上がった既成事実は海外メディアに大きな影響を及ぼしているのではないか。
 それに、欧米先進国も国際機関も基本的に戦前の日本が悪者であればあるほど都合がいい。
 名誉毀損とは社会的評価の低下だが、国際社会で低下した評価を回復するには、日本一国で慰安婦問題の真実を高らかに宣言したところでそれは叶わず、自己満足に終わるだけだと私は思う。
 有害無益だ(河野談話を出してから数年の段階とか、既成事実があまり積み上がっていない段階で、河野氏本人が撤回するなら、話は違ってくるかもしれない。)。

 慰安婦問題を解決するには、他国の協力があった方がよいと私は考える。
 とりわけ、被害者を僭称する韓国と、第二次世界大戦で敵対したアメリカの協力を得ることは有効だと考える。
 被害者とかつての敵国、ともに慰安婦問題について議会が対日批難決議を出した国。
 この2国を、それこそ「involve」してこそ、国際社会に広まった慰安婦問題の誤解の是正への道が開けるのではないか。
 普通に考えて、慰安婦問題について日韓米で協議すれば、アメリカは韓国側に立ち、河野談話より明確に「強制連行」「性奴隷」が宣言された合意内容になるはずだ。
 しかし、実際の合意内容はそうならなかった。
 むしろ、河野談話で「歴史の真実」として認めていた日本に不利な部分をいくらか撤回した上、「強制連行」も「性奴隷」も盛り込まれなかったhttp://ameblo.jp/bj24649/entry-12115592297.html)。
 安倍総理大臣は今まで「河野談話は見直さない」とし、歴代内閣を踏襲してきたhttp://jp.reuters.com/article/l3n0mb02g-abe-danwa-history-idJPTYEA2D00920140314)。
 しかし、その安倍政権が、河野談話を実質的に修正した。
 私にはそう思えるのだが、どうだろうか。 
 とはいえ、米韓を巻き込んだ合意となれば、米韓の都合にも配慮しないといけない。
 日本側に不満が残る部分があってもやむを得ない。
 河野談話の全てを撤回できたわけではないし、「軍の関与」という紛らわしい表現も残った。
 それでも、日本一国で何もできず、慰安婦問題の歴史捏造が世界中に拡散され続け、先人の名誉が毀損され続けることに比べたら、ましなのではないだろうか。
 本件日韓合意は「歴史の真実」を言った河野談話を修正していると解される。
 しかし、韓国が合意し、アメリカが賛意を示した以上、これは安倍政権が勝手に行った歴史修正ではない。

 慰安婦問題は、日本自らが河野談話という自白をしてしまった争いで、日本に不利な既成事実が積み上がり、基本的にこれを覆して完勝することは望めない
 河野談話よりましな歴史認識はもはや諦めた方がいい。
 はずだったのに、本件日韓合意は河野談話よりましなのである。
 河野談話でも「性奴隷」云々は言っていないので、これは盛り込まずに済むだろうが、「強制連行」も盛り込まずに済んだ。
 仮に、本件日韓合意の歴史認識を採点するにあたり、従軍慰安婦強制連行論の配点が50点、性奴隷論の配点が50点だとしよう。
 安倍政権は、性奴隷論で満点の50点を取り、従軍慰安婦強制連行論で30点を取った。
 本件日韓合意を見て、「安倍さん、50点でもすごいのに、よく80点まで取ってくれた。次に繋がるよ。」と思うか、「20点も失っているじゃないか。安倍は韓国に妥協した売国奴だ。もはや先人の名誉は永久に失われた。」と思うか。
 その差が、本件日韓合意の賛否に繋がってくる一因なのではないだろうか。

 「次に繋がる」と言うのは、これでようやく国連の慰安婦問題の認識を改めるための足掛かりができたのではないかということだ。
 本件日韓合意は日韓間における慰安婦問題の最終的解決であり、「日本政府は,韓国政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える」というものだ。
 一見すると、国連への働きかけはできないようにも思える。
 しかし、国連においてクマラスワミ報告書の訂正を求めることは、慰安婦問題について韓国を非難・批判することにはあたらないだろう。
 私は可能だと思う(今まで反論してこなかった既成事実があるので、そう簡単にはできないのだろうが)。
 国連の慰安婦問題の認識が本件日韓合意並になったその時、諸外国のメディアの報じ方も変わり、「sex slave」の文言は使われなくなり、先人の名誉も回復していくのではなかろうか(「20点」の失点を全て取り返すことはできないかもしれないが。しかしそうだとしても、河野談話を出した日本の自己責任。)。
 希望的観測かもしれないが。

 海外メディアの報道を見ていて気づいたのだが、ソウルの日本大使館前の慰安婦像の写真がよく使われている。
 あの慰安婦像は思った以上に宣伝効果抜群だ。
 本件日韓合意の韓国側の声明に、「韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する。」とある。
 撤去ともなっていないし、努力義務にとどまっているのではあるが、撤去が実現できれば、韓国政府の態度の変化について宣伝効果も大きく、海外メディアの慰安婦問題についての報じ方も変わっていく契機になるのではないかと思う。
 しかし、今のところ進展は見られない。おそらく、韓国政府内部にも従北左派勢力が浸透していて、なかなか進まないのではないか。
 朴大統領の任期中に片付けてほしいところだ。
 朴大統領は北朝鮮寄りの歴史教科書を問題視し、反発必至であるにもかかわらず、歴史教科書の国定化を決断した(http://www.sankei.com/world/news/151027/wor1510270058-n1.htmlhttp://www.sankei.com/column/news/151230/clm1512300004-n1.htmlhttp://www.sankei.com/world/news/151114/wor1511140058-n1.html)。
 朴大統領は、確か、先の大統領選挙においては、候補者の中で最も反北の意識のある人だった(金正日と会見して親北世論に迎合したこともあるが、あれでも他の候補者よりまし)。
 慰安婦像撤去については、反日と反北と、親米と親中と、複雑な板挟み状態のような気がするが、なんとかして反北の決断をしてほしいものだ。

 ところで、本件日韓合意は安全保障に関係ないという人がいる。
 しかし、私は北朝鮮による拉致事件との関係で意味があると思う(通常、「拉致問題」と呼ばれるが、確か青山氏は「拉致事件」と呼ぶことを推奨していたはず。)。
 従来、「日本は朝鮮人を強制連行した。北朝鮮が日本人を拉致してもお互い様だ」などという人がいた(http://matinoakari.net/news/item_56120.html)。
 しかし、本件日韓合意には「強制連行」は盛り込まれておらず、「お互い様」論も成り立たないだろう(元から成り立っていなかった気もするが。)。
 このブログでも何度か述べているが、慰安婦問題を考える時は北朝鮮を視野に入れないといけない
 そうしないと、韓国憎しの感情が高まり、北朝鮮を利してしまう。
 もともと朝鮮人強制連行論という歴史捏造はどこから出てきたのだろうか。
 「連行」自体に強制の意味合いがあり、「強制連行」は同語反復であり、不自然な日本語だ。
 これは、朴慶植という、日韓分断工作を担う朝鮮総連幹部が発端だ(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11949937713.html)。 
 慰安婦問題で騒ぎ立てて注目されている韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は従北左派と目されている。
 慰安婦問題の影には北朝鮮ありだ。
 本件日韓合意では「強制連行」が盛り込まれず、日韓は慰安婦問題で争わないと合意した。
 これは北朝鮮による日韓分断工作にはもう乗せられないという日韓の意思表示でもあり、対北朝鮮で意味があるのではないか。
 日韓が連携しようにも、日本側にも問題があって、それはやはり朝鮮総連だ。従来、日本政府は朝鮮総連を放任してきた(http://www.sankei.com/politics/news/150720/plt1507200021-n7.html)。そんな日本を韓国は信用できなかった。
 しかし、安倍政権は、朝鮮総連の許宗萬議長の自宅に家宅捜索に入るなど、朝鮮総連との対決姿勢を見せている(http://www.sankei.com/world/news/150328/wor1503280008-n1.html 昨年3月だから、日韓合意に向けての交渉が水面下で行われていた時期。交渉の中心人物は谷内正太郎国家安全保障局長。朝鮮総連の話題も出たのではと勝手に想像。http://www.sankei.com/politics/news/151231/plt1512310003-n4.html)。
 安倍政権は、韓国と連携して北朝鮮に対峙するべく、本件日韓合意に臨んだのではないか(もちろん東シナ海情勢も大いに関係していると思うが)。
 そして、拉致事件解決をも視野に入れているのではないか。
 ちなみに、日韓断交論者が本件日韓合意に反対している。彼らは拉致被害者奪還も主張している。しかし、彼らの言う通りに日韓断交をしてしまうと、拉致被害者奪還が難しくなる。
 日韓断交論者から見れば、日韓が歩み寄る本件日韓合意は面白くないだろうが、彼らが拉致事件を真面目に考えているとも思えず、彼らの本件日韓合意批判には聞く価値がないと思っている。

 本件日韓合意の内容は、従軍慰安婦強制連行論・性奴隷論に立っていないことは明らかだが、やはり文言が曖昧で誤解を招くおそれがある部分があるという批判は当たっているところがあると思う。
 だからこそ、政権中枢に二度と河野洋平のような売国奴を置いてはならないのだ。
 こういう奴が内閣総理大臣や官房長官や外務大臣にでもなれば、曖昧な文言をわが国に不利に解釈して後世に禍根を残す。
 かかる地位に立つ者が、本件日韓合意の「軍の関与」は強制連行を意味するものと解してよいと公式に発言してしまったら、その時が本当の「アウト」だ。
 だからこそ、安倍政権が盤石である必要があると考える。安倍政権であればそういう発言はしない。
 ちょうどこの記事を書いている時、チャンネル桜が安倍政権不支持宣言を出したが、バカげていると思う(https://www.youtube.com/watch?v=EFl5CDXjQy8 動画は見ていない)。
 まさにチャンネル錯乱だ(http://ameblo.jp/scorpionsufomsg/entry-12115401989.html)。
 やはり河野談合の公表を無視ないし著しく軽視する人は信用できない(http://ameblo.jp/bj24649/entry-12111845946.html)。
 1つ気になるのは、水島総氏と安倍総理大臣のパイプが切れているのではないかということだ。
 かつて水島氏は安倍総理大臣と会食して「竹中平蔵はやめとけ」などと進言したということを言っていたが、この頃はどうなのだろうか。
 藤井聡内閣官房参与とのつき合いはあるので、安倍政権とのパイプは一応つながっているのだろうが。

 話題になっているところを見かけないが、第一次安倍内閣は、河野談話を裏付ける証拠はなかったと閣議決定している(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11827954808.html)。


「反日メディアが教えてくれない【安倍総理の本音】」 YouTube2013年3月17日
http://youtu.be/t9seTHjQPAk?t=2m21s


「 河野談話についてはですね、これは閣議決定されたものではありません。(第一次)安倍政権において、それを証明する事実はなかったということは、閣議決定しています。
 そもそも、朝日新聞の、星さんの朝日新聞の、誤報による、吉田清治という、まぁ、詐欺師のような男が作った本が、まるで事実かのように日本中に伝わっていったことで、この問題がどんどん大きくなっていきました。その中で果たして、人を人さらいのように連れてきた事実があったかどうかということについては、それは証明されていない、ということを閣議決定しています。
 ただ、そのことが、内外にしっかりと伝わっていないということをどう対応していくか。ただこれも、対応の仕方によっては、真実如何とは別に、残念ながら外交問題になってしまうんですよ。ですから新聞社の皆さんにもそこは慎重になってもらいたいと思いますよ。そこで、我々は、どうこれを知らしめていくかということについては、有識者の皆様の知恵も借りながら、考えていくべきだろうと思っています。


 安倍総理大臣は、慰安婦問題解決に向けて強い意欲を見せ、第一次安倍内閣でこの閣議決定をし、第二次安倍内閣で河野談合の公表を行った。
 安倍総理大臣は、慰安婦問題解決に向けて着実に歩みを進めてきた。
 そして本件日韓合意では、韓国とアメリカを巻き込みながら、合意内容に「強制連行」を入れずに済ませ、実質上、河野談話を修正したと言えるのではないか。
 本件日韓合意は「アウト」なのか。はたまた安倍政権は「アウト」なのか。
 そういう人たちの言う通りにしたときこそ、外交問題が生じてしまうのではないか(http://yumikw.blog.fc2.com/blog-entry-110.html参照)。
 私は素人であり、確たることも言えないが、今のところ、「アウト」だとは思えない。


<追記>


「櫻井よしこ「日韓合意の安倍総理の決断で世界の反日メディアが日本側に立った!」「パククネは韓国の歴史をおかしいと思っている!」」 YouTube2016年1月7日
https://www.youtube.com/watch?v=RJdHTrgybOg


・本件日韓合意には日韓双方に不満が残っている。日韓双方の歴史問題に意識の高い人には不満がある。
・外交的には成功。アメリカを含め、日韓関係が悪いのは日本の責任だというのが国際社会の主流の見方だった。しかし、本件日韓合意によって、国際世論は韓国の責任を問い始めた。
・本件日韓合意を本当の成功にするためには、いくつかしなければならないことがある。民間人は、今まで以上に、慰安婦問題の真実を発信しなければならない。安倍政権も、首相直轄の(外務省の外に)情報発信対策本部を設置して情報発信をする必要がある。
・10億円を拠出しても慰安婦像撤去が実現する可能性は低い。慰安婦像撤去までは10億円を出すべきではない。韓国は4月に(国会議員)選挙がある。朴大統領は、安倍総理大臣からおわびの言葉と10億円を得たことで支持を獲得したい。4月の選挙後、日本としては慰安婦像撤去をきちんと求めていくことが重要だ。
・朴大統領のすべきことは挺対協の無理な要求に屈することではない。朴大統領は、歴史教科書国定化を決めたことに見られるように、韓国の歴史観はおかしいと思い、これを正常化させたいという気持ちが窺える。本件日韓合意も、日韓外交を正常化させたい、そして北朝鮮の脅威に対処したいと考えているだろう。そうなるように、日本としても、韓国に働きかけていかなければならない。


 櫻井よしこ氏は、本件日韓合意では、慰安婦問題の歴史認識が曖昧にされているとする。韓国側からすれば「強制連行」を明確に認定していないのが不満だし、日本側からすればこれを明確に否認していないのが不満だということだ。
 それでも、私としては、「強制連行」を認める趣旨となった河野談話をそのままにしておくより、「強制連行」が曖昧な本件日韓合意の方がましだと思う。曖昧を「引き分け」とするならば、「日本不利」から「引き分け」に持ち込めたことは前進と捉えてよいと思う。
 これから先、本件日韓合意を本当の成功とするために、官民挙げての情報発信が必要だというのは同感だ。本件日韓合意によって、国際社会がようやく韓国の日本非難に疑問を持ち始めた。今こそ、情報発信が重要なのだと思う。「先人の名誉が失われた」と言って本件日韓合意の破棄を求めている人たちは、本件日韓合意を誤解して、勝手に諦めてしまっているのだと思う。
 慰安婦像撤去については、今すぐに撤去して反日世論に火が付いて4月の国政選挙で与党が負け、従北左派野党が議席を増やしても困る。4月までは撤去は期待できないかもしれない。それ以後が重要だ。
 朴大統領の本件日韓合意に臨む姿勢を考える時、歴史教科書国定化に着目するのは同感だ。朴大統領は反北の政策は決断できる。しかし、慰安婦問題で妥協するのは、反北であると同時に親日の要素が入る。反日世論に気をつけないといけないし、私としては気になるのが親日反民族行為真相究明特別法(親日反民族法)だ。呉善花氏はこの法律は「朴槿惠潰しが狙い」だと指摘する(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11829465836.html)。