【慰安婦問題】アメリカが圧力をかけたのは日本か韓国か【日韓合意】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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そういう想いのブログです。

 先月28日、岸田文雄外務大臣は、尹炳世韓国外交部長官と日韓外相会談を行い、直後の共同記者発表において、慰安婦問題についての日韓合意を発表した(http://urx2.nu/qi5s)。
 本件日韓合意について賛否両論が激しく入り乱れている。
 私もこれについて総論的な記事を書こうとしているのだが、なかなかまとまらない。
 なので、先行的に、この論点だけでも記事を書くことにした。

 賛成派と反対派を分かつ1つの要因が、「アメリカの圧力」だ。
 合意そのものの内容ももちろん賛否を分けるのだが、合意の背景にあるアメリカの圧力という要素が賛否に大きく影響している
 「アメリカは日本に圧力をかけた」という説から、「アメリカは韓国に圧力をかけた」という説もある。
 情報が錯綜している。
 アメリカは日本に圧力をかけたとすれば否定論になりやすい。
 アメリカは韓国に圧力をかけたとすれば賛成論になりやすい。

 アメリカは日本に圧力をかけたとし、本件日韓合意について否定論に立つ例として、藤井厳喜氏と西村幸祐氏がいる。
 このブログでも何度も引用している通り、私はこの二人を信頼している。
 藤井氏と西村氏はこのように言っている。


「藤井厳喜『慰安婦問題再燃:日韓に紛争を輸出するアメリカの大罪①』AJER2015.12.31」 YouTube2015年12月30日
https://www.youtube.com/watch?v=v6YOKhEMWHM


西村幸祐ツイッター 2015年1月5日
https://twitter.com/kohyu1952/status/684223252558827520


 アメリカが日本に圧力をかけた証拠として、藤井氏は、ケリー国務長官とライス補佐官が本件日韓合意について速やかに支持を表明したことと、オバマ大統領およびその周辺が韓国の言い分を信じていることを挙げている。
 根拠となるのはおそらく以下の2つの報道だ。


「【「慰安婦」日韓合意】 妥結促してきた米国「蒸し返しなし」に期待感 独豪など歓迎声明続々」産経ニュース2015年12月29日
http://www.sankei.com/world/news/151229/wor1512290061-n1.html

「 【ワシントン=青木伸行、ミュンヘン=宮下日出男】日韓両政府による慰安婦問題での合意を受け、ケリー米国務長官は28日、「米国の最も重要な2つの同盟国の関係改善に資する」と合意を歓迎する声明を発表した。オバマ米政権は安全保障上の必要性からも日韓の妥結を強く促してきた。ドイツやオーストラリアも合意を歓迎し支持する声明を相次ぎ発表した。

 ケリー氏は、合意が「最終的かつ不可逆的」なものであることを強調し、再び蒸し返されないことに期待感をにじませた。「日韓の指導者が合意に達した勇気と先見を称賛する」とし、「国際社会に合意を支持するよう求める」と訴えた。

 ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)も「合意の完全な履行」を支持するとの声明を出したほか、米共和党の重鎮マケイン上院議員も声明で、合意が「日韓関係の新時代到来を告げるものになることを切に願う」と表明した。」


「オバマ米大統領、韓国で慰安婦に言及 「著しい人権侵害」」 AFP2014年4月25日
http://www.afpbb.com/articles/-/3013624

「【4月25日 AFP】日本に続き韓国を訪問中のバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は25日、慰安婦問題について「著しい人権侵害」との認識を示した。

 オバマ大統領はソウル(Seoul)での記者会見で、第2次世界大戦中の旧日本軍の慰安婦制度について「著しく重大な人権侵害だ。そうした女性たちの人権が戦時中の出来事であっても衝撃的な形で侵された」と述べ、「元慰安婦たちの話を聞き、彼女たちを尊重すべきである。そして事実についての正確かつ明確な説明があるべきだ」と語った。

 さらにオバマ大統領は、慰安婦問題については安倍晋三(Shinzo Abe)首相も重要性を認識しているはずだと述べ、さらに、「日本の人々も、過去とは誠実かつ公正に受け止められなければならないものだということを認識していると思う」と付け加えた。(c)AFP」


 他方、アメリカは韓国に圧力をかけたという見方がある。
 たとえば、菅沼光弘氏だ。


「慰安婦問題 米、朴政権に圧力か 菅沼氏「ゴネるなら米は見捨てる可能性」」 zakzak2015年12月28日
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151228/frn1512281200010-n2.htm

「 朝鮮半島情勢に精通する元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏は「米国の韓国に対する圧力が最大の要素だろう」といい、続けた。

 「米国の軍事・情報当局は現在、北朝鮮の核開発が『小型化など、相当進んだ』とみて緊迫化している。これは韓国の軍事的脅威だが、朴政権は慰安婦問題に固執し、自国の安全保障にとって重要な日本を軽視している。日米同盟を傷つける言動を続けている。シャーマン米国務次官が今年2月、朴政権の対日政策を『このような挑発は進展ではなく機能停止をもたらす』と批判した。日米関係が極めて良好ななかで、オバマ政権は『韓国はいい加減にしろ』と思っている。韓国がゴネるようだと、米国は見捨てかねない」」


 長谷川幸洋氏は、アメリカは日韓両国に圧力をかけたという見方だ。
 とにかく、アメリカは韓国に圧力をかけたということだ。


長谷川幸洋 「長谷川幸洋「ニュースの深層」 激動の朝鮮半島!北の脅威は日本に「対韓外交勝利」をもたらす」 現代ビジネス2016年1月8日
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47299?page=3

なぜ韓国は今回、合意に動いたのか。韓国は日本との関係を改善しないわけにはいかなかったのだ。理由は3つ。まず北朝鮮の脅威、次に米国の圧力、それから経済の立て直しである。」

米国は北朝鮮の脅威に対抗するために、中国に接近した韓国を日米側に呼び戻したかった。それには「喉に刺さった骨」状態の慰安婦問題を解決しなければならない。だから米国はこれまで何度も日本と韓国に問題解決を働きかけてきた。


 菅沼氏や長谷川氏の記事を読んでも、何を根拠にアメリカが韓国に圧力をかけたと言えるのかがわからない。
 しかし、産経ニュースを検索していたら、昨年5月のこんな記事が出てきた。


「ケリー米長官、朴大統領に異例の圧力 韓国メディアはなお日本に責任転嫁…」 産経ニュース2015年5月20日
http://www.sankei.com/world/news/150520/wor1505200011-n1.html

「 ケリー米国務長官が、韓国に異例の圧力をかけた。訪問中のソウルで、朴槿恵(パク・クネ)大統領や、尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と会談し、冷え込んだ日韓関係の改善を強く促したのだ。ただ、韓国側は「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録阻止に動くなど、「反日」攻勢を緩めておらず、今後、同盟国・米国の逆鱗に触れかねない状況だ。(夕刊フジ)

 「日韓両国が敏感な歴史問題に自制心をもって対処し、直接対話を継続しつつ、互いが受け入れられる解決策を見いだすことを望む」

 ケリー氏は18日、尹氏との米韓外相会談後、共同記者会見でこう語った。日韓双方に関係改善を促した形だが、発言の場所や経緯を考えると、事実上、韓国に「外交圧力」をかけたといえる。

 オバマ米大統領は昨年3月、日米韓首脳会談を主催して、日韓両国の歩み寄りを迫ったが、朴氏率いる韓国の「反日」姿勢は変わらなかった。最近では、米国が称賛した安倍晋三首相の米上下両院合同会議での演説と、「明治日本の産業革命遺産」を世界文化遺産に推薦しようとする日本政府の行動に、韓国国会が難クセといえる糾弾・非難決議を採択している。」

http://www.sankei.com/world/news/150520/wor1505200011-n2.html

「 さらに、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発を進めるなか、韓国が、中国の反発を恐れて、米国が望む弾道ミサイル迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)の配備を躊躇(ちゅうちょ)していることも許せないとみられる。

 ただ、韓国に外交圧力が効いたかは疑問だ。

 韓国・聯合ニュース(日本語版)は18日、ケリー氏の発言について、「問題解決のためには日本の努力が必要であることをあらためて表明したと受け止められる」との記事を配信するなど、ノー天気に日本に責任転嫁している。

 こうしたなか、日本政府も世界遺産問題で反撃に転じた。ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会委員国に、副大臣や政務官を事実上の「首相特使」として派遣し、世界遺産登録支持の働きかけを強めているのだ。韓国や中国の歴史問題を絡めた策謀を阻止する狙いという。

 韓国情勢に精通するジャーナリストの室谷克実氏は「ケリー氏が外交圧力をかけても、韓国の反日攻勢は簡単には収まらないだろう。日本としては冷静に証拠を示して、諸外国に事実を訴えていくしかない。首相特使の派遣はいいアイデアだ。安倍首相の就任2年半で、オバマ政権も日韓関係の真実がやっと分かってきた。最後には正義が勝つ」と語っている。」


 まさにケリー国務長官が、朴槿惠大統領と尹炳世外相に対し、歴史問題で反日に突っ走るのを自制せよと、圧力をかけたのだ。
 これを知っているかどうかで本件日韓合意の見方がかなり変わるのではないか。
 この約一カ月後の記事だが、こんなものがあった。


「【政治デスクノート】 理解不能、朴大統領「慰安婦問題は最終段階」発言 「告げ口外交」も終了する?」 産経ニュース2015年6月26日
http://www.sankei.com/world/news/150626/wor1506260004-n1.html

「 韓国の朴槿恵大統領が慰安婦問題をめぐる日本との協議について「かなりの進展があり、今は最終段階にある」と述べたことが、いまも波紋を広げている。同問題に関しては両国間で協議が行われているが、日本側は「現状では具体的な進展はない」(政府筋)と判断しているためだ。それだけに、発言の真意をめぐってさまざまな憶測もささやかれている。

 朴大統領の爆弾発言が飛び出したのは、今月11日に行われた米紙ワシントン・ポストのインタビューでのこと。詳しい内容については「水面下の協議だ」として明らかにしなかったが、驚いたのは日本政府の関係者らだ。

 慰安婦問題については2014年4月から両国間の外務省局長級協議の中で議論が開始。11日には8回目の協議を行ったが、これまでの協議を含め、日本側は「最終段階」どころか「進展があった」とさえ認識していなかったためだ。

 実際、菅義偉官房長官は記者会見で朴大統領発言について「外交上のやりとりはこれまでも明らかにしていないし、趣旨が明らかではないのでコメントは控えたい」と述べるにとどめたが、同時に慰安婦問題は1965年の日韓請求権協定に基づき「完全に決着済み」との日本政府の立場は変わっていないとも説明。政府関係者の1人が「かなりの進展なんてしていないのが実情だ。どうしてあのような発言が飛び出したのか理解不能だ」と漏らせば、外務省幹部も「最終的段階かと言われればそうではないし、理解こそ深まれ溝は埋まっていない」と否定した。」

http://www.sankei.com/world/news/150626/wor1506260004-n2.html

「 それだけに、永田町などでは「実は日韓両政府が外務省を超えたハイレベルの協議を水面下で行っており、そこでまとまりに欠けているのではないか」との見方も出たが、韓国の外務省報道官は定例会見で「そのような事実はない」と否定。そのうえで、慰安婦問題について「密度ある協議が行われ、進展もあった」とややトーンダウンしたものの、大統領発言を追認したのだ。

 いったい、朴大統領の意図は何なのか。自民党外交族の1人は「日韓関係の悪化を懸念している米国に対して、『韓国は日韓関係改善のために努力をしている』とアピールしたということだ」と指摘。さらに「ここに来て朴政権は反日姿勢を急激に転換させ始めているが、なぜ急に外交方針を変えるのかという批判や指摘は出るはずで、それを抑える意味でもあのような発言を行ったのでは」と見る。」

http://www.sankei.com/world/news/150626/wor1506260004-n3.html

「 確かに、韓国政府の対日外交はここに来て大きく変化したと言っても過言ではない。日韓国交正常化50周年に合わせて約4年ぶりに来日した尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は21日に行われた岸田文雄外相との外相会談で、これまで猛反発してきた「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産への登録について、韓国の推薦案件とともに登録されるよう日韓両国が協力していくことで一致。「加害者と被害者という歴史的立場は1000年たっても変わらない」などと反日姿勢を取り続けきた朴大統領も22日、ソウル市内で行われた日本大使館主催の記念式典に出席して「今年を新たな未来を切り開いていく元年にすべきだ」などと祝辞を披露したのだ。さらに、日韓議員連盟の額賀福志郎会長と会談した際には、これまでかたくなに拒んできた安倍晋三首相との首脳会談についても意欲を見せたという。

 日韓関係の重要性は誰しも認めるところだろうが、そのためにはさまざまなレベルやルートで直接対話を重ねていくことが必要だ。果たして、相互不信しか招かない朴政権の「告げ口外交」は終了したのだろうか? 

(政治部編集委員 新井好典)」


 ケリー長官が韓国に対してかけた圧力によって、慰安婦問題についての日韓の「水面下の協議」が進展したのではなかろうか。
 「水面下の協議」にあたっていた中心人物は、谷内正太郎国家安全保障局長だ。
 安倍政権が日本版NSCとして発足させたこの組織、そして情報を漏らさないための特定秘密保護法が、水面下の協議を可能にしたのではないかと思われる。


「【検証「慰安婦」日韓合意】 「対中」見据え賭けに出た安倍首相「約束破ったら韓国は終わる」「28日で全て終わり。もう謝罪しない」」 産経ニュース2015年12月31日
http://www.sankei.com/world/news/151231/wor1512310008-n3.html

「 安倍首相は今年8月に戦後70年談話を出す直前、周囲に「謝罪外交に終止符を打ちたい」と語っていた。今月28日の慰安婦問題に関する日韓合意も、首相にとって同じ思いから進めたものだったのだろう。

 「韓国側がきちんとこっちの求めに応じなければ、こちらも彼らに与えることはない」

 「これで完全に終わりにできるかどうか。それを含めての外相会談だ」

 安倍首相は会談数日前にはこうも述べ、決着をことさら急がないという姿勢を示していた。ただ、やはり自身の手で慰安婦問題に片を付けたいという思いは強かった。首相周辺は言う。

 「韓国を黙らせるために首相は賭けに出た」

 また、もう一つ日韓関係改善に動く理由があった。東シナ海や南シナ海で膨張路線を隠さない中国の存在と、それに傾斜する韓国の現状だ。

 「慰安婦問題を引きずることが、東アジアの安全保障上、日韓両国にとってマイナスになっている。その状況を変えたい」

 安倍首相は周囲にこう漏らしており、官邸筋も「日中韓の関係を変え、韓国を日本対中韓から日韓対中国の関係に引きずり込む目的があった」と語る。」

http://www.sankei.com/world/news/151231/wor1512310008-n4.html

「 そのための日韓交渉は、水面下で1年近く続けられていた。中心人物は谷内正太郎国家安全保障局長であり、韓国側のパートナーは李丙●(=王へんに其)大統領秘書室長だった。元駐日韓国大使で朴槿恵大統領の側近である李氏が、谷内氏を交渉相手に指名してきたとされる。

 日本政府内には、谷内氏の交渉手腕を不安視する声もあったが、安倍首相自身は「絶対にだまされるな」「確証が取れなければ前に進むな」と繰り返し指示し、細心の注意を払いながら協議は進められた。

 そして11月の日韓首脳会談では、安倍首相と朴氏は和やかな雰囲気を保ちつつ「お互い言いたいことをじっくり言い合った」(政府筋)。会談では新基金の構想についても「韓国側から打診があった」(別の政府筋)という。

 「韓国は、慰安婦問題に関する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産への申請もしないだろう」

 安倍首相は周囲にこう語り、岸田文雄外相も28日の外相会談後、記者団に同様の認識を示している。しかし、韓国外務省は29日、こうした認識を「事実無根」と否定した。

 日韓合意を一夜にして反故にするような行動だが、政府関係者は「国内向けの発言だろう」と受け止めつつ、こう総括した。

 「慰安婦問題の行方を国際社会が見ている。最後は韓国次第だ」

(阿比留瑠比、田北真樹子)」


 西村氏は、「慰安婦・日韓合意が日本の安全保障に必要だったというのは真っ赤な嘘だ。旧態依然の安全保障政策しか考えられない米国にとって、非常に必要だったということである。」と言う(https://twitter.com/kohyu1952/status/684787066253660160)。
 しかし、国家安全保障局の局長が中心となって交渉が進められてきた本件日韓合意が、安全保障に全く関係ないとは考え難い。
 国家安全保障局は国家安全保障会議の補助機関であり(http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/anzenhosyou.html)、国家安全保障会議は我が国の安全保障に関する重要事項を審議する機関だ(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyoukaigi/)。
 いくら韓国が谷内局長を指名してきたとはいっても、それだけで谷内局長を使いっ走りにするわけがない。
 本件日韓合意が安全保障に関係があるから谷内局長が動いたのだろう。
 水面下で1年近く交渉が続いていたということは、朴大統領の「慰安婦問題は最終段階」発言の約半年前から交渉はなされていたということだ。
 その間、情報が漏れなかった。誰も谷内局長の動きを把握していなかった。
 これは密かに大きな成果ではないかと思う。

 とにかく、慰安婦問題について、アメリカは日本に圧力をかけていたのかもしれないが、韓国に圧力をかけていたのは確実だ。
 では、アメリカは、日本と韓国のどちらにより強く圧力をかけていたのか。
 そんなことはわかるはずもないのだが、本件日韓合意は、日本の主張と韓国の主張と、どちらの方がより反映されているかを考えてみるといい。
 そこで、河野談話アメリカ連邦議会下院の対日批難決議を見てみるとよいと思う。
 河野談話は、慰安婦問題について日本自らが出した見解で、韓国はこれに依拠して慰安婦問題で日本を責めることができた。
 対日批難決議(アメリカ合衆国下院121号決議)は、マイク・ホンダ下院議員(民主党)が主導して2007年に出されたもので、慰安婦問題で日本を責めるものだ。まさにオバマ大統領の率いる民主党が中心になって出したものだ。
 韓国や、韓国の言い分を信じているアメリカの主張が通っているのならば、これらの重要な文言が本件日韓合意に盛り込まれているはずだ。


「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」 外務省HP平成5年8月4日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

「 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。」


「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯~河野談話作成からアジア女性基金まで~」 首相官邸HP平成26年6月20日
http://qq2q.biz/qjXl

12,13ページ
「1993 年 8 月 4 日,日本側では,河野官房長官より,これまで行われてきた調査をまとめた結果を発表するとともに,談話(河野談話)を発表した。
(中略。河野談話)
「強制性」の認識に関し,河野官房長官は同日行われた記者会見に際し,今回の調査結果について,強制連行の事実があったという認識なのかと問われ,「そういう事実があったと。結構です」と述べている。


 河野談話の原稿には「強制連行」という文言がない。
 「直接あるいは間接にこれに関与」とは言うが、強制連行については曖昧にしている。
 政府は注意深く「強制連行」の文言を避け、これは「歴史の真実」ではないとしていたのに、河野長官(当時)は独断で「強制連行」を認める発言をしてしまった。
 「軍の関与」は強制連行の意味するというのは河野長官の独断に過ぎず、政府見解とは異なることを、一昨年、安倍政権は明らかにした。


「【河野談話検証】 河野氏の独断が災いの種蒔く」 産経ニュース2014年6月21日
http://www.sankei.com/politics/news/140621/plt1406210018-n1.html

「 河野談話を検証する有識者チームの報告書により、20年以上も国民の目から隠されてきた談話の実態が白日の下にさらされた意義は大きい。産経新聞が繰り返し報じてきたとおり、談話は歴史の厳密な事実関係よりも、強制性の認定を求める韓国側への政治的配慮に基づき、日韓両国がすり合わせて合作していた。また、当時の河野洋平官房長官が政府の共通認識を踏み外し、独断的に「強制連行」を認めてしまったことも改めて確認された。

 報告書は、政府が実施した関係省庁や米国立公文書館の文書調査、旧軍関係者や元慰安所経営者からの聞き取り、韓国の元慰安婦支援団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会」の慰安婦証言集の分析などを通じ、こう結論付けている。

 「(政府の)一連の調査を通じて得られた認識は、いわゆる『強制連行』は確認できないというもの」

 その上で報告書は、平成5年8月4日の談話発表時の河野氏による記者会見について、1つの章を設けてこう特記している。

 「(河野氏は)強制連行の事実があったという認識なのかと問われ、『そういう事実があったと。結構です』と述べている」

 これについて、現在の政府高官は「それまで政府は強制連行は証拠がないという一線を守っていた。それなのに、河野氏の発言で強制連行説が独り歩きすることになった。完全な失敗だ」と指摘する。実際、河野談話には「強制連行」という文言は出てこない。」


 次に、アメリカの対日批難決議を見てみる。


「アメリカ合衆国下院121号決議(United States House of Representatives proposed House Resolution 121)」 戦後責任ドットコム
http://space.geocities.jp/ml1alt2/data/data5/data5-09.htm#01

「 ラントス下院外交委員長(カリフォルニア選出)ロス‐レティネン議員(フロリダ選出)の修正案を反映した下院第121号決議案

 日本政府は1930年代から第2次世界大戦までの期間、「慰安婦」と言われる若い女性たちを帝国軍への性的サービス目的のため動員することを正式に委任した。日本政府による強制軍隊売春制度である「慰安婦」は、集団強姦・強制流産・恥辱・身体切断・死亡・自殺を招いた性的暴行等の残虐性や規模面においても、前例のない20世紀最大の人身売買の1つだ。
 日本の学校で採用されている新しい教科書は、こうした慰安婦の悲劇や第2次世界大戦中の日本による他の戦争犯罪を過小化しようとしている。
 日本の公共・民間の関係者は、最近の慰安婦の苦痛に対する政府の真摯(しんし)な謝罪を含む河野洋平官房長官による1993年の「慰安婦関連談話」を希釈または撤回しようとしている。
 日本政府は1921年に「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」に署名し、2000年には武力紛争が女性に及ぼす影響についての国連安保理決議「女性、平和及び安全保障に関する決議第1325号」を支持している。
 下院は人間の安全と人権・民主的価値・法の統治および安保理決議第1325号に対する支持など、日本の努力を称える。
 米日同盟はアジアと太平洋地域で米国の安保利益の礎(いしずえ)で、地域安定と繁栄の根本だ。
 冷戦後、戦略的な環境は変化したが、米日同盟はアジア太平洋地域で政治・経済的な自由、人権、民主的制度に対する支持、両国国民と国際社会の繁栄確保をはじめ共同の核心利益と価値に根ざしている。
 下院は日本の官僚や民間人らの努力により1995年、民間レベルの「女性のためのアジア平和国民基金」が設立されたことを称える。同基金は570万ドル(約7億円)を集め、日本人たちの贖罪(しょくざい)の意識を慰安婦に伝えた後、2007年3月31日に活動を終了した。以下は米下院の共通した意見だ。

1.日本政府は1930年代から第2次世界大戦前に至るまで、アジア諸国や太平洋の島々を植民地化したり、戦時に占領した過程において、日本帝国主義軍が強制的に若い女性たちを「慰安婦」と言われる性の奴隷にしたことを、事実として明確な態度で公式に認め、謝罪し、歴史的な責任を取らなければならない。
2,日本の首相が公式声明を通じ謝罪するなら、先に発表した声明の信ぴょう性と水準に対し繰り返し唱えられる疑惑を解消する一助となるだろう。
3.日本政府は日本軍が慰安婦を性の奴隷にし、「人身売買した事実は絶対にない」といういかなる主張に対しても、明確かつ公式に反論しなければならない。
4.日本政府は国際社会が提示した慰安婦勧告に基づき、今の世代と将来の世代を対象に、残酷な犯罪について教育しなければならない。」


 ついでにこのページにあった「韓国国会決議案・発議」も引用する。


「韓国国会決議案・発議」 同上
http://space.geocities.jp/ml1alt2/data/data5/data5-09.htm#02

「 大韓民国国会は、過去の対日抗争期に日本軍によって恣意的に行われた日本軍性奴隷制に対して、この間、国連人権委員会、国際労働機関、アムネスティ・インターナショナル、米国下院などで、数回にわたり日本政府に勧告をしたが、日本政府がこれを受け入れていないことに対して深刻な憂慮の意を表明し、韓日間の対日抗争期の過去事の問題の正しい解決は、これからの韓日間の友好協力にも役に立つであろうと信じて、次のとおり決議する。

一、日本政府は政府機構として真相究明のための公式機構を作り、過去の日本軍のすべての文書を公開し、日本軍性奴隷制の犯罪についての真実を究明することを促す。

二、日本政府の日本軍性奴隷制に対して、軍の強制を認め、国会の決議と閣議で決定した公式謝罪を行うことを促す。

三、日本政府は日本軍性奴隷制の被害者に対して、「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」などの法の制定を通して、被害者たちが受け入れられる法的賠償をとることを促す。

四、日本政府は日本軍性奴隷制の犯罪についての真相を歴史教科書に記録し、以後の再発防止のための平和教育を積極的に実施することを促す。
五、韓国政府が日本軍性奴隷制の解決のための請求権交渉など、対日外交交渉を積極的に履行することを促す。

提案理由
 二〇〇七年七月三〇日、米国下院の本会議で日本軍「慰安婦」謝罪決議案が満場一致で通過した。日本軍「慰安婦」決議案は現在、米国でだけでなく、カナダ、オーストラリア、フィリピン、EUなどの議会でも、決議案採択のための活動が進められていること。
 日本軍性奴隷制(あるいは日本軍「慰安婦」制度)は、第二次世界大戦時に日本政府がアジア侵略戦争を遂行しながら、アジアの数多くの女性たち(最大ニ○万人)を日本軍の性的奴隷として連行した、二〇世紀最大の人身売買犯罪であったこと。
 一九四五年の解放以後、日本軍性奴隷制の犯罪についての真実が明らかにされず、これに対する法的責任もまた果されなかったこと。
 一九九一年、長い沈黙を破った日本軍「慰安婦」被害者の勇気ある証言以後、国際社会では一九九四年の国際法律家委員会報告書、一九九六年の国連人権委員会女性暴力問題特別報告官のラディカ・クマラスワミ報告書、一九九八年の国連人権小委員会武力紛争下の組織的強姦性奴隷制及び奴隷制類似の慣行に関する特別報告官のゲイ・マクドゥーガル報告書、二〇〇〇年の日本軍性奴隷制女性国際戦犯法廷の判決、二〇〇五年のアムネスティ・インターナショナル報告書などが、日本軍の性奴隷制は人道に対する犯罪、国際法違反の犯罪行為であり、日本政府はこの犯罪に対して国家的次元で謝罪と賠償をしなければならないことを勧告したこと。
 このような国際社会の努力は、日本軍性奴隷制の問題が、被害を受けた生存者や加害/被害の該当国家だけの問題でなく、普遍的な問題であり、また未来指向の課題だという認識が拡まり、深化していることを確認させられること。
 しかし、日本政府は、日本軍「慰安婦」問題に対する公式謝罪と賠償及び真相究明、再発防止のための人類の普遍的価値の実現に乗り出すどころか、国際社会の勧告を無視していること。
 むしろ総理をはじめとする政治家たちは、日本軍性奴隷制の犯罪に対して、国家の責任を回避する発言を相変らず繰り返し、一部強制性を認定した一九九三年の「河野談話」を、再検討するという動きまで見せていること。
 したがって大韓民国国会は、日本政府が、高齢の日本軍「慰安婦」被害者たちを考慮し、日本軍性奴隷制犯罪の解決のために、速やかに積極的な措置を取ることを再度促し、同じく韓国政府も、問題解決のための積極的な対日外交交渉を実行するよう促す。」


 長々と引用してきたが、慰安婦問題とは要するに「日本軍が、朝鮮人女性20万人を、強制連行して、従軍慰安婦という性奴隷にした」という、日本を貶めるための歴史捏造だ。
 要するに、日本はドイツのホロコーストより悪いことをし、アメリカの原爆投下よりも悪いことをした戦争犯罪大国だ、と言いたいのだ。
 上の文書に見られる重要な文言は、「従軍慰安婦」「強制連行」「20万人」「性奴隷」だ。
 ちなみに、韓国議会の決議では「最大20万人」とのことだが、在米韓国人が2010年にニュージャージー州のパイセイズパーク市の図書館前に設置した「日本軍従軍慰安婦の碑」には「20万人以上」(more than 200,000 women and girls)と書かれていて、つまり「最低20万人」となっていて、人数が増えている。
 これらの文言が本件日韓合意にいくつ盛り込まれたのか。


「日韓外相会談」 外務省HP平成27年12月28日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001667.html

「 12月28日午後2時から3時20分頃まで,岸田文雄外務大臣は,尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外交部長官と日韓外相会談を行い,直後の共同記者発表(日本語/英語/韓国語(PDF)別ウィンドウで開く)において,慰安婦問題について以下のとおり発表した。

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(1)岸田外務大臣による発表は,以下のとおり。
 日韓間の慰安婦問題については,これまで,両国局長協議等において,集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき,日本政府として,以下を申し述べる。

ア 慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。

イ 日本政府は,これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ,その経験に立って,今般,日本政府の予算により,全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には,韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

ウ 日本政府は上記を表明するとともに,上記(イ)の措置を着実に実施するとの前提で,今回の発表により,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
 あわせて,日本政府は,韓国政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。

(2)尹外交部長官による発表は,以下のとおり。
 韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については,これまで,両国局長協議等において,集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき,韓国政府として,以下を申し述べる。

ア 韓国政府は,日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し,日本政府が上記1.(1)(イ)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で,今回の発表により,日本政府と共に,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は,日本政府の実施する措置に協力する。

イ 韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する。

ウ 韓国政府は,今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で,日本政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。

2 なお,岸田大臣より,前述の予算措置の規模について,概ね10億円程度と表明した。

3 また,双方は,安保協力を始めとする日韓協力やその他の日韓間の懸案等についても短時間意見交換を行った。」


 外務省のこのページで検索をかけてみればわかるが、上に挙げた重要文言は1つも盛り込まれていない。
 本件日韓合意は、河野談話に比べると穏当な文言になっている(http://ameblo.jp/tokyo-kouhatsu-bando/entry-12112154111.html)。アメリカの対日批難決議は河野談話の「希釈または撤回」を牽制しているのに、本件日韓合意は河野談話を希釈している。アメリカが日本に強い圧力をかけていたらこんなことにはならないのではないか。
 オバマ大統領は慰安婦問題は「著しい人権侵害」という認識を持っているが、「人権」という文言すら使われていない。「慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」とはこの趣旨だという理解もあろうが、人権侵害ならば法的責任の問題が生じるであろうところ、「責任」が法的なものか否かも曖昧にされている。
 「軍の関与」という文言に食いついている否定論者もいるが、河野談話を見ての通り、これは強制連行を意味するものではない曖昧な文言だ。安倍政権は一昨年の6月に河野談話の検証結果を公表し(河野談合の公表)、この文言の趣旨を明らかにした。「軍の関与」という文言は誤解を招きやすいので好ましくない文言だが、全否定するのもまた嘘になる。
 逆に、「従軍慰安婦」という文言が消えていることに着目するべきだ。河野談話は「従軍慰安婦」が存在したのは「歴史の真実」だとしている。しかし、こんなものは存在せず、「慰安婦」が存在したに過ぎない。本件日韓合意では是正されて「慰安婦」となっている。「従軍慰安婦」という誤解・誤認が是正されたとも言えるし、アメリカ対日批難決議的に言えば一部「撤回」だ。
 アメリカが日本を「隷属」させるためにこの合意を出させたのであれば、本件日韓合意は、アメリカが日本よりも道義的に優越することを確定的に示すものである必要があり、日本は第二次世界大戦においてアメリカが行った東京大空襲や原爆投下よりもひどいことをしたということが明確に読み取れる文言になっている必要があるのではないかと思う。そのためには、行為の残虐性や被害者の人数が重要になる。しかし、行為については河野談話を希釈しているし、人数も「多数」としか書かれていない。これで「隷属」とは過大評価ではないか。

 アメリカが韓国の主張する歴史認識を信じていて、アメリカが日本に圧力をかけて韓国側の歴史認識を押し付け、それで本件日韓合意が出されたならば、こんな文言になるはずがない。
 アメリカは、日本のみならず韓国にも圧力をかけたと見るにせよ、韓国の方により強い圧力をかけたと見るのが妥当ではないか。

 さらに言えば、この1年、日米関係は良好だったのに対し、米韓関係は険悪だったのではないか。
 韓国ではマーク・リッパート駐韓米国大使が暗殺されかけ、韓国はAIIBに参加を表明し、中国共産党の9月3日の抗日式典に朴大統領と潘基文氏が出席し、アメリカの要請があったにもかかわらず、韓国は中国による南シナ海埋立てを非難しなかった。
 日本にはこういう問題がない。それに、米国連邦議会上下両院演説もウけたし、戦後70年談話でもアメリカに気を遣った。
 それでもなおアメリカは慰安婦問題で韓国の肩を持つのだろうか。
 私には疑問だ。

 私は藤井氏や西村氏の解説を信頼しているが、本件日韓合意における「アメリカの圧力」という点は素直に同意できない。
 アメリカの対日圧力をもって本件日韓合意否定論に傾いている人は、考え直した方がよいのではないかと思う。