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◆◆◆ 出版社による紹介 ◆◆◆
※ 文庫版のもの
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_4094024778
<内容>
あれほど北朝鮮にひどい目にあってきた韓国はなぜ「反共」を捨て「親北朝鮮」に転換し、「反日」を強化しているのか。すっかり左翼民族主義国家になってしまった韓国の危うい実態。日米と離反してまでも北朝鮮におもねり「親北統一」に突き進む韓国は金正日の思うつぼである。このままでは韓国は北朝鮮に取り込まれかねない。日本はこの暴走する韓国といかに付き合うべきか。
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<著者>
呉/善花
1956年韓国・済州島生まれ。韓国女子軍隊経験をもつ。83年に来日、大東文化大学(英語学専攻)の留学生となる。その後、東京外国語大学大学院修士課程(北米地域研究)修了。評論家。拓殖大学国際開発学部教授。著書に『攘夷の韓国開国の日本』(文芸春秋、第五回山本七平賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※ アマゾンに掲載されているもの
http://p.tl/l_fa
◆◆◆ 私の感想等 ◆◆◆
「新潮45」に、倉山満先生の論考が掲載されていた。
「嘘だらけの日韓近現代史」(扶桑社)と「歴史問題は解決しない」(PHP研究所)を架橋する内容だった。
両書を持っているため、買う必要はないと思い、買い控えた。
倉山先生の論考の中で、呉善花教授の著書が引用されていた。
そこで、この機会に、未読の呉教授の著書を読んでみようと思った。
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fecx.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51ciyEyHxzL._SL160_.jpg)
平成14年(2002年)の日韓共催ワールドカップで、私はちょっとした疑問を持っていた。
なぜ韓国人男性は、北朝鮮の美女軍団に熱狂するのだろう、と。
北朝鮮は韓国の敵国である。
いくら同じ民族だからと言って、浮かれすぎなのではないか。
政治に関心があり、韓国批判をしている保守系国民は、韓国史については、日韓併合あたりから朴正煕政権あたりまでと、直近の李明博政権と朴槿惠政権に詳しい人が多いと思う。
しかし、その間が抜けている人も多いのではないか。
本書は、盧武鉉政権とその少し前の政権を取り扱うものである。
本書を読むと、なぜ韓国人男性が美女軍団に熱狂したのかもわかる。
本書は、現在の朴政権を理解するのにも役立つ。朴大統領の名前も少し出てくる(当時は野党ハンナラ党代表)。
本書を読んだ後、現在救命活動が行われているセウォル号転覆事故を見ると、痛ましいとは思うが、こういう事件は反日を緩和する1つの因子になるのではないかと思える。
本書を読んでいて、韓国の北朝鮮に対する見方に衝撃をおぼえた。
日本と韓国とでは、北朝鮮に対する見方が全く違うのだ。
特に金正日総書記の見方が日本と全く違う。
日本人にとっては、金正日は「悪いおっさん」という印象だろう。
しかし、韓国人にとっては、「民族の威厳を備えた大指導者(朝鮮的大人の風格)」なのである。
ここがわからないと、金大中・盧武鉉政権の太陽政策がわからない。
冷戦中は、北朝鮮の情報がなく、韓国人は北朝鮮は悪の権化だと教育されたのだが、実際に情報が明らかになってくると、北朝鮮には朝鮮民族の憧れる指導者がいたことが明らかになったのである。このギャップが甚だ大きい。美女軍団に熱狂するのも、このギャップによるところが大きい。
それにしても驚いたのが、韓国人は、北朝鮮は同じ民族の国である韓国に核攻撃はしないと考えているところである。
朝鮮戦争は何だったんだろうか、と日本人なら思うが、韓国人によれば、朝鮮戦争は米ソのせいで戦わされたに過ぎないものとなっている。
金正恩は、韓国人から見てどうなんだろうか。金正日ほどの風格も実績もないように思うが。
韓国は基本的に親北・反日・反米である。
では、韓国が北朝鮮との統一を願っているのかといえば、そうでもないのである。
このあたりが屈折していてややこしい。
表向きは、「南北統一すれば人口7000万人の超大国が東北アジアに出現する」などと言い、南北統一を主張する。
盧政権は、実際に、南北統一に向けた政策を実行していた。
しかし、その裏側で、南北統一した場合、北朝鮮の貧民を受け入れられるだけの力が韓国にはなく、南北統一は拒絶の対象でもある。
北朝鮮は同じ民族の国だ、領導者金正日も立派だ、南北統一は夢だ、でも今はやりたくない、と言ったところか。
金正日が立派な人なら、豊かな国づくりにも成功しているはずで、経済格差を理由とした南北統一の拒絶はおかしいのではないかと思うが、韓国人にそういう理屈は通用しない。
それどころか、韓国の約半数の高校が採用している教科書が、朴正煕のセマウル運動を貶めて、金日成の千里馬運動を賞賛しているのである。どちらの経済政策が国に利益をもたらしたかと言えば、前者であるのに。ちなみに、漢江の奇跡は、朴正煕政権の時のものである。
韓国が複雑なのは、市場主義経済に絶望しているところである。
富裕層と貧困層の格差は拡大し続け、クレジットカード・ショックも起きた。
優秀な学生は外国に働き口を求めて人材が流出する。
そういう経済的な不満に、マルクス主義が入り込んでくる。
しかし、皮肉なのは、韓国への投資を妨げているのもまた、北朝鮮なのである。
北朝鮮の軍事的脅威が強いからこそ、韓国には安心して投資できないのだ。
ところが、前述のように、韓国人は北朝鮮が韓国を核攻撃するとは思っておらず、外国の投資家と認識のギャップがある。
市場主義経済にもうんざり、北朝鮮には核武装をも実現した偉大な指導者がいる。
そういう心理から、左翼民族主義が台頭してくる。
盧武鉉・ウリ党は、左翼民族主義を標榜する(韓国では自由主義左派と呼ばれている)。
当時、私は、なんで李会昌は大統領選挙で盧武鉉に負けたのだろうと不思議だったが、盧の方が、左翼民族主義を強く打ち出し、また、彼には立身出世の物語などがあり、エリートの李よりも人気があったとのことである。盧は若い世代に人気だったことも注意すべきである。韓国では、日本以上にテレビの持つ影響力が強く、そのテレビが左翼民族主義を煽っている。
朝鮮民族によって南北統一をしたい、だけどできない、北朝鮮が崩壊しては困るから経済支援をしよう、ということで、太陽政策が支持される。
なお、太陽政策は、李明博政権で転換された。
韓国は「恨の文化」である。
他民族の支配を受けるという艱難辛苦に耐えてきたという民族性である。
韓国人は、日本が韓国を支配した「日帝三十六年」という「過去の清算」に拘る。
韓国人は、支配した他国を責めるが、支配された自国のふがいなさは考えない。
韓国人は、「自己内省」をしない。
しかし、そんな韓国人も、自己内省せざるを得ない場面に直面したことがある。
戦後、韓国人が建てたデパートが崩壊し、橋が崩落するのである。
その一方、戦前に日本が建てた建物や橋は残っている。
そして、通貨危機に陥った。
そういう現実を目の当たりにし、国家の運営がうまくいかないのは自分たちに問題があるのではないかという、自己内省の気運が高まってきた。
この頃から、韓国の反日の気運は縮小していった。
盧武鉉大統領も、自己内省を打ち出していた。
ところが、盧大統領が自己内省としてやったことは、旧世代批判が必要だとして、親日派・反共派を一掃することだった。
親日反民族行為真相究明特別法(親日反民族法)が制定されたのは典型である。
この法律は、ハンナラ党潰し、とりわけ朴槿惠潰しが狙いだった。
朴は、北朝鮮に出向いて金正日と会見し、親北世論に迎合することになる。
結局、韓国は反日に回帰していく。
セウォル号転覆事故は、大変な事故ではあるが、自己内省を促す1つのきっかけになるかもしれない。
いくら日本製の船とはいえ、老朽化した船を酷使するのは韓国人の側に問題がある。
その上、事故後の船員の対応も最悪だし、そもそも事故前に非常事態に備えた訓練をしていなかったとも聞く。
日本のせいにして済ますことはできないだろう。
朴大統領に対する批判も寄せられており、おそらく支持率低下を招いているだろう。
これで韓国は自己内省に向かう・・・、のかなぁ。
本書が取り扱っているのは約10年前の韓国である。
当時はまだ韓流ブームが継続しており、韓国批判をすると「差別主義者」のレッテルが貼られた時代だ(参考までに、在特会が結成されたのは、本書発売の翌年である2006年)。
今でこそ韓国批判がブームだが、当時としては珍しい本だったのではなかろうか。
呉教授は、世論に迎合せず、しっかりと論陣を張っている。
本書は、韓国人を理解し、北朝鮮といかに対峙すべきかを考える上で有益であり、今も大いに読む価値がある。